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第一章
9話
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おや、挨拶はきちんとしてる、さすが貴族の御子息……と思ったのは一瞬で、私はあと一歩のところで手にしたグラスを取り落としそうな衝撃に見舞われた。
ラルフ=トイフル=ローゼングレン。
脳裏に、照れたようなぶっきらぼうなセリフの数々が蘇る。そう。彼はまさに、ラビファンの攻略対象の1人だった。
攻略対象__所謂、"ラビファン男子"の1人である彼は、代々国を守るための騎士として王家に仕えたローゼングレン家の人間だ。ワイルド担当で、オオカミのような印象を与える黄金の満月のような金色の瞳と、夜色の髪。ゲーム開始時の姿からは強そう、という印象を受けるが、今はどちらかと言うと悪ガキ、という印象の方が強かった。
確か彼は、騎士にはなりたくないと言っていたような……などといった細かい情報を引き出す時間は今はない。後々、まとめノートを作らなくては。そんなことを考えていると、彼の方から私に向かって話しかけてきた。
「はっ……クラネリアのわがままお嬢様にしては、随分と落ち着いた格好だな」
恐らくは馬鹿にされているのだろうが、今の私にそれは最上の賛辞だ。
「まぁ!本当ですか!私、地味に見えます?」
「……えっ」
「大変でしたのよ。これを探し出すのは。セシルにも迷惑をかけてしまったわ。後でお礼をしないと……」
そうだそうだと頷いていると、ラルフ____いやもう私からすれば完全にキャラ名で呼び捨て以外違和感しかないから心の中では呼び捨てにするけど___がポカンと口を開けてこちらを見ている。
「……変なやつだな」
「あら、その間抜けな顔で言うあなたにも当てはまりましてよ」
「……!やっぱ嫌なやつだな!」
「3対1などと言う卑怯な真似をする殿方には言われたくありませんわね」
「ぐっ……あ、あれは……鳥が怪我をしてたから……あいつより俺の方がいいかと……」
ごにょごにょと何かを言っているが、残念ながら今の私のラルフの印象はあまりよろしくない。攻略対象とか関係ない。推しを、ノアくんを、ちょっとでも泣かせようとした奴に慈悲などない!!おまけにクッキーまで食べられた!シークレットブーツを暴露されないだけ感謝すればいい……!!19歳が7歳の子供に何をと言われるかもしれないが大学生とて譲れないものはある!!
そんなことを考えていたらまたノアくんを思い出して必死に能面を作っていると、ふっと当たりが静かになった。なんだろう?と首を傾げると、私が入ってきたのとは反対の広間の扉が大きく開け放たれた。
途端にしん、と静まり返った空間に、コツ、という足音が響く。
「_______皆さん、今日は僕が初めて取り仕切るお茶会の場へ来てくださりありがとうございます」
凛、とした声と共に現れたのは、絶世の美少年だった。
黄金に輝く髪。レカファウロスの王位継承者の証である、森と湖を混ぜたような深い色合いのエメラルドグリーンの瞳。
ゲームで見たよりは幼く、しかし面影はしっかり残している、この国の王太子________
アレスフィル=カルト=レカファウロスがそこにいた。
歌うように朗々と挨拶をする王太子殿下を本物だ……と、ぽけーっと見つめていると、
「……お前、あいつの婚約者なんだろ」
と横から小さく話しかけられた。
「そう……みたいですね。ええ。今見ていて確信しましたわ」
「どんな手を使ったか知らないが、お前とあいつは……」
「やはり、殿下と私では月とすっぽん、いいえ、ミジンコと象くらいの差がありますわ。やはり、私に彼の方の妃は務まらない……なんとかしなくては」
心の中で言っているつもりだった声がバッチリ口に出ていた私を、ぽかんとした顔でラルフが見ていた。しかし、私はそんなことには全く気づかずに殿下を睨め付け、頭の中で嫌われるための作戦を立てているのである。
ラルフ=トイフル=ローゼングレン。
脳裏に、照れたようなぶっきらぼうなセリフの数々が蘇る。そう。彼はまさに、ラビファンの攻略対象の1人だった。
攻略対象__所謂、"ラビファン男子"の1人である彼は、代々国を守るための騎士として王家に仕えたローゼングレン家の人間だ。ワイルド担当で、オオカミのような印象を与える黄金の満月のような金色の瞳と、夜色の髪。ゲーム開始時の姿からは強そう、という印象を受けるが、今はどちらかと言うと悪ガキ、という印象の方が強かった。
確か彼は、騎士にはなりたくないと言っていたような……などといった細かい情報を引き出す時間は今はない。後々、まとめノートを作らなくては。そんなことを考えていると、彼の方から私に向かって話しかけてきた。
「はっ……クラネリアのわがままお嬢様にしては、随分と落ち着いた格好だな」
恐らくは馬鹿にされているのだろうが、今の私にそれは最上の賛辞だ。
「まぁ!本当ですか!私、地味に見えます?」
「……えっ」
「大変でしたのよ。これを探し出すのは。セシルにも迷惑をかけてしまったわ。後でお礼をしないと……」
そうだそうだと頷いていると、ラルフ____いやもう私からすれば完全にキャラ名で呼び捨て以外違和感しかないから心の中では呼び捨てにするけど___がポカンと口を開けてこちらを見ている。
「……変なやつだな」
「あら、その間抜けな顔で言うあなたにも当てはまりましてよ」
「……!やっぱ嫌なやつだな!」
「3対1などと言う卑怯な真似をする殿方には言われたくありませんわね」
「ぐっ……あ、あれは……鳥が怪我をしてたから……あいつより俺の方がいいかと……」
ごにょごにょと何かを言っているが、残念ながら今の私のラルフの印象はあまりよろしくない。攻略対象とか関係ない。推しを、ノアくんを、ちょっとでも泣かせようとした奴に慈悲などない!!おまけにクッキーまで食べられた!シークレットブーツを暴露されないだけ感謝すればいい……!!19歳が7歳の子供に何をと言われるかもしれないが大学生とて譲れないものはある!!
そんなことを考えていたらまたノアくんを思い出して必死に能面を作っていると、ふっと当たりが静かになった。なんだろう?と首を傾げると、私が入ってきたのとは反対の広間の扉が大きく開け放たれた。
途端にしん、と静まり返った空間に、コツ、という足音が響く。
「_______皆さん、今日は僕が初めて取り仕切るお茶会の場へ来てくださりありがとうございます」
凛、とした声と共に現れたのは、絶世の美少年だった。
黄金に輝く髪。レカファウロスの王位継承者の証である、森と湖を混ぜたような深い色合いのエメラルドグリーンの瞳。
ゲームで見たよりは幼く、しかし面影はしっかり残している、この国の王太子________
アレスフィル=カルト=レカファウロスがそこにいた。
歌うように朗々と挨拶をする王太子殿下を本物だ……と、ぽけーっと見つめていると、
「……お前、あいつの婚約者なんだろ」
と横から小さく話しかけられた。
「そう……みたいですね。ええ。今見ていて確信しましたわ」
「どんな手を使ったか知らないが、お前とあいつは……」
「やはり、殿下と私では月とすっぽん、いいえ、ミジンコと象くらいの差がありますわ。やはり、私に彼の方の妃は務まらない……なんとかしなくては」
心の中で言っているつもりだった声がバッチリ口に出ていた私を、ぽかんとした顔でラルフが見ていた。しかし、私はそんなことには全く気づかずに殿下を睨め付け、頭の中で嫌われるための作戦を立てているのである。
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