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はじまり
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『いい加減くたばれ糞婆!』
『下品ですよオリビア』
『デカ物合わせい!』
『死ねい"神からの贈り物"!』
『マーザルにイワンもですか。いい加減諦めなさい【惑わせ 見失え 黒き雲よ 対処する】』
『オリビア!』
『"水鏡"よ!』
『違うぞ煙だ!どこへ!?』
『3人掛かりだったのです』 『それならば私も』 『3人で対処しましょう』
『ウソ!?糞婆が3人!?』
『幻術か!?』
『どれも気を感じるぞ!?』
『水鏡が3方向から対処できるか試してみましょう【【【礫よ 対処する】】】』
『そんな!?』
『伏せいオリビア!』
『ああ、やはり一方向だけなのですね。それでは、【【【永遠に 凍てつけ 動くな 生ある者は 皆止まれ この地に 氷結地獄が現れる 対し】】】この気配…。イライジャですか、面倒な』
『"神からの送り物"おおおおおおおお!』
『全く。ちゃんと名前で呼んで欲しいのですが』
◆
ユーゴ邸
(…はん?夢とは珍しいね)
昨夜はユーゴ邸に泊めて貰ったドロテアは、自分が夢を見ていたことに、驚きながら体を起こしていた。
古い古い、かつて起こった出来事を思い出しながら。
(さて、坊や風に言うなら、面倒な予感がする。だね)
ドロテアが見ていた夢は、100年や200年どころでないほど昔の出来事だ。そんな夢を今さら見るなどとなると、何か面倒なことが起こっているに違いないと、彼女は今までの経験から察していた。
「…あれ?おばあちゃん?」
「ああ起こしちまったかい。まだ明け方だからもう少し寝てな」
「うん。…すうすう」
(体が足りないね)
体を起こしたドロテアに気が付いたのだろう。隣で寝ていたソフィアが起きてしまったが、ドロテアは彼女の目の上にしわくちゃの手を被せる。
そしてソフィアの寝息を聞きながら、港の国への行き来と、ソフィアの教育とで忙しい中、新たな面倒事が起こる予感に、内心でため息を吐くのであった。
◆
「悪ガキどもが負けた上に大怪我?」
「はいご主人様。近所の奥様会議で話題になってました」
「そ、そう」
ルーが近所の奥様達としていた会話をユーゴにも話していたが、この奥様会議、ユーゴ邸が裕福な者達が多く住まうエリアなため、必然そこの奥様が持っている情報もバカに出来なく、普通の市民よりもずっと情報が回るのが早かった。
まあユーゴが言葉に詰まったのは、そんな裕福な奥様達の間に、この可愛らしいルーがガッチリと食い込んでいた事だが。
「しかし悪ガキどもが負けるかあ。奥様方は何とやり合ったか知ってた?」
「いいえそこまでは。でも、砂の国の地下神殿で、何かがあったとは言ってました」
「ふーむ。竜でもいたかな?」
悪ガキ、エドガーとカークの強さを知っているユーゴからすれば、彼等が敗れるとなると、高位の竜か長、または堕ちた神ぐらいしか想像でなかったが、それなら自分が気づくはずだと首を傾げていた。
「勇吾様、その悪ガキとは?」
「わしも気になっておった」
「ああ、そういえば凜たちは会ってなかったね。特級冒険者のエドガーとカークの事だよ。たまに遊びに来ててね」
「おお!特級最強の2人か!」
「そのような者が。どのような御仁なのです?」
甘えたいのか、コレットとクリスに抱き付かれている凜とセラが、聞き覚えの無い悪ガキという呼称に興味を示すが、特級最強と大陸に響いているエドガーとカークの名に、セラは成程と頷く。
しかし、東方生まれの凛は、彼等の名に馴染みが無く、夫に彼等の事を聞いていた。
「そうだなあ。エドガーの方は6つ唱えれる魔法使いで、カークの方は大陸随一の剣士じゃないかなあ」
「何とそれほどの!」
6つも唱えられる者など本当に一握りの存在で、その上、自分の夫が大陸でも随一の剣士と評するなど、その2人は偉大な武人なんだろうと思っていた凜であったが、現実はそんなものではなかった。
「でもあなた」
「うん。エドガーの方は俺、じゃなかった自分、に平気で6つ唱えたのを当ててくるし、カークの方は隙あらば切り掛かって来る辻切りだね」
「それは…」
エドガー達と、初めて会った時の事を思い出したジネットが、ユーゴにそれだけではないでしょう?と言うと、ユーゴも、彼等が強いだけではない問題児だと認め、それを聞いた凜は引き攣った顔をしてしまう。
(エドガーと次会うときは、外での飲みだな)
その問題児達の中で、特にエドガーをユーゴは問題視していた。
それはなぜか。答えは単純。
(子供達にあいつの口調が移ったら立ち直れん)
そう。所かまずクソクソ言いまくるエドガーの口調が、自分の子供達に移る事をユーゴは非常に懸念していたのだ。
今だって自分の一人称に俺を使わない様に苦心しているのに、エドガーが子供達の前に現れれば、そんな苦労なぞ木っ端微塵である。
(子供達にくそ親父なんて言われた日には…。うっ動悸が。ん?誰か来たな。いや、覚えがある様な…)
その6つの魔法を当てられてもぴんぴんしている体が、単なる仮定の想像でダメージを受けていた時である。ユーゴはリガの街に入って来た2人の気配に、どこかで会ったはずだと記憶をたどっていた。
しかし、覚えのある気配はその2人だけではなかった。
(はん?確かエルフの長老の…)
転移で現れたのか、ドロテアの店がある方向に現れた強い気配にも覚えがあった。こちらの気配は強かったためよく覚えており、海の国で面識を得た、エルフの長老であるとすぐに気が付いた。
「婆さん」
「ああ、ビムだね。全く、連絡も無しにいきなり転移とは、余程慌ててるね」
「こっちにいる事は知ってるのか?」
「言ってはいるけど場所が分からんだろう。うちの子が店番してるけど、さて、年寄りに道を覚えきれるかね」
(あんたに年寄言われたくないだろう)
「私はまだまだ若いさね」
「俺が迎えに行くよ。覚えのある気配も2人いるし」
「頼んだよ」
どうせ覚えのある気配を確認しようと、外へ向かうつもりだったユーゴは、ついでにエルフの長老をここに連れて来ようと席を立った。
しかし。
(嫌な予感がする。具体的にはまた家を空けないといけない予感が…)
ここ最近慣れ親しんだ感覚を感じてしまい、早くもげんなりとしているユーゴであった。
(急ぎなのはエルフの長老の方だよな)
絶対に厄介ごとだと確信しながらも、嫌々ながらユーゴは屋敷の外へと出かける事となった。
まずは優先度の高いであろうエルフの長老ビムを、次に覚えのある気配だと順番を決め、気配を極限まで薄めて、街中へと飛び立つのであった。
◆
「ドロテア様は御留守!?」
「はい。最近はユーゴさんという方の家で寝泊まりしてまして、今日はここに居ません」
(まずいぞ!急ぎ連絡しないといけない事なのに!)
ある報告を受けて、慌ててリガの街にやって来たエルフの長老ビムであったが、事前に連絡を取らなかったミスが響き、帰って来た答えは留守という最悪な物であった。
「急ぎでしたら道案内しましょうか?」
(ドロテア様のご子孫の方を使う事になるが、致し方なし!)
「おね」
「そこにいらっしゃるのは、ひょっとしてビム長老では無いですか?」
「あ、ユーゴさん。ちょうどよかった」
「お、おお!海の国でドロテア様とご一緒だった」
「ユーゴです。なにやらドロテアの婆さんに、御用がある様子ですね」
ビムが背に腹は代えられないと、店番をしていたドロテアの玄孫にお願いをしようとしようとした寸前、背後からやって来たユーゴが、さも偶然を装って彼に声を掛けた。
「婆さんは今うちに居まして、ご案内しましょうか?」
「ぜひお願いします!」
「それではこちらへ」
今の今まで、ユーゴの顔と名前が一致していなかったビムであったが、ユーゴの提案に勢いよく頷いて、彼の後へと続いて行く。
(あの気配、俺の前の家に行ってるな。やっぱり知人か?)
一方のユーゴは、ビムを連れながら、追っている2人の気配が、引っ越す前の家の方に向かっているのを感じて、やはり自分の知人であると思っていたが、どうしても思い出せずにいた。
◆
「ドロテア様!」
「なんだいビム?人の家なんだ、あんまり大声出すんじゃないよ」
「お久しぶりです長老」
「ちょーろー?」
「こ、これは失礼しました。ん?ひょっとしてリリアーナか!?」
「はい。この子はクリス。夫ユーゴ様との子供です」
「クー!」
「こ、子供まで!?」
自分はこれでと、居間の前で別れたユーゴに礼を言い終わるや、すぐに部屋へと飛び込むが、ドロテアに窘められてしまい、すぐさま謝罪をする。
しかし、ドロテアが長らく会って無いだろうと、気を効かせて同席させたリリアーナに気が付くと、またしても大声を出しながら驚愕していた。
一応、リリアーナがリガの街にいる事は知っていたビムであったが、子供まで生まれているとは知らず、元気に手を上げて自己紹介しているクリスと、リリアーナの顔を何度も見比べる。
「それで要件は何だい?」
「そ、そうでした!"はじまり"達が復活を!」
「…全く」
(嫌な予感はこれかい。私の勘も捨てたもんじゃないね)
「ドロテア様?」
「バーバいたいいたい?」
「ああ大丈夫だよ」
ビムから告げられた言葉に、ドロテアは頭痛をこらえるように眉間を押さえ、それを心配したリリアーナとクリスに、何でもないように言うが、しかめっ面は直っていなかった。
「どうしてわかったんだい?」
「どうやら砂の国の地下深くに隠れていたようで、調査に赴いた者達に自ら名乗り、特級最強のエドガーとカークを退けてどこかへと…」
「ふんっ」
(態々名乗って自己を知らしめるとはイライジャだね。相変わらず傲慢だ。どうせ口では慎重とか言いながらも、自分達を止められる者なんてい居ないと考えてるから、名乗り上げなんてする。だからこんなには早く私のとこまで話が来るんだ。本当にあの人と兄弟なのかね?)
「それで奇妙な話なのですが、その者達は5人いたらしく…」
「5人?4人じゃなくて?」
「はい。どうも妖精族の少女がいたらしく」
「はて…」
(覚えがない…。オリビア達程度なら問題ないけど、万が一イライジャみたいな能力だと手に余るかもしれないね…)
自分が死んだとでも思っていたのか、堂々と名乗りを上げている"はじまり"を嘲りながらも、自分の知らない5人目が存在していることに、一気に警戒度を上げて考え込むドロテア。
「あの、長老。その"はじまり"とは?」
「ああそうか、リリアーナはまだ生まれても無かったか。奴等は人種達が大陸に生まれた後すぐの時代に、我々と敵対していた組織だ。その目的は神々の殺害と世界樹の破壊にある」
「神々と世界樹を!?」
「ふん。私だって我慢してたのにあいつらときたら」
「ドロテア様ぁ…どうか余所では…」
考え込んでいるドロテアに遠慮して、ビムに声を掛けたリリアーナは、彼から返って来た予想外の言葉に口に手を当てて驚愕したが、ビムはビムで、ドロテアの言葉に情けない声を出しながら、遠慮がちに抗議していた。
「まあ今生き残ってるのは善性の神だけだし、神の力を大陸に広げている世界樹をやられると、魔物どもの攻勢に人種が耐え切れなくなる。仕方ない、行くとしようかね。悪いけど、ソフィアの事頼んでいいかい?」
「おお!ありがとうございます!」
「もちろんです。ドロテア様。どうかお気を付けて」
「はいよ」
こうして、ドロテアの里帰りが決まったのであった。
◆
婆型極大魔法発射装置里帰り決定!
◆
「ばーば。どこいくの?ふえええ」
「ああほらクリス、泣くのはおよし」
でもちょっぴり挫けていたぞ!
◆
(子供が泣いている気がする!この感じはクリスか!?)
父親としての勘なのか、それとも単なる親馬鹿なのか、自分の子供が泣いていることを察知したユーゴであったが、家には母親のリリアーナがいると、それこそ泣く泣く帰宅する考えを打ち消しながら、覚えのある気配の下へと足を進めていく。
「どうしようフィン!?空き家になってる!」
「落ち着いてセシル。とりあえず近所の人たちに聞いてみよう」
(思い出した!悪ガキ共の姪と弟子の、セシルちゃんとフィン君だ!)
すると、かつて自分の住んでいた一軒家の前で、何やら慌てた様子で相談し合っている2人の男女がおり、ユーゴは、その2人を見てエドガーの姪とフィンの弟子である、セシルとフィンであると思い出した。
「やあ、どうしたんだい?」
(という事は、悪ガキ共の件だな)
ユーゴは2人に何か用事かと声を掛けながらも、エドガーとカークが重症らしい今、用件はそれだろうと見当はつけていた。
「あ、ユーゴさん!?よかった!」
「実は師匠達が重傷で!」
「うん、話だけは聞いてる。なんでも砂の国での調査で、何かとやり合って重傷だって」
「そうなんです!それで師匠達からユーゴさんに伝言があって!」
「俺に伝言?」
「はい!敵は5人いたんですが、その中の2人は自分達じゃ手に負えないから、ユーゴさんに知らせろって!」
「なぬ?」
(悪ガキどもが手に負えないって言った挙句、俺に知らせろって?その2人どんだけだよ)
エドガー達が敗北したのは既に知っていたが、まさかあの2人が勝てないと判断して、自分に知らせる様、人を寄越すなど、ユーゴは一体何に出くわしたんだと、心の中で驚愕していた。
「その2人はどんな奴等だった?」
「いえそれが、師匠達を相手にしてたのがドワーフ一人で、その2人が誰の事なのか…」
「叔父さん達は、ドワーフに意識をあんまり向けていませんでしたから、残りの4人の内の誰かだと思うんですけど…」
「ふうむ…」
(悪ガキ共を一人で相手取った奴より、更に意識を向けないといけない奴がいたとなると、本当にヤバい奴が混じってるみたいだな)
自信なさげにそういうセシルの答えに、ユーゴは警戒感を上げていく。
エドガーとカークの性格からすると、次は自分達が勝つと言うに決まっているのに、態々自分に伝言を残しているのだ。強さだけでなく、何か危険な気配を感じ取ったのかもしれないと思っていた。
「慌ただしくて申し訳ないのですが、これから自分達はまた師匠達の所へ…」
「うん分かった。まあ、あの2人なんだ。数日したらピンピンしてるさ」
「あはは。それでは」
気休めではなく、エドガー達ほどの位階の高さなら、即死などよっぽどのことでない限り、死ぬ事はないのだ。
「あ、そういえばその連中の事、世間はなんて呼んでるの?」
「あ、"はじまり"って自分達で言ってました」
「"はじまり"ねえ」
◆
(さてどうしたものか…)
エドガーとカークを打ち負かしているのだ。その相手に興味が無いわけではないが、死人が出たとか大陸の危機とか、そういった類の話でないため、態々自分が家族をほっぽり出してまで、動く必要があるかとユーゴは自宅に帰りながら悩んでいた。
(そもそも目的も居場所も分からん事にはな…。んんん!?クリスがまだ泣いてる!?一体何が!?)
「どうしたクリス!?パパですよ!」
そんな悩みながら自宅に帰って来たユーゴであったが、自分の聴覚がクリスの泣き声を感知すると、慌てて自宅に入り、クリスがいるであろう居間の中へ転がるように飛び込んだ。
「えっぐ。パパー。ぐすっ。バーバがふええ」
「全く、寂しがり屋だね。ほら泣き止みな」
「……リリアーナ。どゆこと?婆さんどっか行くの?」
そこでユーゴが目にしたのは、珍しく困ったような表情で、クリスを抱き上げてあやしていたドロテアの姿で、息子がバーバと言っただけで、ドロテアがどこかへ行くと通じたユーゴは、同じく困った顔でリリアーナに問うのであった。
「ビム長老が言うには、なんでも"はじまり"という組織が、世界樹を破壊しようとしているらしくて、それを阻止するためにドロテア様が行こうと言われたんですが、クリスが…」
「ははあ。"はじまり"が世界樹を。世間は狭いと言うべきか……」
これまた同じく、困った顔でクリスを見ていたリリアーナの答えに、先程聞いたばかりの名前が出て来たことに、ユーゴは世間の狭さというものを実感していた。
「それはどういう?」
「いや、さっき悪ガキ、エドガーとカークの姪と弟子の2人にあってね。どうやらエドガー達を負かしたのもその"はじまり"だったみたいなんだ」
「まあ」
「坊や。父親だろ?クリスを泣き止まさせな」
先程あったことをリリアーナに説明しているユーゴを見て、これは手古摺ると感じたドロテアが、クリスを渡して何とかしようとする。
「どうしたクリス?婆さん、今までもよく出かけてたろ?」
「ぐっす。いつー?」
「え?じゃあ今度はいつ帰って来るかだって?いつ?」
「さて、ちょっと手古摺るかもしれんからね……」
「ふえ」
またも父親らしく、以心伝心でクリスの言いたいことをドロテアに伝えるが、帰って来た返事はクリスを悲しませるものであった。
「え?婆さんが手古摺るの?というか知り合い?ああ、クリス。泣かないで」
「まだ私が若い頃からのね。4人の内3人は問題ないんだけど、最後の1人がちと面倒なんだよ」
「ん?4人?5人じゃなくて?」
「どうも知らない所で増えたらしい」
「分裂でもするんかい。それで、その面倒なのはどうして?」
「人種のイライジャって男だがね。そいつは」
◆
「バカな!?どうして魔法が唱えられない!?」
「体がいつも通り動かねえ!?」
「【ほ……】ダメだ!俺も唱えられねえ!」
「いやあ、人にテストテストと言っておいて、自分の力の確認をしてませんでした。すいませんね冒険者でしたっけ?の皆さん」
「しっかりしてよねイライジャ」
「いやあ面目ない。ははは」
◆
「神の加護とか、魔法。力ある言葉を使えなくさせられるんだよ」
『いい加減くたばれ糞婆!』
『下品ですよオリビア』
『デカ物合わせい!』
『死ねい"神からの贈り物"!』
『マーザルにイワンもですか。いい加減諦めなさい【惑わせ 見失え 黒き雲よ 対処する】』
『オリビア!』
『"水鏡"よ!』
『違うぞ煙だ!どこへ!?』
『3人掛かりだったのです』 『それならば私も』 『3人で対処しましょう』
『ウソ!?糞婆が3人!?』
『幻術か!?』
『どれも気を感じるぞ!?』
『水鏡が3方向から対処できるか試してみましょう【【【礫よ 対処する】】】』
『そんな!?』
『伏せいオリビア!』
『ああ、やはり一方向だけなのですね。それでは、【【【永遠に 凍てつけ 動くな 生ある者は 皆止まれ この地に 氷結地獄が現れる 対し】】】この気配…。イライジャですか、面倒な』
『"神からの送り物"おおおおおおおお!』
『全く。ちゃんと名前で呼んで欲しいのですが』
◆
ユーゴ邸
(…はん?夢とは珍しいね)
昨夜はユーゴ邸に泊めて貰ったドロテアは、自分が夢を見ていたことに、驚きながら体を起こしていた。
古い古い、かつて起こった出来事を思い出しながら。
(さて、坊や風に言うなら、面倒な予感がする。だね)
ドロテアが見ていた夢は、100年や200年どころでないほど昔の出来事だ。そんな夢を今さら見るなどとなると、何か面倒なことが起こっているに違いないと、彼女は今までの経験から察していた。
「…あれ?おばあちゃん?」
「ああ起こしちまったかい。まだ明け方だからもう少し寝てな」
「うん。…すうすう」
(体が足りないね)
体を起こしたドロテアに気が付いたのだろう。隣で寝ていたソフィアが起きてしまったが、ドロテアは彼女の目の上にしわくちゃの手を被せる。
そしてソフィアの寝息を聞きながら、港の国への行き来と、ソフィアの教育とで忙しい中、新たな面倒事が起こる予感に、内心でため息を吐くのであった。
◆
「悪ガキどもが負けた上に大怪我?」
「はいご主人様。近所の奥様会議で話題になってました」
「そ、そう」
ルーが近所の奥様達としていた会話をユーゴにも話していたが、この奥様会議、ユーゴ邸が裕福な者達が多く住まうエリアなため、必然そこの奥様が持っている情報もバカに出来なく、普通の市民よりもずっと情報が回るのが早かった。
まあユーゴが言葉に詰まったのは、そんな裕福な奥様達の間に、この可愛らしいルーがガッチリと食い込んでいた事だが。
「しかし悪ガキどもが負けるかあ。奥様方は何とやり合ったか知ってた?」
「いいえそこまでは。でも、砂の国の地下神殿で、何かがあったとは言ってました」
「ふーむ。竜でもいたかな?」
悪ガキ、エドガーとカークの強さを知っているユーゴからすれば、彼等が敗れるとなると、高位の竜か長、または堕ちた神ぐらいしか想像でなかったが、それなら自分が気づくはずだと首を傾げていた。
「勇吾様、その悪ガキとは?」
「わしも気になっておった」
「ああ、そういえば凜たちは会ってなかったね。特級冒険者のエドガーとカークの事だよ。たまに遊びに来ててね」
「おお!特級最強の2人か!」
「そのような者が。どのような御仁なのです?」
甘えたいのか、コレットとクリスに抱き付かれている凜とセラが、聞き覚えの無い悪ガキという呼称に興味を示すが、特級最強と大陸に響いているエドガーとカークの名に、セラは成程と頷く。
しかし、東方生まれの凛は、彼等の名に馴染みが無く、夫に彼等の事を聞いていた。
「そうだなあ。エドガーの方は6つ唱えれる魔法使いで、カークの方は大陸随一の剣士じゃないかなあ」
「何とそれほどの!」
6つも唱えられる者など本当に一握りの存在で、その上、自分の夫が大陸でも随一の剣士と評するなど、その2人は偉大な武人なんだろうと思っていた凜であったが、現実はそんなものではなかった。
「でもあなた」
「うん。エドガーの方は俺、じゃなかった自分、に平気で6つ唱えたのを当ててくるし、カークの方は隙あらば切り掛かって来る辻切りだね」
「それは…」
エドガー達と、初めて会った時の事を思い出したジネットが、ユーゴにそれだけではないでしょう?と言うと、ユーゴも、彼等が強いだけではない問題児だと認め、それを聞いた凜は引き攣った顔をしてしまう。
(エドガーと次会うときは、外での飲みだな)
その問題児達の中で、特にエドガーをユーゴは問題視していた。
それはなぜか。答えは単純。
(子供達にあいつの口調が移ったら立ち直れん)
そう。所かまずクソクソ言いまくるエドガーの口調が、自分の子供達に移る事をユーゴは非常に懸念していたのだ。
今だって自分の一人称に俺を使わない様に苦心しているのに、エドガーが子供達の前に現れれば、そんな苦労なぞ木っ端微塵である。
(子供達にくそ親父なんて言われた日には…。うっ動悸が。ん?誰か来たな。いや、覚えがある様な…)
その6つの魔法を当てられてもぴんぴんしている体が、単なる仮定の想像でダメージを受けていた時である。ユーゴはリガの街に入って来た2人の気配に、どこかで会ったはずだと記憶をたどっていた。
しかし、覚えのある気配はその2人だけではなかった。
(はん?確かエルフの長老の…)
転移で現れたのか、ドロテアの店がある方向に現れた強い気配にも覚えがあった。こちらの気配は強かったためよく覚えており、海の国で面識を得た、エルフの長老であるとすぐに気が付いた。
「婆さん」
「ああ、ビムだね。全く、連絡も無しにいきなり転移とは、余程慌ててるね」
「こっちにいる事は知ってるのか?」
「言ってはいるけど場所が分からんだろう。うちの子が店番してるけど、さて、年寄りに道を覚えきれるかね」
(あんたに年寄言われたくないだろう)
「私はまだまだ若いさね」
「俺が迎えに行くよ。覚えのある気配も2人いるし」
「頼んだよ」
どうせ覚えのある気配を確認しようと、外へ向かうつもりだったユーゴは、ついでにエルフの長老をここに連れて来ようと席を立った。
しかし。
(嫌な予感がする。具体的にはまた家を空けないといけない予感が…)
ここ最近慣れ親しんだ感覚を感じてしまい、早くもげんなりとしているユーゴであった。
(急ぎなのはエルフの長老の方だよな)
絶対に厄介ごとだと確信しながらも、嫌々ながらユーゴは屋敷の外へと出かける事となった。
まずは優先度の高いであろうエルフの長老ビムを、次に覚えのある気配だと順番を決め、気配を極限まで薄めて、街中へと飛び立つのであった。
◆
「ドロテア様は御留守!?」
「はい。最近はユーゴさんという方の家で寝泊まりしてまして、今日はここに居ません」
(まずいぞ!急ぎ連絡しないといけない事なのに!)
ある報告を受けて、慌ててリガの街にやって来たエルフの長老ビムであったが、事前に連絡を取らなかったミスが響き、帰って来た答えは留守という最悪な物であった。
「急ぎでしたら道案内しましょうか?」
(ドロテア様のご子孫の方を使う事になるが、致し方なし!)
「おね」
「そこにいらっしゃるのは、ひょっとしてビム長老では無いですか?」
「あ、ユーゴさん。ちょうどよかった」
「お、おお!海の国でドロテア様とご一緒だった」
「ユーゴです。なにやらドロテアの婆さんに、御用がある様子ですね」
ビムが背に腹は代えられないと、店番をしていたドロテアの玄孫にお願いをしようとしようとした寸前、背後からやって来たユーゴが、さも偶然を装って彼に声を掛けた。
「婆さんは今うちに居まして、ご案内しましょうか?」
「ぜひお願いします!」
「それではこちらへ」
今の今まで、ユーゴの顔と名前が一致していなかったビムであったが、ユーゴの提案に勢いよく頷いて、彼の後へと続いて行く。
(あの気配、俺の前の家に行ってるな。やっぱり知人か?)
一方のユーゴは、ビムを連れながら、追っている2人の気配が、引っ越す前の家の方に向かっているのを感じて、やはり自分の知人であると思っていたが、どうしても思い出せずにいた。
◆
「ドロテア様!」
「なんだいビム?人の家なんだ、あんまり大声出すんじゃないよ」
「お久しぶりです長老」
「ちょーろー?」
「こ、これは失礼しました。ん?ひょっとしてリリアーナか!?」
「はい。この子はクリス。夫ユーゴ様との子供です」
「クー!」
「こ、子供まで!?」
自分はこれでと、居間の前で別れたユーゴに礼を言い終わるや、すぐに部屋へと飛び込むが、ドロテアに窘められてしまい、すぐさま謝罪をする。
しかし、ドロテアが長らく会って無いだろうと、気を効かせて同席させたリリアーナに気が付くと、またしても大声を出しながら驚愕していた。
一応、リリアーナがリガの街にいる事は知っていたビムであったが、子供まで生まれているとは知らず、元気に手を上げて自己紹介しているクリスと、リリアーナの顔を何度も見比べる。
「それで要件は何だい?」
「そ、そうでした!"はじまり"達が復活を!」
「…全く」
(嫌な予感はこれかい。私の勘も捨てたもんじゃないね)
「ドロテア様?」
「バーバいたいいたい?」
「ああ大丈夫だよ」
ビムから告げられた言葉に、ドロテアは頭痛をこらえるように眉間を押さえ、それを心配したリリアーナとクリスに、何でもないように言うが、しかめっ面は直っていなかった。
「どうしてわかったんだい?」
「どうやら砂の国の地下深くに隠れていたようで、調査に赴いた者達に自ら名乗り、特級最強のエドガーとカークを退けてどこかへと…」
「ふんっ」
(態々名乗って自己を知らしめるとはイライジャだね。相変わらず傲慢だ。どうせ口では慎重とか言いながらも、自分達を止められる者なんてい居ないと考えてるから、名乗り上げなんてする。だからこんなには早く私のとこまで話が来るんだ。本当にあの人と兄弟なのかね?)
「それで奇妙な話なのですが、その者達は5人いたらしく…」
「5人?4人じゃなくて?」
「はい。どうも妖精族の少女がいたらしく」
「はて…」
(覚えがない…。オリビア達程度なら問題ないけど、万が一イライジャみたいな能力だと手に余るかもしれないね…)
自分が死んだとでも思っていたのか、堂々と名乗りを上げている"はじまり"を嘲りながらも、自分の知らない5人目が存在していることに、一気に警戒度を上げて考え込むドロテア。
「あの、長老。その"はじまり"とは?」
「ああそうか、リリアーナはまだ生まれても無かったか。奴等は人種達が大陸に生まれた後すぐの時代に、我々と敵対していた組織だ。その目的は神々の殺害と世界樹の破壊にある」
「神々と世界樹を!?」
「ふん。私だって我慢してたのにあいつらときたら」
「ドロテア様ぁ…どうか余所では…」
考え込んでいるドロテアに遠慮して、ビムに声を掛けたリリアーナは、彼から返って来た予想外の言葉に口に手を当てて驚愕したが、ビムはビムで、ドロテアの言葉に情けない声を出しながら、遠慮がちに抗議していた。
「まあ今生き残ってるのは善性の神だけだし、神の力を大陸に広げている世界樹をやられると、魔物どもの攻勢に人種が耐え切れなくなる。仕方ない、行くとしようかね。悪いけど、ソフィアの事頼んでいいかい?」
「おお!ありがとうございます!」
「もちろんです。ドロテア様。どうかお気を付けて」
「はいよ」
こうして、ドロテアの里帰りが決まったのであった。
◆
婆型極大魔法発射装置里帰り決定!
◆
「ばーば。どこいくの?ふえええ」
「ああほらクリス、泣くのはおよし」
でもちょっぴり挫けていたぞ!
◆
(子供が泣いている気がする!この感じはクリスか!?)
父親としての勘なのか、それとも単なる親馬鹿なのか、自分の子供が泣いていることを察知したユーゴであったが、家には母親のリリアーナがいると、それこそ泣く泣く帰宅する考えを打ち消しながら、覚えのある気配の下へと足を進めていく。
「どうしようフィン!?空き家になってる!」
「落ち着いてセシル。とりあえず近所の人たちに聞いてみよう」
(思い出した!悪ガキ共の姪と弟子の、セシルちゃんとフィン君だ!)
すると、かつて自分の住んでいた一軒家の前で、何やら慌てた様子で相談し合っている2人の男女がおり、ユーゴは、その2人を見てエドガーの姪とフィンの弟子である、セシルとフィンであると思い出した。
「やあ、どうしたんだい?」
(という事は、悪ガキ共の件だな)
ユーゴは2人に何か用事かと声を掛けながらも、エドガーとカークが重症らしい今、用件はそれだろうと見当はつけていた。
「あ、ユーゴさん!?よかった!」
「実は師匠達が重傷で!」
「うん、話だけは聞いてる。なんでも砂の国での調査で、何かとやり合って重傷だって」
「そうなんです!それで師匠達からユーゴさんに伝言があって!」
「俺に伝言?」
「はい!敵は5人いたんですが、その中の2人は自分達じゃ手に負えないから、ユーゴさんに知らせろって!」
「なぬ?」
(悪ガキどもが手に負えないって言った挙句、俺に知らせろって?その2人どんだけだよ)
エドガー達が敗北したのは既に知っていたが、まさかあの2人が勝てないと判断して、自分に知らせる様、人を寄越すなど、ユーゴは一体何に出くわしたんだと、心の中で驚愕していた。
「その2人はどんな奴等だった?」
「いえそれが、師匠達を相手にしてたのがドワーフ一人で、その2人が誰の事なのか…」
「叔父さん達は、ドワーフに意識をあんまり向けていませんでしたから、残りの4人の内の誰かだと思うんですけど…」
「ふうむ…」
(悪ガキ共を一人で相手取った奴より、更に意識を向けないといけない奴がいたとなると、本当にヤバい奴が混じってるみたいだな)
自信なさげにそういうセシルの答えに、ユーゴは警戒感を上げていく。
エドガーとカークの性格からすると、次は自分達が勝つと言うに決まっているのに、態々自分に伝言を残しているのだ。強さだけでなく、何か危険な気配を感じ取ったのかもしれないと思っていた。
「慌ただしくて申し訳ないのですが、これから自分達はまた師匠達の所へ…」
「うん分かった。まあ、あの2人なんだ。数日したらピンピンしてるさ」
「あはは。それでは」
気休めではなく、エドガー達ほどの位階の高さなら、即死などよっぽどのことでない限り、死ぬ事はないのだ。
「あ、そういえばその連中の事、世間はなんて呼んでるの?」
「あ、"はじまり"って自分達で言ってました」
「"はじまり"ねえ」
◆
(さてどうしたものか…)
エドガーとカークを打ち負かしているのだ。その相手に興味が無いわけではないが、死人が出たとか大陸の危機とか、そういった類の話でないため、態々自分が家族をほっぽり出してまで、動く必要があるかとユーゴは自宅に帰りながら悩んでいた。
(そもそも目的も居場所も分からん事にはな…。んんん!?クリスがまだ泣いてる!?一体何が!?)
「どうしたクリス!?パパですよ!」
そんな悩みながら自宅に帰って来たユーゴであったが、自分の聴覚がクリスの泣き声を感知すると、慌てて自宅に入り、クリスがいるであろう居間の中へ転がるように飛び込んだ。
「えっぐ。パパー。ぐすっ。バーバがふええ」
「全く、寂しがり屋だね。ほら泣き止みな」
「……リリアーナ。どゆこと?婆さんどっか行くの?」
そこでユーゴが目にしたのは、珍しく困ったような表情で、クリスを抱き上げてあやしていたドロテアの姿で、息子がバーバと言っただけで、ドロテアがどこかへ行くと通じたユーゴは、同じく困った顔でリリアーナに問うのであった。
「ビム長老が言うには、なんでも"はじまり"という組織が、世界樹を破壊しようとしているらしくて、それを阻止するためにドロテア様が行こうと言われたんですが、クリスが…」
「ははあ。"はじまり"が世界樹を。世間は狭いと言うべきか……」
これまた同じく、困った顔でクリスを見ていたリリアーナの答えに、先程聞いたばかりの名前が出て来たことに、ユーゴは世間の狭さというものを実感していた。
「それはどういう?」
「いや、さっき悪ガキ、エドガーとカークの姪と弟子の2人にあってね。どうやらエドガー達を負かしたのもその"はじまり"だったみたいなんだ」
「まあ」
「坊や。父親だろ?クリスを泣き止まさせな」
先程あったことをリリアーナに説明しているユーゴを見て、これは手古摺ると感じたドロテアが、クリスを渡して何とかしようとする。
「どうしたクリス?婆さん、今までもよく出かけてたろ?」
「ぐっす。いつー?」
「え?じゃあ今度はいつ帰って来るかだって?いつ?」
「さて、ちょっと手古摺るかもしれんからね……」
「ふえ」
またも父親らしく、以心伝心でクリスの言いたいことをドロテアに伝えるが、帰って来た返事はクリスを悲しませるものであった。
「え?婆さんが手古摺るの?というか知り合い?ああ、クリス。泣かないで」
「まだ私が若い頃からのね。4人の内3人は問題ないんだけど、最後の1人がちと面倒なんだよ」
「ん?4人?5人じゃなくて?」
「どうも知らない所で増えたらしい」
「分裂でもするんかい。それで、その面倒なのはどうして?」
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◆
「バカな!?どうして魔法が唱えられない!?」
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◆
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