県立冒険者高等学校のテイマーくん

丸八

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三章 平和って良いですね

二十九話

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「ねぇ、将来自衛隊に入るつもりはある?」


 急に話が変わったな。

 自衛隊?ダンジョン自衛隊かな?

 確かに卒業生の半分近くは自衛隊に入る事になるだろうけど、なんでいまその質問なんだ?

 大屋敷先生の話の意図が見えないな。


「【育成】はね、言わば軍事機密なのよ」


 さっきの話を聞いたら、軍事機密だというのも理解出来る。

 高ステータスの人間があちこちに現れたら、社会が混乱してしまうかもしれないからね。中には犯罪に加担する人も出てきてしまうだろう。

 この事は民間には漏れないように国家間で共有されているそうだ。


「でも、俺みたいに偶然スキルを手に入れてしまう人もいるんじゃないですか?」
「そうね。現在【育成】が発現するジョブは三系統が確認されているわ。一つはあなたのテイマー系で後は軍人系と教師系ね」
「そうなんですね」
「軍人系統は普通に過ごしていたら転職の条件が満たせないし、教師系統は転職条件が複雑だから、独力でたどり着くのは難しいのよ」


 ジョブに転職条件なるものがあることを初めて知ったな。

 この分だと、教えてもらってないことがかなりあるんだろうな。


「だから、【育成】持ちは自衛隊として囲うか、それとも」


 え?やっぱり消されちゃう感じ?

 今まであんまり気にしたことなかったけど、大屋敷先生、圧が凄すぎるんですけど。ちょっとチビりそう。


「徹底的に監視するかどっちかになるわね」


 セーフ!

 首の皮一枚で繋がった。

 もう、紛らわしい間の取り方しないで下さいよ、先生!


「今後どうするにせよ、とりあえずこれにサインしてね」
「え?」
「ね!」
「あ、はい」


 渡されたのは誓約書だった。要約すると【育成】と【能力閲覧】に関して口外しないというシンプルなものだった。

 既に大屋敷先生の名前は書いてあり、後は俺が署名すれば良いだけのようだ。

 流石にこの歳で死にたくはないので、おとなしくサインすることにした。


「これで、良いですか?」
「ええ、結構よ」


 にこりと妖しげな笑みを浮かべると、大屋敷先生は誓約書の真ん中に魔石を置いた。


「………急急如律令」


 大屋敷先生がなにごとか呪文を唱えると、誓約書から急速に文字が抜け出し、一つの形を取り出した。

 パッと見、それは小さなキツネのようだった。

 よく確認するよりはやく、キツネのような何かは消え去ってしまった。

 よりによって俺の左手の中にね。


「え?なにこれ」


 俺の左手の甲にキツネの刺青が浮かんでいた。

 これじゃ銭湯やプールにいけないじゃないか。スーパー銭湯大好きなのに。


「大丈夫よ。他の人からは見えないから。スーパー銭湯でもナイトプールでも行けるわよ」
「良かったぁ」


 って、なんで俺がスーパー銭湯のこと考えてるのが分かったんだろ。偶然?


「偶然じゃないわよ。私の従魔の眷属をあなたの心に宿らせたの。だから、何を考えてるか筒抜けよ。そうそう、私もいい歳だからそんな下ネタには別にどうじないわよ」


 渾身のネタだったのにスルーされた。

 でも、これから大屋敷先生と話す時は口を開かなくて良いから楽だな。


「急に横着いわね。でも、これからずっと筒抜けなのも可哀想だから、もちろん制限はかけるわ。これからは【育成】と【能力閲覧】に関して喋ろうとした時だけ声が出ないようにしておくわね」


 はい、分かりました

 喋ろうとするのは危険だと【危険察知】がかすかに警鐘を鳴らすので、俺は試したりはしませんよ。絶対に!
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