武者修行の仕上げは異世界で

丸八

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第2章

三話

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ルナに紹介された武器屋は、町を囲む壁の外にあった。

まだ未開拓の【辺境】が隣接するホムベは、魔獣の侵入を阻む為に、頑強な壁で囲われている。
しかし、開拓が進むにつれ人口が増えてくると、壁の中だけでは収まらなくなるってきた。
そうなってくると必然的に、壁の外にも建物が建ち始める。
壁の外は当然、魔獣に襲われる危険性が高い。なので、ほとんどの住人は冒険者だ。
壁の中では防犯の為もあり、協会からのステイタス補正はかからないようになっている。
それを嫌がる中級以上の冒険者達にとっては、外の方が暮らしやすいというのもあるのだ。



「地図によると、この辺みたいですね」

キールはルナから貰った地図と、周囲の景色を見比べる。
この区画は、冒険者向けの店が多く並んでいた。
目当ての店は他と比べて割りと大きく、直ぐに見付かった。

「あ、あった。どうやらここのようですよ」

キールを先頭に、一行は店内に入る。
中はいくつも棚が並び、そこに様々な武器や防具が展示してあった。

「いらっしゃいませ」

二人がそれぞれ飾ってある武器を手にとって見ていると、店の奥から男性が出てきた。
どうやらエルフらしく、すらりとした長身の美男子だ。

「えっと、オイラ達はルナさんに紹介されて来たんですけど」
「あぁ、はいはい。聞いていますよ。キールさんに三郎さんですね。娘がいつもお世話になっています」

エルフはソルと名乗った。ここの店主で、ルナの父親らしい。
三郎は自分と同じ位の年齢に見えるソルが、ルナの父親だと聞いて驚きを隠せなかった。
しかし、キールからエルフは長命な種族だと聞き、とりあえず納得した。

「それで、今日は何をお求めですか?」
「うむ、弓を見せて欲しくてな」
「それでしたら、こちらになります」

連れてこられたのは、弓の棚だ。
大きさや材質等、かなりの種類があった。

「アルミラージ相手でしたら、こちらなど如何でしょう?」

ソルは一本のコンポジットボウを取り上げた。
M字型で丈の短いその弓は取り回しが良く、足の速い相手に最適だ。

「ふむ、悪くない」
「良かったら、試射も出来ますが、どうされますか?」
「ふぅむ、そうだのぅ」

三郎は他の弓にも目を走らせる。
ふと、上を見ると、ニヤリと笑った。

「主人、あれを試してみても良いか?」

三郎が指差したのは、棚の上の壁に飾られた、金属製の弓だった。
ソルは顔をしかめる。

「あれは止めておいた方が良いでしょう。作ったは良いものの、怪力の巨人族ですら扱えなくなってしまった失敗作です」
「そこを何とかならぬか?」
「う~ん、まぁ、試すだけなら良いでしょう。弦を張るので、少しお時間を下さい」


試射場は思ったよりも、かなり広かった。
的までの距離が70メートル位ある。
案内されてから、10分程でソルがやって来た。
手には弦を張った金属弓がある。

「では、どうぞ」

三郎は渡された弓の軽さに少し驚いた。
金属製にも関わらず、先程のコンポジットボウよりも軽いくらいだ。

「これは軽いな」
「でしょう?これは最近開発されたガルゾニウム合金を使っているのです」
「ほう」
「このガルゾニウム合金の特徴は、軽い上に強靭。しかも粘性が高いという、まさに弓に打ってつけな金属なのです」

ルナの父親だけに、説明が長い。
三郎はその説明を半分聞き流しながら的に向った。
姿勢を整え、矢を番える。

「むん」

渾身の力を込め、弓を引き分けていく。
ゆっくりとだが、確実に分けられていく。
ソルはそれを驚いた顔で見ている。

開ききった状態を保持しつつ、狙いをつける。

「はっ」

気合いと共に放たれる矢。
瞬きする間もなく、的に吸い込まれる。

矢が当たると、的は粉々に砕け散った。
三郎は息を吐きつつ、弓を下ろす。
額には大量の汗が吹き出ていた。

「ふむ、良い弓だが、ちと拙者の手には余るな」

呆然としているソル。
レベル1、それもヒューマンの冒険者に引けるとは思っていなかったのだ。

「やはり、主人の言うように、先ほどの短弓を貰うとしようかな」
「あ、はい。毎度」

ソルは頷くと、商品を取りに奥へと走るのだった。



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