武者修行の仕上げは異世界で

丸八

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第1章

六話

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「キール君、おかえりなさい」

キールは満面の笑みで迎えられた。
ここは冒険者支援協会、通称「協会」の受付窓口だ。

「ただいま帰りました」

キールは首から掛けてあったカードを外しながら帰還の挨拶をした。
背負っていた採取用の籠とカードをカウンターの上に置く。

「じゃあ、確認しますね」

受付嬢は受け取った籠の中から、キールが摘み取ってきた薬草を取り出すと、重さを計った。

「ちょうど有りますね。ミッションクリアです」
「はい」
「では、経験値を付与しますねぇ」
「お願いします」

受付嬢はキールの提出したカードを、カウンター内にある石板の窪みに嵌める。
石板には幾何学的な模様が刻まれており、カードを嵌めるとその模様がうっすらと発光した。受付嬢が何事か呟く。

何本かの金属線で台に繋がっている画面に光が灯り、文字列が表示される。
それを見ながら、受付嬢は付属のキーボードを操作する。

「あ、レベルが上がりましたね」
「本当ですか?!」
「えぇ、レベル5になりましたよ。これでランクEのミッションを受注できるようになりましたね」
「おぉ、やったぁ!」

キールは小さくガッツポーズをする。
それを受付嬢は微笑ましく見ていた。

「おめでとうございます。では、これは今回の報酬千ゴールドです。確認お願いします」

カウンターに紙幣が置かれる。
確認も何も紙幣は一枚しかないのだが、キールは律儀に確認する。
額面を確かめると、腰に着けているポーチから財布を取り出して、紙幣を入れる。

「ところでキールさん」
「はい?」
「あなたの後にいる、挙動不審なゴツイ方はどなたですか?」

言われてキールは振り返る。
そこには三郎がいた。
三郎は落ち着かない様子で、あちこちをキョロキョロ見ながら、「なんじゃあれは」とか「おぉ、光ったぞ」などと小さな声で驚いていた。
町に着いてからずっとこの調子なのだ。

「あ、さっきミッション中に助けてもらった三郎さんです」

三郎の様子に苦笑しながら、そう受付嬢に告げた。

「ミッション中?・・・・あぁ、今日はソイルボアと遭遇していますね」

受付嬢はまだ文字列を表示している画面を見た。
そこには、ミッション中の交戦履歴等も書かれている。

「じゃあ、その方が?」
「はい、追い払ってくれました」
「そうだったんですねぇ」

受付嬢は改めて三郎を見た。
束ねられた黒髪。がっちりしている身体に風変わりな黒い衣服を纏っている。草で編まれたと思しきサンダル。腰には二本の剣を帯びているところを見ると剣士のようだ。

「かなりの腕前のようね」

受付嬢は誰にも聞こえないような小声でそう呟いた。体つきや身のこなしからそう判断したのだ。

最後に両肩に担がれている物へ視線を向ける。

「あら、それはドラゴンスネークですか?」

声に軽い驚きが混ざる。

「ん?竜蛇?これの事か?」
「えぇ、ひょっとしてご存知なかったのですか?」
「不勉強なものでな」
「え~と、ドラゴンスネークは危険度がランクCの魔獣です。竜種の中では最低ランクですが、その実力は中級の冒険者では歯が立たないと言われています。その頑健さから、皮や鱗は防具の素材として珍重されており・・・」
「お、おぅ」

次から次へと怒濤のように迸る言葉に三郎はたじろぐ。
咄嗟にキールを見ると、いつものことですといった顔をしている。

「ご教授痛み入る」

ひとしきり説明がされた後で、三郎は頭を下げた。
額からは一筋の汗が滴る。

「いいえぇ。ところで、今日はそのドラゴンスネークの報酬を受け取りにいらっしゃったのですか?」
「ん、いや今日はだな」

三郎はキールに誘われ、冒険者の登録をしにきたと話す。
受付嬢は三郎がまだ登録していない事に驚いたようだった。
てっきり他の町を拠点にしている冒険者だと思っていたのだ。


「なるほど、分かりました。では、今から登録の手続きを致しましょう」

受付嬢はそう言うと、にっこり微笑んだ。
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