武者修行の仕上げは異世界で

丸八

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第6章

八話

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「では、こちらをお願いしますね」

 ルナは書類を幾つか置いて、窓口に戻っていった。
 営業を開始したは良いものの、今の段階で来客は殆ど無い状態だ。
 商業ギルドや建築ギルドなど、テイマーギルドの再開に多少なりとも関わったギルドの関係者くらいしか訪れて来ない。
 三郎も、ルナにピックアップしてもらったギルドや有力者に挨拶しに行くだけの日々がここ数日続いた。
 挨拶から帰ってきては、すぐさま座って事務仕事している。
 朝晩の鍛練は欠かさないが、徐々にストレスが溜まっているのを三郎自身感じている。

 他のギルド員はといえば、三郎とは反対に充実した日々を送っていた。

 ルナは精霊器を通じて頻りに冒険者支援協会と連絡を取り合っている。
 他にも資材の発注や、テイマーギルド本部から予算を引っ張ってきたりと地味に忙しい。

 ベニーは基本的にクローにベッタリだ。
 学院アカデミーが把握している範囲で、悪魔憑きデモンズを捕獲した例は殆ど無い。
 あったとしても、危険度ランクの低い魔獣に限られている。
 その為、危険度Aにカテゴライズされている悪魔憑きオーガのクローは、魔獣研究者垂涎の的なのである。
 なんでも、学院アカデミーではこの支部に研究員を送り出すため、相当熾烈な学閥争いがあったり無かったりしたそうだ。
 クローの他にも、繭卵になったミドリも観察対象になっている。
 定期的に巣の中のマナ濃度を観測したり、繭卵の硬さや温度を調べたりと経過観測に余念がない。
 その為、ベニーは折角割り当てられた自室にも戻らず、厩舎の中でずっと過ごしている。

 シレンは先ずは子コボルト二匹と仲良くなろうとしているようだ。
 元々ギンとチャチャの二匹は、ルナの発案で飼育員の助けとなるようにと従魔にした二匹だ。
 他のテイマーギルド支部でも器用なコボルトは、飼育員の手助けをして働いている。それをテイマーギルド本部で研修を受けたシレンはよく分かっていた。
 群のボスであるシローの顔を立てながら、子コボルトとコミュニケーションを図っているようだ。
 それと同時に、やがて来るであろうライダーギルドの乗騎の受け入れ準備も行っている。
 体力的にもキツい仕事だが、獅子虎ライガーの獣人であるシレンは弱音も吐かず、精力的にこなしている。

 そんな感じで一週間が過ぎ去った。

「机にずっと座っている事がこれ程キツいものだとは思わなかった」

 三郎はルナを尊敬の眼差しで見ている。
 基本的に脳筋な三郎は、デスクワークには不向きだ。汗を流しながら動いていた方が楽なのだ。
 ここ何日かは今まで感じたことが無かった肩凝りに悩まされつつあった。

 そんな三郎に待望のテイマー専用ミッションが来た。魔獣の捕獲ミッションだ。

三目兎サードアイラビットの捕獲の依頼がきています」

 ルナは一枚の紙を持ってきた。その紙には捕獲する魔獣とその棲息域、特徴なんかが書かれている。

「よし、行ってまいる!」

 冒険者カードにミッションを登録すると 三郎は厩舎に行って、あくびしていたシローを引き連れて飛び出していった。

「顕現!」

 途中、道が分からない事に気付いた三郎は、アビリティでドラゴを呼び出す。
 ドラゴを顕現させるのも久しぶりだ。

「ドラゴや、道案内を頼む」
「承知いたしました」

 どうやら三郎は反対方向に全速力で走っていたようだ。
 ドラゴの案内に従い、反転した。

 三目兎の群生地はホムベから五十キロほど行ったところにある平原なのだが、三郎が全速力で走ると一時間も掛からなかった。

 平原は背の高い草がびっしりと生えており、歩くのも困難なほどだ。
 そこを三郎とシローは草を踏み分けて入っていく。

「気を付けて下さい。ここには毒を持つ虫系魔獣も数多く棲息しております」
「分かった」
「わん!」

 虫系魔獣と聞いて、ふと三郎は未だに繭卵から出てこないミドリの事を思う。
 ベニーは心配ないと言うが、あれほど大食漢だったミドリが既に一週間も食べていないのだ。魔獣の事をよく知らない三郎は心配で仕方なかった。だが、心配しても何も出来ることがないので、ベニーに世話を任せるしかないのが現状だ。

 三郎は気持ちを切り替えると、仕事に集中することにした。
 ドラゴがテイマーギルドのデータベースから得た情報では、三目兎は文字通り目が三つある兎の魔獣だ。
 その三つめの目サードアイは魔眼となっており、軽い麻痺パラライズの効果が確認されている。
 性状は臆病で用心深く、滅多に人前には出てこないようだ。

「ふむ、こういう時はシローがほんに役立つな。良いか、今回は捕獲だからな。見付けても殺してはならんぞ」
「わん!」

 分かっていると頷いて、シローは【探知】のスキルを使いながら辺りの匂いを嗅いでいく。
 程なく、三目兎の巣と見られる穴を見付けた。するりと潜り込むと、シローは大きな声で吠えたてた。

「わんわん!」
「きゅー」

 慌てて出てきたのは、体長一メートル程の兎だ。
 三つ目サードアイを使おうとするが、シローは的を絞らせないようにジグザグに走っている。
 そうやってシローに気を取られている間に三郎は音も立てず忍び寄り、がっしりと首に腕をまわした。

「このまま付いてこい。良いな?」

 三郎の迫力のある顔に、三目兎は抵抗する気力を失った。
 大人しくなった三目兎を担ぎ上げると、三郎はまたも全速力で走り始めた。
 シローも置いてかれないように慌てて走り出す。

 こうして記念すべきテイマーギルド支部長としての初ミッションは無事完了したのであった。
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