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第2章
四話
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ソルの店で買い物を終えた三郎達は、アルミラージ討伐のミッションを行う為に、薬草の生える草原に来ていた。
ここに出没するアルミラージを討伐するのが今日のミッションだ。
本来、ここに生えている薬草は、魔獣が嫌う臭いを発している。その証拠に草原に着いてから、シローは鼻をむず痒そうに擦っている。
だから、本来ならばここには魔獣はいないはずだ。
しかし、アルミラージをはじめとして、何種類かの魔獣がこの草原には生息していた。
今回の標的であるアルミラージは、この薬草が発する臭いに強い耐性を持っている。
それどころか、この薬草が好物なようで、放っておくと食い荒らしてしまう。
天敵である肉食獣が来ないこの草原は、アルミラージにとってまさに天国のような場所なのだ。
薬草は薬用以外にも、魔獣から町を守る役割も持つ為、必要以上に荒らされては困る協会は、冒険者を使って定期的に駆除しているのであった。
「シロー、大丈夫か?」
三郎は気遣わしげにシローの頭を撫でる。
従魔の登録をしたことで、シローのステイタスにも補正がかかり、薬草の臭いにも多少は耐性が付いたようだが、やはり苦手なものは苦手なようだ。
「う~む、本来ならばシローに一角兎を見付けて貰いたいところだが、この様子では無理かのう」
「そうですね。ここにいるだけでも辛そうですし」
二人はシローの周りにしゃがみこみ、今回の作戦を練っていた。
「シローが追い立てた一角兎を、拙者が弓で射る」
「そして、オイラがこのショートソードで仕留めると言うのが理想でしたけど……」
そう言って、キールは真新しいショートソードを抜いてみた。
これもソルの店で買った物だ。
あの後、三郎はいくつか装備品を買った。
コンポジットボウ、矢、革製の籠手等、今回のミッションに必要と思われる装備品の他に、キールにショートソードを買い与えていた。
今までキールは協会から貸与されたロングソードを装備していた。
しかし、そのロングソードはどう見てもキールに合っていなかった。
危なっかしく思った三郎は、よく吟味した上でこのショートソードを選んだのだ。
購入した装備品は全部で十万ゴールド位したが、三郎が一括で全て支払った。
ドラゴンスネークを協会に売ったお金が三百万ほどあったのだ。
今、そのお金は協会に預けてあり、手元には無い。
しかし、協会と提携している店では、冒険者カードで買い物が出来、後日預金から引き落とされるのだ。
「こら、滅多なことで刃物など抜くでない」
「あ、すみません」
三郎に嗜められ、キールは慌ててショートソードを鞘に納める。
「それにしても、三郎さんに弓術スキルがあって良かったです」
気まずくなり、キールは話題を逸らした。
ここまで来る間に、二人はお互いのステイタスを確認している。
パーティーを組むと、冒険者カードでメンバーの状態が分かるようになるのだ。
三郎のスキルの欄には【弓術G】とあった。
スキルはその技術にどれだけ熟達しているかの指標だ。
例え低ランクでも、有る者と無い者では威力等に雲泥の差が出る。
「武芸は一通り鍛練したからのぅ」
「へぇ、凄いですねぇ」
キールは素直に感心する。
実は、キールはレベルが上がってから数日間ずっと、このアルミラージ討伐を請け負っている。
しかし、アルミラージを発見する事もままならなかった。
それでも何匹か発見する事は出来た。
だか、剣しか持たないキールではあっという間に逃げられていたのだ。
それだけに、弓を扱えるパーティーメンバーが出来たのは飛び上がるほど嬉しかったのだ。
「さて、ともかく一角兎を見付けない事には話にならぬな。
この分だとシローの【探知】は当てには出来ぬしな」
「そうですね。どうしましょうか?」
シローは【伝達】【探知】【硬化】のスキルを持っている。
今回は【探知】スキルを使用するつもりだった。
しかし、シローの【探知】は嗅覚を利用するものなので、この状態では無理強いするのも酷な話である。
改めて二人は辺りを見回す。
草原はかなり広い面積を有しており、そこに数組の冒険者パーティーがいる。三郎達と同じくアルミラージ討伐を請け負っているのだろう。弓や剣等を装備してあちこち駆け回っている。
思案に暮れる二人。
そんな時だ。
「わん」
シローは鼻をヒクヒク動かし、臭いを嗅ぎ始めた。
薬草の臭いに邪魔されながら、アルミラージの痕跡を探そうとする。
「これ、無理するでない」
三郎は制止しようとするが、シローは聞かずに鼻を動かす。
その姿は見て、三郎はシローの好きにさせる事にした。
そのまましばらく場所を移動しながら臭いを追っていたが、急に姿勢を低くし、動きを止めた。
「わん」
「そうか、見付けたか」
小さな声で三郎に告げる。
そのまま先行して、獲物に近付く。
身を低くして草に隠れながら、ジリジリと臭いのもとに接近していく。
標的のアルミラージはまだ気付いていない。
50センチと平均的な大きさのアルミラージは、呑気に薬草を食んでいる。
シローが獲物に接近する間、三郎は弓に矢を番え、射程の中にアルミラージが現れるのを待つ。
「ワン!ワン! ワン!」
獲物に十分近寄ったシローは、吠えながら走る。
驚き、逃げるアルミラージを的確に誘導し、三郎の前に追いたてる。
「よし、良いぞ」
三郎は引き絞っていた弓を射る。
放たれた矢はアルミラージの後ろ足に吸い込まれていく。
「キュー」
後ろ足に矢が刺さったアルミラージは、尚も逃げようとするが、流石に減速している。
そこに走りよったのはキールだ。持ち前の俊足を生かし、一気に近付くと、抜き放ったショートソードで斬りつける。
「うりゃー!」
気合いと共に振り下ろされた刃は、アルミラージを浅く切り裂いた。
アルミラージもその自慢の角で応戦する。
「くっ」
キールの心臓目掛けて跳ぶアルミラージ。
突き出される角をキールは辛くも受け止める。
「わん!」
着地したアルミラージの首をシローの牙が襲う。
アルミラージは気付いているが、体勢を崩している為、避けられない。
シローに噛みつかれ、死に物狂いで暴れるアルミラージ。
その頭をキールが押さえつけ、心臓にショートソードを突き立てた。
「やった」
動かなくなったアルミラージを見下ろし、キールは小さく呟いた。
ここに出没するアルミラージを討伐するのが今日のミッションだ。
本来、ここに生えている薬草は、魔獣が嫌う臭いを発している。その証拠に草原に着いてから、シローは鼻をむず痒そうに擦っている。
だから、本来ならばここには魔獣はいないはずだ。
しかし、アルミラージをはじめとして、何種類かの魔獣がこの草原には生息していた。
今回の標的であるアルミラージは、この薬草が発する臭いに強い耐性を持っている。
それどころか、この薬草が好物なようで、放っておくと食い荒らしてしまう。
天敵である肉食獣が来ないこの草原は、アルミラージにとってまさに天国のような場所なのだ。
薬草は薬用以外にも、魔獣から町を守る役割も持つ為、必要以上に荒らされては困る協会は、冒険者を使って定期的に駆除しているのであった。
「シロー、大丈夫か?」
三郎は気遣わしげにシローの頭を撫でる。
従魔の登録をしたことで、シローのステイタスにも補正がかかり、薬草の臭いにも多少は耐性が付いたようだが、やはり苦手なものは苦手なようだ。
「う~む、本来ならばシローに一角兎を見付けて貰いたいところだが、この様子では無理かのう」
「そうですね。ここにいるだけでも辛そうですし」
二人はシローの周りにしゃがみこみ、今回の作戦を練っていた。
「シローが追い立てた一角兎を、拙者が弓で射る」
「そして、オイラがこのショートソードで仕留めると言うのが理想でしたけど……」
そう言って、キールは真新しいショートソードを抜いてみた。
これもソルの店で買った物だ。
あの後、三郎はいくつか装備品を買った。
コンポジットボウ、矢、革製の籠手等、今回のミッションに必要と思われる装備品の他に、キールにショートソードを買い与えていた。
今までキールは協会から貸与されたロングソードを装備していた。
しかし、そのロングソードはどう見てもキールに合っていなかった。
危なっかしく思った三郎は、よく吟味した上でこのショートソードを選んだのだ。
購入した装備品は全部で十万ゴールド位したが、三郎が一括で全て支払った。
ドラゴンスネークを協会に売ったお金が三百万ほどあったのだ。
今、そのお金は協会に預けてあり、手元には無い。
しかし、協会と提携している店では、冒険者カードで買い物が出来、後日預金から引き落とされるのだ。
「こら、滅多なことで刃物など抜くでない」
「あ、すみません」
三郎に嗜められ、キールは慌ててショートソードを鞘に納める。
「それにしても、三郎さんに弓術スキルがあって良かったです」
気まずくなり、キールは話題を逸らした。
ここまで来る間に、二人はお互いのステイタスを確認している。
パーティーを組むと、冒険者カードでメンバーの状態が分かるようになるのだ。
三郎のスキルの欄には【弓術G】とあった。
スキルはその技術にどれだけ熟達しているかの指標だ。
例え低ランクでも、有る者と無い者では威力等に雲泥の差が出る。
「武芸は一通り鍛練したからのぅ」
「へぇ、凄いですねぇ」
キールは素直に感心する。
実は、キールはレベルが上がってから数日間ずっと、このアルミラージ討伐を請け負っている。
しかし、アルミラージを発見する事もままならなかった。
それでも何匹か発見する事は出来た。
だか、剣しか持たないキールではあっという間に逃げられていたのだ。
それだけに、弓を扱えるパーティーメンバーが出来たのは飛び上がるほど嬉しかったのだ。
「さて、ともかく一角兎を見付けない事には話にならぬな。
この分だとシローの【探知】は当てには出来ぬしな」
「そうですね。どうしましょうか?」
シローは【伝達】【探知】【硬化】のスキルを持っている。
今回は【探知】スキルを使用するつもりだった。
しかし、シローの【探知】は嗅覚を利用するものなので、この状態では無理強いするのも酷な話である。
改めて二人は辺りを見回す。
草原はかなり広い面積を有しており、そこに数組の冒険者パーティーがいる。三郎達と同じくアルミラージ討伐を請け負っているのだろう。弓や剣等を装備してあちこち駆け回っている。
思案に暮れる二人。
そんな時だ。
「わん」
シローは鼻をヒクヒク動かし、臭いを嗅ぎ始めた。
薬草の臭いに邪魔されながら、アルミラージの痕跡を探そうとする。
「これ、無理するでない」
三郎は制止しようとするが、シローは聞かずに鼻を動かす。
その姿は見て、三郎はシローの好きにさせる事にした。
そのまましばらく場所を移動しながら臭いを追っていたが、急に姿勢を低くし、動きを止めた。
「わん」
「そうか、見付けたか」
小さな声で三郎に告げる。
そのまま先行して、獲物に近付く。
身を低くして草に隠れながら、ジリジリと臭いのもとに接近していく。
標的のアルミラージはまだ気付いていない。
50センチと平均的な大きさのアルミラージは、呑気に薬草を食んでいる。
シローが獲物に接近する間、三郎は弓に矢を番え、射程の中にアルミラージが現れるのを待つ。
「ワン!ワン! ワン!」
獲物に十分近寄ったシローは、吠えながら走る。
驚き、逃げるアルミラージを的確に誘導し、三郎の前に追いたてる。
「よし、良いぞ」
三郎は引き絞っていた弓を射る。
放たれた矢はアルミラージの後ろ足に吸い込まれていく。
「キュー」
後ろ足に矢が刺さったアルミラージは、尚も逃げようとするが、流石に減速している。
そこに走りよったのはキールだ。持ち前の俊足を生かし、一気に近付くと、抜き放ったショートソードで斬りつける。
「うりゃー!」
気合いと共に振り下ろされた刃は、アルミラージを浅く切り裂いた。
アルミラージもその自慢の角で応戦する。
「くっ」
キールの心臓目掛けて跳ぶアルミラージ。
突き出される角をキールは辛くも受け止める。
「わん!」
着地したアルミラージの首をシローの牙が襲う。
アルミラージは気付いているが、体勢を崩している為、避けられない。
シローに噛みつかれ、死に物狂いで暴れるアルミラージ。
その頭をキールが押さえつけ、心臓にショートソードを突き立てた。
「やった」
動かなくなったアルミラージを見下ろし、キールは小さく呟いた。
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