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第5章
一話
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鬱蒼と繁った木々の中、三郎達は一列になって進んでいた。
先頭にいるのはシローだ。
耳をピンと立て物音を拾い、スンスンと辺りの匂いを嗅いで警戒しながら進んでいる。
次いで新しい着物を着た三郎が続く。
着物はテイマーギルド支部長就任の祝いの品としてルナから贈られた物だったが、これを受け取るときにまた一悶着あったのだ。
それは素材についてだ。
三郎の様な下級武士が着るようなものは、だいたい麻か綿だ。しかし、贈られた小袖と裁着袴は、見るからに上等な絹で出来ている。しかも、銀糸が織り込まれ見た目も華美である。二言目には倹約、倹約と煩く言われてきた三郎には畏れ多い逸品だった。
「拙者には過ぎたもの故………」
こう言って三郎は固辞しようとしたのだが、ルナはどうしてもと譲らない。
幾度かのやり取りの末、「責任ある立場に就くんだから、それなりの格好をしなさい」と言われ、敢えなく三郎は陥落したのだった。
武器も新調した。
腰にあるのは武骨な長剣だ。
片手でも扱えるそれは、今まで腰に佩いていた太刀より少し重く刃先も鈍い。しかし、その分頑丈で、力の上がった三郎が少しばかり粗雑に扱ったとしてもびくともしない。おまけに耐久性及び斬撃性能向上の呪紋が刻まれている、所謂魔剣である。
ソルの店に並ぶ商品の中では一番の物だ。
魔剣を購入する時にソルから試供品と言って、一本の杖を受け取った。三郎の肩口位まであるそれは、朱鷺色に塗られた金属製で、やはり所々に呪紋が刻まれている。
脇差しはソルが「一度じっくり見て、研究してみたい」と言ったので預けてきた。
ソルには、色々と世話になっている恩も感じていたし、やはり馴染みの深い刀剣を出来れば作って欲しいという打算もあった。
そんなこんなで、装備を一新した三郎は、泰然とシローの後を歩いていた。
三番目に続くのはキールだ。
彼の装備は以前と何ら変わらない。
短弓を片手に持ち、背には矢筒。腰にはショートソードを差している。
ただ、ひたすらスキルの練習をしながら歩いている。
魔力操作の前段階。全身に魔力を行き渡らせる練習だ。
それによって警戒が緩み、隙だらけになっているが、今後の為ならばと三郎には了承を貰っている。
足元の注意も疎かになり、時折躓いて転びそうになるが、その都度後ろを歩くクローに掴みあげられ、事なきを得ている。
キールの後、殿を務めるのはクローだ。
彼はパーティー全員分の荷物を入れた背曩を背負っている。
今回は日帰りが難しい上に、目的地周辺に宿泊施設も無いため、大型のテントや食料、簡単な調理器具などと荷物もこれまで以上に多くなっている。
だが、強力な魔獣であるクローにとっては、この程度の重量なんかは苦にもならない。時に転びそうになるキールを支えながら、淡々と皆の後について歩いている。
ミドリはといえば、これまたいつものように上空を羽ばたいている。
平原と違い、森は遮蔽物が多く、なかなか全てを見渡す事は難しいが、地上のシローと情報をやり取りしながら警戒にあたる。
空には何羽か鳥系魔獣が飛んでいるのだが、今のところ三郎達のパーティーに明確な敵意を持つものはいないので、そのままスルーを決め込んでいる。
三郎達が目指しているのは、ホムベから50キロ程離れたキコマ山である。そこの中腹にある砦に住み着いたとされるコボルトの討伐ミッションを受けたのだ。
また、三郎はその時にコボルトを捕獲して従えるつもりでいる。
昨日、ボーグから聞いた話では、ギルドの支部長になるためには、ジョブの習熟度が足りないそうだ。その規定の習熟度に達する為には、魔獣を後一体従えなければいけないらしい。
ルナと相談した結果、このコボルト討伐ミッションを受けることに決めたのだった。
コボルトを従魔にしようとしたのには幾つか理由がある。
一つは、危険度がEと低く、比較的捕獲が容易なこと。
二つ目はランクの割りには知能が高く、人形ということもあり手先が器用だということ。
三つ目は犬の様な顔から分かるように、彼等は群で生活しており、縦の関係を築きやすい。
これ等の要素が合わさって、コボルトを従魔にする魔獣使いは多い。 高位のテイマーはコボルトに他の従魔の世話をさせたりもしている。
その魔獣としての特性と、今回のミッションが合わさることで、行き先が決まったのだ。
決めてからの行動は速かった。
午前中、三郎がソルの店に行って相談がてら武器を購入している一方で、キールは必用な雑貨を買いに走った。
雑貨は、昨日のミッションで護衛したテッドが営む雑貨屋「暴れ熊」で購入した。テッドの奥さんはかなりの美形で、キールは驚いたものだった。
午前中を準備に費やした一行は、テイマーギルドの近くにある屋台で昼食を食べてから出発した。
先頭にいるのはシローだ。
耳をピンと立て物音を拾い、スンスンと辺りの匂いを嗅いで警戒しながら進んでいる。
次いで新しい着物を着た三郎が続く。
着物はテイマーギルド支部長就任の祝いの品としてルナから贈られた物だったが、これを受け取るときにまた一悶着あったのだ。
それは素材についてだ。
三郎の様な下級武士が着るようなものは、だいたい麻か綿だ。しかし、贈られた小袖と裁着袴は、見るからに上等な絹で出来ている。しかも、銀糸が織り込まれ見た目も華美である。二言目には倹約、倹約と煩く言われてきた三郎には畏れ多い逸品だった。
「拙者には過ぎたもの故………」
こう言って三郎は固辞しようとしたのだが、ルナはどうしてもと譲らない。
幾度かのやり取りの末、「責任ある立場に就くんだから、それなりの格好をしなさい」と言われ、敢えなく三郎は陥落したのだった。
武器も新調した。
腰にあるのは武骨な長剣だ。
片手でも扱えるそれは、今まで腰に佩いていた太刀より少し重く刃先も鈍い。しかし、その分頑丈で、力の上がった三郎が少しばかり粗雑に扱ったとしてもびくともしない。おまけに耐久性及び斬撃性能向上の呪紋が刻まれている、所謂魔剣である。
ソルの店に並ぶ商品の中では一番の物だ。
魔剣を購入する時にソルから試供品と言って、一本の杖を受け取った。三郎の肩口位まであるそれは、朱鷺色に塗られた金属製で、やはり所々に呪紋が刻まれている。
脇差しはソルが「一度じっくり見て、研究してみたい」と言ったので預けてきた。
ソルには、色々と世話になっている恩も感じていたし、やはり馴染みの深い刀剣を出来れば作って欲しいという打算もあった。
そんなこんなで、装備を一新した三郎は、泰然とシローの後を歩いていた。
三番目に続くのはキールだ。
彼の装備は以前と何ら変わらない。
短弓を片手に持ち、背には矢筒。腰にはショートソードを差している。
ただ、ひたすらスキルの練習をしながら歩いている。
魔力操作の前段階。全身に魔力を行き渡らせる練習だ。
それによって警戒が緩み、隙だらけになっているが、今後の為ならばと三郎には了承を貰っている。
足元の注意も疎かになり、時折躓いて転びそうになるが、その都度後ろを歩くクローに掴みあげられ、事なきを得ている。
キールの後、殿を務めるのはクローだ。
彼はパーティー全員分の荷物を入れた背曩を背負っている。
今回は日帰りが難しい上に、目的地周辺に宿泊施設も無いため、大型のテントや食料、簡単な調理器具などと荷物もこれまで以上に多くなっている。
だが、強力な魔獣であるクローにとっては、この程度の重量なんかは苦にもならない。時に転びそうになるキールを支えながら、淡々と皆の後について歩いている。
ミドリはといえば、これまたいつものように上空を羽ばたいている。
平原と違い、森は遮蔽物が多く、なかなか全てを見渡す事は難しいが、地上のシローと情報をやり取りしながら警戒にあたる。
空には何羽か鳥系魔獣が飛んでいるのだが、今のところ三郎達のパーティーに明確な敵意を持つものはいないので、そのままスルーを決め込んでいる。
三郎達が目指しているのは、ホムベから50キロ程離れたキコマ山である。そこの中腹にある砦に住み着いたとされるコボルトの討伐ミッションを受けたのだ。
また、三郎はその時にコボルトを捕獲して従えるつもりでいる。
昨日、ボーグから聞いた話では、ギルドの支部長になるためには、ジョブの習熟度が足りないそうだ。その規定の習熟度に達する為には、魔獣を後一体従えなければいけないらしい。
ルナと相談した結果、このコボルト討伐ミッションを受けることに決めたのだった。
コボルトを従魔にしようとしたのには幾つか理由がある。
一つは、危険度がEと低く、比較的捕獲が容易なこと。
二つ目はランクの割りには知能が高く、人形ということもあり手先が器用だということ。
三つ目は犬の様な顔から分かるように、彼等は群で生活しており、縦の関係を築きやすい。
これ等の要素が合わさって、コボルトを従魔にする魔獣使いは多い。 高位のテイマーはコボルトに他の従魔の世話をさせたりもしている。
その魔獣としての特性と、今回のミッションが合わさることで、行き先が決まったのだ。
決めてからの行動は速かった。
午前中、三郎がソルの店に行って相談がてら武器を購入している一方で、キールは必用な雑貨を買いに走った。
雑貨は、昨日のミッションで護衛したテッドが営む雑貨屋「暴れ熊」で購入した。テッドの奥さんはかなりの美形で、キールは驚いたものだった。
午前中を準備に費やした一行は、テイマーギルドの近くにある屋台で昼食を食べてから出発した。
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