召喚魔王様がんばる

雑草弁士

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第117話 ザウエル、大忙し

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 ガウルグルク達、コンザウ大陸侵攻軍の本隊が西岸諸国で最大級の国家、『ダバード・ムーグ国』に対する揚陸作戦を行ってから半月弱。今現在、コンザウ大陸侵攻軍本隊は『ダバード・ムーグ国』のほぼ中央に存在する首都、城塞都市ダバードンを包囲して攻略中だ。

 そして後方の我々は、前線に向けて増援や補給物資を送りだすので大忙しだ。新規に完成した人工知能ロボットや、訓練が完了した犬妖コボルド大犬妖ノール豚鬼オーク人食い鬼オーガー等の一般兵部隊。このうち犬妖コボルド以外の3種族は、遺伝子改造と軽度の洗脳済みだ。

 ちょっと意外な事に、器用さと言う面では未だ犬妖コボルドは、遺伝子改造済みの種族よりも高い能力を誇っている。それ故に、単純な兵士としては犬妖コボルドの価値は落ちてはいない。

 そして魔物ばかりではない。志願者ばかりではあったのだが、それでもかなり大勢のアーカル大陸出身の人類種族が、今回送り出す増援には含まれている。彼らも一般兵部隊の部隊員だ。

「このままでは、信用も信頼もされない……。そう危惧したみたい。あとは、魔王様の統治下で少しでも、ほんのわずかでも上に行きたいって出世欲と言うか向上心と言うか、そう言う物がある者たち。あと『真教』の信者になって、『神教』に対して反感を抱いてる者達もいるかな」

「ふむ、ありがとうアオイ。今回送り出す連中は、占領した地域の維持や防衛と、治安維持をやらせるつもりなんだけれど……。最前線で華々しく活躍できないと、不満が溜まるかな」

「大丈夫だと思う。元帥大魔導師殿の報告書が上がって来てる。内陸の国家、『聖サパン国』や『ランタント国』『レンザン王国』なんかが、『リューム・ナアド神聖国』に焚きつけられて出兵する気配がある。
 ただ『聖サパン国』は前回痛い目にあわせたから、出兵規模は大きくないけど。かなり兵力削ったから。だから人類種族の兵員も、侵攻作戦には参加できないかも知れないけれど、防衛戦で充分華々しい活躍の場はある」

 なるほど。ザウエルの報告なら間違いは無いな。ただ最近、支配領域が広がったせいで『JOKER剣魔国』軍を下支えしている魔道軍団の仕事量も増え、必然的にザウエルの仕事も級数的に増えてる。さっきお茶の時間にやって来て、報告書を置いたらアイスクリーム2種をクレープで包んでもぐもぐと食べて、紅茶をがぶがぶと飲んだら急ぎ部署に戻って行った。

 お茶の時間くらい、ゆっくりして行けばいいとも思うんだが、あまりに忙しすぎるみたいだし……。ザウエルの仕事、手伝いできる人材が居ればなあ。ザウエルだって、自分の研究とかに時間使いたいだろうし。

「誰か、ザウエルの補佐ができる人材はいないかなあ」

「話が飛んでる」

「ああ、ごめんよ。ザウエルの報告書の件から思考がそっちに飛んじゃったんだ。さっきも、ゆっくりお茶してる時間が惜しいとばかりに、クレープたいらげて急いで帰っちゃったろ? 万が一、倒れでもしたら不味いなんてもんじゃない」

「なるほど……」

 うーん。ザウエルの件は、どうしたもんかね。誰かザウエルの補佐ができる高位の魔道士でも……。あれ?

「……ザウエルの補佐をするのに、魔法的能力って必要かな?」

「え……。あれ?」

「だろ? ザウエル、ひいては魔道軍団が大忙しなのは、彼らが魔法使いだからじゃない。『JOKER剣魔国』軍で、数少ないインテリだからだ。無論、魔法を使わなきゃならない局面も多いけど、それ以外の知的作業をサポートしてくれる存在が居れば……」

 そうだ、そうだよ。となれば話は早いぞ。何も魔道士とかじゃなくてもいいんだから……。



 そして今、わたしの目の前にはザウエルと、1体の頭部が肥大化した人工知能ロボットが居る。

「魔王様、このロボットは?」

「ザウエルの補佐兼秘書役。今、君仕事抱え込み過ぎてるだろ」

「は? あ、ああいえ、たしかに僕は忙しいですけれど。ですが、ロボット1体が補佐や秘書に就いたところで……」

 目を白黒させるザウエルだが、わたしは声音に笑みを含ませて言った。いや、ほんとは微笑して言おうかと思ったけど、顔が生体装甲板だから笑えないんだよね。

「ふふ、ただのロボットじゃないから。その点は安心してくれていい」

「は、はあ……」

 わたしはそのロボット、アーク00と名付けたが、それに対し命令を下す。

「アーク00、貴様に命令を下す。ザウエルの仕事をサポートし、彼が余裕をもって働ける様にするのだ」

『了解イタシマシタ。ますたーざうえる、ソレデハ仕事場ヘ参リマショウ。時間ハ有限デス』

「ほんとに大丈夫なんですか? こいつ」

 ザウエルは最後まで不安そうだった。



 そして今、ザウエルはわたしとアオイ、そして文官6名と共にお茶の時間を楽しんでいる。今日のお茶請けは、フルーツタルトだ。

「ふう、美味しいですねえ……」

「ふふふ、随分と余裕が出た様で安心したよ」

「最初は不安でしたが、アーク00は凄いですね。大量の雑務をさっくり捌いて、僕がやっていた仕事が一気に1/3になりました。おかげでこうやってお茶を楽しむ余裕も、自分の魔法研究をする余裕もあると言う物ですよ」

 うん、アーク00造るのには、手間かけたからねえ。

「アーク00の頭脳の原型は、実は元帥魔像大将ゼロなんだよ。あいつに了解を取って、あいつの人格データバックアップをコピーした。そして戦闘系のデータを省いて、代わりに研究職や秘書役としてのデータを詰め込んだ。その上、メモリとかも随分拡張したし。
 ボディそのものは単純な人工知能型ロボットだけどさ。頭脳は戦闘ドロイドやアンドロイドを凌駕するよ」

「ゼロの兄弟機でしたか……。道理で、どこか反応が似てると思いました」

「ま、今回は特別だ。まったく同じ存在にならない様に注意して調整するのが、かなり苦労したんだ。同一存在が居ると、互いにストレスになるからね。生産直後のまっさらな状態ならともかく、成長した人工知能AIはやっぱり同一存在を嫌うんだよな」

 うん、魔像軍団の戦闘ドロイドもアンドロイドも、人工知能ロボットに至るまで、まったく同一の性格をしているやつは存在しない。いや生産直後は、どいつもこいつも四角四面の画一的な、機械機械した反応しか返さないよ? でも人工知能AIが成長して来ると、個性が出て来るんだよね。

 今回のアーク00は、生産直後の機械的な奴じゃザウエルの仕事を捌くのを手伝って、ザウエルの負担を減らす事は無理だ。なので、戦闘ドロイドとして最古参で、最も経験を積んだゼロのバックアップを原型に、調整を施したんだ。

 ……えらく大変だった。

 ま、お陰でザウエルの負担も減ったみたいだし。やった甲斐はあったと言う物だ。おや?文官の1人、クリフトンが何か言いたげだな?

「どうしたね? クリフトン」

「は、いえ……。魔王様直属の文官ですが、そろそろ数を増やすべきでは、と」

「そうか……。済まないが、使えそうな人材が居たら推挙してはくれないかね?」

「あ、いえ!」

 クリフトンは慌てる。どうしたんだろう?

「下手に新たな人材を入れるよりは、人工知能ロボットの方がよろしいのでは?」

「ああ、いや駄目だね、残念ながら。ちょっとわたしの負担が大きい。今回はザウエルと魔道軍団の負担減らすために、骨を折ったけどさ。あのレベルの人工知能を育成したり、最初から創り上げたりは大変なんだよ」

「そ、そうでしたか……」

 肩を落とすクリフトン。ここでアオイが言葉を発した。

「魔王様、でも初期の人格がまっさらな状態でも、事務処理専門の人工知能ロボットを就けてやれば、多少は楽にならないかな。文官たちも、仕事量増えてるし」

「たしかに。よし、初期状態でかまわなければ、各自にサポートの事務処理ロボットを1体ずつ就けようか。育てるのはちょっと大変だけど、育てば仕事は楽になるよ。
 勿論新人の文官も入れる事にしよう。新人にも、事務処理ロボットを就けるよ。君らの伝手で、新人の文官を1人以上推挙してくれ」

「はっ! 了解いたしました!」

 クリフトン以下、文官たちは一斉に敬礼を送って来る。わたしは答礼を返した。……文官達が、タルトを食べるのに使っていたフォークをくわえてるのは気にしないでおこう。



 そして3日後。ガウルグルクから『ダバード・ムーグ国』首都、城塞都市ダバードンを陥落させ、『ダバード・ムーグ国』全域を占領下に置いたとの報告が届いた。

 そしていよいよ、『ツヴォーラ国』に対して攻撃開始だ。相手の戦力的にはこれまで散々消耗させたから、鎧袖一触でなんとかなるけど……。その後が面倒なんだよなあ……。
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