『2次元の彼R《リターンズ》~天才理系女子(りけじょ)「里景如志(さとかげ・しし)のAI恋愛事情~』

あらお☆ひろ

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⑯ 「快撥」

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⑯ 「快撥」

 7月20日、大阪CPTSは夏休みに入った。一部の夏期講習を除けば多くのオンライン講義は休校期間に入りアーカイブ授業の配信が中心となる。しかし、「福祉AIプロジェクト」に関わる如志には休みは無く、開発業務に専念するようになっただけである。
「里景先生、何とか「お盆」までにデモンストレーションできるくらいまでは仕上げていただけませんか?冬のボーナスは奮発させていただきますので、一つ頑張ってくださいね。」
 所長は如志に気楽に頼むと翌日から北米に「海外視察旅行」という名の「夏のバカンス」に出かけてしまった。如志は在宅ワークを中心にCGTTのリプログラミングに没頭する毎日を過ごしていた。舞久利と弾嗣も如志のマンションを訪れ身の回りの世話やアッセンブル工程をサポートしてくれている。
「如志ちゃん、弾嗣君、お昼はそうめんでええか?それとも冷やし中華の方がええかな?ちょっと一息つけようや。」
「里景さん、少し冷房強めていいですか?TSUBASAがかなり熱持っちゃってますね。さすがに静音ラックに入れてますんで周辺温度を25度以下にしないとパフォーマンスが維持できないです。」

 一人で作業していると食事も忘れて作業を続け、気がつくと空腹で動けなくなったこともあったし、プログラムのバグに気が滅入りふて寝したこともあったが、今は支えてくれる仲間が休みにもかかわらず常にいてくれるので心強い。
 弾嗣が帰った後は、チャットで「JPB」が参加してくれる。ソフト連携については相当勉強してきているようで、まるで弾嗣が横についていてくれるような安心感がある。
 7月末に、フリースタイルカウンセリングのプログラムの試作品が完成した。オンラインで臨床心理士の世夢に「被験者役」をしてもらい、「AIセラピー」の解答が「適切」であるか判断してもらった。
「うん、凄く良くできてる。多数の症例が発表されているものに関しては80%の完成率まで来てるって感じね。私が作ってたらとてもここまではこれなかったわね。後は、少数症例案件だけどこればかりは「場数・・」だからねぇ…。
 一つ注文をつけさせてもらえるなら、役所に見せるサンプルとしてはもう少し子供が馴染みやすいようにセラピー側のグラフィックを今の「イケメン」からかわいい「動物」や子供に人気の「アニメキャラ」に切り替えられるようにできるといいかもね。ケラケラケラ。
 「セラピートーク」については厚生労働省からの活用可能な症例サンプルも期待できないし、海外の研究者とリンクしてみるのも一つの手かもしれないわね。まずは合格点よ!里景さん、お仲間の皆さん、ご苦労様!」

 臨床心理士の発言に「ピン」とくるものがあった如志は所長にメールを入れた。
「如志ちゃん、何のメール入れたん?所長に「私らずっと仕事してんねんから、遊んでばっかりおらんと、よおさん土産買ってこい!」って言うとかなあかんで!あっ「手伝ってくれてる富良礼さんには「シャネルのバッグ」って書いといてや。ケラケラケラ。」
 茶化す舞久利と弾嗣と一緒に「乾杯」すると久しぶりに楽しい「酒宴」の時間を過ごした。
「里景さん、ところでさっきのメールにはなんて送ったんですか?結構長文を打ってられたみたいですから「試作品の完成の目途がついた。」って報告だけじゃないですよね?」
 ビールを片手に如志に尋ねる弾嗣に「今、所長はニューヨークに行ってる頃だから、ちょっと寄り道をお願いしたの。使えるものは「何でも」使えってね。」

 翌朝、「JPB」からメールが来ていた。
「当方のカウンセラー、セラピスト役のグラフィックのサンプルと選択画面の試作を送ってますのでチェックお願いします。」
 早速、添付のメールを開くと、子供向けには「アンパンマンキャラ」や数々の「ヒーロー」や「アニメキャラ」が選択できるようになっていた。大人向けには、「医師」や「カウンセラー」役のキャラが「性別」、「年齢」だけでなく「服装」などグラフィックアイテムをいくつも選択してアバターが設定できるようになっていた。
 メインのプリセットキャラクターの「若い女性カウンセラー」キャラは「如志」似の白衣を着た眼鏡の女性になっていた。
「里景先生をモデルに美人カウンセラーのアバターを作ってみました。」との「JPB」のコメントに「ありがとう。でも、ちょっと美人過ぎかな(笑)。」と返信すると、すぐに「里景先生の方がもっと美人ですよ!」と返事が来た。

 2日後、所長から電話が入った。「明日、現地の大学と共同開発の交渉に入ります。里景先生は、「専門英語」も大丈夫ですよね。オンライン会議の参加をお願いします。参加者リストはメールしています。」という内容だった。
 電話を受けながら、メールを確認して如志は「はい。了解です。懐かしの母校ですから話しやすいです。」と答え、会議の時間を確認すると電話を切った。
 如志は久しぶりに「AI快撥」を立ち上げて、「AI快撥」に現状を報告すると「如志、よく頑張ってるね。くれぐれも無理しすぎちゃだめだよ。」とやさしくねぎらいの言葉をかけてもらった。
 
 翌日のオンライン会議には、日本側からは所長と如志と臨床心理士の世夢が出席した。相手は如志が5年間世話になったMIT(※マサチューセッツ工科大学)大学院であり、学部長と二人のエンジニアの顔が映し出されていた。その内の一人の顔の下には「Dr.KAIHATSU SOFUTO」の名前があった。
 2年ぶりに顔を合わせる画面の中の30歳になった生「快撥」は、如志に軽くウインクすると昔と変わらぬやさしい笑顔を見せた。

 会議は快撥が開発したであろう一般的な言葉以外に「医療用語」等の「専門用語」も使用可能な「リアルタイム翻訳GPT」が使用され、臨床心理士の世夢と所長は日本語で、それ以外のメンバーは英語を使って会議は進められた。
 世夢は、MIT側のセラピストと意見を交換し合い、ともに共通する開発課題であることを確認した。MIT側から、全米医療大学連合会の研究チームからのセラピーデータの提供を受けられることも伝えられた。
 如志と快撥は、現在如志が組み上げている「CGTT」システムとソフトリンケージシステムをMITに提供し、快撥は専門語GPTと多国籍翻訳GPTのセットとCGTTをCPTTに転用できるソフトを提供し合うことで会議は終了した。
 会議後、快撥が「専門的なことを日本側のエンジニアと話したいので…。」と断りを入れて、2人だけのオンライン会話の機会を作ってくれた。
 
 「如志ちゃん、凄いシステムを作ってるじゃないか!卒業して2年でこれだけの仕事をこなすようになってるなんて驚きだよ!もう一度MITに戻ってくる気はないかな?」
と褒められると悪い気はしなかった。
「ありがとうございます。快撥先生もお元気そうで。まあ、今のネット世界ならどこにいても一緒に作業できますから、こちらで頑張ります。」
笑顔で返事をすると
「それにしてもずいぶんと「綺麗」になったね。素敵な「恋人」でもできたのかな?カラカラカラ。」
からかい気味に言う快撥に一発返してやろうと笑って返した。
「はい、もうおかげさまでモテモテで困っちゃってますよ!ケラケラケラ。」



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