【R18】君は僕の太陽、月のように君次第な僕(R18表現ありVer.)

茶山ぴよ

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第7章 教師と生徒の同棲

第112話 久しぶりの登校

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月曜日の朝がやってきた。

あわただしさを予想した聡は、いつもより30分も早く起きた。朝の支度が二人重なった場合の待ち時間のロスを考えたからだ。

洗面所とトイレが一緒になった狭いバスルームは、二人で暮らすのにはとても不便だ。

しかし、幸いといっていいのか、将はいつまでも寝ていた。

 





さすがに、ゆうべは土曜の夜のようなことはしていない。

ただ、将があまりにも乞うので、聡は将と手をつないでベッドで横になった。

将が寝付くまで、と思っていたのだが、将の手の温かい感触に、聡のほうが先に眠ってしまったかもしれなかった。

気がついたときは夜中の3時だった。

静かな夜に、すうすうと将の安らかな寝息が響いていた。

聡は幸せのあまり、真っ暗にはならない東京の夜に浮かぶ、将の横顔の輪郭をずっと眺めていた……。

 




昨日のブランチよりもかなり簡単に朝食をつくると、聡は将を起こした。

「将、今日学校でしょ、もう起きなくていいの?」

「ん……、もう少し……」

といって、あおむけになった顔に布団を自分でかぶせた。

「もう7時30分になるよ、あたしはもうすぐ出ちゃうよ」

8時40分の始業には8時20分にはここを出る必要がある。職員の聡はさらに30分早い出勤だ。

「うん……。タクシーで行くからいい」

かぶった布団の中からくぐもった声が聞こえる。

「んま!あきれた」

「だって、足がさあ……」

将は布団から顔をだした。ほんとうに眠そうな半開きの目だ。

たしかに、松葉杖でバスに乗るのはつらそうだ。贅沢だが仕方がないかもしれない。

「将、じゃあ、しばらくタクシー通学すんの?」

「うん」

「あっそ」

さすがボンボンだ。まあお金は心配ないのだろう。

「あたしさ、今日、補習のあと職員会議あるから、将より遅いはずなんだよね。

悪いけど、将、今日はお弁当屋さんで何か買ってきておいて。私は野菜弁で」

「んーー、わかった」

将は布団の中で伸びをすると

「もう、出かけるの?」

とやっと目を見開いて聡を見た。

髪はいつもよりさらにボサボサで、寝起きでうるんだ目は赤ん坊のようだ。

「うん。今日はいろいろやることがあるから早めに出る」

「忘れ物」

「え?」

将は、布団に入ったまま、自分の唇を指差した。

「えー、もう口紅つけちゃったよ」

「いいから」

聡は、将の唇に、素早くキスした。素早く……のつもりだったが、将が布団の中から腕を伸ばしてきて

聡の体を抱き寄せたので、本格的に唇を交わすことになった。

――将でも髭のびるんだ。

将の頬にふだんは、髭の気配を感じることはなかったが、今朝はわずかにざらつく感じがあった。

このキスで5分オーバー。

聡はあわてて、もう一度口紅を塗りなおすと

「じゃ、鍵ここ置いとくから」

とあわただしく出勤していった。

将は、そんな聡を微笑んで見送ると、大きくあくびをした。

「すっかり、目が覚めちゃったよ~」

と上半身を起こした。ローテーブルの上には、

『トースターで温めて!』というメモと共にハムチーズのトーストが置いてあった。

 

 



二人の同棲はもちろん秘密である。

教師と生徒で、登下校に時間差があるから、『同伴登校』でバレるということはまずない。

クラスでは井口だけに、将が聡の家に転がり込んでいることを話している。

他のユウタやカイトなどには話していない。彼らから女子に伝わる可能性があるからである。

噂好きの女子に漏れると、学校中に広まり、それは教師たちにも知れることとなるだろう。

将のマンションを貸している瑞樹にも、将の居場所自体は教えていない。

もう、何もしないとは思うが、やはり聡の家にいることが彼女に知れると、何かと弱みになると危ぶんだからである。

しかし、そんな心配は無用だった。

瑞樹自体が先週からずっと学校を休んだままなのだ。

将が久しぶりに登校しての月曜のHRが終わると、井口らが将の席に集まってきた。

3学期になり、席替えをして、将の席は教卓のまん前ではなくなってしまった。

が、闇取引をして、なんとか前から2番目のはじっこの席を確保した。

それでも、聡から少し遠いのが不満だが、窓側なので条件はまずまずだ。

ちなみに、井口はこの月曜から髪が黒くなっていて、将を始め、クラスメートの皆を驚かせた。

ピアスも減っている。

「どーしたのよ、いったい。普通の高校生みたいじゃん」

と将が茶化しながら訊くと

「いやー、バイトでさあ」

と井口は黒髪の頭をかきながら、照れて答えた。

ダンスのレッスンを本格的に始めた井口は、そのレッスン料金のためのバイトを始めたのだ。

「何してんの?」

「……パン屋」

「パン屋ぁ?らしくねー!」

将はひゃひゃひゃと笑ったが、井口は『うるせぇ』と顔を赤くして下をむいた。

なんでも、パン屋のバイトは朝4時から7時までだから、夕方はレッスンに費やせるのだという。

家の近所なのも都合がいいらしい。

「なーる……」

将はなんだか急に井口が大人になった気がした。

「がんばれよ。こんどパン買いにいくからサ」

将は励ましながらも、自分のやりたいことを見つけて邁進する井口が、とてもうらやましかった。

 





夕方、将は、学校帰りにタクシーで弁当屋に寄った。

大学生のふりをしている弁当屋に制服で寄るのは暴挙だが、冬だということもあり、

ダッフルにマフラーをつけているから、たぶんわかるまい、と強気の将である。

「あら、山田さん、足はどうしたの」

カウンターにいたおかみさんは、すぐに将の腋にはさんだ松葉杖に気付いたものの、

その裾が制服であるということには、案の定気付かないらしい。

「ハァ。スキーで転びまして……」

「おやおや、まあまあ……。気をつけないと」

おかみさんは、悲痛な声を出した。

「今日は野菜弁当と、カルシウム弁当、それとフライ盛り合わせをください」

と将は注文した。おかみさんは奥にいるご主人に向かって注文を繰り返した。

「で、アキラちゃんと会ってるの?」

将は思いがけないところで聡の名前を聞いて、思わず頬がゆるんでしまった。

「え、ええ……毎日」

「ニヤニヤして気持ち悪いねえ、なんだい?」

おかみさんはご飯を詰めながら訊き返して来た。

弁当屋に暴露しても問題はないだろう、と将はつい言ってしまった。

「あの、オレとアキラ、一緒に棲んでるんです」

「ええーっ!」

おかみさんは、しゃもじを取り落としそうになるほど驚いたらしい。

さらに、主人も菜箸をもったまま、カウンターに駆け寄ってきた。

深い皺の中、眼窩から飛び出しそうなほどに目をむいている。

「な、何! 聡とお前がっ?」

殴るような勢いで詰め寄ってきた。白髪交じりの眉が激しく上下する。

「は、ハイ……」

将は思わずたじたじとなった。

「こうなったら、セキニンは、ちゃんと取るんだろうな!」

「は? セキニンですか?」

「ケッコンだよ!結婚。嫁入り前の娘だろ、聡は! いずれ結婚するんだろうな!」

結婚。聡と結婚する。夫婦になる……家族になる。

弁当屋の主人にすごい剣幕で詰め寄られながら、将の頭には急激に、フワフワとこの甘く厳粛な単語が舞い始めた。

 

 





聡は補習後、事務仕事に拘束されていた。

日いちにちと夕闇の訪れは遅くなってきているが、もうあたりは紫色の闇に物の輪郭がぼんやりとしている時間だ。

修学旅行や風邪引きでたまった分がようやく片付いて、平常どおりになってきている。

ホッとしているのは、それがなんとか終わりが見えてきたというのともう1つ。

教室で将に対して、なんとか平常どおりに接することができた……ということ。

一緒に暮らしている恋人同士が、教室では教師と生徒という関係を演じなくてはならない。

それを無事演じきることができた、ということに聡はひとまず安堵していた。

ちなみに、修学旅行中、聡と将が二人きりで避難小屋で一夜を過ごしたことは、同行教師らに緘口令が敷かれていた。

そのことについて表向きは、将が単独行動をして怪我をしているのを聡は見つけただけ、ということになっている。

よけいなことが校長や教頭、他の教員に知られて、聡が困った立場に置かれないように、という多美先生の配慮なのだ……。

 



と、そのとき携帯が鳴った。

表示を見ても、番号に覚えはない。しかし、04で始まる市外局番に不安があった……。
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