武者修行の仕上げは異世界で

丸八

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第4章

八話

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「ここだよ」

 ボーグが示したのは広目の庭を有した二階建ての家だ。
 ここがテイマーギルドのホムベ支部だという。ホムベ支部とは言うものの、壁外の集落からもかなり離れた場所にあった。危険な魔獣を有する為、それも当たり前の事かとキールなどは思った。

「へぇ、ここがテイマーギルドなんですね」

 一見ただの民家にも見えるが、玄関の上にはテイマーギルドを表す看板が掲げられていた。

「先ずは厩舎に行こうか」

 ボーグはそう言うと玄関を通り過ぎ、建物の裏に回る。
 テイマーギルドの回りを囲う壁は3メートル程と高く、びっしりと植物の蔦が覆っている。
 壁をぐるっと回って行くと、建物の丁度真裏に大きな門扉があった。馬車が余裕を持って二台は一度に通れる広さがあり、これなら大型の魔獣も通り抜けれるだろう。
 門扉の隣には詰所とおぼしき小屋があるが、今は誰もいない。

「えーと」

 ボーグはジャケットの内ポケットから一枚の円盤ディスクを取り出す。銀色の円盤は、ボーグが息を吹き掛けるとフワリと浮き上がり、門扉に貼り付いた。
 淡い光を放つと、円盤は変形して門扉の取手になる。ボーグはその取手を持つと、横にスライドさせて門扉を開けた。

「はい、どうぞー」

 促されるままに門を潜る一同。シロー、ミドリ、クロー、キール、三郎の順に入り、最後にボーグとその秘書が続いた。ちなみに、ルナはこの場にいない。一応、残っている仕事を片付けてから来るらしいが、取り敢えず今は別行動をしている。

 門の中は広い草原が広がっていた。その所々には森や岩山がある。
 眼前に広がる景色に、キールと三郎は絶句した。明らかに外から見たよりも広いのだ。なにしろギルドの建物がずっと向こうにうっすら見えるくらいだ。

「あははは。思ったより広くてビックリしたかい?ここは精霊樹を触媒にして、空間歪曲の魔法が掛かっているんだ。しかも、中に入っている従魔のマナを使用しているから、理論的にはどれだけの従魔を入れてもいっぱいにはならないらしいよ」
「へぇ………」
「ほう」

 言葉も出ない三郎達をよそに、シロー達従魔組は嬉々として走り回っている。
 敷地の中には薬草の臭いが入ってこない為、それだけでもシロー達には居心地が良いようだ。

「三郎君の従魔も此処が気に入ったみたいだね。さ、それじゃギルド事務所で詳しい話をしようか」

 ミドリは早速、樹上に巣を作りはじめている。中央に聳える一際大きな樹が、この空間を司る精霊樹だとボーグが説明する。その精霊樹にミドリは自分の巣を作るつもりのようだ。
 シローとクローは岩山に幾つか空いている洞窟を、それぞれの居場所と定めて寛いでいる。
 この厩舎は、こうやって元の居住地に似た環境を作り、魔獣が過ごしやすくなるようにしているそうだ。

 簡単な説明を受けながら、三郎達は厩舎を横切ってギルドの建物に向かう。
 木製の扉には鍵がかかっておらず、多少きしむような音を立てて開いた。

「どうぞ、こっちだよ」

 規模は小さいが、冒険者支援協会の窓口と同じ様な造りだ。ロビーがあり、対面の窓口があり、その奥に事務所がある。数年使っていないという割りには掃除が行き届いており、ホコリもほとんど落ちておらず、すぐにでも稼働出来そうである。

「さ、早速だけどテイマーギルドの支部長になってもらうのはOKで良いかな?」
「うむ、お受けいたす」
「じゃあ、時間もあまりないし、これは後から読んでおいて」

 手近なソファーに座ると、ボーグは秘書から受け取った封筒を三郎に手渡す。中には何枚か書類が入っており、ちらりと見た三郎を露骨に顔をしかめた。未だに読み書きは苦手なのだ。

「三郎様、冒険者カードと従魔の指輪を貸していただけますか?」

  ボーグの秘書が窓口の端末を立ち上げると、三郎のカードと指輪をスロットとケースに入れた。
  キーボードをカタカタ打つ音を聞きながら、三郎とボーグは今後について大雑把なギョウムナイヨウと今後の予定を話し合う。
 キールは特にすることも無いので、二人の話を適当に聞き流しながらキョロキョロと辺りに視線をさ迷わせていた。
 しばらくして、作業を終えた秘書がボーグの後ろまで来ると、耳打ちした。
 ボーグは中座すると、窓口にある端末まで行った。秘書が指し示す画面を見ると、困ったように額に手をやった。

「あぁ~、三郎君。悪いんだけどさ、もう一匹従魔を増やしてくれない?出来るだけ早く」

 席に戻ってきたボーグの言葉に、三郎は片眉を上げた。

「ちょっとこちらの確認不足で申し訳ないんだが、三郎君のジョブの習熟度が支部長をやるには少し足りないんだよ。だから、あと一体だけで良いから従魔を増やして欲しいんだ」

 三郎はソファーの背もたれに深く沈み込むと、目を瞑り腕を組む。三郎の巨躯を受け止めるソファーはギシリと軋みをあげる。

「だ、ダメかい?」

 三郎がカッと目を見開くと、ボーグはビクリと体を震わした。

「分かった。未来にでも出立致そう」

 了承の返事を聞き、ボーグは小さく安堵の吐息を漏らすのだった。
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