異世界ゴーレム浪漫譚

半田圭

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第3章<怪物と少女>編

93話「王都、再燃」

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    拘置所に捉えられたリュウカを助けに来た影の一味の1人、シャナは新たなゴーレムと共に俺達に攻撃を仕掛けてきた。
    俺はリュウカに罪を償わせたい。
    それを拒むのが影の一味だと言うのなら、俺は彼女に迫るその手を払い除けてみせる……!

「エレメントナックル・フレイム!」

    俺がそう叫ぶと、俺の右手は以前鍛冶師のグルさんから買ったエレメントナックルに変化した。
    中に搭載されてる属性石は火炎石だ。
    これによって火属性の魔術が使えるようになり、掌から火属性のエネルギー刃「バーニングソード」を出現させそれを構えて、シャナの操るゴーレムを見据える。

「リョータロー君1人で大丈夫?」

「……やれるだけの事はやってみる。マリーネは瓦礫に押しつぶされた人達の治療を、リコは拘置所から逃げた悪い人達を捕まえて!」

「……ええ!」

「いつの間にか立派になったわね~。」

    俺の立てた作戦をマリーネもリコも受け入れてくれて、2人は即座にその場から解散し、自分のやる事に取り掛かろうとした。
    俺はシャナとゴーレムの相手を__

ガキィンッ!!

「!?」

    その時、俺は身体が咄嗟に動き突然飛んできた黒い刃をバーニングソードで弾き返す。
    だがその一瞬の隙を突いて、知らぬ間に背後に回っていたゴーレムから魔弾が飛んできた。

「ッ!!」

    その攻撃は地面を強く蹴りジャンプする事で回避する。
    そして地面に着地しようとしたその時……!

「アハッ!」

「なんって……隙のない動き!」

    俺が着地しようとした所にシャナが距離を詰めてきて、影のダガーを構えていた……!
    隙を与える気のない連撃……油断したら殺されるかもしれない……だったらこっちも本気を出さなければ……!

「ウイングユニット!」

    シャナの凶刃が俺に迫る間近で俺はウイングユニットを呼び出し、それによる牽制射撃でなんとかシャナを着地点から退避させた。

「キャハッ!あぶな~い!」

    シャナは普段から豪華なドレスを着飾っているけど……なんであんな動きにくそうなドレスを着てるのに速く動けるんだ……!
    かなり恐ろしい脅威だけど……!

キィンッ!

    俺の考え事を遮るように放たれたゴーレムの魔弾を俺はバーニングソードで弾き、即座に体勢を立て直してシャナとゴーレム両方を警戒する。

    俺1人とウイングユニット4基、対してシャナ1人にゴーレム一体……ウイングユニットは俺の意思で、敵ゴーレムはシャナの意思で操らなければならない(はず)……機動鉄人ガンバリオに出てくる遠隔攻撃端末、アレは普通の人間には動かせないって設定だけど……俺は普通の人間じゃないからウイングユニットを動かせる……。

    悲しい事に俺ってマリーネや林檎よりも、あちら側の人間に近い存在なのよね……ってのは生まれた時から分かってる事だし今に始まった事じゃない。
    大事なのは意志だ。
    俺は人を守り、悪を討つという意志の元に影の一味と戦っている!

    もうやられっぱなしじゃいられないぞ影の一味よ……俺達はこれからお前達に逆襲してやる……!

「作戦を立てる暇を与えてあげたけど、何か良い策は思いついた?」

「……あぁ!」

    俺はシャナの質問に元気よくそう答えると、標的をシャナに絞り、地面を強く蹴って彼女に急接近しようとする。

「カワイイわね!後ろのゴーレムは気にしなくていいのかしら!」

    シャナの言葉を聞くも、俺は彼女との距離を詰める事に専念する。
    後ろからゴーレムが魔弾を発射する音が聞こえた……今だ!

ガキィンッ!!

「!?」

「よし!」

    シャナは驚いたような表情を浮かべてこちらを見つめる。
    俺は後ろを見ずともウイングユニットを操作し、それによって魔弾から自分を守ってみせた。
    なぜこんな事ができたのか、それは俺がここ数日の内に2回見た「夢」が起因している。

    俺はシャナが与えてくれた隙で、ある事を試みた。
    それは、今まで2度夢に出てきた「鬼人の本能」と言う人(?)とのコンタクトを試みたのだ。



「鬼人の本能さん!俺の中に貴方がいるって事はつまり、こういう事はできませんかね?」

「ナンダ……?」

「右手を俺の意思で動かして漢字の書き取りをしながら、左手は鬼人の本能さんが動かしてパソコンでタイピングをする、とか……」

「……」

「……む、無理……ですかね~?」

「……デキル」

「アザマス!!」



   名付けて、人力……いや、鬼力(おにりき)オートガード!
   これで俺は防御を鬼人の本能さんに任せてシャナに突っ込み、彼女を捕まえる!

「何そのカワイくない技ぁ!!」

    シャナは今まで見た事の無い焦った表情を浮かべながら自身の背後から無数の影の刃を伸ばし、俺を仕留めようとするが……。

「必勝機動!エモーショナル・ハイマニューバ!!」

    今の俺は「防御する」と言う思考を奇人の本能さんに任せ、俺自身はただひたすら「影の刃を回避する」と言う思考に専念できるようになっている。 
    鋼鉄の身体だけど、羽毛のように軽やかに動ける!
    相手は焦っているのか、刃の動きに精密性が無い……これなら避けるのは簡単だ!

    俺は冴え渡った思考を巡らせ、思考から連なる反射によって影の刃を全て回避し、ついにシャナとの距離を限界まで詰め切った!

「ウソ……!」

「捕まえた__」

    ついにシャナに手が届く所まで来た!捕まえる!今ここで!コイツを逃す訳にはいかない!
    俺は必死にシャナに手を伸ばしたが……

フッ

「え?」

    突然シャナの目の前に現れたリュウカ。
    これは、一体___

「グォアァァァァァァァ!!」

    その直後、空から巨大な龍が現れた。
    以前王国ミズノエで見た事のある龍……シャドーロードだ……!

「リュウカちゃんの魔術、やっぱりカワイイわ!」

「シャナ……!」

「何でだ……リュウカの術……?リュウカが発動したのか……?」

「いいえ!私が強制的にリュウカちゃんの魔術を発動させたのよ!」

    シャナは再びいつもの狂気的な笑みを取り戻し、俺にそう言って自分をリュウカごと影で包み込もうとする。

「じゃ、またねー!」

「リョータローさ__」

「おい!!逃げるなッ……!!」

    目的を果たし終えた事を確信したのか、シャナは余裕の態度で俺に手を振り、影の転移でその場から消え去る。
    俺はシャナに、シャドーロードと敵ゴーレムの相手を押し付けられてしまったらしい……。

「……倒す!!」

    リュウカが敵に奪還されてしまった……だからと言って俺に手を止める暇は与えられないらしい……俺は敵ゴーレムとシャドーロードを見据え、再びバーニングソードを構え、ウイングユニットを自分の周りに集結させる。

    この街は再び影の一味の攻撃を許してしまった。
    けど、これ以上の被害は出させない為に、俺はシャドーロード、そして敵ゴーレムを倒さなければならない……!
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