異世界ゴーレム浪漫譚

半田圭

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第4章<光と影の激突>編

122話「彼らの、意地」

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    王国アストレアの王都、レガーを覆うように無数の魔法陣が展開される。
    そこから現れた無数のモンスターを前にした冒険者達は、これから過酷な戦いが始まる事を予感し心を震わせる。

「グォアァァァァ!!」

「キシャアァァァァ!!」

「ギャギャギャ!!」

    冒険者であれば誰でも倒せるようなモンスターから並の冒険者では苦戦を強いられる強力なモンスターまで、様々なモンスターが生み出された。
    シンプルな数と数の戦い、それが王都防衛戦である。

「い、いけるか?俺達に……。」

「特級冒険者のガオレオさんやソレイユさん達ならともかく……。」  

「いや、大丈夫だ!何故なら俺達には……」

    冒険者はそう呟きながら王都の壁の上に設置された「それ」を見上げる。
    巨大ゴーレムの両腕を切り離し、固定砲台に改造した強力な破壊兵器「ゴーラブラスター」だ。

「任せましたよ、グルさん!」
    
「任しとけぃ!はははっ!行くぞモンスター共!」  

    それを撃つ事を任せられたのは、巨大ゴーレムの腕を砲台に改造する事を任せられ、その仕事を一晩でやってのけた達人レベルの鍛冶師、グルである。

「やっちまえグルさん!」

「いけー!」

「モンスターの数は……1000体を超えてます!撃つなら今です!」

「よし!グルさん、頼みます!」

    グルは冒険者達の応援と、そして自分と共に壁の上にいる補佐役の王国騎士の砲撃許可を経てトリガーに指をかける。

「よぉし!ゴーラブラスター……発射ーっ!」

    グルは元気よく掛け声を発するのと同時にトリガーを押し、ゴーラブラスターの掌の砲門から火属性の魔力を帯びた高火力のレーザー砲を放つ。
    
    ゴォォォォォォ!!

「グギャアァァァァ!!」

「ゴァァァァァ!!」 

    その一撃と、グルがいる反対側にも設置された砲台の一撃によって1000体以上のモンスターのうち約300体が撃破され、残りのモンスター達は冒険者達への攻撃を開始する。

    ドドドドドド……!

    土煙をあげながら冒険者達に突撃する約700体のモンスター達。
    だがゴーラブラスターによって数が減ったという事実は冒険者達にとっては大きなアドバンテージとなり、冒険者達はモンスター討伐に意気込みを見せこちらからもモンスターへと突撃していく。

「やるぞお前ら!」

「おう!」

「負けないわよ!」

「リョータロー達だって頑張ってるはずだ!俺達だって……!」

    冒険者達は覚悟を決めモンスターとの戦いに挑む。
    剣士や槍士は武器によってモンスターに直接攻撃を仕掛け、魔術師は魔術で彼らを援護する。

「はぁっ!あの白髪ロン毛ヤローがくたばるまで耐えるんだ!」

「あぁ!アクアバレット!」

    冒険者達は少しずつ、だが確実にモンスターを倒していく。
    弱い冒険者達は弱いモンスターを、強い冒険者達は強いモンスターの相手を買って出て、戦況を有利に進めようとする。

    冒険者達の戦いは王都レガーだけでなく、5王国全ての王都で勃発していた。



「ゴーレムよ!敵を打ち砕け!」

「M-&!」

    王国ミズノエの特級冒険者、ゴーレム使いのゴーラマンは自らの従えるゴーレムによってモンスターを次々になぎ倒していき……



「鳳凰炎焦砲!」

「玄武鉄甲!」

「青龍星弾!」

    王国ディアーガが誇る矛にして盾である三英傑、ホウオウ、ゲンブ、セイリュウ、彼らはそれぞれの得意技である炎の魔術、岩の魔術、水の魔術によってモンスター達を次々に撃破していき……



「はぁっ!!とぅっ!!せりゃっ!!」

    王国アトラ最強の剣士、ブレイは巧みな剣術によって強力なモンスターを相手にしても物怖じする事なく勇敢に戦っている。



    5王国自慢の冒険者達や兵士達は自らの王都を守る為に必死にモンスター達と戦っている。
    影の一味なんかに世界を支配させまいと、その為にモンスターの進行から街を守っているのだ。

    そして、彼らもまた……

(塔を破壊した巨大ゴーレム……腕が無い。別の兵器にでも転用したのか?風使いの風魔術で僕、センジュ、リュウカ、シャナの距離が遠ざけられている……作戦は各個撃破ってやつかな?で、僕の相手は……)

    狂死郎は冷静に状況を判断し、荒野のど真ん中で自分一人で良太郎とマリーネの相手をしなくてはならないのだと悟った。
    良太郎は既にゴーレムに変化しており(右手はウォーリアパワーキャノン、左手はエレメントナックル、両脚はホイールゴローダー改)、マリーネは聖杖ラファエルを構えていて臨戦態勢だ。

「面白い……!」

「お前は俺とマリーネで倒させてもらう!お前の真の目的が何かは知らないけど、それは叶いはしない……叶わせない!」

「そうよ!」

    2人は狂死郎を睨みつけながらそう宣言すると、彼を倒すべく最初の攻撃を仕掛ける。
    リョータローは不安定な足元をホイールゴローダーで滑走しウォーリアパワーキャノンの砲撃で様子を伺う。

   ギュンッ!ギュンッ!

   ガキンッ!ガキンッ!

    狂死郎は影の刃で砲撃を難なく防ぐ。

(やっぱりあの防御は強い!あれを掻い潜って狂死郎に直接、確実に攻撃を当てないと……あの防御を貫通できる攻撃ができるイブさんはシャナの相手をしている……俺達でやるしかないんだ……!)

    良太郎は自分達で狂死郎を倒すんだと改めて覚悟し、ウォーリアパワーキャノンの砲口にエネルギーを集中させる。

「そんな時間与えない__」

   狂死郎はそう言いながら影による攻撃で良太郎の妨害をしようとしたが……

「アイスバレット!」

    それをマリーネが妨害し、その隙にエネルギーを充填できた良太郎は鋭い一撃を放ち狂死郎を攻撃する。

「ふんっ!」

    だが狂死郎はその攻撃をも容易く防いでみせた。

「イブには頼らないのかい?」

「お師匠様はシャナの相手をしているわ!だから……」

「俺達がお前を倒すんだ!」

「やれるとでも?君達は多少強くなったけどそれでも僕には及ばないよ?」

「やってみせる!ヒーローはどんな逆境にも屈しない!」

「そうよ!私達は絶対にお前を倒さなくちゃいけない!人をお前の食糧なんかにさせないわ!」

    良太郎は自らのヒーロー論で狂死郎の言葉を受け付けず、マリーネもこの世界を生きる1人の人間として狂死郎を否定する。
    
「なら……やってみろ!」

    狂死郎は狂気的な笑みを浮かべながら良太郎とマリーネを挑発する。
    良太郎とマリーネは、果たして狂死郎に勝つ事はできるのだろうか……。
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