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三章 平和って良いですね

三十三話

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「なんかあそこの樹のうろが気になる」


 森ゾーンとの境目にまで移動してきたんだけど、大きな樹の途中にある虚が気になった。


「あれっスか?」
「そう。昨日は無かった気がするんだよ」
「気のせいじゃないのか?」
「いや、マッピングする時の目印にした樹だから、あったら特徴として書き込んであるはず」
「小幡が言うなら間違いなさそうっスね」
「そうだな」


 ちょうどこの樹の下で獣道が交差していたので、マッピングの目印にしたんだ。

 だけど、一晩であんな大穴が開くとも思えないから不思議なんだ。まあ、ダンジョンだならって言われれば納得せざるを得ないんだけどね。


「ちょっと見てくる。少し待っててくれ」


 俺は得物の棒を天子田さんに渡して、虚までの距離を目測で計る。

 虚のすぐ側にある枝の高さが約3mくらい。ジャンプすれば届くだろう。そう思って跳んでみると、思ったより高く跳べた。

 枝の上に着地。とはいかないものの、その勢いのまま楽に枝の上に立つことが出来た。


「あ、飛蝗長靴の跳躍補助の効果か。これは便利だな」
「ちぅ」


 飛蝗長靴の便利さを噛みしめながら枝の上を歩き、虚の中を覗いてみる。

 枝はかなり太く、上部が少し平らになっているのでかなり歩きやすい。虚を覗くためにしゃがんでも安定している。


「お、これはポーションか?」
「ちぅ」


 虚の中には液体の入った小瓶が置いてあった。

 【危険察知】が反応しないので、一応周りを確認してから小瓶を取り出す。

 小瓶にはラベルも何も貼ってないので、中の液体が何なのかは分からない。色合いから初級ポーションだとは思うけど、同じ色の別の何かの可能性は否定できない。

 最悪、毒の可能性もあるんだ。どっちにしろ鑑定に出してからしか使えないから問題無いけどね。


「何かあったっスか?」
「ポーション?があった」
「ラッキーじゃないか」


 俺が虚に腕を突っ込むのを見ていた吉根が、何かあったのか聞いてきたので答えると、市場君がラッキーだと手を叩く。

 すぐに下まで降りて、実物を見せるとみんな喜んでいた。

 地上で使っても多少の傷や打撲はすぐに治ってしまうので、一瓶五百円で買い取ってもらえるんだ。

 ダンジョンで使えば怪我の他にHPも回復するので、自分達で使っても良いし、なかなか嬉しい拾い物だ。


「ひょっとしたらああいう虚が宝箱みたいな役割をしているのかもな」
「きっとそう」


 思った事を口に出したら、泉ヶ丘さんが同意してくれた。これは知ってる人は知ってる情報みたいだ。

 アイテムを取ったら虚は閉じるので、中にまだアイテムがあるかどうか分かりやすいらしい。

 現にもうさっきの虚は閉じていて、影も形も無くなっている。


「これから上にも注意を向けないとな」
「ちぅ!」
「任せとけって?じゃあ、お願いねツクモ」
「ちぅ!」


 虚を探すのをツクモに頼むと、胸を叩いて了承して俺の肩から頭の上に移動した。

 ヤル気満々みたいだな。ちょっと頭が重いけど。


「そろそろ大丈夫っスか」
「はい。大丈夫です」


 天子田さんにポーションを渡す。それをリュックのサイドポケットへ丁寧に入れる。

 ポーションの小瓶はガラスっぽい材質だから、割れないか少し心配だな。

 天子田さんがリュックを担ぎ直すのを待って、俺達は先に進みだした。
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