4 / 172
ダークエルフの姉妹 ジネット。ルー編
お前死んでたのかよ!
しおりを挟む
side ???
「おい!おーい!?起きろ!」
魔法使いの男を揺らすが全く起きない。軟弱な奴め!
仕方ない。こういう時は水だと相場は決まってる。家の中で出すのはダメだ。外へ出よう。
男を引きずりながら玄関に向かう。
「お、おい!」
気のせいか、幾分険の取れた声でこちらに女が声を掛けてくる。あるいは困惑か。
「お構いなくー」
手を振りながら外へ出ると、意外なことに森の傍で、一軒家がポツンとあるだけだった。ダークエルフは割と街中で生活していたはずだが。
(もう夜も更けたな)
ぼんやりと思いながら男を投げ出し、"倉庫"から出した縄で縛り上げ、次は水をそのまま垂れ流す。おっと、薬を忘れるところだった。
「が!はっ!はっ!は!」
目が覚めた魔法使いはたっぷり息を吸いながら慌てて辺りを見渡している。
「何が!? 貴様一体!?」
「まあ、落ち着いてくれ。俺の名前はお節介焼きだ」
以前からちょこちょこ名乗っていたが、この際改名してしまおうか。
「なんだと!?」
自分が足で押さえつけているものだから、魔法使いはもぞもぞと動くだけになっているがこちらを睨みつけてくる。
「はーい。お口開けてくださいねー」
「何!? ぐむっ!?」
先程取り出した薬を無理やり男の口の中へねじ込む。これを流石に悲痛な顔をしていたお嬢さんに、飲ませるわけにはいかなかった。それに、反応を注意深く見るより、こっちのほうが楽だ。
お嬢さんと言えば、女は玄関の陰に隠れてこっちを伺っているな。
「今から言うことに正直に答えるんだ。さもなきゃとんでもない痛さを感じることになるぞ。お前さん、"杯"の一員でいいかい?」
「だあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」
何か言いそうになった男が辺り一面に響く悲痛な声を出す。
「ほら正直に答えろって。そうすりゃ解除される!」
「ぞう゛だあ゛あ゛!! ああああああああああ……」
正直に答えたから痛みはなくなったはずだが、それどころではないのだろう。
「ここにいる女の子に呪いを掛けたのもお前さん?」
「そ゛う゛だああ。やめてくれえええええ」
可哀そうなくらい顔中から液体を撒き散らしているが、こいつの魔力の濁り具合を感じるに、絶対に碌なことを今までしていないと確信しているため続けて質問する。
「お前さんたちの拠点にリュドヴィックはいるか?」
「それあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!! い゛る゛! い゛る゛う゛う゛う゛う゛ううううう……」
ダメ元で聞いてみたが居るのか。今までを考えると地味な事をしていると思ったが、人がいないってのは辛いねえ。
転移魔具とガラス片の触媒を取り出す。
「さあ、お前さんの拠点を思い浮かべるんだ」
虚ろになってきた男に魔具を見せる。浮かび上がった映像には6人のローブを纏った連中が浮かび上がってきた。リュドヴィックの姿はない様だが、遠目で一回しか見てないからな…。
「これで全員か?」
「そうだああ。やめてくれええええええええ」
よし。運がいい。リュドヴィックが居ないのは気がかりだが、あのダークエルフ達に関することは根っこごと、終わらせることが出来そうだ。
出来れば計画も知りたかったが、この薬は問いにしか反応しない。細かく質問している間に連中が居なくなるのは困る。
では、終わらせよう。
「おい!」
おっと、別れの挨拶位するべきだった。
「お前は…お前は、本当に私達を助けるために…? だが、何故?」
「言ったろ、お節介焼きだって」
今日から自分の名前はお節介焼きだ。もう決めた。
転移魔具の起動を準備する。
「お嬢さん。妹さんを大事にな」
姉に隠れて顔を出している妹の方にも。
「お嬢ちゃん。姉ちゃんと仲良くな」
ひょっとしたら自分よりも年上かもしれんが。
倒れている魔法使いを引っ掴み、転移魔具を起動する。
「お兄ちゃん。ありがとう!!」
「ふふ、じゃあな!」
◆
side ルー
「ふふ、じゃあな!」
あの人が転移で行ってしまった。お礼の言葉はちゃんと届いただろうか…。
「そんな…本当に……なにが…私は、私は、どうすれば…」
お姉ちゃんが呆然と座り込んでしまっている。
あの人と何があって私を助ける事になったのか分からない。でも、あの様子を見るに、本当に見返りなしで私達を助けてくれたんだ。
急に現れて、私を助けてくれて、急に去っていたあの人…。何処に行ったのかは分からない。でも、あのやり取りだと、多分あいつ等をやっつけに行ったんだ。
どうしたら…。どうしたら恩を……そうだ!!
「お姉ちゃん」
「あ、ルー。体は大丈夫なのか…?」
呆然としながらも、自分の体の事を心配してくれる姉に、尊敬の念を強くしながら自分の考えを話す。
「あのねお姉ちゃん! ルー考えたの!」
◆
side ???
「ふふ、じゃあな」
景色が変わる。映像で見たどっかの地下らしき場所に転移出来た。掴んでいた魔法使いを投げる。
「ん?」
ヒュ パンッ
全部で7。
どいつもこいつも魔力が嫌に濁っていた。操られていたとかは無いだろう。
ご近所さんが居たら迷惑だからかなり力を抑えたが、そのせいで少々スプラッタな光景になってしまった。隣が事故物件と急な地震…どっちがよかっただろうか…。
変な気を回しながら部屋の奥を見ると、赤い髑髏が特徴的な杖があった。映像で見た時から気になっていたが、多分リュドヴィックが持っていた杖のはずだ。
杖だけ仰々しく飾られてるとかどういうこっちゃ。てか本人は?
そんな疑問を抱いていると、消し飛んだ魔法使い達の体から魔力が杖に流れ込んでいく。
やっぱり居るのか。何処だ
彼の代名詞たる、死体からの魔力吸収にリュドヴィックの存在を確信するも、やはり、姿が見えない。
武器になる杖だけでも破壊してしまおうとするも、突然、赤い髑髏の口が開き喋りだした。
「貴様! 貴様!!」
(おおっと)
この声、聞き覚えがある。グゴ山に着いたときに聞こえたリュドヴィックの声だ。いや、懐かしい。
(なんでまた、杖から?)
おしゃべり機能もあったのだろうか。
「貴様のせいで! 貴様のせいでえええ!」
興奮しすぎているのか、話が進まない。
「やあ、リュドヴィック? だよな。昔、遠目から姿と声を聞いただけだから、それ以外手配書とかの事しか知らんのよ」
「きさまあああああああああああああああ」
だめだこりゃ。
「なんでまた、そんな所から喋ってるんだ? お前さんどこ?」
「あああああああああ!! 貴様のせいだ! 貴様があそこにいなければ!!」
俺のせいだったのか…。
「貴様が居たせいでグゴのコントロールが外れたのだ!! そのせいで! そのせいで私はあああああ!!」
そこまで聞いてピンときた。グゴと対峙したとき、あの竜が最初に放った熱波を思い出したのだ。
「お前さん、ひょっとしてあの時死んでる?」
「あああああああああああああああああああああ!!!!」
なんてことだ。あの裏社会に名高き"杯"の盟主が、知らないうちに死んでいて、今や杖に取り付いているとは…。道理で最近聞かないはずだ。
竜にとって少し動いた程度の熱波だったろうが、体が蒸発でもしたのだろう。しぶとく悪霊化して杖に憑りついたのは流石、死霊魔法を極めたと言われるだけはあるか。しかし、
(杖残ってたのかよ。頑丈すぎるだろ。"遺物"か?)
「貴様のせいでええええええええ! ユーゴオオオオオオ!!!」
どう考えても冤罪だ。
「死ねえええ"化け物"おおおおおおおおお!!」
バギ
魔力を貯める動作をしたので、即座に杖を破壊する。あまり好きではない二つ名で呼ばれ、威力も少し過剰だった。
この男、ユーゴも昔は煌びやかな二つ名に憧れていた時期もあったが、流石にもうそんな年ではない。しかし、すっかり裏で定着してしまったこの二つ名は、いくらなんでも酷い。これを名乗るくらいなら、今流行りのド派手な物のほうがずっといいとすら思っていた。
「しまった。言うの忘れてたな」
もはや破片となってしまった杖に向けて言おうとしていた言葉を呟く。
「ご愁傷様」
◆
side ユーゴ
魔法の光で明るく照らされた剣の国の大通りを歩く。あの後、出口から出た場所はグゴ山であった。どうも、杖を移動できずあそこに拠点を構えていたらしい。適性でも必要だったのだろう。
それからのんびりと帰ることを決め、ぶらぶら歩いて帰って来たのだ。
何日か掛けて帰って来ると、ちょうど夜だったので、また馴染みの酒場にでも行こうかとしていた。
酒場の扉から相変わらず騒がしい声が漏れてくる。
「あ、お客さんいらっしゃーい。うちのこと忘れないでくださいよー」
「あいよー」
思わず笑いそうになるが、彼女の指に嵌まっている指輪を見てそれどころでは無くなる。慌ててカウンターにいる店主の姿を見ると、明らかにやつれていた。
なんてこった!
大通りで見かけた雑貨屋の息子が妙に浮かれてるとは思ったが、これか! ついでに、二人の年齢を思い出し、あんな年頃に先を越されたかと絶望しながら、店主の不憫さに涙した。恐らく厨房のカミさんと娘のタッグに敗北したのだろう。哀れな…。
「やあ、何か強いやつを」
「ああ…あんたか。待ってろ、最近とびっきり強い奴を買ったんだ…」
まるで生気がない。
「ああ…そうか。そういえば何か…面白い話はないかい?」
話題を変えよう。慎重に言葉を選ばなければ、間違っても変わった話などと言ったら心臓が止まって逝ってしまうだろう。いや、もう止まっててゾンビかな?
「ああ、あるぞ」
よかった。少し生気が戻ってきたぞ。本当に何か面白いことがあったんだろう。
「前に、あんたにダークエルフの話をしたよな? どうも本物だったらしくてな、よく街で見かけるようになったんだ。それも二人。おかげで街の男どもはえらい騒ぎさ。俺も見てな。ちっこい方は可愛らしいだけだったが、もう片方はとんでもねえ別嬪だ。ありゃあ女神さ、女神」
そうか、厨房から死神の殺気が飛んでいるのに気が付かんとは、迂闊な。
現実逃避はよそう…。まさかダークエルフが人間種の国に堂々と来るとは。
「何しに来たんだろうな」
「そう、それであんたに聞きたいことがあったんだ。黒髪黒目の自称お節介焼きを探してるみたいなんだが、あんた何か関係あるのか?」
ある。この間からお節介焼きに改名してるんだ。
そう言えたらな…
というかこの気配は…
「お姉ちゃん! このお店だよきっと! 早く!」
「あ、ああ…だがルー本当にあの呼び方をするのか…?」
「もう! お姉ちゃんがお名前も聞いてないのが悪いんだよ!」
「そ、それはそうなんだが…」
「入るよ!」
「あっ」
何気なしに開いた扉を見た人間全員が固まっている。
小さなほうはまだいい、まだ子供で元気一杯というような表情のダークエルフだ。いや、ダークエルフということを考えるとよくないのだが、問題は妙齢の女性の方だ。月の光で編んだような髪、艶めかしい肌、濡れたような唇、マントを羽織っているにもかかわらず分かる男の欲を詰め込んだような体、そして、どんな名画でも及ぶことはないであろう美貌。
固まってしまった者たちを訝しんで、同じ方を向いた誰もがまた、同じように固まってしまった。
題材、うっかりゴルゴンを見てしまった男たち
いや、看板娘も固まってたか。しんとした酒場でいまだにユーゴは現実逃避気味だった。
「居たよお姉ちゃん!」
「! あ、ああ…」
速足でこちらに近づいてくる二人。
「やあ、お嬢さん方。元気そうで何より」
そう挨拶すると、片方は満面の笑みで、もう片方は真っ赤にしながら伏せた顔で、しかもやけくそ気味に口を開いた。
「私はルーっていいます! 私達を助けてくれてありがとうございます! ご主人様!!」
「ジネットです…ありがとうございます! ご、ごご主人様!!!」
マントの下はなんとメイド服だった。
今日は店主と飲もう。いや、店主は今日死ぬんだったな。
組織図鑑
杯杯:人類種の暗黒期、モンスターに種の存続を脅かされていた時代に結成された組織。目的は人間種の存続及び生存圏の維持拡大。最終的には人間種の位階を物理的、霊的に上げることを目標にしていた。
過去の特級冒険者、"勇者"、には"杯"と関係を持ったものが複数おり、生存圏の拡大、国家の拡大に貢献している。
しかし、しだいに組織は変貌、自分達のみが位階を上げて、大陸に君臨するという妄想に取り付かれる。このころには大陸中で危険視され、闇組織として認識される。
「人間種を滅ばせるわけにはいかない!」 "杯"結成時における演説
人物事典
"月の短剣"ジネット:ダークエルフの美しい女性で、氏族どころかダークエルフ全体から、月の女神アレクシアの愛し子と言われている。しかし、それゆえ腫物を扱うのような対応をされることが多く、両親と死別してからは妹と魔の国の外れでひっそりと暮らしていた。
実際に加護があるのか、短剣術と闇魔法を極めており、暗殺者としての腕は大陸でも3指に入る。
普段はクールビューティーと言っていいが、唯一の肉親である妹を溺愛しており、我儘も言わないため、彼女の願いを出来るだけ叶えようとする傾向がある。
ー"短剣"の銘は愛と死ー
"純真"ルー:人間種の換算ではまだ少女のダークエルフで、姉のジネットを敬愛している元気娘。
幼い時から姉の影響で共に腫物を扱う対応をされており、そのせいか考え方が少し………
普段は元気一杯の少女だが、姉を道具にする"杯"の姦計のため呪いを受け、どんどん衰弱していき、姉に対する申し訳なさを感じていた。しかし、命は助かり現在爆進中。
「きっと増えるだろうけどあの人なら大丈夫、女の勘。恩を返す。私達も幸せになる。誰にも邪魔はさせない。絶対に」
「おい!おーい!?起きろ!」
魔法使いの男を揺らすが全く起きない。軟弱な奴め!
仕方ない。こういう時は水だと相場は決まってる。家の中で出すのはダメだ。外へ出よう。
男を引きずりながら玄関に向かう。
「お、おい!」
気のせいか、幾分険の取れた声でこちらに女が声を掛けてくる。あるいは困惑か。
「お構いなくー」
手を振りながら外へ出ると、意外なことに森の傍で、一軒家がポツンとあるだけだった。ダークエルフは割と街中で生活していたはずだが。
(もう夜も更けたな)
ぼんやりと思いながら男を投げ出し、"倉庫"から出した縄で縛り上げ、次は水をそのまま垂れ流す。おっと、薬を忘れるところだった。
「が!はっ!はっ!は!」
目が覚めた魔法使いはたっぷり息を吸いながら慌てて辺りを見渡している。
「何が!? 貴様一体!?」
「まあ、落ち着いてくれ。俺の名前はお節介焼きだ」
以前からちょこちょこ名乗っていたが、この際改名してしまおうか。
「なんだと!?」
自分が足で押さえつけているものだから、魔法使いはもぞもぞと動くだけになっているがこちらを睨みつけてくる。
「はーい。お口開けてくださいねー」
「何!? ぐむっ!?」
先程取り出した薬を無理やり男の口の中へねじ込む。これを流石に悲痛な顔をしていたお嬢さんに、飲ませるわけにはいかなかった。それに、反応を注意深く見るより、こっちのほうが楽だ。
お嬢さんと言えば、女は玄関の陰に隠れてこっちを伺っているな。
「今から言うことに正直に答えるんだ。さもなきゃとんでもない痛さを感じることになるぞ。お前さん、"杯"の一員でいいかい?」
「だあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」
何か言いそうになった男が辺り一面に響く悲痛な声を出す。
「ほら正直に答えろって。そうすりゃ解除される!」
「ぞう゛だあ゛あ゛!! ああああああああああ……」
正直に答えたから痛みはなくなったはずだが、それどころではないのだろう。
「ここにいる女の子に呪いを掛けたのもお前さん?」
「そ゛う゛だああ。やめてくれえええええ」
可哀そうなくらい顔中から液体を撒き散らしているが、こいつの魔力の濁り具合を感じるに、絶対に碌なことを今までしていないと確信しているため続けて質問する。
「お前さんたちの拠点にリュドヴィックはいるか?」
「それあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!! い゛る゛! い゛る゛う゛う゛う゛う゛ううううう……」
ダメ元で聞いてみたが居るのか。今までを考えると地味な事をしていると思ったが、人がいないってのは辛いねえ。
転移魔具とガラス片の触媒を取り出す。
「さあ、お前さんの拠点を思い浮かべるんだ」
虚ろになってきた男に魔具を見せる。浮かび上がった映像には6人のローブを纏った連中が浮かび上がってきた。リュドヴィックの姿はない様だが、遠目で一回しか見てないからな…。
「これで全員か?」
「そうだああ。やめてくれええええええええ」
よし。運がいい。リュドヴィックが居ないのは気がかりだが、あのダークエルフ達に関することは根っこごと、終わらせることが出来そうだ。
出来れば計画も知りたかったが、この薬は問いにしか反応しない。細かく質問している間に連中が居なくなるのは困る。
では、終わらせよう。
「おい!」
おっと、別れの挨拶位するべきだった。
「お前は…お前は、本当に私達を助けるために…? だが、何故?」
「言ったろ、お節介焼きだって」
今日から自分の名前はお節介焼きだ。もう決めた。
転移魔具の起動を準備する。
「お嬢さん。妹さんを大事にな」
姉に隠れて顔を出している妹の方にも。
「お嬢ちゃん。姉ちゃんと仲良くな」
ひょっとしたら自分よりも年上かもしれんが。
倒れている魔法使いを引っ掴み、転移魔具を起動する。
「お兄ちゃん。ありがとう!!」
「ふふ、じゃあな!」
◆
side ルー
「ふふ、じゃあな!」
あの人が転移で行ってしまった。お礼の言葉はちゃんと届いただろうか…。
「そんな…本当に……なにが…私は、私は、どうすれば…」
お姉ちゃんが呆然と座り込んでしまっている。
あの人と何があって私を助ける事になったのか分からない。でも、あの様子を見るに、本当に見返りなしで私達を助けてくれたんだ。
急に現れて、私を助けてくれて、急に去っていたあの人…。何処に行ったのかは分からない。でも、あのやり取りだと、多分あいつ等をやっつけに行ったんだ。
どうしたら…。どうしたら恩を……そうだ!!
「お姉ちゃん」
「あ、ルー。体は大丈夫なのか…?」
呆然としながらも、自分の体の事を心配してくれる姉に、尊敬の念を強くしながら自分の考えを話す。
「あのねお姉ちゃん! ルー考えたの!」
◆
side ???
「ふふ、じゃあな」
景色が変わる。映像で見たどっかの地下らしき場所に転移出来た。掴んでいた魔法使いを投げる。
「ん?」
ヒュ パンッ
全部で7。
どいつもこいつも魔力が嫌に濁っていた。操られていたとかは無いだろう。
ご近所さんが居たら迷惑だからかなり力を抑えたが、そのせいで少々スプラッタな光景になってしまった。隣が事故物件と急な地震…どっちがよかっただろうか…。
変な気を回しながら部屋の奥を見ると、赤い髑髏が特徴的な杖があった。映像で見た時から気になっていたが、多分リュドヴィックが持っていた杖のはずだ。
杖だけ仰々しく飾られてるとかどういうこっちゃ。てか本人は?
そんな疑問を抱いていると、消し飛んだ魔法使い達の体から魔力が杖に流れ込んでいく。
やっぱり居るのか。何処だ
彼の代名詞たる、死体からの魔力吸収にリュドヴィックの存在を確信するも、やはり、姿が見えない。
武器になる杖だけでも破壊してしまおうとするも、突然、赤い髑髏の口が開き喋りだした。
「貴様! 貴様!!」
(おおっと)
この声、聞き覚えがある。グゴ山に着いたときに聞こえたリュドヴィックの声だ。いや、懐かしい。
(なんでまた、杖から?)
おしゃべり機能もあったのだろうか。
「貴様のせいで! 貴様のせいでえええ!」
興奮しすぎているのか、話が進まない。
「やあ、リュドヴィック? だよな。昔、遠目から姿と声を聞いただけだから、それ以外手配書とかの事しか知らんのよ」
「きさまあああああああああああああああ」
だめだこりゃ。
「なんでまた、そんな所から喋ってるんだ? お前さんどこ?」
「あああああああああ!! 貴様のせいだ! 貴様があそこにいなければ!!」
俺のせいだったのか…。
「貴様が居たせいでグゴのコントロールが外れたのだ!! そのせいで! そのせいで私はあああああ!!」
そこまで聞いてピンときた。グゴと対峙したとき、あの竜が最初に放った熱波を思い出したのだ。
「お前さん、ひょっとしてあの時死んでる?」
「あああああああああああああああああああああ!!!!」
なんてことだ。あの裏社会に名高き"杯"の盟主が、知らないうちに死んでいて、今や杖に取り付いているとは…。道理で最近聞かないはずだ。
竜にとって少し動いた程度の熱波だったろうが、体が蒸発でもしたのだろう。しぶとく悪霊化して杖に憑りついたのは流石、死霊魔法を極めたと言われるだけはあるか。しかし、
(杖残ってたのかよ。頑丈すぎるだろ。"遺物"か?)
「貴様のせいでええええええええ! ユーゴオオオオオオ!!!」
どう考えても冤罪だ。
「死ねえええ"化け物"おおおおおおおおお!!」
バギ
魔力を貯める動作をしたので、即座に杖を破壊する。あまり好きではない二つ名で呼ばれ、威力も少し過剰だった。
この男、ユーゴも昔は煌びやかな二つ名に憧れていた時期もあったが、流石にもうそんな年ではない。しかし、すっかり裏で定着してしまったこの二つ名は、いくらなんでも酷い。これを名乗るくらいなら、今流行りのド派手な物のほうがずっといいとすら思っていた。
「しまった。言うの忘れてたな」
もはや破片となってしまった杖に向けて言おうとしていた言葉を呟く。
「ご愁傷様」
◆
side ユーゴ
魔法の光で明るく照らされた剣の国の大通りを歩く。あの後、出口から出た場所はグゴ山であった。どうも、杖を移動できずあそこに拠点を構えていたらしい。適性でも必要だったのだろう。
それからのんびりと帰ることを決め、ぶらぶら歩いて帰って来たのだ。
何日か掛けて帰って来ると、ちょうど夜だったので、また馴染みの酒場にでも行こうかとしていた。
酒場の扉から相変わらず騒がしい声が漏れてくる。
「あ、お客さんいらっしゃーい。うちのこと忘れないでくださいよー」
「あいよー」
思わず笑いそうになるが、彼女の指に嵌まっている指輪を見てそれどころでは無くなる。慌ててカウンターにいる店主の姿を見ると、明らかにやつれていた。
なんてこった!
大通りで見かけた雑貨屋の息子が妙に浮かれてるとは思ったが、これか! ついでに、二人の年齢を思い出し、あんな年頃に先を越されたかと絶望しながら、店主の不憫さに涙した。恐らく厨房のカミさんと娘のタッグに敗北したのだろう。哀れな…。
「やあ、何か強いやつを」
「ああ…あんたか。待ってろ、最近とびっきり強い奴を買ったんだ…」
まるで生気がない。
「ああ…そうか。そういえば何か…面白い話はないかい?」
話題を変えよう。慎重に言葉を選ばなければ、間違っても変わった話などと言ったら心臓が止まって逝ってしまうだろう。いや、もう止まっててゾンビかな?
「ああ、あるぞ」
よかった。少し生気が戻ってきたぞ。本当に何か面白いことがあったんだろう。
「前に、あんたにダークエルフの話をしたよな? どうも本物だったらしくてな、よく街で見かけるようになったんだ。それも二人。おかげで街の男どもはえらい騒ぎさ。俺も見てな。ちっこい方は可愛らしいだけだったが、もう片方はとんでもねえ別嬪だ。ありゃあ女神さ、女神」
そうか、厨房から死神の殺気が飛んでいるのに気が付かんとは、迂闊な。
現実逃避はよそう…。まさかダークエルフが人間種の国に堂々と来るとは。
「何しに来たんだろうな」
「そう、それであんたに聞きたいことがあったんだ。黒髪黒目の自称お節介焼きを探してるみたいなんだが、あんた何か関係あるのか?」
ある。この間からお節介焼きに改名してるんだ。
そう言えたらな…
というかこの気配は…
「お姉ちゃん! このお店だよきっと! 早く!」
「あ、ああ…だがルー本当にあの呼び方をするのか…?」
「もう! お姉ちゃんがお名前も聞いてないのが悪いんだよ!」
「そ、それはそうなんだが…」
「入るよ!」
「あっ」
何気なしに開いた扉を見た人間全員が固まっている。
小さなほうはまだいい、まだ子供で元気一杯というような表情のダークエルフだ。いや、ダークエルフということを考えるとよくないのだが、問題は妙齢の女性の方だ。月の光で編んだような髪、艶めかしい肌、濡れたような唇、マントを羽織っているにもかかわらず分かる男の欲を詰め込んだような体、そして、どんな名画でも及ぶことはないであろう美貌。
固まってしまった者たちを訝しんで、同じ方を向いた誰もがまた、同じように固まってしまった。
題材、うっかりゴルゴンを見てしまった男たち
いや、看板娘も固まってたか。しんとした酒場でいまだにユーゴは現実逃避気味だった。
「居たよお姉ちゃん!」
「! あ、ああ…」
速足でこちらに近づいてくる二人。
「やあ、お嬢さん方。元気そうで何より」
そう挨拶すると、片方は満面の笑みで、もう片方は真っ赤にしながら伏せた顔で、しかもやけくそ気味に口を開いた。
「私はルーっていいます! 私達を助けてくれてありがとうございます! ご主人様!!」
「ジネットです…ありがとうございます! ご、ごご主人様!!!」
マントの下はなんとメイド服だった。
今日は店主と飲もう。いや、店主は今日死ぬんだったな。
組織図鑑
杯杯:人類種の暗黒期、モンスターに種の存続を脅かされていた時代に結成された組織。目的は人間種の存続及び生存圏の維持拡大。最終的には人間種の位階を物理的、霊的に上げることを目標にしていた。
過去の特級冒険者、"勇者"、には"杯"と関係を持ったものが複数おり、生存圏の拡大、国家の拡大に貢献している。
しかし、しだいに組織は変貌、自分達のみが位階を上げて、大陸に君臨するという妄想に取り付かれる。このころには大陸中で危険視され、闇組織として認識される。
「人間種を滅ばせるわけにはいかない!」 "杯"結成時における演説
人物事典
"月の短剣"ジネット:ダークエルフの美しい女性で、氏族どころかダークエルフ全体から、月の女神アレクシアの愛し子と言われている。しかし、それゆえ腫物を扱うのような対応をされることが多く、両親と死別してからは妹と魔の国の外れでひっそりと暮らしていた。
実際に加護があるのか、短剣術と闇魔法を極めており、暗殺者としての腕は大陸でも3指に入る。
普段はクールビューティーと言っていいが、唯一の肉親である妹を溺愛しており、我儘も言わないため、彼女の願いを出来るだけ叶えようとする傾向がある。
ー"短剣"の銘は愛と死ー
"純真"ルー:人間種の換算ではまだ少女のダークエルフで、姉のジネットを敬愛している元気娘。
幼い時から姉の影響で共に腫物を扱う対応をされており、そのせいか考え方が少し………
普段は元気一杯の少女だが、姉を道具にする"杯"の姦計のため呪いを受け、どんどん衰弱していき、姉に対する申し訳なさを感じていた。しかし、命は助かり現在爆進中。
「きっと増えるだろうけどあの人なら大丈夫、女の勘。恩を返す。私達も幸せになる。誰にも邪魔はさせない。絶対に」
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
辺境の最強魔導師 ~魔術大学を13歳で首席卒業した私が辺境に6年引きこもっていたら最強になってた~
日の丸
ファンタジー
ウィーラ大陸にある大国アクセリア帝国は大陸の約4割の国土を持つ大国である。
アクセリア帝国の帝都アクセリアにある魔術大学セルストーレ・・・・そこは魔術師を目指す誰もが憧れそして目指す大学・・・・その大学に13歳で首席をとるほどの天才がいた。
その天才がセレストーレを卒業する時から物語が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる