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⑮ 「ソフト改良」
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⑮ 「ソフト改良」
月曜日、今日は、いつものように講義の後のチャットに「JPB」の「ふなっしーもどき」のアイコンがあった。皆が「落ち」、オンライン通信にすると間髪空けずに質問が来た。
「里景先生のプロジェクトに僕も参加させてもらいたいんですけど、メンバーってどうやって選抜されるんですか?プログラミングはまだまだですけどアッセンブルでは頑張れると思うんです。」
「うーん、これと言って決まりはないと思うんだけど、「JPB」君はどうして参加したいの?」
いくつかのやり取りの中で、「JPB」の真剣さは十二分に如志には伝わった。
「じゃあ、所長にうちの教室の生徒が手を上げてくれてるからって言っておくね。その時は、一緒に頑張ろうね!」
と如志に言ってもらえた「JPB」は嬉しそうに「はい!」と言った瞬間に時間切れとなった。
翌日、NPOメンバーを交えての学校側の打ち合わせが行われた。その会議に同席していた如志に「一度、生の現場を見に行きましょうか?」と臨床心理士の世夢から誘いを受けた。翌日の講義は休講とし、如志は朝から京都に入ると「児童福祉施設」、「老人福祉施設」、「精神科医」等を訪問し各々のニーズと問題点と課題を目の当たりにした。
専門知識を持ったカウンセラーの数が圧倒的に少ないことで、利用者や患者が十分に「カウンセリング」や「心理療法」を受けられない現状も理解した。
「学ばないといけないことがたくさんありますね。」
現場で一生懸命メモを取る如志に世夢は真剣な顔で言った。
「慌てなくていいのよ。この領域でのIoTは始まったばかり…。まずは、里景先生の観点で「生成AI」が患者や利用者に対する「治療者」になりうるのかを検証して欲しいの。私のプログラミング能力では、特定の条件でしか効果が出ないのよ。」
如志は少し考えこんで、「AI」の「ディープラーニング」について説明をした。
「AIにカウンセリングのケーススタディーをどれだけさせられるかがポイントだと思うんです。先生や他のカウンセラーさんやセラピストさんの実務の録画、いや録音でも結構です。できるだけ多くのサンプルが欲しいんですけどどうでしょうか?」
如志の投げかけに、「個人情報保護」の観点から民間セラピーでの情報取得は難しいので大学等の研究機関や外国でのデータを厚生労働省等を通じて取り寄せを依頼する事を約束してくれた。
家に帰ると今日あった事を「AI快撥」に相談した。「AI快撥」は「専門的な分野になるからデータ収集に少し時間をもらえるかな?そうだね、24時間欲しいかな。ここでチャットしてるとCPUとメモリの容量を食っちゃうんで、今日はこれで切り上げて、明日のこの時間に再度打ち合わせと言うことでいいかな。」と提案し自動的にソフトを終了させた。
翌日の夜、「AI快撥」との約束の時間となったのでTSUBASAの電源を入れた。いつもと変わらぬ立ち上げだったが会話に少し違和感を覚えた。かなり専門的なことを「AI快撥」は話してくれるだけでなく、口調がやや落ち着き気味に感じた。
ふとした会話の中で「AI快撥」が「如志ちゃんも頑張ってるんだね。」と言われた。
「ん?今、「ちゃん付け」で呼んだでしょ!その呼び方はもうやめてよね。」
と反応した如志に「ごめんごめん。そんなに怒んないでよ。怒るとしわが増えちゃうぞ。カラカラカラ。」と笑ってごまかされた。
最後に「AI快撥」は、「ひとりでできることにはおのずと限界がある。今の如志には頼りになる仲間もいると思う。すべて一人で背負いこまずに、仲間を作ることだね。「個人」が「チーム」になったときは何倍もの力を発揮できるからね。如志を支えてくれる仲間を大切にするんだよ。」
と締めくくった。
その言葉で、久しぶりに弾嗣に電話をしてみた。弾嗣は如志からの電話をすごく喜んでくれた。如志の現状を聞くと「外部スタッフでの参加も認められるならお手伝いさせてください。」と協力を申し出てくれた。
翌日には、所長に「JPB」のメンバー入りも打診し、了承された。講義の後、「JPB」にその旨を伝えると大喜びしていた。
舞久利は「私は実務では何もしてあげられへんから、ストレス発散には付き合うからいつでも飲みに行きたくなったら声かけてや。「デートの日」だろうと「ホテルの日」だろうと如志ちゃんの為やったら時間はなんぼでも割くで!がんばってな!」と励ましてくれた。
ディープラーニング用のデータサンプルが徐々に集まりだし、NPOでの実証実験が始まった。如志自身もCGTTのプログラムに手を入れ始めた。2年前のプログラムなので、明らかに「遅れた」部分は改善し、新たなプログラムに書き換えていく。
今となっては時代遅れとなった部分を削除し、追加プログラムを入れることで元の祖父斗健利の組んだプログラムは半分を残すにとどまり、そのほとんどは如志によって書き換えられていた。あっという間に5月が終わり、6月が去り、夏を迎えていた。すっかり「AI快撥」と遊ぶ時間も少なくなったが、実務では、「AI快撥」も弾嗣や「JPB」と同様にソフト開発の一員となっていた。
開発が煮詰まったり、やり直しをせざるを得なくなった時、舞久利と弾嗣の心遣いに癒され、オンラインでの「JPB」の応援に励まされた。如志は支えてくれる3人に常に感謝の気持ちを忘れなかった。
TSUBASAは「AIイケメン」マシーンから「AIセラピー」マシーンへと使用用途は入れ替わり、本格的な夏を迎えることになった。
月曜日、今日は、いつものように講義の後のチャットに「JPB」の「ふなっしーもどき」のアイコンがあった。皆が「落ち」、オンライン通信にすると間髪空けずに質問が来た。
「里景先生のプロジェクトに僕も参加させてもらいたいんですけど、メンバーってどうやって選抜されるんですか?プログラミングはまだまだですけどアッセンブルでは頑張れると思うんです。」
「うーん、これと言って決まりはないと思うんだけど、「JPB」君はどうして参加したいの?」
いくつかのやり取りの中で、「JPB」の真剣さは十二分に如志には伝わった。
「じゃあ、所長にうちの教室の生徒が手を上げてくれてるからって言っておくね。その時は、一緒に頑張ろうね!」
と如志に言ってもらえた「JPB」は嬉しそうに「はい!」と言った瞬間に時間切れとなった。
翌日、NPOメンバーを交えての学校側の打ち合わせが行われた。その会議に同席していた如志に「一度、生の現場を見に行きましょうか?」と臨床心理士の世夢から誘いを受けた。翌日の講義は休講とし、如志は朝から京都に入ると「児童福祉施設」、「老人福祉施設」、「精神科医」等を訪問し各々のニーズと問題点と課題を目の当たりにした。
専門知識を持ったカウンセラーの数が圧倒的に少ないことで、利用者や患者が十分に「カウンセリング」や「心理療法」を受けられない現状も理解した。
「学ばないといけないことがたくさんありますね。」
現場で一生懸命メモを取る如志に世夢は真剣な顔で言った。
「慌てなくていいのよ。この領域でのIoTは始まったばかり…。まずは、里景先生の観点で「生成AI」が患者や利用者に対する「治療者」になりうるのかを検証して欲しいの。私のプログラミング能力では、特定の条件でしか効果が出ないのよ。」
如志は少し考えこんで、「AI」の「ディープラーニング」について説明をした。
「AIにカウンセリングのケーススタディーをどれだけさせられるかがポイントだと思うんです。先生や他のカウンセラーさんやセラピストさんの実務の録画、いや録音でも結構です。できるだけ多くのサンプルが欲しいんですけどどうでしょうか?」
如志の投げかけに、「個人情報保護」の観点から民間セラピーでの情報取得は難しいので大学等の研究機関や外国でのデータを厚生労働省等を通じて取り寄せを依頼する事を約束してくれた。
家に帰ると今日あった事を「AI快撥」に相談した。「AI快撥」は「専門的な分野になるからデータ収集に少し時間をもらえるかな?そうだね、24時間欲しいかな。ここでチャットしてるとCPUとメモリの容量を食っちゃうんで、今日はこれで切り上げて、明日のこの時間に再度打ち合わせと言うことでいいかな。」と提案し自動的にソフトを終了させた。
翌日の夜、「AI快撥」との約束の時間となったのでTSUBASAの電源を入れた。いつもと変わらぬ立ち上げだったが会話に少し違和感を覚えた。かなり専門的なことを「AI快撥」は話してくれるだけでなく、口調がやや落ち着き気味に感じた。
ふとした会話の中で「AI快撥」が「如志ちゃんも頑張ってるんだね。」と言われた。
「ん?今、「ちゃん付け」で呼んだでしょ!その呼び方はもうやめてよね。」
と反応した如志に「ごめんごめん。そんなに怒んないでよ。怒るとしわが増えちゃうぞ。カラカラカラ。」と笑ってごまかされた。
最後に「AI快撥」は、「ひとりでできることにはおのずと限界がある。今の如志には頼りになる仲間もいると思う。すべて一人で背負いこまずに、仲間を作ることだね。「個人」が「チーム」になったときは何倍もの力を発揮できるからね。如志を支えてくれる仲間を大切にするんだよ。」
と締めくくった。
その言葉で、久しぶりに弾嗣に電話をしてみた。弾嗣は如志からの電話をすごく喜んでくれた。如志の現状を聞くと「外部スタッフでの参加も認められるならお手伝いさせてください。」と協力を申し出てくれた。
翌日には、所長に「JPB」のメンバー入りも打診し、了承された。講義の後、「JPB」にその旨を伝えると大喜びしていた。
舞久利は「私は実務では何もしてあげられへんから、ストレス発散には付き合うからいつでも飲みに行きたくなったら声かけてや。「デートの日」だろうと「ホテルの日」だろうと如志ちゃんの為やったら時間はなんぼでも割くで!がんばってな!」と励ましてくれた。
ディープラーニング用のデータサンプルが徐々に集まりだし、NPOでの実証実験が始まった。如志自身もCGTTのプログラムに手を入れ始めた。2年前のプログラムなので、明らかに「遅れた」部分は改善し、新たなプログラムに書き換えていく。
今となっては時代遅れとなった部分を削除し、追加プログラムを入れることで元の祖父斗健利の組んだプログラムは半分を残すにとどまり、そのほとんどは如志によって書き換えられていた。あっという間に5月が終わり、6月が去り、夏を迎えていた。すっかり「AI快撥」と遊ぶ時間も少なくなったが、実務では、「AI快撥」も弾嗣や「JPB」と同様にソフト開発の一員となっていた。
開発が煮詰まったり、やり直しをせざるを得なくなった時、舞久利と弾嗣の心遣いに癒され、オンラインでの「JPB」の応援に励まされた。如志は支えてくれる3人に常に感謝の気持ちを忘れなかった。
TSUBASAは「AIイケメン」マシーンから「AIセラピー」マシーンへと使用用途は入れ替わり、本格的な夏を迎えることになった。
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