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四章 二体目ですよ

四十話

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「ねえねえ、聞いた?」


 朝一番に牛牧さんが話しかけてきた。

 いきなり「聞いた?」だけじゃ何を聞かれているのか分からない。いつもならね。

 ただ、この時期なら話は別だ。次の深夜ドラマの話だろう。プラモデルを題材にしたドラマらしいから俺に話を振ってきたんだろう。


「ああ『試作型ラン』の話だろう?」
「違う」


 どうやら間違えたようだ。

 女子との会話は難しいな。


「戦闘科の人の話!」
「戦闘科の?」


 俺は首を捻る。戦闘科の知り合いなんてパーティーメンバーと、金屋先輩くらいしかしらないからな。戦闘科の話って言われてもピンとこないな。


「しらないの?土曜日にダンジョンに入った戦闘職だけのパーティーが全滅したって。みんな入院したんだって」
「全滅で入院?端末の安全装置は稼働しなかったの?」


 端末にはHPが0になるとダンジョンの外に転移させる安全装置が組み込まれている。

 ただ、安全装置を起動させる為のコストとして、経験値が使われる上に、装備品以外のアイテムは転移されないというデメリットがある。


「起動はしたみたいよ。ただ、あれもタイムラグがあるみたいだから、直後のダメージにはどうしようもないらしいわ」


 どうやら、打撃みたいな単発攻撃でHPが0になったら安全に転移出来るが、炎のブレスなんかで継続的にダメージを受け続けていたら、HPが0になってから安全装置が起動するまでの間のダメージは受けてしまうって事らしい。

 ただ、起動するまでには一秒もかからないらしいから、致命傷には滅多にならないそうだ。


「犬系のエネミーだったみたい。全身噛み傷だらけだったそうよ」


 犬系のエネミーと聞いて、俺は土曜日のブラックハウンドを思い出した。

 襲ってくる直前まで気配が感じられなかったから、奇襲されていたら一溜りもなかったかもしれないな。

 あと、ツクモの活躍もあった。あそこで【突風】が使えてなかったら、俺達も全滅していたかもしれないな。牽制役として頑張ってくれた。


「俺達のパーティーもブラックハウンドの群れと遭遇してさ。ちょっと危なかったよ。天子田さんは何か言ってなかった?」
「聞いたわよ。ちょうど部活の練習後に戦闘科の人からこの話題を聞いたんだけど、その時ミオちゃん達も戦ったって言ってた。ツクモちゃんの魔法が凄かったって」
「そうそう、ちょうどその前にツクモがレベルアップしてさ、【突風】を覚えてくれていたんだ」
「ちぅ」


 本当は【育成】でステータスをいじったからなんだけど、それは言えないのでレベルアップのお陰ということにした。

 ツクモを撫でるとちょっとどや顔をしてる。可愛い。

 牛牧さんもツクモの頭を撫でたそうにしてるけど、ツクモは身持ちの硬い従魔だから、俺以外に撫でさせはしないんだ。手を出した瞬間に威嚇し始めた。可愛いヤツめ。


「ツクモちゃんももうちょっと慣れてくれても良いのになぁ」
「最初は近付いただけでも威嚇してたんだから、格段の進歩じゃないか」
「でもなぁ」


 牛牧さんと話してる内に、クラスメイト達も集まってきていた。話題はやはり戦闘職6人組の全滅に関してみたいだな。

 皆が話してるのを聞くと、どうも感じの悪い連中だったみたいだね。戦闘職以外に価値はないって公言していたとか。

 そういえば名前は忘れたけど、吉根や市場君の知り合いも感じの悪い戦闘職6人組だったな。ひょっとしたらあの連中が全滅したのかもしれないな。

 そんな事を考えていたら白沢先生が来て、朝のHRが始まった。
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