その男に触れるべからず ~過去にやらかし過ぎた最強男の結婚生活 反省しているので化け物呼ばわりは勘弁してください~

福郎

文字の大きさ
117 / 172
小大陸編

世界征服会議かな?

しおりを挟む
海の国 会議室


「ユーゴ殿。よくぞいらしてくれた」

「これは国王陛下。身に余る光栄です」

「なんの。我々の恩人であり、海神の使徒である貴方なのだ」

海の国の会議室に、エルフ一行と入室したユーゴであったが、早速海の国の国王に挨拶をされていた。しかも、国王が直々に席を立ってまでであった。
その光景を海の国の大将軍は、今にも倒れそうな顔で見ていたが…。

「それで席の方だが、エルフの森の場所で構わんのですな?」

「ええ。あくまで出席しているだけですので」

もし海の国が気を効かせ過ぎて、とんでもない上座に座らされることを恐れたユーゴは、事前にドナートに連絡をして、エルフの森の一行と同じ席を用意して貰っていた。
実際先に手を打たねば、海の国の重鎮達を差し置いて上座に座るところであった。

「それでは皆様お揃いになった事ですので、船の国の国王、マルバン6世殿をお呼びしましょう」

会議に参加している主な者として、西海の覇者である海の国国王、祈りの国の事務方のトップにして、次期教皇とも目されている枢機卿ドナート、大陸北西部に位置するエルフの森の長老ビムが出席し、まさに大陸西部どころか、大陸全体に影響を与えかねないほどの集まりであった。

これが騎士の国の国王に伝われば、なぜ自分を呼ばないと叫ぶだろうが、騎士の国のライバルである魔法の国の方は、最高魔導士エベレッドが、参加者の一人を見て踵を返すだろう。

そして参加者の中に、エベレッドが踵を変える原因の男ユーゴと、エルフの老婆ドロテアが参加しており、ある意味で最も物騒な会議でもあった。

「船の国の国王、マルバン6世様とその御一行様が入室されます」

マルバン6世は白髪の長い老人であったが、彼に限らず、お付きの者も皆疲れ切った様な顔をしていた。

「ようこそお出で下さったマルバン6世殿。さあこちらへ」

そう言うと海の国国王は、自分の隣の席に案内した。

「かたじけない。しかし、情けない事に亡国の王です」

「何を御仰る。同じ海の男なのは見ればわかる。助け合うのは当然ですぞ」

「本当に…かたじけない」

今にも泣き出しそうなマルバン6世であったが、何とかこらえて席に着く。

「それでは会議を始めましょう」

会議が始まる。

「目下の問題は、船の国の方々の食料品です」

海の国の大臣が、今最も重要な件から切り出した。城の様な船の大船団だけあって、乗っている人数もかなりになる。

「それについてですが、船の上には畑や家畜もおり、今すぐ困窮する事はありません」

船の国の者が答える。
なんとこの船団は、畑や家畜を乗せており、ある程度の自給自足を成し遂げていた。
それに必要な真水も魔石で対処しており、備蓄もある。

「ですが、足りている訳ではありませんので、徐々に備蓄も目減りしていくかと…」

「そちらは、祈りの国である程度は賄えます」

「おお」

元々神の御膝元である祈りの国は、国内を魔物に荒らされる心配が無く、気象も安定していたので、不作とは無縁の国であった。

「しかし、それでも限界はあります」

「船の国の方々。現地の魔物はどの程度のものですかな?」

海の国の大将軍が質問する。国を追われた者達に言うのは酷なため、最初に言うのは避けていたが、いつまでも居座られる訳にもいかず、支援をするから出来れば小大陸を奪還して、帰ってもらいと言うのが本音であった。

「はい。多種多様で、動物から植物の様なもの、飛行する個体までいました。戦闘力自体は大した事はなく、普通の兵でも十分に戦える程でしたが数が多く、まるで濁流の様な群れで行動しているのです」

「お待ちを。その多種多様な魔物達が、群れて行動していると?」

「はい。我が小大陸でも昔はそのようなことはありませんでしたが、いつからか種に関係なく群れるようになったのです」

「ふーむ。数は分かりましたが、こちらと小大陸で、魔物の強さが違う可能性がありますからな…」

弱ければまだいい。しかし、もし大陸の魔物よりも小大陸の魔物の方が強ければ、奪還はほぼ不可能であろう。それだけの兵と補給をするならば、大陸総出になる様な事態であった。

「さて…。王太子殿下が筆頭戦力相当と言われておりまして、我が国には4人。小大陸全体では100人程がいました」

その言葉と共に立ち上がる若い金髪の男性。
彼はマルバン6世の孫にあたるが、父が魔物との戦闘で戦死し、唯一の王位継承者として戦場に立つことを禁じられて生き延びていた。

立ち上がった王太子を見て、ドナートが近くの後ろに座っているユーゴを見る。

(特級か勇者相当かと)

(やはり…)

流石にドナートも、勇者として現役を退いて久しいので、ユーゴに意見を求めたが、彼等の見立ては同じで、王太子を勇者か特級相当の実力者であると判断していた。

(そうなると、小大陸の戦力はそれほどこちらと変わりは…)

(はい。悪ガ、失礼。エドガーとカーク当たりの例外が居なければ、そう変わりはないかと)

進んでいる会議の傍らで意見を合わせる2人。
大陸側も100人よりは多いと言った程度で、そこまで大きな差がある訳でも無かった。

(いざとなったら私が行きます)

(え?い、いや、それはまた話し合いましょう)

会議は難民達をどうするかという問題が、最大の問題となっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

処理中です...