武者修行の仕上げは異世界で

丸八

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第1章

二話

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「いただきます」

川辺に場所を移した三郎が、ようやく夕飯にありついたのはとっぷりと日も暮れてからだった。

三郎の眼前には焚き火を囲む形で、大量の串が地面に刺さっている。
先程倒した蛇の肉を切り分けて串焼きにしたものだ。

三郎は串の一本を掴み、軽く塩を振ると口を大きく開けてかじりつく。

がぶりと噛んだ瞬間、じゅわりと熱い汁が口の中にあふれてきた。

「ん~~~!?」

慌てて傍らの竹筒を手に取り、中の水を一気に飲み干す。

「ぷはっ。熱い!でも、旨い!」

濡れた口元を袖口で拭うと、感嘆の声をあげる。

よっぽど熱かったのか今度は慎重に息を吹き掛けて少し冷ましてから、二口目を頬張る。

弾力に富んだ食感と、淡白ながらもしっかりとした旨味が口中を満たす。

「うん、本当に旨いな。苦労した甲斐があった」

あっという間に一本目を平らげた三郎は、しみじみと呟いた。
体格の良い三郎と言えど、百キロは下らない蛇を担いで移動するのは大変だ。

しかも、その後で行った皮を剥いだり、血を洗い流したりといった処理も量が量だけに手間がかかる。蛇を捌くだけでかなりの時間を費やした。

その労力の分、余計に美味しく感じるのかもしれない。

黙々と食べ続ける三郎。

大量にあった串焼きは瞬く間に三郎の胃袋へと消えていく。

しばらくして、満腹になった三郎が横に目をやると、そこには既に寝息をたてるシローがいた。

三郎が食事の準備をしている時、蛇の内臓を貰ってガツガツと勢い良く食べたと思ったら、そのまま直ぐに寝てしまったのだ。

微笑みながらシローの寝顔を見ていた三郎だったが、なにやらお腹がもぞもぞとし始めた。

「ん?なんじゃ?」

不思議に思い、懐から手を入れる。
すると、直ぐに原因が分かった。

さっき拾った卵が微かに動いているのだ。

小刻みに動く卵を、静かに取り出してみる。

すると、目の前で殻が割れて、中から鮮やかな緑色をした雛が出てきた。

「ぴぃ」

雛は自分のほんのりと湿っている体を、三郎の親指にすりよせてきた。

「む、拙者を親だと思っておるのか?」
「ぴぃ」

肯定するかのように鳴くと、雛は再び体をこすりつける。

「おぉ、そうか。可愛いやつめ」

しばし、人差し指で雛の感触を楽しむように撫でる。
既に三郎の頭の中には、食べる為に卵を持ってきたという事は綺麗さっぱりと消え去っていた。



「よし、おぬしの名前はミドリとしよう」

そんな声が聞こえて来たのは、空がうっすらと白み始めた頃だった。
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