異世界ゴーレム浪漫譚

半田圭

文字の大きさ
119 / 212
第3章<怪物と少女>編

118話「太陽(あす)を賭けた、戦い」

しおりを挟む
    マリーネ達はすっかり大きくなり、皆冒険者となって目覚ましい活躍を立てた。
    ソレイユ、ガオレオ、セリエはティアマトの子として生まれた故に元々持っていた才能というものがあり、あっという間に1級冒険者になった……それに私がいない間に特級冒険者になってたみたいだしな。

    私はもう皆に教える事は無いと、もう私が皆の前からいなくなっても問題ないだろうと確信し、自分が建て、マリーネと共に過ごした家を後にした。



    私は王宮に向かい、自らその首を王家、アストラル家に差し出した。
    最も、現国王ケン・アストラルは私の首なんか欲しくなかったらしいが。

「父上は王の座を退いたとは言え、貴方を死刑にする事は頑なに取り消さなかった……私が上手く彼を説得できなかった落ち度です……申し訳ありません……。」

「……気にするな。」

「ですが、刑の形だけは私の提案を通す事ができました。」

「何……?」

    ケンは懐から1つの錠剤を取り出し、それを私に見せる。
   
「刑は「服毒死」です。ですがこれは……飲んだ人間を死なせるのではなく、仮死状態にする薬です。」

「なるほど……要は便宜上の死刑って事だな。」

「そして近い将来、こちらの薬を飲ませる事で貴方を生き返らせてみせます。」

    今度は仮死状態を解く薬を取り出して、それによって私を生き返らせる事をケンは約束してくれた。

「貴方は化け物などではない……ディアーガ、ミズノエ、アトラ、アダン……各国での貴方の活躍は聞き及んでいます。貴方は英雄なのです。それを死刑にするなどあってはならない……せめて仮死状態にする事で父上の目ぐらいは欺いてみせる……私にできるのはこれだけです。どうかご容赦を……。」

    ケンは形はどうあっても死刑は免れない事を許して欲しいと頭を下げ、私はそれを許した。
    そして私は王宮の関係者達の前で仮死状態になる薬を服薬し、私の死に様を見届けに来た先代国王と、口パクで「貴方の幸福を祈る」と言ったケンの姿を見ながら眠りについた。



    次に目覚めた時、私は異空間にいた。
    頭上と足元、それぞれに2つの大きな青い星が浮かんでいた。
  
「ここは……?」

「ここは異空間……そして私は異世界においてティアマトと呼ばれている者です。」

    私の前に現れた、少女のような外見の人物は自らティアマトと名乗った。
    本名は仁美というらしく、夫である蓮共々ティアマトとなったが、狂死郎の魂が持つ狂気に当てられた事によりそいつは闇に堕ちてしまい、狂死郎による世界の支配を手助けするべくモンスターを生み出したそうだ。

「君も私の望みを断つ者……かな?」
 
「そうだ。今はここから見守る事しかできないが……マリーネ達は必ずお前達の野望を止めてみせる。」

「そうか……面白い。君は最強の冒険者なんだろう?ならゲームバランスを考慮して、君にはしばらくここで大人しくしていてもらおう。」

    闇のティアマトはそう言うと私に呪いをかけ、それを解かなければ蘇生できなくした。
    
「蓮さん……何故そんな事を!」

「これはゲームだ。いずれ現れるであろう勇者が悪と戦うゲーム。だからゲームバランスを調整する事は大事なのさ。」

    蓮はしたり顔でそう語っていたが、今思えばあれは多分蓮の意思ではなかったのかもしれない。
    それから2年の時が経過し、勇者は……良太郎は現れた__



「私達の目的は4つ。この王都をティアマトモンスターから防衛し、影の一味を打倒し、ルスタ村の村人達を救出し、闇のティアマトを倒す事だ。」

    ギルド本部が破壊された事で、冒険者の活動拠点は一時的に避難用地下シェルターを使う事にし、そこに集められた冒険者達、王宮関係者、そして俺は皆でイブさんの立てた作戦の話を聞いていた。

    イブさんを中心とした作戦会議は長く続き、それなら4つの目標を達成できるかもしれないと俺は確信した。

「イブ殿。私から1つ、ここにいる皆に言いたい事がある。」

「どうぞ。」

    そして会議が終わる間際、護衛をつけてここに来ていたケン国王が皆の前に立ち、ここにいる皆に向けてメッセージを送りたい、と前置きをしてこう続ける。

「影の一味による各国の襲撃から今日まで、この一月足らずの間に世界は……我々の生活は大きく変化した。しかし、イブ殿曰く……奴らは1ヶ月などという短い時間よりもずっと昔から人々を苦しめ続けていた。転生者、リョータロー殿がいた世界がその大きな被害を受けていたそうだ。鬼人族、キョーシローはリョータロー殿の世界を混乱に陥れ、そして人間から報復を受け、リョータロー殿同様、この世界に転生した。リョータロー殿の世界でなし得なかった世界の支配をこの世界でこそは成し遂げてみせる、という事なのかもしれない。

事は既に始まっていたのだ。この王都は皆知っての通り1度壊滅した。その場に居合わせたイブ殿曰く、それを引き起こした者こそ影の一味の首謀者、キョーシローであるとの事だ。そしてその背後には……2人のティアマトの内の1人、闇に堕ち、モンスターを生み出し、世界を混沌に陥れた闇のティアマトがいる……と。

影の一味による世界の支配など……鬼人族の為に人間が食糧となるなど、あってはならないのだ!我々は影の一味、そして闇のティアマトに勝たなければならないのだ!」

「うおおおおおお!!」

「我々人類は明日を掴み取る為に戦う!この戦いに終止符を打つべく、イブ殿の提案した作戦にリョータロー殿の世界における太陽神の名を冠したこの作戦……「アマテラス作戦」を、明日決行する!」

「やるぞお前らぁ!!」
 
「この世界を守るんだ!!」

「やってやるぜぇぇぇ!!」

「影の一味なんかに負けない!!」

    ケン国王の言葉を聞いた冒険者達は皆やる気に満ちている……皆この世界を守る為に一丸になっているんだ……!
    そう考えていると、俺の隣にいたマリーネが俺に声をかける。

「リョータロー君!」

「え?」

「絶対、絶対にこの戦いを皆で生き延びて……勝ちましょうね!」

「……うん!絶対勝とう!」

    俺とマリーネは互いにそう誓い、冒険者緊急会議は終了した。
    アマテラス作戦……昨日イブさんと1部の冒険者で考えた作戦だけど……まさか俺の世界の神様の名前がつけられるとはなぁ……よし!俺も頑張らないとな!
  


    
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界もふもふ食堂〜僕と爺ちゃんと魔法使い仔カピバラの味噌スローライフ〜

山いい奈
ファンタジー
味噌蔵の跡継ぎで修行中の相葉壱。 息抜きに動物園に行った時、仔カピバラに噛まれ、気付けば見知らぬ場所にいた。 壱を連れて来た仔カピバラに付いて行くと、着いた先は食堂で、そこには10年前に行方不明になった祖父、茂造がいた。 茂造は言う。「ここはいわゆる異世界なのじゃ」と。 そして、「この食堂を継いで欲しいんじゃ」と。 明かされる村の成り立ち。そして村人たちの公然の秘め事。 しかし壱は徐々にそれに慣れ親しんで行く。 仔カピバラのサユリのチート魔法に助けられながら、味噌などの和食などを作る壱。 そして一癖も二癖もある食堂の従業員やコンシャリド村の人たちが繰り広げる、騒がしくもスローな日々のお話です。

処理中です...