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第116話 西海岸の次は……
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ガウルグルクから報せが来た。彼が率いているコンザウ大陸侵攻軍本隊は、今現在『ダバード・ムーグ国』に対し揚陸作戦の真っ最中らしい。正確に言えば、報せて来たのはガウルグルク本人じゃなく、その配下の通信士官だが。本人は指揮を執るのに忙しくて、通話水晶での通話に出ているどころじゃないらしい。
それでもって、『ツヴォーラ国』が暴発した。隣国の『聖サパン国』と語らい、我が軍の支配下にある旧『トムラク国』と旧『ハルサンド都市国家連合』、旧『ワールス島国』に派兵したんだ。
だが『聖サパン国』から出撃した『トムラク国』解放軍とやらは、死霊軍団の一撃で自分たち自身が死霊軍団の一部になってしまう。『ツヴォーラ国』は海路で『ワールス島国』解放軍とか言うのと、陸路で『ハルサンド都市国家連合』解放軍とか言うのを出したんだが、『ワールス島国』解放軍の方はこれまた鉄之丞の配下の幽霊船団が叩きのめし、お仲間にしてしまった。
そして『ハルサンド都市国家連合』解放軍は、これはこれで魔像軍団のサポートをしていたミズホ率いる改造人間兵団の攻撃で、あっさり全軍が溶けた。この『溶けた』って言うのが壊滅したって意味の比喩表現じゃなく、ほんとに溶けたんだから笑えないよな。
どういう事かと言うと、改造人間兵団の主力であるアイアン・アント型改造人間が使う武器の1つ、超蟻酸をぶっかけられて、溶けたんだ。ドロドロに。あまりに凄惨な殺戮劇。
それを報告された際に、改造人間たちを直接指揮していたミズホが精神的にヤバくならないか心配だったんだが、杞憂だった。ミズホは随分と精神的に図太く成長していたらしい。通話水晶の通信で大丈夫かと聞いたら、笑顔で『何がですか?』と聞かれた。うん、図太くなったなあ。
「……安堵したよ」
「何が?」
「んー? ミズホのこと。よく物の本や物語、小説なんかではさ、『人殺しに慣れてしまったら駄目だ』とか言うだろ? でもさ……。
こんなご時世だ。人殺しに慣れなかったら、潰れてしまう。だからわたしは、ミズホが人殺しに慣れてくれて、心から安堵してるんだ。人間らしさを多少損なって、少々人として壊れてしまっても……。
大事な『仲間』に潰れられてしまう方が、ずっと大事だし、ずっと辛い事だ」
「そうね……。わたしもそう思う、魔王様」
アオイと語り合いつつ、わたしは書類のチェックを続ける。文官たち6名が次々に書類を捌き、そしてアオイがわたしの直接判断が必要な物以外を処理してくれていた。おかげで非常に助かってる。
「魔王様、コンザウ大陸西岸の次は東岸だったよね?」
「うん。『ツヴォーラ国』まで制圧して、ある程度安定させたらだけど、その次は東海岸の諸国が目標だよ。その次は北岸。そこまで全部叩いて、コンザウ大陸から外への出入り口を全部潰したら、内陸へと包囲の輪を縮めてやる。そして最終的に手足になる国々を全部もぎ取られた『リューム・ナアド神聖国』が残るから、それを一気に制圧する」
「待ち遠しいなあ……」
うん。アオイも何処かしら、壊れている。それは今までで、常々感じている事なんだけどね。以前蜥蜴人を助けに行ったときにも感じた事だけどさ。アオイも相手がたとえ人類種族であろうと、殺すのにためらいは無いんだ。種族ではなく、敵か味方かで判断してるみたいだね。
だけどそれでも、ちょっと壊れていようとなんだろうと、潰れてしまわない方がずっと大事だ。わたしは溜息を吐いて、壁の世界地図に目を向けた。
わたしはコンザウ大陸東岸の『聖ゾラ国』沖合に浮かぶ、1つの島を見つめる。その島の名は、バルザンズ島と言う。
「悪魔族のかつて住んでいた、呪われた島……か。祟りを恐れて、悪魔族を滅ぼした『リューム・ナアド神聖国』の武将にして第3王子ゾラ・ハルン・リューム・ナアドすらも領有化できなかった。かわりに本土の一部分を割譲され、『聖ゾラ国』が建国されたわけだが」
「……? ああ、バルザンズ島のことね。その島がどうかしたの? 魔王様」
「うん、しばらく前からちょっと気になっていてね。『魔王』って本来は何なのかなと。どうも大昔は、定期的に出現していたらしいからね。その大半は、悪魔族だったらしいし。例外もあるけれど」
うん、『魔王』って言うものは、最初は『魔物の王様』的に考えてたんだけどね。でも『定期的に出現』していたって事を知って以来、なんか『魔王』って存在に、何かしらの意味があるんじゃないかなーと。そう感じてたんだよね。
でもって、この間ちょっとだけ時間の余裕が出来たときに、先代魔王ゾーラムが勇者召喚魔法陣を盗み出して改造強化した、魔王召喚魔法陣の構成を子細にチェックしてみたんだ。魔法陣そのものは、旧魔王城の建材を使ってストーンゴーレム創った際に、破棄されてるけどね。
でも魔法陣の図柄とかは、わたしの頭脳にきっちりコピーしてある。だからその構成を解析するのは簡単な話だった。そしてうすうす感じていた事が、はっきりとしたんだよね。
……魔王召喚魔法陣には、魔王ゾーラムの死をもって新たな魔王となり得る存在を召喚し、それを強化した上で、ゾーラムの『魔王』としての資格を委譲して新たな『魔王』とする、と言う意味合いの記述がしっかりと魔法文字で描かれていたんだ。
つまり『魔王』ってのは単に魔物の王様じゃなく、特殊な条件下で『魔法的に『魔王』である事が決められる』って代物だったんだよね。元帥魔竜大将やってるオルトラムゥや、一時期魔獣将だった故バウガウドなんかは、魔王として戴冠式やるつもり満々だったみたいだけど……。戴冠式やったからって形だけ魔王になっても、本当の意味で『魔王』にはなれないみたいだ。
逆を言えば、わたしは先代魔王ゾーラムから資格を委譲されているから、本当の意味で『魔王』なわけだが。わたしはアオイに、念話でそう言った事柄を語る。わざわざ念話を使ったのは、今この場に6人の文官たちが居るからだ。秘密にするほどの事でも無いかも知れないが、言いふらす事でもなさそうな気がしたのだ。
そしてわたしは、念話ではなく口に出して言う。
「このバルザンズ島に、もしかしたらその秘密が隠されて無いかと思ってね。東海岸を征したら、ちょっと時間を作って調べさせようかと。ただ、祟りの正体が不明だからね。編制をどうしようかな、と思ってさ。魔法的な面では、当時のゾラ・ハルン・リューム・ナアドたちも注意してただろうし。
NBC汚染とかがあるかも知れないね。それらに対する防護服でも用意して、調査隊を送り込むかな? いや、その調査隊をわたしが率いようかな? もしかしたら魔王じゃなければ見つけられない仕組みとか、あるかも知れない」
「『魔王』っていうのが、何なのか……か。漠然と魔王って思ってただけで、考えもしなかったな。魔王様本人からすれば、気になるよね。魔王様が行くならば、わたしも行く。ちゃんとNBC汚染対応の防護服着込んで行く」
「うん、君は親衛隊長だからね。勿論付いて来てもらうよ」
そう言ったわたしの言葉に、アオイはほころぶ様な笑顔を見せてくれた。……いや、ついつい見とれちゃったじゃないか。
それでもって、『ツヴォーラ国』が暴発した。隣国の『聖サパン国』と語らい、我が軍の支配下にある旧『トムラク国』と旧『ハルサンド都市国家連合』、旧『ワールス島国』に派兵したんだ。
だが『聖サパン国』から出撃した『トムラク国』解放軍とやらは、死霊軍団の一撃で自分たち自身が死霊軍団の一部になってしまう。『ツヴォーラ国』は海路で『ワールス島国』解放軍とか言うのと、陸路で『ハルサンド都市国家連合』解放軍とか言うのを出したんだが、『ワールス島国』解放軍の方はこれまた鉄之丞の配下の幽霊船団が叩きのめし、お仲間にしてしまった。
そして『ハルサンド都市国家連合』解放軍は、これはこれで魔像軍団のサポートをしていたミズホ率いる改造人間兵団の攻撃で、あっさり全軍が溶けた。この『溶けた』って言うのが壊滅したって意味の比喩表現じゃなく、ほんとに溶けたんだから笑えないよな。
どういう事かと言うと、改造人間兵団の主力であるアイアン・アント型改造人間が使う武器の1つ、超蟻酸をぶっかけられて、溶けたんだ。ドロドロに。あまりに凄惨な殺戮劇。
それを報告された際に、改造人間たちを直接指揮していたミズホが精神的にヤバくならないか心配だったんだが、杞憂だった。ミズホは随分と精神的に図太く成長していたらしい。通話水晶の通信で大丈夫かと聞いたら、笑顔で『何がですか?』と聞かれた。うん、図太くなったなあ。
「……安堵したよ」
「何が?」
「んー? ミズホのこと。よく物の本や物語、小説なんかではさ、『人殺しに慣れてしまったら駄目だ』とか言うだろ? でもさ……。
こんなご時世だ。人殺しに慣れなかったら、潰れてしまう。だからわたしは、ミズホが人殺しに慣れてくれて、心から安堵してるんだ。人間らしさを多少損なって、少々人として壊れてしまっても……。
大事な『仲間』に潰れられてしまう方が、ずっと大事だし、ずっと辛い事だ」
「そうね……。わたしもそう思う、魔王様」
アオイと語り合いつつ、わたしは書類のチェックを続ける。文官たち6名が次々に書類を捌き、そしてアオイがわたしの直接判断が必要な物以外を処理してくれていた。おかげで非常に助かってる。
「魔王様、コンザウ大陸西岸の次は東岸だったよね?」
「うん。『ツヴォーラ国』まで制圧して、ある程度安定させたらだけど、その次は東海岸の諸国が目標だよ。その次は北岸。そこまで全部叩いて、コンザウ大陸から外への出入り口を全部潰したら、内陸へと包囲の輪を縮めてやる。そして最終的に手足になる国々を全部もぎ取られた『リューム・ナアド神聖国』が残るから、それを一気に制圧する」
「待ち遠しいなあ……」
うん。アオイも何処かしら、壊れている。それは今までで、常々感じている事なんだけどね。以前蜥蜴人を助けに行ったときにも感じた事だけどさ。アオイも相手がたとえ人類種族であろうと、殺すのにためらいは無いんだ。種族ではなく、敵か味方かで判断してるみたいだね。
だけどそれでも、ちょっと壊れていようとなんだろうと、潰れてしまわない方がずっと大事だ。わたしは溜息を吐いて、壁の世界地図に目を向けた。
わたしはコンザウ大陸東岸の『聖ゾラ国』沖合に浮かぶ、1つの島を見つめる。その島の名は、バルザンズ島と言う。
「悪魔族のかつて住んでいた、呪われた島……か。祟りを恐れて、悪魔族を滅ぼした『リューム・ナアド神聖国』の武将にして第3王子ゾラ・ハルン・リューム・ナアドすらも領有化できなかった。かわりに本土の一部分を割譲され、『聖ゾラ国』が建国されたわけだが」
「……? ああ、バルザンズ島のことね。その島がどうかしたの? 魔王様」
「うん、しばらく前からちょっと気になっていてね。『魔王』って本来は何なのかなと。どうも大昔は、定期的に出現していたらしいからね。その大半は、悪魔族だったらしいし。例外もあるけれど」
うん、『魔王』って言うものは、最初は『魔物の王様』的に考えてたんだけどね。でも『定期的に出現』していたって事を知って以来、なんか『魔王』って存在に、何かしらの意味があるんじゃないかなーと。そう感じてたんだよね。
でもって、この間ちょっとだけ時間の余裕が出来たときに、先代魔王ゾーラムが勇者召喚魔法陣を盗み出して改造強化した、魔王召喚魔法陣の構成を子細にチェックしてみたんだ。魔法陣そのものは、旧魔王城の建材を使ってストーンゴーレム創った際に、破棄されてるけどね。
でも魔法陣の図柄とかは、わたしの頭脳にきっちりコピーしてある。だからその構成を解析するのは簡単な話だった。そしてうすうす感じていた事が、はっきりとしたんだよね。
……魔王召喚魔法陣には、魔王ゾーラムの死をもって新たな魔王となり得る存在を召喚し、それを強化した上で、ゾーラムの『魔王』としての資格を委譲して新たな『魔王』とする、と言う意味合いの記述がしっかりと魔法文字で描かれていたんだ。
つまり『魔王』ってのは単に魔物の王様じゃなく、特殊な条件下で『魔法的に『魔王』である事が決められる』って代物だったんだよね。元帥魔竜大将やってるオルトラムゥや、一時期魔獣将だった故バウガウドなんかは、魔王として戴冠式やるつもり満々だったみたいだけど……。戴冠式やったからって形だけ魔王になっても、本当の意味で『魔王』にはなれないみたいだ。
逆を言えば、わたしは先代魔王ゾーラムから資格を委譲されているから、本当の意味で『魔王』なわけだが。わたしはアオイに、念話でそう言った事柄を語る。わざわざ念話を使ったのは、今この場に6人の文官たちが居るからだ。秘密にするほどの事でも無いかも知れないが、言いふらす事でもなさそうな気がしたのだ。
そしてわたしは、念話ではなく口に出して言う。
「このバルザンズ島に、もしかしたらその秘密が隠されて無いかと思ってね。東海岸を征したら、ちょっと時間を作って調べさせようかと。ただ、祟りの正体が不明だからね。編制をどうしようかな、と思ってさ。魔法的な面では、当時のゾラ・ハルン・リューム・ナアドたちも注意してただろうし。
NBC汚染とかがあるかも知れないね。それらに対する防護服でも用意して、調査隊を送り込むかな? いや、その調査隊をわたしが率いようかな? もしかしたら魔王じゃなければ見つけられない仕組みとか、あるかも知れない」
「『魔王』っていうのが、何なのか……か。漠然と魔王って思ってただけで、考えもしなかったな。魔王様本人からすれば、気になるよね。魔王様が行くならば、わたしも行く。ちゃんとNBC汚染対応の防護服着込んで行く」
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