異世界ゴーレム浪漫譚

半田圭

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第4章<光と影の激突>編

159話「星と、神」

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    見ていた、ただ見ていた、ずっと、ただひたすら、見ているだけだった。

    この地球ほしが生まれた瞬間から、果てしなく広がる氷の塊が太陽の熱で溶け海と化し、溶けた氷塊の中から大地が現れ、大地と海双方で生命が育まれ、大地の生態系と海の生態系が成されていく、果てしなく長いプロセスを、ずっと見続けた。

    古代の生物の大半が隕石とそれによる気候変動によって滅び、生き残った生物が進化の果てに「人類」となった。
    人は「心」と「知性」を持っていた。
    他の生物は持ちえなかった不思議なものだ。
    人は自分達に心と知恵を預けた存在しない存在を夢想し、それに「神」と名付けた。

     僕達はその様を見てこう思ったんだ……

     「僕達が神になってやろう」と。

    僕は自分の力を自覚し、それによって「願いを叶える黒い花」を生み出した。
    それを人の手に渡らせ、人々がどのような事をするのか観察し続けた。

    俺の手によって生み出した黒い花で人々は巨万の富を、不死身の身体を、最強の力を、あらゆるものを手に入れた。
    そして、それによって世界各地で戦争が始まった。

    1度黒い花が咲いたら最後、人々はそれを求めて奪い合いと殺し合いを続けた……願いを叶える最後の一人になるまで。

    私の目に映る人間というのはどうしようもなく哀れで、醜くて、愛おしくて、愛おしくて、愛おしくて、楽しい、楽しい、楽しい……。

    やがて僕は人間というおもちゃでより楽しむ為の計画を考えた。
    人類育成ゲーム……人間をより高次の存在に進化させるゲームだ。
    その為に俺は鬼人族と異世界を生み出したのだ。
    あとは「マスターピース」の誕生を待つのみ……私はその時をずっと待ち続け、そしてついに「彼」が生まれた。
    
    彼はこの世界の「特異点」とも呼べる存在であり、それの誕生は僕によるものではなく人間と鬼人の配合による自然発生するのを待った。
    そっちの方が誕生した時の楽しさが増すからだ。

    人類史で数えると2005年……その時全てが揃った。
    ここから始めるんだ……僕と俺と私と計画を……世界統合計画を……!



    狂死郎ガイ・アステラの元に闇のティアマトガイ・アステラシャナガイ・アステラの2人が歩み寄り、3人のガイ・アステラが揃ってしまった。

    狂死郎ガイ・アステラは良太郎の記憶干渉の力の半分を奪い取り手中に収めている。
    彼らの言う「世界を繋ぐ扉」というものは一体どのようにして生み出すものなのか……鬼人の本能とマリーネは身構えていた。

「ど、どうするのよ!?」

「こうなったら無理やりにでも――」

   鬼人の本能が動こうとしたその時、狂死郎ガイ・アステラが手を彼らに向けて影の鞭を操り、鬼人の本能とマリーネを拘束した。

「きゃっ!?」

「くそっ……!!」

「しばらくじっとしているんだね。さぁやろう……俺、私、世界を繋ぐ扉を開くんだ。俺、魂のストックは充分か?」

「あぁ、魂の数しめて1000個。1000体のモンスターを生み出せる。楽しみだぜ……これが一気に解き放たれるんだから。」

    掌から光の球の集合体を出現させる闇のティアマトガイ・アステラ

「私が秘密裏に作ってたゴーレム集団もいるわ。カワイイ子達だから大事に使いましょうね。」

    シャナガイ・アステラが空を裂くように手をふりかぶると、空に裂け目が現れ、その奥から無数のゴーレムが瞳を覗かせる。
    
    彼らの準備は万全といった様子だ。

「やめなさい!!貴方達……リョータロー君の世界を……!!」

「無理だね!もう僕達は止められないよ!?」

「そうだ。2000年の時間をかけた計画を止める訳ないだろ?」
 
「ごめんねマリーネちゃん?」

「そもそも、人類を進化させてどうしたいのよ!進化の先に何があるって言うのよ!」 
    
    必死の形相でうったえるマリーネ。
    それを聞いた3人は互いを見合った後、こう答える。

「人類を進化させたら……」

「その先は色々思いつくわよね?」

「例えば……また新たな人類を生み出して2つの人類に戦争をさせるとかさ!ハハハハハ!!」

「何よ、それ……!!」  
 
「ガイ・アステラ……!!」  

    子供のような無邪気な笑みを浮かべ楽しそうにする3人に、マリーネと鬼人の本能は苦い表情を浮かべる。

「じゃあちゃちゃっとやっちゃおうか!」

「そうだねぇ!地上の様子は見てたぞ。俺達が1つになれば僕の中の記憶干渉の異能は強化される。そうだろ?」

「ええ。この肉体ともサヨナラね。まぁ未練なんてちっとも無いけど!」
 
    意を決した3人は互いに手を取り、元の姿になろうと……

    ギュンッ!!

    その時、貫通魔術がシャナの頬を掠めそこから出血した。
    一体何事かと思った3人、それとマリーネと鬼人の本能がそちらに振り向くと……

「させねぇよ。ガイ・アステラ……!!」

    3人のガイ・アステラに人差し指を拳銃のように向けるその女性はイブだった。
    イブは先程の怪我をなんとか完全に治癒し、ここまでたどり着いたのだ。

「イブか……無駄だよ!僕の計画はもう止められはしないさ。」

「動いたらお前の身体を穿つ……!」

    イブはガイ・アステラに殺気を向け、指先を目標に向ける。
    先程のシャナとの戦いで使った奥の手、羅刹・穿貫戟を放ち、それによってガイ・アステラを確実に倒すつもりだ。

「お前達の目的は概ね見当がついてる。闇のティアマトの中にいたガイ・アステラよ。お前が異空間でチラつかせていた情報を頼りにな。」

「世界統合計画の内容をイブに話したのか?俺。」

「いやいや、ちょっと暇だったから少しぐらいなら、って匂わせただけだぜ?そんな事もあったなぁ。」

     狂死郎ガイ・アステラにそんな事もあったなぁと思い出しながらそう返す闇のティアマトガイ・アステラ
    
「もう、それで計画に支障をきたしてたらどうしてたのよ!私ちょっとヒヤヒヤしたじゃない!」

「大丈夫大丈夫!どうせアイツらなんかに何もできやしないんだから!」

 「全く……こうして僕が良太郎クンの力を収めた状態で3人揃う事ができたから良かったものを……。」

「まぁそういう事だしさぁ、別にいいだろ?」

「調子いいんだから~。」
 
    イブを無視して3人でそう言い合うガイ・アステラ達。
    それを見かねたイブは牽制として通常の穿貫戟を3人のガイ・アステラに放とうとするが……

「お師匠様!!」

「ッ……!!」
 
    マリーネの呼ぶ声で後ろから自分を襲おうとしていたゴーレム、グレイバスターに気づき、イブは即座にグレイバスターに穿貫戟を放つ。
   
ドゴォッ!!

    グレイバスターは胸に大穴を開けられその場に倒れた。
    イブはさらに追撃が来ることを警戒するが、次に彼女を襲ってきたのは彼女自身の足元からで……

ズズズズ……

「……!!」

「君もマリーネや良太郎クンみたいにちょっとじっとしててね。今いい所なんだから、さ。」

    自身の足元の影が足に纏わりつき拘束されてしまったイブに狂死郎ガイ・アステラは子供のように無邪気な笑みを浮かべる。

「また邪魔されない為に始めちゃいましょう!」

 「そうだな。これ以上邪魔者が来たら面倒だし。」

「あぁ。俺、私、さぁ僕の中に……」

     狂死郎ガイ・アステラが右手を闇のティアマトガイ・アステラ、左手をシャナガイ・アステラに差し出すと、2人は彼の手を強く握りしめる。
     
アァァァァァァァァ……

    すると、不気味な音を立てながら闇のティアマトガイ・アステラシャナガイ・アステラの身体から発せられたエネルギーが狂死郎ガイ・アステラの身体へと吸い込まれていく。

「3人のガイ・アステラが1つに……!」
 
「っ……!」

「クソッ……。」

    鬼人の本能、マリーネ、イブはそれをただ見ている事しかできなかった。
    そして、闇のティアマトとシャナの肉体から全てのエネルギーが、いや、分裂していたガイ・アステラの2つの魂が元の魂と1つになり、魂の抜けた抜け殻となった2つの肉体は人形のようにバタンと地面に倒れる。

「ふぅ……これで僕は完全体となった。俺の中の記憶干渉の力はこれで心置き無く使えるはずだ。これから私は……世界を繋ぐ扉を開く!!フフフ……ハハハハハハハハハハ!!」

    自分の目的が達成する事を確信したガイ・アステラは右手を天高く掲げ、両目を見開き、高らかに笑う。

バッ!

    かと思った次の瞬間、高く掲げた右手を胸に当て、意識を集中させる。

「記憶干渉の異能は……よし、万全だ!問題なく使える!」

「やめろぉーッ!!」

    ガイ・アステラに向けて必死に叫ぶ鬼人の本能だが、その声は彼には届かず……

「2つの世界を繋ぐ扉よ……開けぇぇぇ!!」

    ガイ・アステラはこの世界そのものの記憶に干渉し、自らの求める新たな記憶を刻んだ。
    「2つの世界は扉によって1つになる」という記憶を……。

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