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第3章
四話
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「さて、如何にしようか?」
「どうしましょうねぇ」
肩にドラゴを乗せた三郎が窓口に戻ってきたのは昼前だった。
本来なら正午過ぎまで授業を受けているのだが、ルナがいなくなってしまったので急に時間が空いてしまったのだ。
「とりあえず、掲示板でも見るかな」
「そうですね。そうしましょう」
適当なミッションを選んでから食事をしようと思い、三郎は掲示板の前に移動する。
現在、三郎のレベルは11になっている。これは同時期に冒険者になった者の中では比較的早い方だ。それは、キールに従いシローとミドリが討伐ミッションを行っている恩恵も多分にある。従魔が得た経験値はテイマーにも還元されるのだ。
このレベルだと、単独でランクがEまでのミッションを受ける事が出来る。Eは配達、採取等の軽作業に町周辺の魔獣討伐等が主なミッションだ。
三郎は当面の目標を、語学の習得に主眼をおいている。その為、町の中で行えるものはないかと考えながら、ざっと掲示板に目を走らせていると、背後から声を掛けられた。
「あ、三郎さん」
「おぉ、キール殿。奇遇じゃな」
声を掛けてきたのはキールだった。
傍にはシローとミドリもいる。二体の従魔はこの2ヶ月間で目覚ましい成長を遂げていた。体が大きくなり、みずみずしい筋肉は太くなって力がみなぎっている。顔付きもまだ幼さが残るものの、精悍さを増している。
それはキールも同じだ。今は三郎と早朝稽古を共にし、剣の扱いにも慣れてきていた。
だが、成長したと言ってもシローはまだ子犬だ。甘えたい盛りでもある。数時間ぶりに会った御主人様に早速じゃれつこうとしたが、肩に乗っているドラゴの姿を認めるとその足を止める。
キールも小型のドラゴンを気にしている様子だ。ミドリだけは何も気にしてないのか、シローの背からドラゴとは反対の肩に居場所を変える。
「三郎さん、肩にドラゴンが付いていますよ」
「ん、おぉ。こいつは拙者の冒険者カードが変じたものらしい」
「ドラゴです。御主人様のパーティーメンバーのキールさんと、従魔のシローさん、ミドリさんですね。宜しくお願いします」
元が冒険者カードであるドラゴは、三郎の基本情報はしっかり把握している。
しかし、普通の理解力しか有していないキールは、ざっくりとした三郎の説明では、唐突過ぎて何を言われたのか分からないでいた。
「冒険者カード?」
何を言ってるか、分からない。そんな顔だ。
そんなキールにドラゴが自己紹介がてら懇切丁寧な説明をした。三郎には説明出来るだけの知識がなかったからだ。
「はぁ、なるほど。ボーナスアビリティですか。不思議な事もあるもんですね」
因みにキールのボーナスアビリティは【逃げ足】である。名前の通り逃げ足が早くなるのだ。
キールはまじまじとドラゴを見る。金色の鱗を撫でると、つるつるとしていた。その感触はまさに冒険者カードを想起させるものだ。そして、精霊だからなのかまるで体温を感じさせない体をしていた。
「そうじゃのう。この地に来てから、驚きの連続じゃ」
からからと笑う三郎。
つられてキールもクスリと笑う。
「さて、キール殿はなぜこのような時間に此処におるのじゃ?」
笑いを納めた三郎が、キールに疑問をぶつけた。
いつもならこの時間は草原で討伐ミッションを行っているからだ。
「それがですねぇ。どうやらいつものアルミラージ討伐が昨日で終わってしまったらしいんですよ」
キールによると、草原に棲息する魔獣が一定の数を下回ったため、しばらくはミッションとしては出ないらしい。
勿論、見掛ければ狩っても良いらしいが、当然実入りは減る。
それでキール達もどうしようか悩んでいたのだそうだ。
「それで、しばらくここで掲示板を眺めていたら、職員さんに声を掛けられたんですよ。ちょっと頼まれてくれないかって」
「ほう」
「最近、攻略された迷宮があるそうなんですが、そこを村として開拓しているらしいんです。その開拓村に資材を届けて欲しいって言われたんです」
「ふむ。そこは遠いのか?」
「そこまで遠くは無いらしいですよ。三十キロとかいってたかな?今はその持っていく資材の準備が整うのを待っているところなんです」
ロビーで時間を潰しているところに三郎が奥から出てきたので、声を掛けたらしい。
「そうだ、今日は三郎さんも一緒に行きませんか?」
「ふむ。一緒に、か」
「ダメ、ですか?」
キールの申し出に、三郎は顎に手を当てて考える。
三郎は一同の顔を見る。
「よかろう。今日は一緒に行動しよう」
「ホントですか?やったぁ!」
三郎の答えに喜ぶキール。
少なからず町から町への移動が不安だったのだろう。顔には安堵の表情が浮かんでいる。
それからしばらくして、協会の職員が幾つかの箱が入った背負子を持ってきた。
中身は魔石だそうだ。
これを新しい開拓村へ運ぶのが今回のミッションになる。
職員から詳しくミッションの内容を確認すると、三郎達は近くの食堂に移動した。
魚料理が美味い三郎のお気に入りの食堂だ。授業の後、たまにルナとも来るのだが、それがまたやっかみを受ける原因にもなっている。
軽く食事をしながら打ち合わせをする。それが終わると、三郎達一行は開拓村に向けて出発したのであった。
「どうしましょうねぇ」
肩にドラゴを乗せた三郎が窓口に戻ってきたのは昼前だった。
本来なら正午過ぎまで授業を受けているのだが、ルナがいなくなってしまったので急に時間が空いてしまったのだ。
「とりあえず、掲示板でも見るかな」
「そうですね。そうしましょう」
適当なミッションを選んでから食事をしようと思い、三郎は掲示板の前に移動する。
現在、三郎のレベルは11になっている。これは同時期に冒険者になった者の中では比較的早い方だ。それは、キールに従いシローとミドリが討伐ミッションを行っている恩恵も多分にある。従魔が得た経験値はテイマーにも還元されるのだ。
このレベルだと、単独でランクがEまでのミッションを受ける事が出来る。Eは配達、採取等の軽作業に町周辺の魔獣討伐等が主なミッションだ。
三郎は当面の目標を、語学の習得に主眼をおいている。その為、町の中で行えるものはないかと考えながら、ざっと掲示板に目を走らせていると、背後から声を掛けられた。
「あ、三郎さん」
「おぉ、キール殿。奇遇じゃな」
声を掛けてきたのはキールだった。
傍にはシローとミドリもいる。二体の従魔はこの2ヶ月間で目覚ましい成長を遂げていた。体が大きくなり、みずみずしい筋肉は太くなって力がみなぎっている。顔付きもまだ幼さが残るものの、精悍さを増している。
それはキールも同じだ。今は三郎と早朝稽古を共にし、剣の扱いにも慣れてきていた。
だが、成長したと言ってもシローはまだ子犬だ。甘えたい盛りでもある。数時間ぶりに会った御主人様に早速じゃれつこうとしたが、肩に乗っているドラゴの姿を認めるとその足を止める。
キールも小型のドラゴンを気にしている様子だ。ミドリだけは何も気にしてないのか、シローの背からドラゴとは反対の肩に居場所を変える。
「三郎さん、肩にドラゴンが付いていますよ」
「ん、おぉ。こいつは拙者の冒険者カードが変じたものらしい」
「ドラゴです。御主人様のパーティーメンバーのキールさんと、従魔のシローさん、ミドリさんですね。宜しくお願いします」
元が冒険者カードであるドラゴは、三郎の基本情報はしっかり把握している。
しかし、普通の理解力しか有していないキールは、ざっくりとした三郎の説明では、唐突過ぎて何を言われたのか分からないでいた。
「冒険者カード?」
何を言ってるか、分からない。そんな顔だ。
そんなキールにドラゴが自己紹介がてら懇切丁寧な説明をした。三郎には説明出来るだけの知識がなかったからだ。
「はぁ、なるほど。ボーナスアビリティですか。不思議な事もあるもんですね」
因みにキールのボーナスアビリティは【逃げ足】である。名前の通り逃げ足が早くなるのだ。
キールはまじまじとドラゴを見る。金色の鱗を撫でると、つるつるとしていた。その感触はまさに冒険者カードを想起させるものだ。そして、精霊だからなのかまるで体温を感じさせない体をしていた。
「そうじゃのう。この地に来てから、驚きの連続じゃ」
からからと笑う三郎。
つられてキールもクスリと笑う。
「さて、キール殿はなぜこのような時間に此処におるのじゃ?」
笑いを納めた三郎が、キールに疑問をぶつけた。
いつもならこの時間は草原で討伐ミッションを行っているからだ。
「それがですねぇ。どうやらいつものアルミラージ討伐が昨日で終わってしまったらしいんですよ」
キールによると、草原に棲息する魔獣が一定の数を下回ったため、しばらくはミッションとしては出ないらしい。
勿論、見掛ければ狩っても良いらしいが、当然実入りは減る。
それでキール達もどうしようか悩んでいたのだそうだ。
「それで、しばらくここで掲示板を眺めていたら、職員さんに声を掛けられたんですよ。ちょっと頼まれてくれないかって」
「ほう」
「最近、攻略された迷宮があるそうなんですが、そこを村として開拓しているらしいんです。その開拓村に資材を届けて欲しいって言われたんです」
「ふむ。そこは遠いのか?」
「そこまで遠くは無いらしいですよ。三十キロとかいってたかな?今はその持っていく資材の準備が整うのを待っているところなんです」
ロビーで時間を潰しているところに三郎が奥から出てきたので、声を掛けたらしい。
「そうだ、今日は三郎さんも一緒に行きませんか?」
「ふむ。一緒に、か」
「ダメ、ですか?」
キールの申し出に、三郎は顎に手を当てて考える。
三郎は一同の顔を見る。
「よかろう。今日は一緒に行動しよう」
「ホントですか?やったぁ!」
三郎の答えに喜ぶキール。
少なからず町から町への移動が不安だったのだろう。顔には安堵の表情が浮かんでいる。
それからしばらくして、協会の職員が幾つかの箱が入った背負子を持ってきた。
中身は魔石だそうだ。
これを新しい開拓村へ運ぶのが今回のミッションになる。
職員から詳しくミッションの内容を確認すると、三郎達は近くの食堂に移動した。
魚料理が美味い三郎のお気に入りの食堂だ。授業の後、たまにルナとも来るのだが、それがまたやっかみを受ける原因にもなっている。
軽く食事をしながら打ち合わせをする。それが終わると、三郎達一行は開拓村に向けて出発したのであった。
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