3 / 62
第1章
二話
しおりを挟む
「いただきます」
川辺に場所を移した三郎が、ようやく夕飯にありついたのはとっぷりと日も暮れてからだった。
三郎の眼前には焚き火を囲む形で、大量の串が地面に刺さっている。
先程倒した蛇の肉を切り分けて串焼きにしたものだ。
三郎は串の一本を掴み、軽く塩を振ると口を大きく開けてかじりつく。
がぶりと噛んだ瞬間、じゅわりと熱い汁が口の中にあふれてきた。
「ん~~~!?」
慌てて傍らの竹筒を手に取り、中の水を一気に飲み干す。
「ぷはっ。熱い!でも、旨い!」
濡れた口元を袖口で拭うと、感嘆の声をあげる。
よっぽど熱かったのか今度は慎重に息を吹き掛けて少し冷ましてから、二口目を頬張る。
弾力に富んだ食感と、淡白ながらもしっかりとした旨味が口中を満たす。
「うん、本当に旨いな。苦労した甲斐があった」
あっという間に一本目を平らげた三郎は、しみじみと呟いた。
体格の良い三郎と言えど、百キロは下らない蛇を担いで移動するのは大変だ。
しかも、その後で行った皮を剥いだり、血を洗い流したりといった処理も量が量だけに手間がかかる。蛇を捌くだけでかなりの時間を費やした。
その労力の分、余計に美味しく感じるのかもしれない。
黙々と食べ続ける三郎。
大量にあった串焼きは瞬く間に三郎の胃袋へと消えていく。
しばらくして、満腹になった三郎が横に目をやると、そこには既に寝息をたてるシローがいた。
三郎が食事の準備をしている時、蛇の内臓を貰ってガツガツと勢い良く食べたと思ったら、そのまま直ぐに寝てしまったのだ。
微笑みながらシローの寝顔を見ていた三郎だったが、なにやらお腹がもぞもぞとし始めた。
「ん?なんじゃ?」
不思議に思い、懐から手を入れる。
すると、直ぐに原因が分かった。
さっき拾った卵が微かに動いているのだ。
小刻みに動く卵を、静かに取り出してみる。
すると、目の前で殻が割れて、中から鮮やかな緑色をした雛が出てきた。
「ぴぃ」
雛は自分のほんのりと湿っている体を、三郎の親指にすりよせてきた。
「む、拙者を親だと思っておるのか?」
「ぴぃ」
肯定するかのように鳴くと、雛は再び体をこすりつける。
「おぉ、そうか。可愛いやつめ」
しばし、人差し指で雛の感触を楽しむように撫でる。
既に三郎の頭の中には、食べる為に卵を持ってきたという事は綺麗さっぱりと消え去っていた。
「よし、おぬしの名前はミドリとしよう」
そんな声が聞こえて来たのは、空がうっすらと白み始めた頃だった。
川辺に場所を移した三郎が、ようやく夕飯にありついたのはとっぷりと日も暮れてからだった。
三郎の眼前には焚き火を囲む形で、大量の串が地面に刺さっている。
先程倒した蛇の肉を切り分けて串焼きにしたものだ。
三郎は串の一本を掴み、軽く塩を振ると口を大きく開けてかじりつく。
がぶりと噛んだ瞬間、じゅわりと熱い汁が口の中にあふれてきた。
「ん~~~!?」
慌てて傍らの竹筒を手に取り、中の水を一気に飲み干す。
「ぷはっ。熱い!でも、旨い!」
濡れた口元を袖口で拭うと、感嘆の声をあげる。
よっぽど熱かったのか今度は慎重に息を吹き掛けて少し冷ましてから、二口目を頬張る。
弾力に富んだ食感と、淡白ながらもしっかりとした旨味が口中を満たす。
「うん、本当に旨いな。苦労した甲斐があった」
あっという間に一本目を平らげた三郎は、しみじみと呟いた。
体格の良い三郎と言えど、百キロは下らない蛇を担いで移動するのは大変だ。
しかも、その後で行った皮を剥いだり、血を洗い流したりといった処理も量が量だけに手間がかかる。蛇を捌くだけでかなりの時間を費やした。
その労力の分、余計に美味しく感じるのかもしれない。
黙々と食べ続ける三郎。
大量にあった串焼きは瞬く間に三郎の胃袋へと消えていく。
しばらくして、満腹になった三郎が横に目をやると、そこには既に寝息をたてるシローがいた。
三郎が食事の準備をしている時、蛇の内臓を貰ってガツガツと勢い良く食べたと思ったら、そのまま直ぐに寝てしまったのだ。
微笑みながらシローの寝顔を見ていた三郎だったが、なにやらお腹がもぞもぞとし始めた。
「ん?なんじゃ?」
不思議に思い、懐から手を入れる。
すると、直ぐに原因が分かった。
さっき拾った卵が微かに動いているのだ。
小刻みに動く卵を、静かに取り出してみる。
すると、目の前で殻が割れて、中から鮮やかな緑色をした雛が出てきた。
「ぴぃ」
雛は自分のほんのりと湿っている体を、三郎の親指にすりよせてきた。
「む、拙者を親だと思っておるのか?」
「ぴぃ」
肯定するかのように鳴くと、雛は再び体をこすりつける。
「おぉ、そうか。可愛いやつめ」
しばし、人差し指で雛の感触を楽しむように撫でる。
既に三郎の頭の中には、食べる為に卵を持ってきたという事は綺麗さっぱりと消え去っていた。
「よし、おぬしの名前はミドリとしよう」
そんな声が聞こえて来たのは、空がうっすらと白み始めた頃だった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
【コミカライズ決定】愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
【コミカライズ決定の情報が解禁されました】
※レーベル名、漫画家様はのちほどお知らせいたします。
※配信後は引き下げとなりますので、ご注意くださいませ。
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる