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二章 相棒です

八話

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「今からもう一度今日の説明をするぞ。静かに聞けよ」


 昼休みの後、俺達は学校の敷地内にあるダンジョンの中で整列していた。

 ここは敷地内に三つあるダンジョンで最も脅威度の低いダンジョンだ。だがその中は広く、見渡す限り平原が広がっている。

 白沢先生が生徒達の前で今日の授業内容を大声で説明している。


「今からこの第一ダンジョンの地図を渡す。そこには各人三つのチェックポイントが書かれているから、そこに置いてあるスタンプを地図に押して戻ってきてもらう」


 前から順番に地図が回ってくる。どうやら俺は北西方面にチェックポイントが固まっているようだ。


「制限時間は三時間。エネミーもいるが、必ずしも倒す必要はないからな。あくまでも安全を心掛けろよ。じゃあ、スタート!」


 号令一下、クラスメイト達はあちこちへと走り去る。

 俺はというと、もう一度地図をよく見る。


「全部回ってここまで戻ると、だいたい10kmくらいだな。出てくるエネミーはホーンラット、ワイルドドッグ、ブッシュスネーク、ビッグホッパーか。変異種もいるようだからそこは注意だな」


 出現ポイントこそ書いてないものの、一階層に棲息しているエネミーも書いてある。

 ただ走ってチェックポイントを回るだけなら一時間もかからないくらいだけど、テイムするエネミーを探すとなるとちょっと時間がかかりそうだ。


「あら、小幡くんまだ出発してないの?見掛けによらず慎重なのね」


 テイムするなら偵察をこなせるエネミーが良いな。見つかりにくくて、移動速度の速いヤツ。

 と、するとビッグホッパーは拳くらいの大きさで、飛べるから魅力的だな。

 だけど、昆虫って意志疎通できるのかな?


「ちょっと、ねえ。聞こえてるの?」


 まあ、昆虫型ってだけでエネミーなんだからいけるのかな?

 次点でホーンラットとブッシュスネークか。

 ネズミと蛇なら何処にでも入り込めそうだ。


「おーい、おーい!聞こえてますかぁ?」


 ワイルドドッグはどうだろ?一階層では一番戦闘力がありそうだけど、所詮は一階層の中だけならって感じだしなぁ。


「ねぇ、無視しないでよぉ…。ねぇってばぁ………」


 ある程度考えがまとまったから、腕にはめた端末を見ると、開始から既に5分が経過していた。

 考えに没頭すると、周りが見えなくなるのが悪いクセだよなぁ。

 仮にも斥候志望なんだから、周りには常に気を配れるようにならないとな。

 さすがにまずいと思って走りだすと、女子生徒が踞って地面に「の」の字を書いてるのが見えた。何かのスキルを使っているんだろうか?

 踞ってる後ろ姿しか見えないが、あの明るめの茶髪は見覚えがある気がするぞ。

 名前は確か………さ、取り敢えず出発するかな。

 ………やっぱり人の名前を覚えるのって難しいな。

 走りだして少しすると、何処からかキーキーモーモーいう声が聞こえてきた。この階層には猿や牛はいなかったはずだけどな。

 出発地点の方から聞こえてくる気はするから、何かイレギュラーがあっても先生達に任せておけば大丈夫だろう。


「さ、ちょっと遅れてるから少し急がないとな」


 俺は後ろを確認している余裕もなく、チェックポイントに向かうのだった。
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