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第96話 子供ってのは
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わたしとアオイ、ミズホが『ゲート』の魔法陣の上に展開された白い光球を潜り抜ける。ちなみに『ゲート』の文字通り『門』になっているこの光球は直系が2mほどなので、身長3mのわたしはかなり身体を屈めないと、潜る事ができない。まあ、それはいいんだ。
この『ゲート』を潜った先は、コンザウ大陸の『ヴィザー・ル新王国』のほぼド真ん中に建設された、今のところコンザウ大陸で最大の『JOKER剣魔国』国軍基地である、ガナンズ基地だった。先に送り込んでいた親衛隊の戦闘ドロイドたちが、一斉にわたしたちへ捧げ銃の敬礼を送って来る。わたし、アオイ、ミズホはそれに答礼を返す。
「ついに、来ましたね……」
ミズホが感慨深げに、言葉を漏らした。アオイが無言で頷く。そこへ泡を食った様な声が聞こえた。見ると、ガウルグルクと鉄之丞が部下を後ろに置き去りにして、必死で駆けて来るところだった。
「ああ、もういらしておるぞ! 急げ鉄之丞殿!」
『わ、わかっておるとも、ガウルグルク殿! ま、魔王様、遅参のほど、申し訳ござらん!』
「魔王様、出迎えが遅れまして、まっこと申し訳……」
「ああ、2人ともソレは気にしないでいいから。部下が大変そうじゃないか」
わたしはそう言いつつ、『ゲート』の魔法陣を制御している魔道軍団員に目を遣った。『ゲート』の魔法陣は、未だ完全な自動化が為されていない。細かい制御に、やはり術者の手が必要なのだ。しかしそれでも、魔力の供給は魔法陣周囲に配置された直系50cmほどもある6つの宝珠から為されており、術者の負担を徹底的に軽減しているなど、かなりの進歩が見られた。
「ザウエルの次回の賞与に、ちょっと色を付けてやらないとなあ。まあ彼の事だから、魔法研究に注ぎ込んじゃうんだろうけど」
「わたしもそう思う」
そして『ゲート』からは次々に後続の親衛隊員の戦闘ドロイドたちが現れては、きっちりと列に並んでいく。さて、魔王の親征は、準備が整った。予定ではゼロ率いる魔像軍団の半分と鉄之丞の死霊軍団がわたしの指揮の下で、『リューム・ナアド神聖国』の軍を中核としたコンザウ大陸南岸諸国解放軍とやらを迎え討つ事になっている。
ちなみに魔像軍団が半分なのは、死霊軍団が陥落させた『フィンザ国』『サマー国』の領域を守備するのと治安維持を行うために、海を越えて南の大島に行っているからだ。ちなみに島の名前は付いていないらしい。これまでは、その島にある2国の名前で呼ばれていた様なのだ。でもその2国は既に我々の手によって存在しない。近いうちに、名前付けないと。
あ、いや。それは置いといて、だ。今魔獣軍団と魔竜軍団が中核になっているコンザウ大陸侵攻軍本隊は、ガンガンと『タラント連邦』を攻めている。最悪二正面作戦になっちゃう事を覚悟してたんだがね。敵のコンザウ大陸南岸諸国解放軍が準備整って攻めて来る前に、『タラント連邦』が陥ちそうだ。
「たしか魔道軍団の間諜によれば、敵は『タラント連邦』を救う事をいったん諦めるらしいね。こちらが『タラント連邦』を陥として油断しているところに攻めかかろう、って考えてるって事だけど」
「魔道軍団の方たちには、足向けて寝られませんねー」
「うん、そう思う」
ミズホとアオイが、ウンウンと頷く。魔道軍団の間諜のおかげで、これまで沢山助かっているからねえ。賞与は出しているけれど、戦後には彼らの働きをきっちり勲功として表彰しないとなあ。最低でも、戦場での手柄と同等に扱わないと。と言うか、銃砲や戦闘車両なんかの発達で、戦場での手柄って価値が落ちて来てたりもするんだよね、実は。
まあ、コンザウ大陸南岸諸国解放軍の作戦案は、わたしの意図をベースにしてザウエルや魔道軍団のインテリたちが組み立てた物だ。それを間諜たちの活躍で、『リューム・ナアド神聖国』の高司祭バスール・オイゲンドって欲深を賄賂で躍らせて、敵に流したんだよな。
ただし相手は旧態依然とした軍制の、中世ファンタジー世界的な軍隊だ。下手すると、末端の将軍が勝手に作戦変えたりして予想外の動きする可能性もあるからなあ。実際、そう言う勝手な動きをしそうな人物が、敵軍の主力を率いている。『リューム・ナアド神聖国』の将軍、バルサンド・フォラム・ソールだ。ソール家とか言う偉い家の当主でもあるらしいんだよね、こいつ。
こいつの首は、鉄之丞へのプレゼントとして取って置かないといけない。下手に死なれちゃ、困るんだよな。こいつと、こいつが率いて来てる『リューム・ナアド神聖国』の軍に、死霊軍団を上手くぶつけないとなあ。ただ、こいつ勝手気ままに動く可能性があるからな……。殺さない様に、気をつけなくちゃ。
あともう1人、勝手気ままに動きそうな子供がいる。勇者タケル・アカギだ。先頃、これまた魔道軍団の間諜から報告があったんだよ、勇者タケルの性格とかについての調査報告が。ほんと、魔道軍団が居ないと『JOKER剣魔国』の軍は回らないね。
置いといて。勇者タケル……。調べた結果、何と言うのかな……。異世界召喚で、舞い上がってるらしい。なんか、もう元の世界に帰りたくないとか、ほざいてる。ほんとにただの英雄願望が強い子供なんだ、これが。そして『リューム・ナアド神聖国』の言うことを、完全に鵜呑みにして、「俺が魔王を倒して、世界を平和にしてやるぜー!」とか騒いでる。
あと、『リューム・ナアド神聖国』は、この勇者タケルにたっぷりと贅沢を教え込んだ様だ。酒池肉林を地で行く暮らしをしてるみたいだね。甘やかされた子供だと、紙が無いトイレとか我慢できないんじゃないかと思ったんだが……。彼はトイレットペーパーが無いと知ると、贅沢にも毎度のトイレで貴重な布を使って、尻を拭いてるとの事だ。
しかしさ、『JOKER剣魔国』でなら既に大量生産してるから、木綿布とかいっぱいあるよ!? だけどそれでも布使うなんて、もったいないよ!? 増してや中世ファンタジー世界レベルの生産技術の『リューム・ナアド神聖国』で、木綿や絹やなんかの布が、どれだけ貴重品だと……!!
そういや、その事を例の「真教」のアーロン・アボット法皇に教えてやったんだ。切れそうになってたね。彼が『リューム・ナアド神聖国』の「神教」を裏切った理由が、貧困を撲滅するため、だからねえ。『リューム・ナアド神聖国』の下層の民だけじゃない。それを含めて周辺国の民草は、重税に苦しみ生きていけるか駄目かと言うぎりぎりのラインでの暮らしを強いられてる。
それを知ってか知らずか、そんな阿呆の様な贅沢をする勇者タケル……。アーロン法皇が怒るのも理解できるよ、まったく。これは……根性叩き直してやらないと駄目かな。実際に戦うミズホに、ハッパ掛けておこう。
……一番気に入らないのは、彼が元の世界に帰りたくないなんて、ほざいてる事なんだけどさ。アオイもミズホも、それを聞いたとき顔が能面の様になってた。わたしも顔面が生体装甲板じゃなく、表情筋が動けば、同じ様になってただろうね。
この『ゲート』を潜った先は、コンザウ大陸の『ヴィザー・ル新王国』のほぼド真ん中に建設された、今のところコンザウ大陸で最大の『JOKER剣魔国』国軍基地である、ガナンズ基地だった。先に送り込んでいた親衛隊の戦闘ドロイドたちが、一斉にわたしたちへ捧げ銃の敬礼を送って来る。わたし、アオイ、ミズホはそれに答礼を返す。
「ついに、来ましたね……」
ミズホが感慨深げに、言葉を漏らした。アオイが無言で頷く。そこへ泡を食った様な声が聞こえた。見ると、ガウルグルクと鉄之丞が部下を後ろに置き去りにして、必死で駆けて来るところだった。
「ああ、もういらしておるぞ! 急げ鉄之丞殿!」
『わ、わかっておるとも、ガウルグルク殿! ま、魔王様、遅参のほど、申し訳ござらん!』
「魔王様、出迎えが遅れまして、まっこと申し訳……」
「ああ、2人ともソレは気にしないでいいから。部下が大変そうじゃないか」
わたしはそう言いつつ、『ゲート』の魔法陣を制御している魔道軍団員に目を遣った。『ゲート』の魔法陣は、未だ完全な自動化が為されていない。細かい制御に、やはり術者の手が必要なのだ。しかしそれでも、魔力の供給は魔法陣周囲に配置された直系50cmほどもある6つの宝珠から為されており、術者の負担を徹底的に軽減しているなど、かなりの進歩が見られた。
「ザウエルの次回の賞与に、ちょっと色を付けてやらないとなあ。まあ彼の事だから、魔法研究に注ぎ込んじゃうんだろうけど」
「わたしもそう思う」
そして『ゲート』からは次々に後続の親衛隊員の戦闘ドロイドたちが現れては、きっちりと列に並んでいく。さて、魔王の親征は、準備が整った。予定ではゼロ率いる魔像軍団の半分と鉄之丞の死霊軍団がわたしの指揮の下で、『リューム・ナアド神聖国』の軍を中核としたコンザウ大陸南岸諸国解放軍とやらを迎え討つ事になっている。
ちなみに魔像軍団が半分なのは、死霊軍団が陥落させた『フィンザ国』『サマー国』の領域を守備するのと治安維持を行うために、海を越えて南の大島に行っているからだ。ちなみに島の名前は付いていないらしい。これまでは、その島にある2国の名前で呼ばれていた様なのだ。でもその2国は既に我々の手によって存在しない。近いうちに、名前付けないと。
あ、いや。それは置いといて、だ。今魔獣軍団と魔竜軍団が中核になっているコンザウ大陸侵攻軍本隊は、ガンガンと『タラント連邦』を攻めている。最悪二正面作戦になっちゃう事を覚悟してたんだがね。敵のコンザウ大陸南岸諸国解放軍が準備整って攻めて来る前に、『タラント連邦』が陥ちそうだ。
「たしか魔道軍団の間諜によれば、敵は『タラント連邦』を救う事をいったん諦めるらしいね。こちらが『タラント連邦』を陥として油断しているところに攻めかかろう、って考えてるって事だけど」
「魔道軍団の方たちには、足向けて寝られませんねー」
「うん、そう思う」
ミズホとアオイが、ウンウンと頷く。魔道軍団の間諜のおかげで、これまで沢山助かっているからねえ。賞与は出しているけれど、戦後には彼らの働きをきっちり勲功として表彰しないとなあ。最低でも、戦場での手柄と同等に扱わないと。と言うか、銃砲や戦闘車両なんかの発達で、戦場での手柄って価値が落ちて来てたりもするんだよね、実は。
まあ、コンザウ大陸南岸諸国解放軍の作戦案は、わたしの意図をベースにしてザウエルや魔道軍団のインテリたちが組み立てた物だ。それを間諜たちの活躍で、『リューム・ナアド神聖国』の高司祭バスール・オイゲンドって欲深を賄賂で躍らせて、敵に流したんだよな。
ただし相手は旧態依然とした軍制の、中世ファンタジー世界的な軍隊だ。下手すると、末端の将軍が勝手に作戦変えたりして予想外の動きする可能性もあるからなあ。実際、そう言う勝手な動きをしそうな人物が、敵軍の主力を率いている。『リューム・ナアド神聖国』の将軍、バルサンド・フォラム・ソールだ。ソール家とか言う偉い家の当主でもあるらしいんだよね、こいつ。
こいつの首は、鉄之丞へのプレゼントとして取って置かないといけない。下手に死なれちゃ、困るんだよな。こいつと、こいつが率いて来てる『リューム・ナアド神聖国』の軍に、死霊軍団を上手くぶつけないとなあ。ただ、こいつ勝手気ままに動く可能性があるからな……。殺さない様に、気をつけなくちゃ。
あともう1人、勝手気ままに動きそうな子供がいる。勇者タケル・アカギだ。先頃、これまた魔道軍団の間諜から報告があったんだよ、勇者タケルの性格とかについての調査報告が。ほんと、魔道軍団が居ないと『JOKER剣魔国』の軍は回らないね。
置いといて。勇者タケル……。調べた結果、何と言うのかな……。異世界召喚で、舞い上がってるらしい。なんか、もう元の世界に帰りたくないとか、ほざいてる。ほんとにただの英雄願望が強い子供なんだ、これが。そして『リューム・ナアド神聖国』の言うことを、完全に鵜呑みにして、「俺が魔王を倒して、世界を平和にしてやるぜー!」とか騒いでる。
あと、『リューム・ナアド神聖国』は、この勇者タケルにたっぷりと贅沢を教え込んだ様だ。酒池肉林を地で行く暮らしをしてるみたいだね。甘やかされた子供だと、紙が無いトイレとか我慢できないんじゃないかと思ったんだが……。彼はトイレットペーパーが無いと知ると、贅沢にも毎度のトイレで貴重な布を使って、尻を拭いてるとの事だ。
しかしさ、『JOKER剣魔国』でなら既に大量生産してるから、木綿布とかいっぱいあるよ!? だけどそれでも布使うなんて、もったいないよ!? 増してや中世ファンタジー世界レベルの生産技術の『リューム・ナアド神聖国』で、木綿や絹やなんかの布が、どれだけ貴重品だと……!!
そういや、その事を例の「真教」のアーロン・アボット法皇に教えてやったんだ。切れそうになってたね。彼が『リューム・ナアド神聖国』の「神教」を裏切った理由が、貧困を撲滅するため、だからねえ。『リューム・ナアド神聖国』の下層の民だけじゃない。それを含めて周辺国の民草は、重税に苦しみ生きていけるか駄目かと言うぎりぎりのラインでの暮らしを強いられてる。
それを知ってか知らずか、そんな阿呆の様な贅沢をする勇者タケル……。アーロン法皇が怒るのも理解できるよ、まったく。これは……根性叩き直してやらないと駄目かな。実際に戦うミズホに、ハッパ掛けておこう。
……一番気に入らないのは、彼が元の世界に帰りたくないなんて、ほざいてる事なんだけどさ。アオイもミズホも、それを聞いたとき顔が能面の様になってた。わたしも顔面が生体装甲板じゃなく、表情筋が動けば、同じ様になってただろうね。
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本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
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