異世界帰りの邪神の息子~ざまあの化身が過ごす、裏でコソコソ悪巧みと異能学園イチャイチャ生活怨怨怨恩怨怨怨呪呪祝呪呪呪~

福郎

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半人半神性

我にあり

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「今日はてめえが飯食う日じゃねえだろ!」

「あう!?」

 男に蹴られ押し入れに詰め込まれた少女、四葉洋子は悲惨な人生を送って来た。幼くして両親が事故死したため、叔父に引き取られた彼女であったが、叔父はまさに人間ではなく鬼だったのだ。洋子を殴る蹴るは勿論、食事だってまともに食べさせたことが無く、辛うじて行ける事が出来た学校での給食が彼女の生命線であった。

「うう……」

 押し入れで涙を流す洋子は、教師や大人にこの事を話す事が出来なかった。日常的に振るわれる暴力が、幼い彼女からその発想や思考を奪い取っていたのだ。

 だから彼女は神様にお願いする事にした。そうすれば誰もこの事を知らないだろうと、ひっそりとひっそりとお願いを。

 自分に乱暴するあの男をやっつけて下さい。

 私を助けて下さい。

「神様神様神様神様。どうかわたしを助けて下さい。神様神様神様神様。神様神様神様神様。神様神様神様神様」

 自分の宝物である大事に握りしめた4つ葉のクローバーに、切れた唇から一滴の血が滴った事など気づかない程必死に願いを込めて。

 ◆

 side■■■

 はあ。同期は皆、星か宙に還り、人がこの星を巣立って早数百年。俺も宙に出て行こうかなあ。せめて話し相手は欲しいなあ。でも宇宙規模になると、いよいよ俺の力がどえらい事になるしなあ。でも同期と同じように、何かに還るというのも性に合わんし。なら久しぶりに故郷へ帰る手段でも探すか。無理かなあ。いや頑張ろう! まあちょっと姿形代わってるけど、八百万の内の1人に数えてくれるっしょ。

 ん? ふぁっ!? 正規召喚!? 何百、いや何千年ぶり!? 間違いないで! 俺の事ちゃんと4回呼んだ! まだワイの事覚えてくれとったんかー! 本当なら分体やけど、スペシャルサービスで直接行くから待っといてな! 行くでー!

 ちょっ!? 狭いぞ!? なんやこの狭い門!? んぎっぎぎぎぎ!? 通っっっっったあ! ってまた狭い!?

「神……さま?」

 えっ!? こんな小さい子がワイを!? 世も末やの!? 中世頃を思いだすわ! というかここ何処!? せまっ!? くらっ!?

「はい私は神様です。本日は泥沼ゴッドデリバリーをご利用いただき、誠にありがとうございます。お客様は、えーっと。1500年ぶり? の記念すべきお客様になりますので、私が直接参らせてもらった次第になります。ご利用目的をって、私を呼ぶなら一つしかありませんよね。はい」

 狭いのはしゃあないから、三角座りで身を屈めて目の前の少女、もとい超久しぶりのお客様に声を掛ける。ははあん。こんな狭くて暗い所に、切れた唇から血を流している女の子。しかも呼んだのは俺ときた。これは名探偵じゃなくても分かるってもんよ。数回呼ばれたから覚えもありますあります。

 さては遭難したなあ?

「神様……神様あああ! うええええええん!」

 泣くほど心細かったんやなあ……。よしよし。

「うっせえぞクソガキ!」

「ひっ!?」

 泣き出した女の子にしがみ付かれ、よしじゃあこの洞窟から抜けようと考えてたら、突然横の壁がドコンと音を立てて横に動いた。

「このクソあっ!? 何だてめえ!?」

「しがない神様やっております。はい」

 押し入れの中に座っていた俺を見て、ぎょっとした表情の男。
 やっぱりね。知ってた。
 これは虐待ですよ虐待。

「いつの間に入って来たやがった!? 警察呼ぶぞコラ!?」

「ならこっちは児相呼びますよ児相! おおコラ!?」

 国家権力呼ぶとか恥ずかしくねえのかよ!?

「なっ!? ちっ! そいつになに吹き込まれたか知らねえが、ここは俺の家だ!とっとと出て行きやがれ!」

 ちっ。俺がまだ三角座りしてるからって上からすごんできやがって。
 分かりましたよ分かりました。用事が終わったらすぐに出て行きますよって。ところでここなに星?

「神様……」

「大丈夫大丈夫。安心してねー」

 まだ俺の足に引っ付いている少女を安心させながら離して、小さなルーレットを手渡す。

「ちょっとこれ回してみてー」

「はい」

「とっとと出て行けっつってんだろ!」

 うるさいクレーマーは無視して、素直に少女が回したルーレットの玉を目で追う。まあ、この様子じゃ特に意味は無いだろうが、儀式だから一応はね。一応。

 出た目は。

 黒。

「パンパカパーン! 黒です! 黒色ですよ黒色!」

「このいかれ野郎! それが何だってんだ! ぶっ殺されてえのか!」

 それが何かだって? はは。つまりこの少女は正当だってことさ。

 ふ
 く
 しゅ
 う

 の

 遥か昔、まだ人間だった頃の姿を模した体が
 崩れる。
 解れる。
 溶ける。

「は? へ? ひっ!?」

 いやあ、人と会話するのが久々なら、その表情も久々だわ。
 まあ、分かるよその気持ち。

 黒いタールの様な泥。そこから生え出た剣、槍、矢に止まらず、包丁、縄、針、ハンマー、様々な凶器と狂気そして狂喜で形作られた人型。

 "復讐、"へばり付く泥"、"狂期"、"仇討"、"怨には怨を"。異名は数多くあれど、唯一名が無き神の1柱。

 そんな俺を目にしたんだ。分かるとも分かるとも。
 じゃあこの後どうなるかもわかるよね?

 子供の1年は大人の10年って言うらしいぜ? なら5年虐待してたお前は50年だ。

【お前は50年常に飢え、50年常に殴られる痛みを感じる】

「あ!? あ!? あ!? ああああああああああ!?」

 男は魂に刻まれた刻印の激痛に、糞尿を垂れ流しながらのたうち回る。
 まあちゃんと反省したらちょっとだけ短くしてやってもいいよ。ちゃーんと反省したらな。

「か、神様……」

 異様な今の俺に怯えるよりも、この男がまだ怖いのだろう。今だのたうち回っている男を直視できず、俺の後ろに隠れたままの女の子。
 さてどうしたものか。

「お嬢ちゃんこれからどうする? 行く当てある?」

「……」

 無言で首を振る女の子。
 まあ、こういう場合はその方が圧倒的に多い。しゃあない。適当な神殿に預けるか。同期の神もそれ以下も皆いなくなったけど、それでも俺が神官さんに頼んだら何とかなるだろう。多分。宇宙進出しても神様のこと忘れてないよね? ね?

 と言うかここ何処?

「お嬢ちゃん、ここ何処か分かる?」

「? 日本です」

「そうか日本かあ。いやあ懐かしいなあ。神様も故郷は日本なんだ」

 はあ!? 日本!? 地球の!?

「げえっ!? 東京タワー!?」

 慌てて姿を人に戻しながら2階に駆け上がって窓を開け広げると、そこには真っ赤に聳え立つ東京タワーの姿が遥か先にあるじゃないですか。

 マジか! マジか!

「帰って来たああああああああ!」

 もう正直戻ってこれないと思っていた故郷! 日本! 地球! 太陽系!

 不肖この祟り神、異世界より帰って参りましたああああああああああああ!

「あの、神様……?」

 という事はこの子を預ける神殿とかの伝手が無いいいいいいいいいい!

 どうすんだ!? 孤児院!? ちゃんと運営してるんだろうなあ!? 祟るぞコラ!

「……その、お嬢ちゃんはどうしたい?」

「神様と、一緒に、いたいです……」

 そっかあ。そっか。故郷に呼んでくれた恩人なのだ。こんな邪神でもよかったらいてあげよう! なあに人の一生なんてあっという間さ!

 ◆

 ◆

 ◆

 side???

「ってのが母さんとの運命の出会いなのさ」

「おほほ。もう、貴方ったら」

「もう聞き飽きたわ馬鹿親父!」

 なんの変哲もない中年こと馬鹿親父と、スタイルよし、顔よし、頭悪しのお袋が、何百回目の出会い話を俺にしたが、本当にもう聞き飽きた。ハッキリ言って時間の無駄でさえある。
 っつうかお袋その話の時幾つだよ馬鹿親父! 光源氏でももう少し自重するわ! するよな?

「いや、手を出されたのはちゃんと母さんが成人の時だ」

「おほほ」

 今手を出されたって言わなかったか親父? 邪神なのに襲われたの恥ずかしくないの? あと人の心を読むな。

「……」

 黙ったよこの親父。

「だめですよ貴明。お父さんのことそんな風に言ったら」

「洋子」

「あなた」

 邪神め。復活も早いな。心底うぜえ。
 いかん話を戻さねば。

「とにかく! 俺は都会の普通の学園に進むからな!」

 自分の生まれ故郷を悪く言うつもりはないのだが、この万年バカップルは特に親父が都会は嫌いだと言ってド田舎に居を構えたせいで、俺はコンビニすらない超辺鄙な場所で青春を過ごす羽目になったのだ。

 一度思春期に、ひょっとして生まれが特殊な俺を守るためにここに居るのではないかと、照れと申し訳なさを感じたこともあったが、この馬鹿親父は1人生活が長かったせいで、都会だと人酔いするからとふざけたことを抜かしたのだ。流石たった1人で人類が巣立った後の、異世界の星で過ごしただけはあるぼっち神だ。格が違う。

「とにかく俺は都会の! 普通の学園に進む!」

「分かった分かった。パパは応援してるぞ。前も言ったけど願書はもう出した? って出してなかったらアウトか」

「え?」

「え?」

 願書? いや、今日出そうとは思ったけど……。あれ?

 あ! あ!? ああ!? あああああああ!?

「しまったああああああああああ!」

 やっちまったあああああああああ!

「分かる分かる。復讐っていうのはどうしても後手だから、ちょっと行動が遅れちゃうんだよね。流石は息子だ」

 んなこと言ってる場合かああああああああああ! ど、ど、どうしよううううううう!

「パ、パパパ上! なんか手はありませんでしょうか!? ちょろっと裏口的な意味で! ほら裏の人脈いっぱいあるでしょ!?」

「息子が逞しすぎる」

 邪神のくせして拝み屋やってたアンタほどじゃねえよ!

「無一文だったから……」

 世知辛ええ! あと心読むな!

「仕方ないにゃあ。貴明の為に紹介状書いてあげよう。今から行ったらテストにも間に合うかな? 車も出そう」

「ひゃっほい! ありがとうパパ! 愛してるよ!」

「パパもだよマイサン」

「ママもよ」

 荷造りは万全だからな! さあ行こう! すぐ行こう!

 ◆

 ◆

 ◆

 sideおやぢ

「お帰りなさい貴方。貴明は無事に電車に乗れました?」

「大丈夫大丈夫」

 いやあ、息子にあれだけ都会志向があるとは悪いことしたなあ。でも都会に行ったら本当に人酔いするんだよなあ。それに恨み辛みが多すぎて力が溢れるからそっちも面倒だ。

「でも貴明も変わってますね。新しい物、都会好きなら能力者学園に進めばいのに」

「はは。まあ俺の子だからね。思う事もあるんだろう」

 どうも俺が異世界に行く前から異能力、魔法や超能力、陰陽道や退魔の力は存在していたらしく、裏で頑張って異界からの存在や妖魔なんかを始末していたようだ。だが、貴明が生まれる前に、能力者と怪異が共々に増え始めたようで、秘密にすることが出来なくなってしまった。それで色々あってついに表沙汰になってしまい、法整備やなんやかんやを経て異能者を教育する機関を作ろうという事になり出来上がったのが能力者学園だ。

 いやあ、あの時は焦った焦った。急に妖魔とか能力者が増え始めたって裏の業界で噂になった時は、俺なんかやっちゃいました? っつうか心当たりバリバリだったわ。なんつったって神が現世にいるんだもの。必死に調べて俺のせいじゃなくて単なる自然現象って分かった時はホッとしたね。

 おっと思考が逸れた。
 貴明も、まあ自分で言うが邪神の息子なんだ。ただでさえ普段からそんなのと関わってるから、普通の学園に行って普通の生活を送りたいと言うのは尤もな望みだろう。

「ところでよく大学の知人がいましたね」

「ああ。なんでも最近学園長になったらしくて、ちょっと入試の方法が違うからセンターとか関係ないみたい。でもちゃんと大学って言ってたから大丈夫でしょ」

 頑張れ息子よ! パパはお前が普通の青春を送れるように祈っているぞ!


 ◆

 ◆

 ◆

『異能学園試験会場』

 あ、あ、あ、あの糞親父いいいいいいいいいいいいいいいいいいい!



 ◆

 うんちく


 "復讐、"へばり付く泥"、"狂期"、"仇討"、"怨には怨を"

 唯一名が無き神の1柱

 異世界より日本に帰還した邪神にして祟り神。日本で育ちながら本神も全く理解不能な現象により、異世界で最初の神たちと同じ時期に誕生。彼等の国生みを見届けるも全く関与せず、後に様々な権能を持った神々が生まれても最小限の関りしか持たなかった。後発の神々はこの神を出来損ないと蔑んでいたが、生命溢れる世界になるとこの神は一気に強大化し、人類が誕生した後には誰にも手出しできないほどの存在と化していた。

 司るは 復讐 報復

 黒いタールから突き出た様々な凶器が人型を編んでおり、呼び出した者が正当な復讐の権利を保持しているなら、その仇に対してあらゆる呪い、災いをもたらす邪神である。
 しかしながらこの世界において、神学者が散々頭を悩ませたのが、この邪神が善き面を持っている事で、恩には恩を、良心には良心を、善行には善行を持って報いており、呪いの化身でありながら非常に区別しにくかったのだ。

 ーハンムラビ法典でぶん殴ってやる! 縦でな!-

 ー復讐の神よ。どうか怒りを鎮めたまえ。呪いの神よ。どうか。どうか。-
 一週間、一時間に一回、足の小指を箪笥にぶつけた時の痛みを感じるようになった街の領主
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