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第2章
一話
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三郎が目を覚ますと、見知らぬ天井が視界に広がっていた。
「ここは・・・」
身体を起こして辺りを見る。
ベッドが一つあるだけの狭い部屋だ。
床には刀と手荷物が置いてあり、その傍に白犬が寝ている。
そして、枕元には緑色の鳥がいる。
「そうじゃった。拙者は異国に来てしまったのであったな」
三郎の頭がようやく働き始めたようだ。
ここが、冒険者支援協会から与えられた宿舎だということを思い出した。
とりあえず、状況の整理を始めた。
「ここはファポート王国のホムベという町らしい。
異国に来てしまった以上、戻っても兄上達に迷惑がかかるやも知れぬ。なれば、こちらで暮らしが立つようにせねばならぬ」
枕元を見ると、鳥が一枚のカードを下敷きにしていた。
発行されたばかりの冒険者カードだ。
「都合が良い事に、こちらでは魔物を討伐する、冒険者なる仕事があるようだ。
ならば、拙者の剣も役に立つかも知れぬ」
そこまで言うと、三郎は立ち上がった。
「シロー、ミドリ。ほれ、そろそろ起きぬか」
三郎は二匹の従魔に声をかける。
二匹は、テイマーとして冒険者登録した三郎の頼もしい仲間だ。
「クゥン」
「ピィ」
二匹が眠そうにしながらも、なんとか起き上がる。
「よし、起きたな。ルナ殿の話では、食堂に行けば食事を出して貰えるそうだ」
二匹を連れて部屋を出る。
すると、隣の部屋のドアも開いて、中から人が出てきた。
「おや、これはキール殿ではないか」
隣人は偶然にも見知った顔だった。
三郎をこの町に案内してきてくれた冒険者のキールだ。
「あ、三郎さん。おはようございます」
「おはようございます」
「ワン」
「ピィ」
キールも三郎を覚えていたようで、挨拶をかわす。
「三郎さんもこれから朝御飯ですか?」
「うむ。キール殿も?」
「そうです。良かったら一緒に行きますか?」
「それは有難い。まだ不慣れ故、実は食堂の場所もよく分からなかったのだ」
「はは、じゃあ、案内します。
こっちですよ」
キールは先頭に立って歩き出す。
三郎は、キールの背中を見ながら歩いていたが、何か目の前をふらふら揺れるものがあるのに気付く。
それはキールの尻から出ていた。
「キール殿、それは?」
「え?あぁ、尻尾の事ですか?」
キールは尻尾を振って見せる。
「尻尾?」
「言って無かったですか?オイラは有尾族ですよ」
聞きなれない言葉に首を捻る。
「葛城の土蜘蛛?」
「なんですかそれ?」
今度はキールが首を捻る。
「いや、何でもない」
三郎はここが今まで自分がいた国とは違う事を思い出した。
こちらでは、尻尾のある人間がいるのも普通なのだろう。
「あ、着きましたよ」
そう言ってキールは扉を開くと、中に入っていく。
続いて食堂に入った三郎は、目の前に広がる光景に眩暈がした。
「ここは魑魅魍魎の巣窟か?」
食堂にはこの宿舎で寝起きしている低級冒険者が朝食を食べていた。
人数も多くかなりうるさい。
しかし、そんな事は問題では無かった。
中にいるのはヒューマンだけではなかった。
獣人や巨人に小人、ドワーフ等々、雑多な種族がいたのだ。
三郎からすれば、百鬼夜行もかくやである。
思わず刀に手をいく。
しかし、異形の者達もおとなしいとは言い難いが、ただ朝食を食べているだけだと分かり、ひとまず抜刀するのは思い止まった。
「いただきます」
食事を前に、三郎は手を合わせる。
テーブルに置かれているのは、硬く焼かれたパンと豆のスープだ。
それを二匹の従魔と分けあって食べる。
シローはともかく、ミドリはスープに入った豆が気に入ったようだ。
「あの、三郎さん。ちょっと相談があるんですけど」
「ん、なんじゃ?」
食事が一段落すると、隣に座ったキールが話しかけてきた。
「オイラとパーティー組んでくれませんか?」
「ここは・・・」
身体を起こして辺りを見る。
ベッドが一つあるだけの狭い部屋だ。
床には刀と手荷物が置いてあり、その傍に白犬が寝ている。
そして、枕元には緑色の鳥がいる。
「そうじゃった。拙者は異国に来てしまったのであったな」
三郎の頭がようやく働き始めたようだ。
ここが、冒険者支援協会から与えられた宿舎だということを思い出した。
とりあえず、状況の整理を始めた。
「ここはファポート王国のホムベという町らしい。
異国に来てしまった以上、戻っても兄上達に迷惑がかかるやも知れぬ。なれば、こちらで暮らしが立つようにせねばならぬ」
枕元を見ると、鳥が一枚のカードを下敷きにしていた。
発行されたばかりの冒険者カードだ。
「都合が良い事に、こちらでは魔物を討伐する、冒険者なる仕事があるようだ。
ならば、拙者の剣も役に立つかも知れぬ」
そこまで言うと、三郎は立ち上がった。
「シロー、ミドリ。ほれ、そろそろ起きぬか」
三郎は二匹の従魔に声をかける。
二匹は、テイマーとして冒険者登録した三郎の頼もしい仲間だ。
「クゥン」
「ピィ」
二匹が眠そうにしながらも、なんとか起き上がる。
「よし、起きたな。ルナ殿の話では、食堂に行けば食事を出して貰えるそうだ」
二匹を連れて部屋を出る。
すると、隣の部屋のドアも開いて、中から人が出てきた。
「おや、これはキール殿ではないか」
隣人は偶然にも見知った顔だった。
三郎をこの町に案内してきてくれた冒険者のキールだ。
「あ、三郎さん。おはようございます」
「おはようございます」
「ワン」
「ピィ」
キールも三郎を覚えていたようで、挨拶をかわす。
「三郎さんもこれから朝御飯ですか?」
「うむ。キール殿も?」
「そうです。良かったら一緒に行きますか?」
「それは有難い。まだ不慣れ故、実は食堂の場所もよく分からなかったのだ」
「はは、じゃあ、案内します。
こっちですよ」
キールは先頭に立って歩き出す。
三郎は、キールの背中を見ながら歩いていたが、何か目の前をふらふら揺れるものがあるのに気付く。
それはキールの尻から出ていた。
「キール殿、それは?」
「え?あぁ、尻尾の事ですか?」
キールは尻尾を振って見せる。
「尻尾?」
「言って無かったですか?オイラは有尾族ですよ」
聞きなれない言葉に首を捻る。
「葛城の土蜘蛛?」
「なんですかそれ?」
今度はキールが首を捻る。
「いや、何でもない」
三郎はここが今まで自分がいた国とは違う事を思い出した。
こちらでは、尻尾のある人間がいるのも普通なのだろう。
「あ、着きましたよ」
そう言ってキールは扉を開くと、中に入っていく。
続いて食堂に入った三郎は、目の前に広がる光景に眩暈がした。
「ここは魑魅魍魎の巣窟か?」
食堂にはこの宿舎で寝起きしている低級冒険者が朝食を食べていた。
人数も多くかなりうるさい。
しかし、そんな事は問題では無かった。
中にいるのはヒューマンだけではなかった。
獣人や巨人に小人、ドワーフ等々、雑多な種族がいたのだ。
三郎からすれば、百鬼夜行もかくやである。
思わず刀に手をいく。
しかし、異形の者達もおとなしいとは言い難いが、ただ朝食を食べているだけだと分かり、ひとまず抜刀するのは思い止まった。
「いただきます」
食事を前に、三郎は手を合わせる。
テーブルに置かれているのは、硬く焼かれたパンと豆のスープだ。
それを二匹の従魔と分けあって食べる。
シローはともかく、ミドリはスープに入った豆が気に入ったようだ。
「あの、三郎さん。ちょっと相談があるんですけど」
「ん、なんじゃ?」
食事が一段落すると、隣に座ったキールが話しかけてきた。
「オイラとパーティー組んでくれませんか?」
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