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小大陸編
脱出
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???
「陛下!大要塞が陥落しました!」
その声は会議室に雷鳴の様に轟いた。
「ついに…この時が来たか…」
「はっ…」
項垂れる大臣や高位の貴族達。
誰もが分かっていた事だった。恐らく年内で魔物達の攻勢に耐えられないという事は。
「致し方なし。余、マルバン6世の名において。ここに最終避難計画を実行する。異論は?」
「ございませぬ」
すすり泣く声が聞こえる会議場で、最後の計画が実行された。
彼等はこの時の為に備えていた。
大国が滅び、最早押しとどめる事が出来ないと判断された時から。
ただひたすら船を作り。
「行こう。新天地へ」
魔物達の腹に収まるか、一縷の望みをかけて新たな新天地に辿り着くか。
その選択肢を突きつけられた者達は選んだのだ。
土地を捨て国を捨て、新たな地を見つける事を。
小大陸に存在する船の国。
彼等は大船団を結成して旅立つ。
いや、脱出するのだ。
最早魔物達の物となった小大陸を。
老いも若きも、男も女も関係なく。
滅んだ国の難民達すら乗り込んだ船はついに出発する事になった。
◆
海の国 近海
「いやあ、一時はどうなる事かと思ったが、よかったよかった」
「ほんとだよな。俺、赤砂の浜で臨時編入させられたけど、クラーケンが出て来た時は死んだと思った」
「ははは!海神様に栄光あれ!」
大型の漁船に乗り込んだ船員たちが、ついこの前の海の国で発生した騒動で笑いあっていた。
この一件は公式発表では、海神がその力で鎮めたことになっており、とある男が胸を撫で下ろしていた。彼の視点からすると、別の世界であったがかなり派手にやったと思っていたのだ。
「おい!何かデカいのが見えるぞ!」
「なんじゃそりゃ?」
「クラーケンとか言わないよな?」
「よせよ。言った俺が悪いみたいになるだろ」
船の前方から聞こえてきた、曖昧な報告に船員達は困惑するが、一部の者は海で出会うと死を意味する、クラーケンではないかと緊張していた。
「見えたぞ船だ!デカい!何だあのデカさと数は!」
「船?」
「そんな船団の話とか知らないぞ」
物見が詳細を報告し始めるが、やはり船員達は困惑する。海の男達が知らないような大きさと数の船団など、大陸西部の海の覇者である海の国に住んでいて、聞こえてこないはずが無いのだ。
唯一の例外は大陸東部の港の国だが、この国は東方との交易に力を入れており、大船団が大陸を回って来る事はまず無かった。
「どんどん増えてるぞ!城みたいなのが埋め尽くしてる!」
「おいおいどうなってんだ!?」
「見てみよう!」
「おい一気に前に集まるなよ!転覆するぞ!」
次第に判明していく異様。
水平線の向こうから現れ始めたのは、まさに城と言うに値する船だったのだ。しかも一つではない。10や20ではない数の船が次々と現れる。
「どっかの軍艦か!?旗は!?」
「見たことない旗だ!ヤバいぞ船長どうする!?」
「決めってる!ずらかるぞ野郎ども!警告しなければ!」
「おお!」
あまりの異様に、船長はすぐさま海の国へと進路を変える。この大船団の目的が何であれ、すぐに国に連絡を取らなければならなかった。
「戦争とか言わんよな…」
最も恐ろしい予測を呟きながら、船長は指示を出していく。
◆
「船長見えました!報告にあった通り、とんでもないデカさと数です!」
「いったい何処から…」
大型漁船から報告を受け取った街の貴族は、王都に報告を上げながら、調査の為に所持している数隻の船を送り込んでいた。
しかもこの街の貴族、実は大型漁船の船長の親戚筋であり、嘘ではないと判断した彼は、なんと自分の屋敷の保管されていた、貴重な通信魔具まで調査船に貸し出していた程、この件に危機感を持っていた。
もし攻撃を受ければ、即座に通信魔具の情報が王都に伝わり、戦時体制になる事だろう。
「魔法使い。もし攻撃を受ければすぐさま空に飛び立って、一秒でも長く通信魔具に連絡を入れ続けろ」
「はっ」
「船長!もうすぐ声が届くかと!」
「分かった」
念のための手筈を確認しながら、船長は魔道具を使って声を大きくする準備に入った。
『貴船団に問う!こちらは海の国所属の調査船である!貴船団の目的を伝えられたし!現在貴船団は、我が国に接近しつつある!』
調査船の船員達も固唾を飲んで見守っていた。あれだけの船が攻撃して来たなら、調査船などひとたまりも無かった。
『貴船団に問う!こちらは海の国所属の調査船である!貴船団の目的を伝えられたし!現在貴船団は、我が国に接近しつつある!』
(頼むぞー。返事をしてくれ)
城のような大きさにも関わらず、かなりの速度で移動している大船団に緊張しながら、船長はもう一度繰り返した。
『こちらは』
(返事があった!)
「応答があった!」 「静かにしろ!」 「いきなり攻撃は無かったな」
大船団から聞こえてきた声に興奮する船員達であったが、内容はとんでもないものであった。
『こちらは船の国の船団である。貴国と交戦の意思はない。亡国の身である我々をどうか受け入れて欲しい』
「は?」 「何処って言った?」 「船の国?」 「というか亡国って言ったか?」
『しょ、少々お待ちいただきたい!今王都に確認を入れる!』
こうして、大陸史に刻まれる事件の一つ。"小大陸との出会い"が始まったのである。
「陛下!大要塞が陥落しました!」
その声は会議室に雷鳴の様に轟いた。
「ついに…この時が来たか…」
「はっ…」
項垂れる大臣や高位の貴族達。
誰もが分かっていた事だった。恐らく年内で魔物達の攻勢に耐えられないという事は。
「致し方なし。余、マルバン6世の名において。ここに最終避難計画を実行する。異論は?」
「ございませぬ」
すすり泣く声が聞こえる会議場で、最後の計画が実行された。
彼等はこの時の為に備えていた。
大国が滅び、最早押しとどめる事が出来ないと判断された時から。
ただひたすら船を作り。
「行こう。新天地へ」
魔物達の腹に収まるか、一縷の望みをかけて新たな新天地に辿り着くか。
その選択肢を突きつけられた者達は選んだのだ。
土地を捨て国を捨て、新たな地を見つける事を。
小大陸に存在する船の国。
彼等は大船団を結成して旅立つ。
いや、脱出するのだ。
最早魔物達の物となった小大陸を。
老いも若きも、男も女も関係なく。
滅んだ国の難民達すら乗り込んだ船はついに出発する事になった。
◆
海の国 近海
「いやあ、一時はどうなる事かと思ったが、よかったよかった」
「ほんとだよな。俺、赤砂の浜で臨時編入させられたけど、クラーケンが出て来た時は死んだと思った」
「ははは!海神様に栄光あれ!」
大型の漁船に乗り込んだ船員たちが、ついこの前の海の国で発生した騒動で笑いあっていた。
この一件は公式発表では、海神がその力で鎮めたことになっており、とある男が胸を撫で下ろしていた。彼の視点からすると、別の世界であったがかなり派手にやったと思っていたのだ。
「おい!何かデカいのが見えるぞ!」
「なんじゃそりゃ?」
「クラーケンとか言わないよな?」
「よせよ。言った俺が悪いみたいになるだろ」
船の前方から聞こえてきた、曖昧な報告に船員達は困惑するが、一部の者は海で出会うと死を意味する、クラーケンではないかと緊張していた。
「見えたぞ船だ!デカい!何だあのデカさと数は!」
「船?」
「そんな船団の話とか知らないぞ」
物見が詳細を報告し始めるが、やはり船員達は困惑する。海の男達が知らないような大きさと数の船団など、大陸西部の海の覇者である海の国に住んでいて、聞こえてこないはずが無いのだ。
唯一の例外は大陸東部の港の国だが、この国は東方との交易に力を入れており、大船団が大陸を回って来る事はまず無かった。
「どんどん増えてるぞ!城みたいなのが埋め尽くしてる!」
「おいおいどうなってんだ!?」
「見てみよう!」
「おい一気に前に集まるなよ!転覆するぞ!」
次第に判明していく異様。
水平線の向こうから現れ始めたのは、まさに城と言うに値する船だったのだ。しかも一つではない。10や20ではない数の船が次々と現れる。
「どっかの軍艦か!?旗は!?」
「見たことない旗だ!ヤバいぞ船長どうする!?」
「決めってる!ずらかるぞ野郎ども!警告しなければ!」
「おお!」
あまりの異様に、船長はすぐさま海の国へと進路を変える。この大船団の目的が何であれ、すぐに国に連絡を取らなければならなかった。
「戦争とか言わんよな…」
最も恐ろしい予測を呟きながら、船長は指示を出していく。
◆
「船長見えました!報告にあった通り、とんでもないデカさと数です!」
「いったい何処から…」
大型漁船から報告を受け取った街の貴族は、王都に報告を上げながら、調査の為に所持している数隻の船を送り込んでいた。
しかもこの街の貴族、実は大型漁船の船長の親戚筋であり、嘘ではないと判断した彼は、なんと自分の屋敷の保管されていた、貴重な通信魔具まで調査船に貸し出していた程、この件に危機感を持っていた。
もし攻撃を受ければ、即座に通信魔具の情報が王都に伝わり、戦時体制になる事だろう。
「魔法使い。もし攻撃を受ければすぐさま空に飛び立って、一秒でも長く通信魔具に連絡を入れ続けろ」
「はっ」
「船長!もうすぐ声が届くかと!」
「分かった」
念のための手筈を確認しながら、船長は魔道具を使って声を大きくする準備に入った。
『貴船団に問う!こちらは海の国所属の調査船である!貴船団の目的を伝えられたし!現在貴船団は、我が国に接近しつつある!』
調査船の船員達も固唾を飲んで見守っていた。あれだけの船が攻撃して来たなら、調査船などひとたまりも無かった。
『貴船団に問う!こちらは海の国所属の調査船である!貴船団の目的を伝えられたし!現在貴船団は、我が国に接近しつつある!』
(頼むぞー。返事をしてくれ)
城のような大きさにも関わらず、かなりの速度で移動している大船団に緊張しながら、船長はもう一度繰り返した。
『こちらは』
(返事があった!)
「応答があった!」 「静かにしろ!」 「いきなり攻撃は無かったな」
大船団から聞こえてきた声に興奮する船員達であったが、内容はとんでもないものであった。
『こちらは船の国の船団である。貴国と交戦の意思はない。亡国の身である我々をどうか受け入れて欲しい』
「は?」 「何処って言った?」 「船の国?」 「というか亡国って言ったか?」
『しょ、少々お待ちいただきたい!今王都に確認を入れる!』
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