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第4章
七話
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「ギルドマスター?」
「そう。まぁ、正確に言えばテイマーギルドの支部長だけどね」
なぜ住む場所の話からこのような話になったのか、三郎はボーグの真意を計りかねていた。
ただ、この部屋に来るときに新しく従魔としたクローの件で呼んでいるとルナが言っていたはずだ。その流れの話なのかとアタリをつける。
「三郎君はこの街のテイマーギルドが活動していない事は知っているね?」
問われて、三郎は冒険者として登録した時の事を思い出した。
あの時は、テイマーギルドが機能していない為に、ルナが色々と教えてくれたはずだ。そう、何日にも渡って細々と………。
「まぁ、一応は」
「そうか。知っての通り、テイマーをメインのジョブにしている冒険者の数は非常に少ないんだ。この街には三郎君、君しかいない」
この大陸の冒険者で、テイマーをジョブにしているのは百人に満たない。
そんなマイナーなジョブのギルドが全ての街にある方がおかしいのだ。
「数年前までは辛うじて活動していたのだがね。前任の支部長が高齢の為、引退してからは後任も見つからず休眠状態なのだよ」
「休眠?」
「そう、休眠だ。建物はあるんだけど、人がいないから活動できないんだ」
「なるほど」
「そこでだ。さっきの話に戻るんだけど、三郎君が支部長になってくれたら万事丸く収まるんだ」
ボーグが言うには、テイマーではないものの従魔を持つ者は少ないながらいる。
それの代表格は騎手の称号を持つ者だ。
主にテイマーが調教した魔獣を乗騎としている彼等は、やはりテイマーギルドにその世話を頼んだりしている。その騎手達が主な開拓地としている森や山等がこのホムベの近くには幾つかある。
「この街を拠点にしている騎手達から早く再開してくれって要望が多いんだよ。テイマーギルドに確認しても、人がいないの一言で終わっちゃうし」
厄介なのは、従魔を持つ冒険者は例外無くレベルが高い。それは、調教こそテイマーギルドに依頼するが、捕獲するのは各自が独力で行わなければいけないからだ。
武装した人間を背に乗せて走れる程強靭な魔獣を生け捕りにするのは、並大抵じゃ出来ないのだ。
有力な冒険者の要望をいつまでも放置することは出来ない。なので、協会としては出来るだけ早くテイマーギルドの業務を再開したいのだ。
「なるほど。しかし、世話と言っても、拙者は何もわからぬが?」
「そこは大丈夫。必用な人員は協会から出すから。三郎君には責任者として支部の運営をみてもらいたいんだ。それもなるべくこちらでフォローするからさ」
「う~む………」
「テイマーギルドが再開すれば、クロー君も厩舎に入れるし、三郎君もギルドマスターとして官舎に住むことが出来るようになる。ギルドからある程度のお給金も出るし、悪い話じゃないと思うんだけど………」
三郎が難しい顔をして腕を組みながら唸っていると、ボーグがさらに言い募る。よほど困っているのか、必死な表情だ。
そんな風に観察しながら三郎は考える。
確かに悪い話では無さそうだ。
しかし、安易に頷いてしまうには話が大きすぎる。ましてや読み書きすら満足に出来ない現状で、荒事以外に自分が何の役に立つのかも疑問だ。
とは言うものの、住居を用意してもらえるのは素直に有り難い。従魔も一緒に泊めて貰える宿屋はやはり多くない。仮に有っても宿泊費がかなり割高になってしまう。
返答に窮した三郎は、背後に立つルナちらりと見上げた。
「このハゲはきっと何か企んでるでしょうけど、受けて損はしないと思いますよ」
「あれ?なんかそこはかとなく悪口言われてない?」
「ハゲは少し黙ってて下さい」
ルナが一睨みすると、ボーグは口をつぐむ。若干、涙目になっているように見えるのは照明のせいだろうか?
「三郎さんがギルドマスターになるのにはメリット、デメリットあります。それでも今後この街を拠点にして活動していくなら受けた方が良いと思いますよ」
具体的な事は何も示されていないが、ルナに言われると何となく正しいと思うから不思議だ。それだけ調教されていると言えるかもしれないが、三郎はそんな事思いもよらない。
「ルナ殿が言うなら間違いはなかろう。ボーグ殿、この話有り難く頂戴しよう」
「お、おぉ。受けて貰えるか」
説得にはもう少しかかると思っていたボーグは、いささか肩透かしをくらった気分だ。と、同時に三郎程の武芸者をすんなりコントロールするルナに恐ろしさも感じた。
「なら、善は急げだ。今からテイマーギルドまで行って、そこで具体的に話を詰めようじゃないか」
ボーグは勢いよく立ち上がると、自ら先に立って部屋を出た。
「そう。まぁ、正確に言えばテイマーギルドの支部長だけどね」
なぜ住む場所の話からこのような話になったのか、三郎はボーグの真意を計りかねていた。
ただ、この部屋に来るときに新しく従魔としたクローの件で呼んでいるとルナが言っていたはずだ。その流れの話なのかとアタリをつける。
「三郎君はこの街のテイマーギルドが活動していない事は知っているね?」
問われて、三郎は冒険者として登録した時の事を思い出した。
あの時は、テイマーギルドが機能していない為に、ルナが色々と教えてくれたはずだ。そう、何日にも渡って細々と………。
「まぁ、一応は」
「そうか。知っての通り、テイマーをメインのジョブにしている冒険者の数は非常に少ないんだ。この街には三郎君、君しかいない」
この大陸の冒険者で、テイマーをジョブにしているのは百人に満たない。
そんなマイナーなジョブのギルドが全ての街にある方がおかしいのだ。
「数年前までは辛うじて活動していたのだがね。前任の支部長が高齢の為、引退してからは後任も見つからず休眠状態なのだよ」
「休眠?」
「そう、休眠だ。建物はあるんだけど、人がいないから活動できないんだ」
「なるほど」
「そこでだ。さっきの話に戻るんだけど、三郎君が支部長になってくれたら万事丸く収まるんだ」
ボーグが言うには、テイマーではないものの従魔を持つ者は少ないながらいる。
それの代表格は騎手の称号を持つ者だ。
主にテイマーが調教した魔獣を乗騎としている彼等は、やはりテイマーギルドにその世話を頼んだりしている。その騎手達が主な開拓地としている森や山等がこのホムベの近くには幾つかある。
「この街を拠点にしている騎手達から早く再開してくれって要望が多いんだよ。テイマーギルドに確認しても、人がいないの一言で終わっちゃうし」
厄介なのは、従魔を持つ冒険者は例外無くレベルが高い。それは、調教こそテイマーギルドに依頼するが、捕獲するのは各自が独力で行わなければいけないからだ。
武装した人間を背に乗せて走れる程強靭な魔獣を生け捕りにするのは、並大抵じゃ出来ないのだ。
有力な冒険者の要望をいつまでも放置することは出来ない。なので、協会としては出来るだけ早くテイマーギルドの業務を再開したいのだ。
「なるほど。しかし、世話と言っても、拙者は何もわからぬが?」
「そこは大丈夫。必用な人員は協会から出すから。三郎君には責任者として支部の運営をみてもらいたいんだ。それもなるべくこちらでフォローするからさ」
「う~む………」
「テイマーギルドが再開すれば、クロー君も厩舎に入れるし、三郎君もギルドマスターとして官舎に住むことが出来るようになる。ギルドからある程度のお給金も出るし、悪い話じゃないと思うんだけど………」
三郎が難しい顔をして腕を組みながら唸っていると、ボーグがさらに言い募る。よほど困っているのか、必死な表情だ。
そんな風に観察しながら三郎は考える。
確かに悪い話では無さそうだ。
しかし、安易に頷いてしまうには話が大きすぎる。ましてや読み書きすら満足に出来ない現状で、荒事以外に自分が何の役に立つのかも疑問だ。
とは言うものの、住居を用意してもらえるのは素直に有り難い。従魔も一緒に泊めて貰える宿屋はやはり多くない。仮に有っても宿泊費がかなり割高になってしまう。
返答に窮した三郎は、背後に立つルナちらりと見上げた。
「このハゲはきっと何か企んでるでしょうけど、受けて損はしないと思いますよ」
「あれ?なんかそこはかとなく悪口言われてない?」
「ハゲは少し黙ってて下さい」
ルナが一睨みすると、ボーグは口をつぐむ。若干、涙目になっているように見えるのは照明のせいだろうか?
「三郎さんがギルドマスターになるのにはメリット、デメリットあります。それでも今後この街を拠点にして活動していくなら受けた方が良いと思いますよ」
具体的な事は何も示されていないが、ルナに言われると何となく正しいと思うから不思議だ。それだけ調教されていると言えるかもしれないが、三郎はそんな事思いもよらない。
「ルナ殿が言うなら間違いはなかろう。ボーグ殿、この話有り難く頂戴しよう」
「お、おぉ。受けて貰えるか」
説得にはもう少しかかると思っていたボーグは、いささか肩透かしをくらった気分だ。と、同時に三郎程の武芸者をすんなりコントロールするルナに恐ろしさも感じた。
「なら、善は急げだ。今からテイマーギルドまで行って、そこで具体的に話を詰めようじゃないか」
ボーグは勢いよく立ち上がると、自ら先に立って部屋を出た。
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