召喚魔王様がんばる

雑草弁士

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第107話 航空機の発展

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 前線では『バルトン国』『シアンフ王国』『ジアンク王国』の、コンザウ大陸南岸に残る3国を今現在攻略中だ。しかし最後方であるバルゾラ大陸では、今も新兵器開発が行われている。

 特にその中で、期待を集めているのが航空機だ。並の竜であれば撃墜できる戦闘機。その腹の中に、竜では運べない量の爆弾を搭載する爆撃機。両者の中間と言える戦闘爆撃機、等々。まあ戦闘機が『竜』を撃墜できるとは言ったが、『魔竜』を撃墜できはしないんだがね。

 だって魔竜も、新兵器である強化服を着用してるからね。強化服を着用した魔竜は、加速魔法を行使できない低レベル個体であっても、超音速飛行ができるんだ。更にこれで、加速魔法を使ったりしたら……。

 なおオルトラムゥは、以前に試作品の実験で散々に懸念と疑念を表明していたくせに、完成版の強化服を贈られたら、あっと言う間にその装備のとりこになった。

 まあ、閑話休題それはともかくとしてだ

 いまわたしとアオイ、ミズホ、ザウエルは新型戦闘機の実験を視察に来ている。アオイとミズホは、ちょっと仏頂面だ。まあ、さもありなん。あの元勇者、タケル・アカギ君に会いたくないんだろ。印象、最悪だったものな。そしてそれを覆す様なイベントも、まったく無いし。

 航空機開発を行っている部署の、土妖精ドワーフの主任研究員が溜息を吐きながら、空を見上げて言う。

「いや、流石ですな。性格的に少々子供子供したところはありますが、新型の戦闘機を手足のごとく扱っている。未だ候補生ではあります故に、単独では機体に乗せられないんですがね。
 ですがそれを差し引いても、あいつは機体に乗せる価値がある。あの扱いづらい機体を自由自在に……。魔王様から頂いた設計基に、我々が独自の案を盛り込んでみた結果、性能と共に扱いづらさは跳ね上がってしまったと言うのに」

「いや、独自の案を盛り込んだと言うのは素晴らしい事だ。それで扱いづらさが上がってしまったのは残念ではあるがな。挑戦と、試行錯誤があればこそ技術は発展する」

 ちなみに戦闘機だが、レシプロエンジンのプロペラ機だ。ジェット機は、まだまだ先の話だ。いや、設計とかの問題じゃ無く、技術者たちの技量とかそう言う面で。ただ初期型の赤外誘導のミサイルとかは載せてるけど。

 なお技術者連中は、ジェットエンジンの機体の前に、ロケット推進の機体を開発してる。固体ロケットブースターに操縦席と翼をくくりつけた様な形の奴だ。わたし、『桜花』とか『Me163』とかの設計基は渡した覚え、無いよ?

 話を聞いてみると、わたしが渡した技術をツギハギして組み合わせ、自分たちで設計して造り上げたぞうだ。驚いたね。驚いたが……。もの凄く、嬉しくなった。うん、こう言うのを待ってたんだ。まあ、史実の大半のロケット機同様に、その手の機体は技術実証機がせいぜいで、実用機には程遠いんだが。

「だが……。この調子ならば、そのうちにジェット機や宇宙ロケットも近い将来に可能となるかもな」

「魔王様、また話が飛んでる」

「おおっと。……あ、戦闘機が降りて来るな」

 アオイに突っ込みを受けた直後、上空で従来型の戦闘機を全機撃墜判定くらわした新型試作機が降下してきた。機首を上げて着陸態勢に入る。そして着陸タッチダウン。だがそのとき、突然その機体の、着陸脚が1本折れた!?

「まずい!」

「ああ、いえ大丈夫ですな」

「は?」

 わたしが操縦士パイロットたちを救助すべく、術法を行使しようとしたところへ突っ込んだのは、土妖精ドワーフの主任研究員だった。そして彼の言葉通り、2基の射出座席が上空へ打ち上げられる。

 まあ、落下傘パラシュートが開けるほどの高高度までは射出されないんだが。しかし射出された操縦士たちは飛行魔法を行使し、自力飛行で滑走路脇に着陸した。

 燃え上がる機体に目を遣り、操縦士パイロットたちが言葉を発する。

「あー、だめかー。やっぱり重くて出力が高いエンジンを載せるために、あちこち他の部分で軽量化を図ったのは、まずかったと思いますよ教官……」

「わたしもそう思う」

 わたしたちは、彼らの方に歩いて行く。わたしは彼らに声をかけた。

「大丈夫か? 一応念のために、医者に診てもらうが良い」

「あ、魔王様」

「こ、これは魔王陛下!お目もじ叶いまして、まっこと……」

「ああ、良い良い。教官役、ご苦労であるな、青き鱗のジャハーよ」

 うん、そうなんだ。あの蜥蜴人リザードマン、わざわざコンザウ大陸からバルゾラ大陸まで同胞たちの救出を嘆願に来た、あのジャハーが今は熟練の航空機パイロットとして、テストパイロットたちを率いているんだ。魔法はあまり得意じゃなかったはずなんだが、努力を重ねて無詠唱で飛行魔法を使えるまでに熟達している。

 ジャハーは頷く。そして改めて敬礼をして、話し始める。

「魔王様より預かりしこの者、テストパイロット候補生の中ではぴか一でございますな。ただ、褒めると少々調子に乗るところが玉に瑕ですが……」

「きょ、教官~」

「事実であろう?」

「はい……」

 そう言って凹んだのは、言わずと知れた元勇者のタケル君だ。そのタケル君に、わらわらと土妖精ドワーフや魔族の研究員が群がる。

「おい! 傍から見ていても着陸脚に欠陥があったのはわかるが! 他に問題点は!?」

「あ、え、き、機体を振り回したときに機体構造、骨格がギシギシ軋んで、生きた気がしなかった……。もうちっと機体の剛性を上げてくれないかなー、と。
 他には、それで機体がたわんだりゆがんだりビリビリと震えたりで、戦闘機動から通常飛行に復帰しても、ゆがみが出たせいで機体のあちこちでたぶん乱流が」

「むう、だから言ったであろう! 軽量化するにも、全体のバランスを取らねばならんと!」

「だが! それではせっかく大出力の発動機エンジンを載せた意味が! あの発動機エンジンは重量を食う!」

「となると、新しい発動機エンジンが必要だな。 軽量で出力が高い物を、開発せねばならん」

「他には問題は出ておらんか!? 遠慮せずに言うが良い! と言うか、下手に遠慮されては困るのだ! あいまいな感想程度でも良い、改良点が何かしらあったら言うが良いなのだーっ!!」

 研究者や技術者たちに取り巻かれて、タケル君はあわあわしている。かつての傲慢さはすっかり影を潜めた。アオイとミズホは、唖然としている。

「あれ、ほんとにあの勇者?」

「全然面影がありませんねー」

「クックック。その問題勇者を叩きのめして叩き直したのは、君じゃないかミズホ。君が言うかね?」

「そうでした……」

 そこへ医療班がやって来て、こちらに敬礼してからタケル君とジャハーを連れて行く。研究員たちは半数がタケル君たちの尋問もとい聴取に付いて行き、半数は消火班が火を消した機体に群がって調べまくっている。

 うん、タケル君が更生して社会復帰したのは良い事だ。だけど正直それ以上に研究員……技術者連中が育っているのが喜ばしかった。報告によれば、他の部門の技術者たちも他所と積極的に技術交流をして、知識や技術を高め合っているとの事。うん、すばらしいね。

 その日の視察は、本当に満足して終わった。懸念としては、そうだなー。タケル君は給与のかなりの割合を両腕のクローン再生治療費に、そしてはらませた女の娘2人を養うのに支払っている。ちょっと仕事の合間に計算してみたんだが。

 タケル君、ぎりぎりで暮らしていけるかと思ってたけど、下手すると暮らせないぞ?予想以上に高額を、2人の女の娘に送金しているらしい。あー、薬が効き過ぎたか。そうだな、頑張ってる様だしちょっとボーナス扱いで、治療費の支払いを減額してやるかね。あと、無理はし過ぎない様にちょっと教官のジャハーを通じて、窘めておこうか。



 そして視察の3日後。ガウルグルク率いるコンザウ大陸侵攻軍本隊が『バルトン国』をとしたと報告があった。
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