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お家騒動編
一座1
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「アジル。どうかあの子達をお願い…」
「ニナ様…」
湖の国の第一后ニナの命は、今まさに尽きようとしていた。
「私が死ねば、王は子供達を必ず殺そうとするでしょう」
「はっ…」
療養と称して、王城から実家の侯爵家に戻っていたニナであるが、実際は王に疎まれて戻されていたのだ。
そして、そんなニナの最大の懸念は、自分が生んだ双子の兄妹の行く先である。
「王にとっても我が子なのに…」
王が産後の肥立ちが悪いニナを実家に戻し疎んじたり理由は、人間種の彼女の産んだ赤子たちが、妖精族、、つまりチェンジリングであったことが原因である。
時折起こる、同じ人種同士の子供の種族が違うこの現象は、古くから忌み嫌われており、不貞や血統に紛れ込んだ異物として排除される傾向にあった。
しかも、その赤子たちは最も血統に拘る家、王族に生まれてしまい、父である王は赤子たちを亡き者にして、自分達の血統に起こった"不具合"を無かった事にしようとしていた。
「アジル。どうかお願い…」
「ご安心ください。このアジル、必ずやパーシル様とマナ様をお守りします」
「ありがとうアジル…」
自分の実家を継いだ気弱な兄が、既に子供達を王に渡そうとしている事を察知したニナは、それよりも早く子供達を逃がそうと、自分に古くから仕えてくれている年老いた家令、アジルに子供達を託そうとしていた。
「どうか…あの子らを…」
「ニナ様!?」
小国とはいえ、王妃であるニナの死は、年老いた家令一人に見送られる寂しいものであった。
それから幾年の歳月が経ち…。
◆
「ああ。そういえば大道芸の一座が来る話は聞いてるかい?」
「いえ、初めて聞きました。凜は知ってる?」
「私も初聞きです」
商店街にある魚屋で買い物をしていたユーゴと凜は、店主からそう話を振られる。
「何でも騎士の国を中心に巡行してたみたいだけど、ほら、最近あそこは物騒だろう?それでこっちに来るとかなんとか」
「ああ、なるほど」
「それでこっちへ」
頷くユーゴと凜。
騎士の国は一時ほどではないが、それでも地方はまだまだ不穏で、軍の目が行き届かない場所では野党や盗賊の数も多かった。
尤もそれは、バジリスクの件の逃亡兵や、負傷して急に職を失った者が盗賊の構成員であったため、それなりの戦闘力を保持しており、生半可な戦力では返り討ちになる程であった。
「そこへ駆け出しの吟遊詩人や行商、絵描きとかが合流して、かなりの数になるとか」
「なんとまあ大移動ですね」
「まあ、くっ付いて動いた方が安全だし、どっかのおこぼれの金が舞い込んでくるかもしれないからね」
「ははは」
安全もタダではないこの時代であるから、出来るだけ安く済まそうと思ったら、何かしらの移動にくっ付いて行く方が安上がりなのだ。
「勇吾様。大陸の大道芸はどのようなものなのです?」
「ああ、高い場所から縄一本を歩いて移動したり、熊とかライオンが火の輪をくぐったり、空中でブランコからブランコへ飛び移ったり、そんな感じかな?」
そう故郷のサーカスの様な、大陸の大道芸について説明するユーゴ。
「なかなか大掛かりなのですね」
東方の、小道具で芸をする者達を想像していた凜は、ユーゴから聞かされた内容の大掛かりさに驚く。動物だってせいぜいが猿くらいだ。
「ああ、それと踊り子もいるみたいだ」
「はあ」
魚屋の店主にしてみれば、こっちの方が本題だったのだろう。喜色満面で踊り子も一座と共にやって来る事を嬉しそうに話している。
この時代の大陸で、各地を巡行している踊り子の一座は、煽情的な服で踊るだけでなく、時には金銭と引き換えに、男達を熱い夜に誘う事もしていた。
最も愛妻家のユーゴにしてみれば、そんな踊り子よりも、大道芸を子供達に見せてあげようという思いしかなかったが。
「それに街がにぎわう事はいい事だ」
「そうですね」
リガの街は発展はしているが、それでも地方都市でしかなく、市民が娯楽に飢えている面は確かにあった。
「はい、注文の魚をどうぞ。またよろしくね」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
注文していた魚を受け取り店を出る2人。
「そうか。次はブランコだな…。それとソフィアちゃんが、本物の熊を見て泣かなきゃいいが…」
そう呟きながら帰路に就くユーゴを、微笑まし気に見ている凜であった。
◆
「まあ。大道芸の一座が?」
「うん。リガの街に来るみたい」
「ぱぱ!」
「ぱぱ!」
「おっと。ひひーん」
「わあ!」
「えっへ!」
「えへへ!」
家に帰ったユーゴは、早速家族に大道芸の一座達が来る事を知らせていた。
お馬さんごっこをして、背にソフィアとコレットとクリスを乗せながら。
「それじゃあ皆で見に行きましょう」
「そうだね。ソフィアちゃん、本物の熊さんが出て来ても大丈夫?」
「ぬいぐるみのくまさんと、くまはべつだよ?」
「はっはっは。そうだね!」
自分の背にいるソフィアの回答に、笑いながらリビングを移動するユーゴ。リリアーナは、そんな彼等をリリアーナは写真で撮りまくっているのであった。
「アジル。どうかあの子達をお願い…」
「ニナ様…」
湖の国の第一后ニナの命は、今まさに尽きようとしていた。
「私が死ねば、王は子供達を必ず殺そうとするでしょう」
「はっ…」
療養と称して、王城から実家の侯爵家に戻っていたニナであるが、実際は王に疎まれて戻されていたのだ。
そして、そんなニナの最大の懸念は、自分が生んだ双子の兄妹の行く先である。
「王にとっても我が子なのに…」
王が産後の肥立ちが悪いニナを実家に戻し疎んじたり理由は、人間種の彼女の産んだ赤子たちが、妖精族、、つまりチェンジリングであったことが原因である。
時折起こる、同じ人種同士の子供の種族が違うこの現象は、古くから忌み嫌われており、不貞や血統に紛れ込んだ異物として排除される傾向にあった。
しかも、その赤子たちは最も血統に拘る家、王族に生まれてしまい、父である王は赤子たちを亡き者にして、自分達の血統に起こった"不具合"を無かった事にしようとしていた。
「アジル。どうかお願い…」
「ご安心ください。このアジル、必ずやパーシル様とマナ様をお守りします」
「ありがとうアジル…」
自分の実家を継いだ気弱な兄が、既に子供達を王に渡そうとしている事を察知したニナは、それよりも早く子供達を逃がそうと、自分に古くから仕えてくれている年老いた家令、アジルに子供達を託そうとしていた。
「どうか…あの子らを…」
「ニナ様!?」
小国とはいえ、王妃であるニナの死は、年老いた家令一人に見送られる寂しいものであった。
それから幾年の歳月が経ち…。
◆
「ああ。そういえば大道芸の一座が来る話は聞いてるかい?」
「いえ、初めて聞きました。凜は知ってる?」
「私も初聞きです」
商店街にある魚屋で買い物をしていたユーゴと凜は、店主からそう話を振られる。
「何でも騎士の国を中心に巡行してたみたいだけど、ほら、最近あそこは物騒だろう?それでこっちに来るとかなんとか」
「ああ、なるほど」
「それでこっちへ」
頷くユーゴと凜。
騎士の国は一時ほどではないが、それでも地方はまだまだ不穏で、軍の目が行き届かない場所では野党や盗賊の数も多かった。
尤もそれは、バジリスクの件の逃亡兵や、負傷して急に職を失った者が盗賊の構成員であったため、それなりの戦闘力を保持しており、生半可な戦力では返り討ちになる程であった。
「そこへ駆け出しの吟遊詩人や行商、絵描きとかが合流して、かなりの数になるとか」
「なんとまあ大移動ですね」
「まあ、くっ付いて動いた方が安全だし、どっかのおこぼれの金が舞い込んでくるかもしれないからね」
「ははは」
安全もタダではないこの時代であるから、出来るだけ安く済まそうと思ったら、何かしらの移動にくっ付いて行く方が安上がりなのだ。
「勇吾様。大陸の大道芸はどのようなものなのです?」
「ああ、高い場所から縄一本を歩いて移動したり、熊とかライオンが火の輪をくぐったり、空中でブランコからブランコへ飛び移ったり、そんな感じかな?」
そう故郷のサーカスの様な、大陸の大道芸について説明するユーゴ。
「なかなか大掛かりなのですね」
東方の、小道具で芸をする者達を想像していた凜は、ユーゴから聞かされた内容の大掛かりさに驚く。動物だってせいぜいが猿くらいだ。
「ああ、それと踊り子もいるみたいだ」
「はあ」
魚屋の店主にしてみれば、こっちの方が本題だったのだろう。喜色満面で踊り子も一座と共にやって来る事を嬉しそうに話している。
この時代の大陸で、各地を巡行している踊り子の一座は、煽情的な服で踊るだけでなく、時には金銭と引き換えに、男達を熱い夜に誘う事もしていた。
最も愛妻家のユーゴにしてみれば、そんな踊り子よりも、大道芸を子供達に見せてあげようという思いしかなかったが。
「それに街がにぎわう事はいい事だ」
「そうですね」
リガの街は発展はしているが、それでも地方都市でしかなく、市民が娯楽に飢えている面は確かにあった。
「はい、注文の魚をどうぞ。またよろしくね」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
注文していた魚を受け取り店を出る2人。
「そうか。次はブランコだな…。それとソフィアちゃんが、本物の熊を見て泣かなきゃいいが…」
そう呟きながら帰路に就くユーゴを、微笑まし気に見ている凜であった。
◆
「まあ。大道芸の一座が?」
「うん。リガの街に来るみたい」
「ぱぱ!」
「ぱぱ!」
「おっと。ひひーん」
「わあ!」
「えっへ!」
「えへへ!」
家に帰ったユーゴは、早速家族に大道芸の一座達が来る事を知らせていた。
お馬さんごっこをして、背にソフィアとコレットとクリスを乗せながら。
「それじゃあ皆で見に行きましょう」
「そうだね。ソフィアちゃん、本物の熊さんが出て来ても大丈夫?」
「ぬいぐるみのくまさんと、くまはべつだよ?」
「はっはっは。そうだね!」
自分の背にいるソフィアの回答に、笑いながらリビングを移動するユーゴ。リリアーナは、そんな彼等をリリアーナは写真で撮りまくっているのであった。
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