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第118話 『ツヴォーラ国』国民
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さて、どうしたもんか。いや、『ツヴォーラ国』の事なんだ。軍隊の抵抗は儚い物だった。出兵してきたやつらを、散々に叩きまくったからね。残存兵力はたいした事ない。それでもって、あっさりと制圧は完了した。ただなあ……。
軍隊は、最後の一兵まで抵抗した。他の国だと、降伏しなくても逃げる事はしたんだ。だけど『ツヴォーラ国』の軍隊は、最後の一兵が倒れるまでとことんまで抵抗した。
兵には民兵も数多く混じってた。徴兵されたと言うよりは、志願者だったらしい。鎧や剣なんかの装備もぜんぜん揃ってない、棒や農具を武器代わりにした様な奴らが、必死の形相で前線に出て来た。結局そんなのは鎧袖一触で吹き飛んだんだけどね。
首都ヴォーラも、市民が協力して必死の籠城で抵抗した。砲兵や航空爆撃で攻め落としても良かったんだけど、ガウルグルクは敵に精神的なショックを与える事を優先し、オルトラムゥに出陣を要請する。
オルトラムゥのプラズマの吐炎で、市門から王城までを綺麗に吹き飛ばされて、抵抗は止んだ。オルトラムゥは口を火傷して、しばらく戦線に出られなくなったけどね。
だけど首都を含め『ツヴォーラ国』全土を制圧はしたんだが、これも他国だったら民は嫌々ながら従ったんだ。だけどこの国だと、こちらが炊き出しとかやってもあんまり人が集まらない。代わりにウチの軍の食糧倉庫とかからはしょっちゅう盗難がある。
「市民の抵抗、ってやつかね」
「他国はそれでも面従腹背で、こっちからの食料支援とかを受け取るから、そのうち少しずつ懐柔できてる。でも『ツヴォーラ国』国民は、支援受け取らないから突破口が無い」
何時もの司令室で、わたしとアオイは考え込む。このままだと、ほんとに『ツヴォーラ国』国民全員、改造人間にして脳改造だぞ。いや、やってもいいんだけど、施設や設備と、時間と、そして改造人間を作る技術者が足りない。
「……いちど現地視察してみる必要あるかもなあ」
「行くの?」
「うん。現地の様子を知っておくべきかも知れないからね」
わたしはそう答えると、椅子から立ち上がった。
そしてここは、旧『ツヴォーラ国』地域の臨時政庁だ。王城をオルトラムゥが吹き飛ばしたので、王城の跡地に応急的に設えたモジュール化建築で小さめのビルを建てたんだよね。
わたしとアオイは、親衛隊の一部を連れてコンザウ大陸南岸のガナンズ基地まで『ゲート』魔法陣でやって来ると、『ロングレンジ・テレポート』の魔法でここの臨時政庁まで転移した。
「さて、とりあえず炊き出しの現場にでも行って見るとしようか。以前のアーカル大陸でのテロがあった故に、武器になる様な物を持っていないかは調べさせてるのであろう?」
「はっ!探査系の魔法で、怪しい物が無いか確認しております」
「ガウルグルクが……。元帥魔獣大将が、今現在炊き出し現場の視察に出ているのであったな」
「はっ!」
狼頭の獣人型魔獣の青年士官が、直立不動で答える。わたしは彼に頷くと、『千里眼』『千里耳』の術法を行使した。目標はガウルグルクの周辺だ。そしてわたしは目を見張った。アオイが怪訝そうな声で問いかけて来る。
「どうしたの? 魔王様」
「これを見てくれ」
わたしは幻影魔法を行使し、炊き出しの現場の映像を映し出した。きちんと音声付きだ。そこでは、1人の少年がガウルグルクに向かい、涙混じりに必死で叫んでいる。
『……食べ物なんかいらない! お父さんを返せ! ぼくのお父さんを、返せよ!』
『……』
ガウルグルクは、人類種族には分かり辛いかも知れないが、その顔に困った表情を浮かべている。周囲の兵員や士官が、少年を制止しようと動こうとするが、ガウルグルクはそれを制止した。
うん、炊き出し現場の周辺には、大勢の市民が集まっている。聞いていたよりも、はるかに大勢の民人が、炊き出しに集まって来ていた。ただし来ただけで、そのほとんどは炊き出しの列には並んでいない。
大勢の民人からは、はらはらとした雰囲気が感じられる。
「ふうん……。小ずるい手を使うじゃないか」
「え?」
「行こう、アオイ。親衛隊員を、わたしの後ろに並ばせてくれ」
「あ、うん。了解」
わたしは『ショートレンジ・テレポート』の魔法を行使し、アオイと親衛隊員の戦闘ドロイドたちを引き連れて、現場へと転移した。
わたしたちが炊き出し現場へと出現すると、その場の面々がウチの軍人、旧『ツヴォーラ国』の民の区別なく、一瞬ぎょっとする。アオイが鈴の音の様な澄んだ声を張り上げた。
「魔王様の御成りである! 控えよ!」
その場のガウルグルク以下、『JOKER剣魔国』軍の軍人たちは、慌てて敬礼を送って来る。わたしは答礼を返した。そしてわたしはガウルグルクに声をかける。
「ご苦労ガウルグルク。……その子供は?」
「は、はっ! この子供は某に、父親を返せと抗議を……」
「お、お前が魔王か! 返せ! お父さんを返せよ! ぼくのお父さんは、お国をまもるために、兵隊さんになって殺されたんだ! 返せ、返せよ! お父さんを返せ!」
「こ、こら……」
ガウルグルクは自分に対してならともかく、流石にわたしに対しての暴言はさせられないと、慌てて子供を止めようとした。だがわたしはそれを制止する。
「よい、ガウルグルク。……子供よ。名を何と言う」
「ぼ、ぼくはザルクだ! お父さ……」
「ザルク、か。父親を返せ、と言ったな? ……断る」
「え……」
「断る、と言ったのだ」
わたしは『コンヴェイ・シンキング』の魔法を行使し、旧『ツヴォーラ国』全域にこの場で起こっている事をイメージで伝達する。随分と魔法には慣れたからね。このぐらいの応用は朝飯前だ。
同時にわたしは、ザルク少年に対して『過去知』の術法を行使する。……ふうん。やっぱりそうか。
ザルク少年は、わたしが言った言葉に目を白黒させる。だがそのうち腑に落ちたのか、顔を真っ赤にして怒った。
「な……!」
「ならば!!」
「ひ!?」
だがわたしの一喝で、ザルク少年は息を飲む。わたしは続けた。
「ならばお前たちは、我らがお前たちに奪われた物を、返せるとでも言うのか!!我が部下には、お前たちに全てを奪われた者すら、おるのだぞ! 過去を奪われ! 故郷との繋がりを断たれ! 家族や友と二度と会えなくなり!
お前たちはその者に、全てを返してやれると言うのか!? それだけではない! 他にも我が部下には、お前たちに命を奪われた者も多い! お前たちは、それを棚に上げて自分たちばかり被害者面か!?」
「な、そ、え……。ぼ、ぼくはそんな事やってな……」
「お前はやっていない!? だが『お前』はやっていなくても、『お前たち』はやったのだ! 返せ! 『お前たち』が奪った物を、奪った者を、奪った全てを返せ!」
子供相手に、大人げないとは思うけどね。でも必要な事だ。わたしの『コンヴェイ・シンキング』で、このやり取りは、旧『ツヴォーラ国』全域に流れている。わたしの怒りと憤りが、まんざら演技でも無いわたしの激怒が、このあたり一帯に伝わっているのだ。
「……できるわけが無い。『お前たち』が奪った物が返って来るなど、我々も思っていない。だが、それ故に! 我々は奪われた物を! 10倍、100倍、1,000倍にして奪い返す!!」
「あ、あ……。ああっ!」
そしてわたしは、『コンヴェイ・シンキング』でわたしの憤りが直接に伝わり、萎縮している民衆を一瞥した。わたしは言葉を発する。
「出て来るが良い! ザルクの母、リンジー!! 街の顔役ソムル!! 『神教』神官カルバン!!」
「ひ、ひあああっ!?」
「わあああ!?」
「お、お母さん!?」
群衆の中から、男2人、女1人が宙を飛んでわたしの前までやって来る。『念動』の術法で、わたしが無理矢理引っ張り出したのだ。わたしは『過去知』の術法で得られた情景のイメージを、『コンヴェイ・シンキング』で旧『ツヴォーラ国』一帯に流してやる。
こいつらは、暴動を誘発しようとしていたのだ。母親はザルク少年に対し、魔王とその軍隊が父親を殺したのだと何度も憎悪を煽り、時折炊き出し現場を視察に来るガウルグルクに突っかからせようとした。その考えを母親リンジーに吹き込んだのが、街の顔役ソムルだ。
ガウルグルクが怒ってザルク少年を殺せば、群衆に紛れている顔役ソムルの手の者が民衆を扇動し、暴動を起こそうとしていたのだ。暴動で魔王軍……『JOKER剣魔国』軍にダメージを与えられれば良し。鎮圧されたとしても、無辜の民人を虐殺したと喧伝してコンザウ大陸諸国家の戦意を煽る予定であったのだ。
そして街の顔役ソムルを操っていたのが、『神教』神官カルバンだ。彼は本山である『リューム・ナアド神聖国』からの命を受け、『JOKER剣魔国』軍の宣撫政策を台無しにしつつ各国の戦意を向上させるために、民衆の暴動を起こして我々にそれを虐殺させようとしていたのだ。
ソムルとリンジーは、事が上手く運べば神官カルバンの手配りで、『リューム・ナアド神聖国』へと脱出させられる予定であった。わたしの『過去知』の術法は、ザルク少年の家で少年が眠っている間に、こいつらがそれを相談しているのをしっかりと捉えていたのだ。
無論、何時もは人が集まらない炊き出し現場に、今日は妙に大勢人が来たのもこいつらの手配による物だ。人がいなければ、暴動は起きないからな。
「お前たち3人は、赦し難い。ことに己の子供を餌に使い、暴動を起こさせるための犠牲にしようとしたリンジー……。お前はそれでも……それでも母か!? 子供を護らぬ親など、生きている意味は無い!!」
「ひっ!!」
「アオイ! ガウルグルク! こやつら3人を引っ立てろ! 厳しく詮議した上で、処刑してくれるわ!」
「「はっ!!」」
魔獣軍団員の士官や兵員、親衛隊員が3人を捕まえて、この場から連れ去って行く。かなり手荒になったのは、仕方ないだろう。
「ああ、いや! 助けて! なんでも、なんでもします!」
「い、いやだ! 死ぬのはいやだ!」
「か、改宗いたします! 『真教』に改宗いたします! お助けを!」
いや、最後の奴。あんなのアーロン・アボット法皇も要らんだろ。いつ『リューム・ナアド神聖国』と通じるかわからんし。
そしてわたしは『コンヴェイ・シンキング』と『グレート・スピーチ』の魔法を併用し、旧『ツヴォーラ国』全域に向けて言葉を届ける。できるだけ沈痛な声音で。
「……旧『ツヴォーラ国』国民に告げる。我は魔王ブレイド・JOKERである。我は此度の事でよく理解した。汝ら旧『ツヴォーラ国』の国民たちと、我々『JOKER剣魔国』とは、どうしても上手くやれぬ様だ。
我は魔王の名において、汝ら旧『ツヴォーラ国』国民を解き放ちにする事を決定した。我々と上手くやれぬ者、『JOKER剣魔国』の国民になるのがどうしても嫌な者は、『聖サパン国』でも、その先にある『リューム・ナアド神聖国』でも、どこでも良い。立ち去るが良い。財産も、持てる物は持って行け。取り上げたりはせぬ」
そしてわたしは一拍置いた。周辺に集まっていた民衆は、唖然としている。
「お前たちが行った先で、どう暮らそうと我は関与せぬ。好きに生きるが良い。なれど、そこの軍に志願して兵になるならば、覚悟しておけ。我々は、民衆は出来る限り殺さぬが、軍人は……兵を殺すのは、躊躇しない。
そして我ら『JOKER剣魔国』は、何時の日か必ずコンザウ大陸全土を平定する。そのときになって、どうしても我々と上手くやれぬのであらば……」
わたしは可能な限りの強烈な遺志を込めて、言った。『コンヴェイ・シンキング』の魔法を使っているから、この言葉は旧『ツヴォーラ国』に居る全ての者の精神に、強く響き渡ったはずだ。
「……覚悟を、決めろ!!」
ばたばたと、集まっていた民衆が倒れる。わたしの前に居たザルク少年も同じく、卒倒した。ガウルグルクが、引き攣った声で話しかけて来る。
「ま、魔王様……。今のは少々きつかったですな」
「わたしもそう思う。話しかけてた相手が自分じゃなくて旧『ツヴォーラ国』国民だってのがわかるから、まだマシだったけど」
「ああ、ごめんよ。そうだね、『コンヴェイ・シンキング』だから無差別に我が軍の面々にまで思念が響き渡ったのか」
見ると、炊き出し要員の犬妖たちが腰を抜かしている。まあ、自分たちに向けて言われたわけじゃないって理解してたから、なんとか耐えられたみたいだけどさ。
「やれやれ。じゃあ、わたしとアオイ、親衛隊員はガナンズ基地を経由してバルゾラ大陸に帰るよ。ガウルグルクは旧『ツヴォーラ国』国民の退去計画を立てて、実行に移してくれ」
「はっ! お任せあれ!」
わたしとアオイと親衛隊員は、ガウルグルク達と敬礼を交わし、『ロングレンジ・テレポート』の魔法でその場を立ち去った。
軍隊は、最後の一兵まで抵抗した。他の国だと、降伏しなくても逃げる事はしたんだ。だけど『ツヴォーラ国』の軍隊は、最後の一兵が倒れるまでとことんまで抵抗した。
兵には民兵も数多く混じってた。徴兵されたと言うよりは、志願者だったらしい。鎧や剣なんかの装備もぜんぜん揃ってない、棒や農具を武器代わりにした様な奴らが、必死の形相で前線に出て来た。結局そんなのは鎧袖一触で吹き飛んだんだけどね。
首都ヴォーラも、市民が協力して必死の籠城で抵抗した。砲兵や航空爆撃で攻め落としても良かったんだけど、ガウルグルクは敵に精神的なショックを与える事を優先し、オルトラムゥに出陣を要請する。
オルトラムゥのプラズマの吐炎で、市門から王城までを綺麗に吹き飛ばされて、抵抗は止んだ。オルトラムゥは口を火傷して、しばらく戦線に出られなくなったけどね。
だけど首都を含め『ツヴォーラ国』全土を制圧はしたんだが、これも他国だったら民は嫌々ながら従ったんだ。だけどこの国だと、こちらが炊き出しとかやってもあんまり人が集まらない。代わりにウチの軍の食糧倉庫とかからはしょっちゅう盗難がある。
「市民の抵抗、ってやつかね」
「他国はそれでも面従腹背で、こっちからの食料支援とかを受け取るから、そのうち少しずつ懐柔できてる。でも『ツヴォーラ国』国民は、支援受け取らないから突破口が無い」
何時もの司令室で、わたしとアオイは考え込む。このままだと、ほんとに『ツヴォーラ国』国民全員、改造人間にして脳改造だぞ。いや、やってもいいんだけど、施設や設備と、時間と、そして改造人間を作る技術者が足りない。
「……いちど現地視察してみる必要あるかもなあ」
「行くの?」
「うん。現地の様子を知っておくべきかも知れないからね」
わたしはそう答えると、椅子から立ち上がった。
そしてここは、旧『ツヴォーラ国』地域の臨時政庁だ。王城をオルトラムゥが吹き飛ばしたので、王城の跡地に応急的に設えたモジュール化建築で小さめのビルを建てたんだよね。
わたしとアオイは、親衛隊の一部を連れてコンザウ大陸南岸のガナンズ基地まで『ゲート』魔法陣でやって来ると、『ロングレンジ・テレポート』の魔法でここの臨時政庁まで転移した。
「さて、とりあえず炊き出しの現場にでも行って見るとしようか。以前のアーカル大陸でのテロがあった故に、武器になる様な物を持っていないかは調べさせてるのであろう?」
「はっ!探査系の魔法で、怪しい物が無いか確認しております」
「ガウルグルクが……。元帥魔獣大将が、今現在炊き出し現場の視察に出ているのであったな」
「はっ!」
狼頭の獣人型魔獣の青年士官が、直立不動で答える。わたしは彼に頷くと、『千里眼』『千里耳』の術法を行使した。目標はガウルグルクの周辺だ。そしてわたしは目を見張った。アオイが怪訝そうな声で問いかけて来る。
「どうしたの? 魔王様」
「これを見てくれ」
わたしは幻影魔法を行使し、炊き出しの現場の映像を映し出した。きちんと音声付きだ。そこでは、1人の少年がガウルグルクに向かい、涙混じりに必死で叫んでいる。
『……食べ物なんかいらない! お父さんを返せ! ぼくのお父さんを、返せよ!』
『……』
ガウルグルクは、人類種族には分かり辛いかも知れないが、その顔に困った表情を浮かべている。周囲の兵員や士官が、少年を制止しようと動こうとするが、ガウルグルクはそれを制止した。
うん、炊き出し現場の周辺には、大勢の市民が集まっている。聞いていたよりも、はるかに大勢の民人が、炊き出しに集まって来ていた。ただし来ただけで、そのほとんどは炊き出しの列には並んでいない。
大勢の民人からは、はらはらとした雰囲気が感じられる。
「ふうん……。小ずるい手を使うじゃないか」
「え?」
「行こう、アオイ。親衛隊員を、わたしの後ろに並ばせてくれ」
「あ、うん。了解」
わたしは『ショートレンジ・テレポート』の魔法を行使し、アオイと親衛隊員の戦闘ドロイドたちを引き連れて、現場へと転移した。
わたしたちが炊き出し現場へと出現すると、その場の面々がウチの軍人、旧『ツヴォーラ国』の民の区別なく、一瞬ぎょっとする。アオイが鈴の音の様な澄んだ声を張り上げた。
「魔王様の御成りである! 控えよ!」
その場のガウルグルク以下、『JOKER剣魔国』軍の軍人たちは、慌てて敬礼を送って来る。わたしは答礼を返した。そしてわたしはガウルグルクに声をかける。
「ご苦労ガウルグルク。……その子供は?」
「は、はっ! この子供は某に、父親を返せと抗議を……」
「お、お前が魔王か! 返せ! お父さんを返せよ! ぼくのお父さんは、お国をまもるために、兵隊さんになって殺されたんだ! 返せ、返せよ! お父さんを返せ!」
「こ、こら……」
ガウルグルクは自分に対してならともかく、流石にわたしに対しての暴言はさせられないと、慌てて子供を止めようとした。だがわたしはそれを制止する。
「よい、ガウルグルク。……子供よ。名を何と言う」
「ぼ、ぼくはザルクだ! お父さ……」
「ザルク、か。父親を返せ、と言ったな? ……断る」
「え……」
「断る、と言ったのだ」
わたしは『コンヴェイ・シンキング』の魔法を行使し、旧『ツヴォーラ国』全域にこの場で起こっている事をイメージで伝達する。随分と魔法には慣れたからね。このぐらいの応用は朝飯前だ。
同時にわたしは、ザルク少年に対して『過去知』の術法を行使する。……ふうん。やっぱりそうか。
ザルク少年は、わたしが言った言葉に目を白黒させる。だがそのうち腑に落ちたのか、顔を真っ赤にして怒った。
「な……!」
「ならば!!」
「ひ!?」
だがわたしの一喝で、ザルク少年は息を飲む。わたしは続けた。
「ならばお前たちは、我らがお前たちに奪われた物を、返せるとでも言うのか!!我が部下には、お前たちに全てを奪われた者すら、おるのだぞ! 過去を奪われ! 故郷との繋がりを断たれ! 家族や友と二度と会えなくなり!
お前たちはその者に、全てを返してやれると言うのか!? それだけではない! 他にも我が部下には、お前たちに命を奪われた者も多い! お前たちは、それを棚に上げて自分たちばかり被害者面か!?」
「な、そ、え……。ぼ、ぼくはそんな事やってな……」
「お前はやっていない!? だが『お前』はやっていなくても、『お前たち』はやったのだ! 返せ! 『お前たち』が奪った物を、奪った者を、奪った全てを返せ!」
子供相手に、大人げないとは思うけどね。でも必要な事だ。わたしの『コンヴェイ・シンキング』で、このやり取りは、旧『ツヴォーラ国』全域に流れている。わたしの怒りと憤りが、まんざら演技でも無いわたしの激怒が、このあたり一帯に伝わっているのだ。
「……できるわけが無い。『お前たち』が奪った物が返って来るなど、我々も思っていない。だが、それ故に! 我々は奪われた物を! 10倍、100倍、1,000倍にして奪い返す!!」
「あ、あ……。ああっ!」
そしてわたしは、『コンヴェイ・シンキング』でわたしの憤りが直接に伝わり、萎縮している民衆を一瞥した。わたしは言葉を発する。
「出て来るが良い! ザルクの母、リンジー!! 街の顔役ソムル!! 『神教』神官カルバン!!」
「ひ、ひあああっ!?」
「わあああ!?」
「お、お母さん!?」
群衆の中から、男2人、女1人が宙を飛んでわたしの前までやって来る。『念動』の術法で、わたしが無理矢理引っ張り出したのだ。わたしは『過去知』の術法で得られた情景のイメージを、『コンヴェイ・シンキング』で旧『ツヴォーラ国』一帯に流してやる。
こいつらは、暴動を誘発しようとしていたのだ。母親はザルク少年に対し、魔王とその軍隊が父親を殺したのだと何度も憎悪を煽り、時折炊き出し現場を視察に来るガウルグルクに突っかからせようとした。その考えを母親リンジーに吹き込んだのが、街の顔役ソムルだ。
ガウルグルクが怒ってザルク少年を殺せば、群衆に紛れている顔役ソムルの手の者が民衆を扇動し、暴動を起こそうとしていたのだ。暴動で魔王軍……『JOKER剣魔国』軍にダメージを与えられれば良し。鎮圧されたとしても、無辜の民人を虐殺したと喧伝してコンザウ大陸諸国家の戦意を煽る予定であったのだ。
そして街の顔役ソムルを操っていたのが、『神教』神官カルバンだ。彼は本山である『リューム・ナアド神聖国』からの命を受け、『JOKER剣魔国』軍の宣撫政策を台無しにしつつ各国の戦意を向上させるために、民衆の暴動を起こして我々にそれを虐殺させようとしていたのだ。
ソムルとリンジーは、事が上手く運べば神官カルバンの手配りで、『リューム・ナアド神聖国』へと脱出させられる予定であった。わたしの『過去知』の術法は、ザルク少年の家で少年が眠っている間に、こいつらがそれを相談しているのをしっかりと捉えていたのだ。
無論、何時もは人が集まらない炊き出し現場に、今日は妙に大勢人が来たのもこいつらの手配による物だ。人がいなければ、暴動は起きないからな。
「お前たち3人は、赦し難い。ことに己の子供を餌に使い、暴動を起こさせるための犠牲にしようとしたリンジー……。お前はそれでも……それでも母か!? 子供を護らぬ親など、生きている意味は無い!!」
「ひっ!!」
「アオイ! ガウルグルク! こやつら3人を引っ立てろ! 厳しく詮議した上で、処刑してくれるわ!」
「「はっ!!」」
魔獣軍団員の士官や兵員、親衛隊員が3人を捕まえて、この場から連れ去って行く。かなり手荒になったのは、仕方ないだろう。
「ああ、いや! 助けて! なんでも、なんでもします!」
「い、いやだ! 死ぬのはいやだ!」
「か、改宗いたします! 『真教』に改宗いたします! お助けを!」
いや、最後の奴。あんなのアーロン・アボット法皇も要らんだろ。いつ『リューム・ナアド神聖国』と通じるかわからんし。
そしてわたしは『コンヴェイ・シンキング』と『グレート・スピーチ』の魔法を併用し、旧『ツヴォーラ国』全域に向けて言葉を届ける。できるだけ沈痛な声音で。
「……旧『ツヴォーラ国』国民に告げる。我は魔王ブレイド・JOKERである。我は此度の事でよく理解した。汝ら旧『ツヴォーラ国』の国民たちと、我々『JOKER剣魔国』とは、どうしても上手くやれぬ様だ。
我は魔王の名において、汝ら旧『ツヴォーラ国』国民を解き放ちにする事を決定した。我々と上手くやれぬ者、『JOKER剣魔国』の国民になるのがどうしても嫌な者は、『聖サパン国』でも、その先にある『リューム・ナアド神聖国』でも、どこでも良い。立ち去るが良い。財産も、持てる物は持って行け。取り上げたりはせぬ」
そしてわたしは一拍置いた。周辺に集まっていた民衆は、唖然としている。
「お前たちが行った先で、どう暮らそうと我は関与せぬ。好きに生きるが良い。なれど、そこの軍に志願して兵になるならば、覚悟しておけ。我々は、民衆は出来る限り殺さぬが、軍人は……兵を殺すのは、躊躇しない。
そして我ら『JOKER剣魔国』は、何時の日か必ずコンザウ大陸全土を平定する。そのときになって、どうしても我々と上手くやれぬのであらば……」
わたしは可能な限りの強烈な遺志を込めて、言った。『コンヴェイ・シンキング』の魔法を使っているから、この言葉は旧『ツヴォーラ国』に居る全ての者の精神に、強く響き渡ったはずだ。
「……覚悟を、決めろ!!」
ばたばたと、集まっていた民衆が倒れる。わたしの前に居たザルク少年も同じく、卒倒した。ガウルグルクが、引き攣った声で話しかけて来る。
「ま、魔王様……。今のは少々きつかったですな」
「わたしもそう思う。話しかけてた相手が自分じゃなくて旧『ツヴォーラ国』国民だってのがわかるから、まだマシだったけど」
「ああ、ごめんよ。そうだね、『コンヴェイ・シンキング』だから無差別に我が軍の面々にまで思念が響き渡ったのか」
見ると、炊き出し要員の犬妖たちが腰を抜かしている。まあ、自分たちに向けて言われたわけじゃないって理解してたから、なんとか耐えられたみたいだけどさ。
「やれやれ。じゃあ、わたしとアオイ、親衛隊員はガナンズ基地を経由してバルゾラ大陸に帰るよ。ガウルグルクは旧『ツヴォーラ国』国民の退去計画を立てて、実行に移してくれ」
「はっ! お任せあれ!」
わたしとアオイと親衛隊員は、ガウルグルク達と敬礼を交わし、『ロングレンジ・テレポート』の魔法でその場を立ち去った。
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「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」
「今迄って…今回が2回目では無いのか?」
「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」
俺はうんざりしながら答えた。
そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。
いずれの世界も救って来た。
そして今度の世界は…?
6月22日
HOTランキングで6位になりました!
6月23日
HOTランキングで4位になりました!
昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°.
6月24日
HOTランキングで2位になりました!
皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
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9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
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僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
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