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第6章
六話
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「いよいよ明日ですね」
ソルがお茶を持って弓場にやってきた。
連日の事務仕事に荒れた心を、弓を引くことにより落ち着かせるためだ。
引くのはガルゾニウム合金製の弓だ。
そう、三郎がこの武器屋に初めて来たときに引いたものだ。
あれから、三郎は幾度もここでこの弓を引いている。
初めの頃は苦心していたが、レベルの上昇に伴い矢筋がぶれる事は無くなってきた。
今ではステラが作る新しい合金の強度実験も兼ねて試し撃ちさせてもらっている。
最初は試作段階の防具を的にしていたが、あまりにも三郎の矢に対して無力だった為、途中からはただの金属塊になってしまったが。
「お、これはかたじけない」
三郎は弓を置いて座ると、ソルの淹れてくれたお茶を旨そうに飲む。
丁度喉が乾いていた三郎は、水出しでゆっくり淹れた薬草茶を一息に飲み干してしまった。
口の中にすっきりとした甘さが広がる。
ソルはそれを見届けると、すぐにピッチャーからお代わりを注いだ。
「うむ、旨い。いつもながら、お手前の淹れるお茶は絶品でござるな」
「はは、ありがとうございます」
思わず普段は出さない武家言葉が出てしまう三郎だった。
喉の渇きが潤うと、三郎とソルは談笑し始めた。
話題は明日に控えた三郎の支部長就任の件だ。
そこから次第にルナの話になっていく。
「お主の娘御は本当に良くやってくれるよ」
「三郎さんのお役に立てているようで良かったです。あの娘は子供の頃から面倒見が良かったですからねぇ」
「ほぉ」
「いえね、あの娘がまだ五才くら「三郎さん!こんな所でまた油を売って!」
いつの間にか入ってきていたルナはがっしりと三郎の手を掴むと、そのまま出口に向かって歩き出す。
弓場から出ていく時に「お父さんも余計な事は言わないようにね!」と言い置いていく。
ソルは愛娘の眼光に冷や汗をかきながら、後片付けを始めるのだった。
テイマーギルドに引き摺るように強制連行された三郎は、それはもう馬車馬のように働かされた。
まぁ、実際はその下準備などでルナはその数倍は働いているのだが、要領が良いため外野には分からない。ひたすら三郎がこき使われているようにしか見えないのだ。
ようやく一息つけたのは、そろそろ陽が傾き始めた頃だった。
「なんとか間に合いましたね」
「うむ」
三郎とルナはロビーを見渡す。
一つしかない窓口は、これからルナが座る事になる。
この窓口の机の上には、冒険者支援協会やテイマーギルドと繋がった精霊機端末がある。
ここ数日、ルナはこの端末の調整に苦心していた。その甲斐あって今では快適に作業出来るようになった。
待ち合いを兼ねたソファが三つ並んでいる。
テイマー専用のミッションを掲示しておく為の掲示板が一枚出入口に近い壁に掛かっている。
狭いロビーにはそれくらいしかない。
規模としては冒険者支援協会の十分の一もないだろう。
まぁ、テイマーという構成員の少ないマイナーなギルドには十分過ぎる程だが。
見渡して、目立った不備が無いことを確認すると、ルナは満足げに頷いた。家具のレイアウトも完璧だ。掃除も充分にしてある。
ルナが三郎に作業の終了を告げようとしたその時だ。
扉が不意に開けられた。
「すいませーん、ここがテイマーギルドのホムベ支部で良いですか?」
入ってきたのは、獣人の男の子だ。
虎人なのだろうか、虎のような模様が服から出てる部分にあった。
「そうですが、あなたは?」
すぐにルナが応対した。
「あ、ボクは今度ここで働くことになりましたシレンです。よろしくおねがいします」
元気に挨拶したかと思うと、ペコリと頭を下げた。よほど躾が行き届いているのだろう、年齢の割りに礼儀正しい。
「三郎と申す」
「ルナです。こちらの三郎さんがこれからテイマーギルドの支部長に就任する予定です」
「よろしくおねがいします」
三郎の挨拶を、ルナが補足すると、シレンはもう一度、頭を下げた。
「シレン君は確か住み込みだったわよね?荷物はあるの?」
「いえ、今日はご挨拶だけに伺いました。また、荷物は明日あらためてもって来ます」
「そう、わかったわ。今日はわざわざありがとうね」
ルナが頭を撫でると、シレンは照れたように笑った。
先日の資料には勿論この獣人の少年の事も書いてあった。彼は今後、飼育員としてここで働く事になるのだ。
「あ、これもし良かったら皆さんで食べてください」
「あら、ありがとう」
シレンは手にした籠をルナに手渡した。
そこには、最近ここファポート王国の王都で流行っているお菓子が入っていた。
王都から離れているホムベではまだ珍しいものだ。
甘いものが好きなルナは大喜びである。
早速、厩舎にいたベニーも呼んできて、四人でお茶にすることにした。
お互い改めて自己紹介をする。
その時にシレンが虎人ではなく獅子虎人なんだと分かった。
まだ子供だから鬣が生えておらず、見た目では分からなかったのだ。
彼はここで修業を積み、ゆくゆくはイッパシのテイマーになりたいのだという。
小一時間お茶をしながら話していると、シレンの帰る時間になってしまった。
どうやら、王都からここまで親と一緒に来たようだ。
その親は宿屋で待っているという。
もう暗くなってきていることもあり、三郎がルナとシレンを送っていくことになった。
ソルがお茶を持って弓場にやってきた。
連日の事務仕事に荒れた心を、弓を引くことにより落ち着かせるためだ。
引くのはガルゾニウム合金製の弓だ。
そう、三郎がこの武器屋に初めて来たときに引いたものだ。
あれから、三郎は幾度もここでこの弓を引いている。
初めの頃は苦心していたが、レベルの上昇に伴い矢筋がぶれる事は無くなってきた。
今ではステラが作る新しい合金の強度実験も兼ねて試し撃ちさせてもらっている。
最初は試作段階の防具を的にしていたが、あまりにも三郎の矢に対して無力だった為、途中からはただの金属塊になってしまったが。
「お、これはかたじけない」
三郎は弓を置いて座ると、ソルの淹れてくれたお茶を旨そうに飲む。
丁度喉が乾いていた三郎は、水出しでゆっくり淹れた薬草茶を一息に飲み干してしまった。
口の中にすっきりとした甘さが広がる。
ソルはそれを見届けると、すぐにピッチャーからお代わりを注いだ。
「うむ、旨い。いつもながら、お手前の淹れるお茶は絶品でござるな」
「はは、ありがとうございます」
思わず普段は出さない武家言葉が出てしまう三郎だった。
喉の渇きが潤うと、三郎とソルは談笑し始めた。
話題は明日に控えた三郎の支部長就任の件だ。
そこから次第にルナの話になっていく。
「お主の娘御は本当に良くやってくれるよ」
「三郎さんのお役に立てているようで良かったです。あの娘は子供の頃から面倒見が良かったですからねぇ」
「ほぉ」
「いえね、あの娘がまだ五才くら「三郎さん!こんな所でまた油を売って!」
いつの間にか入ってきていたルナはがっしりと三郎の手を掴むと、そのまま出口に向かって歩き出す。
弓場から出ていく時に「お父さんも余計な事は言わないようにね!」と言い置いていく。
ソルは愛娘の眼光に冷や汗をかきながら、後片付けを始めるのだった。
テイマーギルドに引き摺るように強制連行された三郎は、それはもう馬車馬のように働かされた。
まぁ、実際はその下準備などでルナはその数倍は働いているのだが、要領が良いため外野には分からない。ひたすら三郎がこき使われているようにしか見えないのだ。
ようやく一息つけたのは、そろそろ陽が傾き始めた頃だった。
「なんとか間に合いましたね」
「うむ」
三郎とルナはロビーを見渡す。
一つしかない窓口は、これからルナが座る事になる。
この窓口の机の上には、冒険者支援協会やテイマーギルドと繋がった精霊機端末がある。
ここ数日、ルナはこの端末の調整に苦心していた。その甲斐あって今では快適に作業出来るようになった。
待ち合いを兼ねたソファが三つ並んでいる。
テイマー専用のミッションを掲示しておく為の掲示板が一枚出入口に近い壁に掛かっている。
狭いロビーにはそれくらいしかない。
規模としては冒険者支援協会の十分の一もないだろう。
まぁ、テイマーという構成員の少ないマイナーなギルドには十分過ぎる程だが。
見渡して、目立った不備が無いことを確認すると、ルナは満足げに頷いた。家具のレイアウトも完璧だ。掃除も充分にしてある。
ルナが三郎に作業の終了を告げようとしたその時だ。
扉が不意に開けられた。
「すいませーん、ここがテイマーギルドのホムベ支部で良いですか?」
入ってきたのは、獣人の男の子だ。
虎人なのだろうか、虎のような模様が服から出てる部分にあった。
「そうですが、あなたは?」
すぐにルナが応対した。
「あ、ボクは今度ここで働くことになりましたシレンです。よろしくおねがいします」
元気に挨拶したかと思うと、ペコリと頭を下げた。よほど躾が行き届いているのだろう、年齢の割りに礼儀正しい。
「三郎と申す」
「ルナです。こちらの三郎さんがこれからテイマーギルドの支部長に就任する予定です」
「よろしくおねがいします」
三郎の挨拶を、ルナが補足すると、シレンはもう一度、頭を下げた。
「シレン君は確か住み込みだったわよね?荷物はあるの?」
「いえ、今日はご挨拶だけに伺いました。また、荷物は明日あらためてもって来ます」
「そう、わかったわ。今日はわざわざありがとうね」
ルナが頭を撫でると、シレンは照れたように笑った。
先日の資料には勿論この獣人の少年の事も書いてあった。彼は今後、飼育員としてここで働く事になるのだ。
「あ、これもし良かったら皆さんで食べてください」
「あら、ありがとう」
シレンは手にした籠をルナに手渡した。
そこには、最近ここファポート王国の王都で流行っているお菓子が入っていた。
王都から離れているホムベではまだ珍しいものだ。
甘いものが好きなルナは大喜びである。
早速、厩舎にいたベニーも呼んできて、四人でお茶にすることにした。
お互い改めて自己紹介をする。
その時にシレンが虎人ではなく獅子虎人なんだと分かった。
まだ子供だから鬣が生えておらず、見た目では分からなかったのだ。
彼はここで修業を積み、ゆくゆくはイッパシのテイマーになりたいのだという。
小一時間お茶をしながら話していると、シレンの帰る時間になってしまった。
どうやら、王都からここまで親と一緒に来たようだ。
その親は宿屋で待っているという。
もう暗くなってきていることもあり、三郎がルナとシレンを送っていくことになった。
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