8 / 11
「出社初日②」
しおりを挟む
「出社初日②」
午前10時20分、宛賀奈依は笑顔で「準幸結婚パートナー紹介システムズ」の申込書を書き、デートの約束を即決すると副島に深々とお辞儀すると満面の笑顔で帰っていった。
「いやー、凄いまとめ方でしたね。デートも同行するんですね。まあ、副島さんのトークにかかったらきっとまとまっちゃうんでしょうね。ちなみにトランプは本当に当たるんですか?」
と幸が尋ねると副島はしれっと答えた。
「「当たる」やなくて「当てる」んや。まあ、ちょっとは仕込みはあるけどな。万一あかんでも「ひと月の間」に「運命の人」と出会えりゃええねんから、まだ29日あるやないかい。何とかなるやろ。」
「ふーん、やっぱり仕込んでるんですね。でも、これでバーナム効果で確証バイアスかかってるし、紹介した人はちょっと年上ですけど、年収は1000万以上ありますし、草食系でも正常性バイアスでその欠点は無視しちゃうんでしょうね。
あと、泣かせたのは焦りましたけど、そこにまで持っていったのは会話の方向性を相手に委ねる「オープンクエスチョン」とクロージングに使う「クローズクエスチョン」だったんですね。
そして、釣書を宛賀さんに選ばさず、副島さんが候補者を絞ったのは、選択肢が多すぎると分析にパワーを使いすぎ意思決定が鈍るのを避けるため2、3に絞る「ジャムの法則」ですね。勉強になりました。」
幸が感心して熱く語っていると呼び鈴が鳴った。
10時半に禿げ上がった頭の35歳の牟樫茂手雄がやってきた。紅音と緑は「濁った青」、「火の丙」と副島に伝えると席を入れ替わった。(今度は副島のおっちゃん、どう動くんやろか?)幸はワクワクして席についた。
牟樫は仮申し込み書を副島に手渡した。年収500万、会社員、趣味はサッカーと野球とトライアスロンをすること。希望は「年下の女性」と「初婚」とだけ書かれていた。副島は、朝一と同じように過去の情報センター、相談所の利用履歴と結婚したい理由を尋ねた。
過去の婚活はお見合いサイトを使おうとしたがメールが面倒で続かなかったという事だった。結婚したい理由は実家の親が「もうそろそろ結婚しろ」とうるさいことと
職場の社長が「男は家庭を持ってこそ一人前」と昇進条件に「既婚」が入っているというものだった。
「親と社長が居れへんかったら、結婚する気はあれへんってことですか?」
副島が突っ込むと、
「いや、子供は好きやし、今はこんな頭になってからきしですけど、大学の頃までは体育会でそこそこもててたんです。めっちゃ女好きってことはあれへんのですけど、なかなか働き出してからはいい「縁」が無くて…。こんなハゲかかったおっさんでスポーツバカでも結婚できるもんでしょうか?」
と控えめに答えた。副島は「あくまで一般論ですが」と言う前振りをして、ハゲはマイナスにはまっても加点要素にはならないので、写真でスルーされるのを避けるのであれば「植毛」を勧めた。また、「情報センターに登録」=「出会い」ではないことを説明した。更に、「ストライクゾーンは広めにすることやな」とアドバイスをした。
牟樫は植毛については「そりゃそうですよね。」と納得したようだった。更に他の趣味について尋ねると、「体を動かすこと」以外にはこれといった趣味はないとの答えだった。ストライクゾーンについては、副島が「今の世の中、女性の方が平均寿命は8年長いから、年上も範囲に入れると成婚率はあがるで。特に、シングルマザーの40代は苦戦してるからそこまで範囲は広げて、嫁と子供も一緒にって言うのはあきませんか?」と尋ねると、「そういう考えもありますね…。」と理解を示した。次男なので親との同居予定は無く、連れ子も本人は気にしないという牟樫の扱いに副島は判断に困ってるようだった。
「ちょっとおトイレ失礼します。」と牟樫が席を離れた瞬間、「どうして申し込みさせないんですか?結構、妥協点もあるしいいんじゃないですか?」と幸が副島に尋ねた。
「うーん、本人がもうちょっと積極的にならんとなぁ…。メールが面倒でお見合いサイトもやめてしもたってところが引っかかんねや。」
副島は難しい顔をしている。
牟樫が戻ってきて、「どうでしょうか?入会させてもらえるんでしょうか?」と真剣な顔をして尋ねた。
「牟樫さん、一つ確認したいんですけど、「親」や「社長」がうるさいから、「婚活してる事実」を作るために来てはるんや無いですよね?どうも、結婚に対する牟樫さん自身の「熱」が感じられへんのですよ。あくまで、うちは「結婚を目的とした人」に情報を提供する会社なんでね。
今日は一度帰られて、もういちどしっかりと考えられてはいかがですか?まあ、うちは「趣味のマッチング」もやってるんで「一緒に運動できる人」なんて探し方は協力させてはもらえると思うんですけど…。」と言った瞬間に牟樫の目つきが変わった。
「あの、トライアスロンまではいかなくても、一緒にマラソンしたり、ロードバイク乗ったりできる人っていう探し方ができるんですか?そういう人が会員さんでおられるんであれば是非ともお願いしたいんですけど…。気の利いた趣味は何もないんで、そこがマッチして私を受け入れてくれる人であれば他の条件は全然こだわらないです。」
と一気に前のめりになってきた。
「ちょっと待ってくださいな。」と一言断りを入れて、副島はノートパソコンを開いた。データベース検索で趣味の欄で「トライアスロン」で検索したが該当者はゼロだった。しかし、「ジョギング」、「マラソン」、「ロードバイク」と検索項目を変えると複数の女性会員のタグが開いた。(あー、副島のおっちゃんの詳しいヒアリングで得た情報って凄いな。単なる「趣味」=「スポーツ・運動」やなくてそこまで詳しく聞きこんでるんや。
更にクロス検索で「結婚願望」の欄に「7~」と入力した。
すると4名のファイルが重なってウインドウが開いた。(これは、7以上って言うのは何が何でも結婚したいっていう人なんやろな。)と幸は直感で感じた。更に「五行」の欄に「火」と入力すると2名に絞られたがそれが何を意味するのかは分からなかった。
「せやなぁ、「フルマラソン」参戦趣味の41歳で高1と中2の男の子がおる人はおるなぁ。子供さんは二人ともサッカー部やな。もう一人42歳で「ジョギング」と「サイクリング」って書いてるけど「バツ2」やな…。」
副島が独り言のような小さな声で呟くと
「その人たちの希望条件に私は当てはまりますか?当てはまってお会いできる機会がいただけるなら申し込みます。即入会します。お願いします。」
と牟樫は当初の希望とはかけ離れた女性であるにもかかわらず真剣に申し込みを直訴した。
「まあ、希望条件は「正社員」で年収希望は、「600万」と「400万」以上なので可能性はありますわな。」
と答えた時点で、万年筆と印鑑を牟樫は取り出した。(えー、最初の「年下」と「初婚」って希望はなんやったん?やっぱり「趣味」って大事やねんなー。「裏釣書」が無かったらあれへんかった話やな。)幸が思ってると「薄井さん、社長呼んで来て。」と副島に言われた。
事情を手短に話すと、紅音が応接室に入ってきた。副島と席を代わると、小さく頷いて
「お申込みありがとうございます。牟樫さんのご意向に沿った「ご縁」があるといいですね。我々は精一杯応援させていただきます。それでは当社のシステムについて説明させていただきますね。」
と紅音はファイルを開いた。副島は幸を連れて応接を出た。
「うーん、こんな事もあるのがこの仕事のおもろいところやな。「濁った青」でこの結論か…。俺もまだまだ勉強せなあかんな。」
と呟く副島に「濁った青」ってなんですかー?」と幸はしつこく質問し続けた。
午前10時20分、宛賀奈依は笑顔で「準幸結婚パートナー紹介システムズ」の申込書を書き、デートの約束を即決すると副島に深々とお辞儀すると満面の笑顔で帰っていった。
「いやー、凄いまとめ方でしたね。デートも同行するんですね。まあ、副島さんのトークにかかったらきっとまとまっちゃうんでしょうね。ちなみにトランプは本当に当たるんですか?」
と幸が尋ねると副島はしれっと答えた。
「「当たる」やなくて「当てる」んや。まあ、ちょっとは仕込みはあるけどな。万一あかんでも「ひと月の間」に「運命の人」と出会えりゃええねんから、まだ29日あるやないかい。何とかなるやろ。」
「ふーん、やっぱり仕込んでるんですね。でも、これでバーナム効果で確証バイアスかかってるし、紹介した人はちょっと年上ですけど、年収は1000万以上ありますし、草食系でも正常性バイアスでその欠点は無視しちゃうんでしょうね。
あと、泣かせたのは焦りましたけど、そこにまで持っていったのは会話の方向性を相手に委ねる「オープンクエスチョン」とクロージングに使う「クローズクエスチョン」だったんですね。
そして、釣書を宛賀さんに選ばさず、副島さんが候補者を絞ったのは、選択肢が多すぎると分析にパワーを使いすぎ意思決定が鈍るのを避けるため2、3に絞る「ジャムの法則」ですね。勉強になりました。」
幸が感心して熱く語っていると呼び鈴が鳴った。
10時半に禿げ上がった頭の35歳の牟樫茂手雄がやってきた。紅音と緑は「濁った青」、「火の丙」と副島に伝えると席を入れ替わった。(今度は副島のおっちゃん、どう動くんやろか?)幸はワクワクして席についた。
牟樫は仮申し込み書を副島に手渡した。年収500万、会社員、趣味はサッカーと野球とトライアスロンをすること。希望は「年下の女性」と「初婚」とだけ書かれていた。副島は、朝一と同じように過去の情報センター、相談所の利用履歴と結婚したい理由を尋ねた。
過去の婚活はお見合いサイトを使おうとしたがメールが面倒で続かなかったという事だった。結婚したい理由は実家の親が「もうそろそろ結婚しろ」とうるさいことと
職場の社長が「男は家庭を持ってこそ一人前」と昇進条件に「既婚」が入っているというものだった。
「親と社長が居れへんかったら、結婚する気はあれへんってことですか?」
副島が突っ込むと、
「いや、子供は好きやし、今はこんな頭になってからきしですけど、大学の頃までは体育会でそこそこもててたんです。めっちゃ女好きってことはあれへんのですけど、なかなか働き出してからはいい「縁」が無くて…。こんなハゲかかったおっさんでスポーツバカでも結婚できるもんでしょうか?」
と控えめに答えた。副島は「あくまで一般論ですが」と言う前振りをして、ハゲはマイナスにはまっても加点要素にはならないので、写真でスルーされるのを避けるのであれば「植毛」を勧めた。また、「情報センターに登録」=「出会い」ではないことを説明した。更に、「ストライクゾーンは広めにすることやな」とアドバイスをした。
牟樫は植毛については「そりゃそうですよね。」と納得したようだった。更に他の趣味について尋ねると、「体を動かすこと」以外にはこれといった趣味はないとの答えだった。ストライクゾーンについては、副島が「今の世の中、女性の方が平均寿命は8年長いから、年上も範囲に入れると成婚率はあがるで。特に、シングルマザーの40代は苦戦してるからそこまで範囲は広げて、嫁と子供も一緒にって言うのはあきませんか?」と尋ねると、「そういう考えもありますね…。」と理解を示した。次男なので親との同居予定は無く、連れ子も本人は気にしないという牟樫の扱いに副島は判断に困ってるようだった。
「ちょっとおトイレ失礼します。」と牟樫が席を離れた瞬間、「どうして申し込みさせないんですか?結構、妥協点もあるしいいんじゃないですか?」と幸が副島に尋ねた。
「うーん、本人がもうちょっと積極的にならんとなぁ…。メールが面倒でお見合いサイトもやめてしもたってところが引っかかんねや。」
副島は難しい顔をしている。
牟樫が戻ってきて、「どうでしょうか?入会させてもらえるんでしょうか?」と真剣な顔をして尋ねた。
「牟樫さん、一つ確認したいんですけど、「親」や「社長」がうるさいから、「婚活してる事実」を作るために来てはるんや無いですよね?どうも、結婚に対する牟樫さん自身の「熱」が感じられへんのですよ。あくまで、うちは「結婚を目的とした人」に情報を提供する会社なんでね。
今日は一度帰られて、もういちどしっかりと考えられてはいかがですか?まあ、うちは「趣味のマッチング」もやってるんで「一緒に運動できる人」なんて探し方は協力させてはもらえると思うんですけど…。」と言った瞬間に牟樫の目つきが変わった。
「あの、トライアスロンまではいかなくても、一緒にマラソンしたり、ロードバイク乗ったりできる人っていう探し方ができるんですか?そういう人が会員さんでおられるんであれば是非ともお願いしたいんですけど…。気の利いた趣味は何もないんで、そこがマッチして私を受け入れてくれる人であれば他の条件は全然こだわらないです。」
と一気に前のめりになってきた。
「ちょっと待ってくださいな。」と一言断りを入れて、副島はノートパソコンを開いた。データベース検索で趣味の欄で「トライアスロン」で検索したが該当者はゼロだった。しかし、「ジョギング」、「マラソン」、「ロードバイク」と検索項目を変えると複数の女性会員のタグが開いた。(あー、副島のおっちゃんの詳しいヒアリングで得た情報って凄いな。単なる「趣味」=「スポーツ・運動」やなくてそこまで詳しく聞きこんでるんや。
更にクロス検索で「結婚願望」の欄に「7~」と入力した。
すると4名のファイルが重なってウインドウが開いた。(これは、7以上って言うのは何が何でも結婚したいっていう人なんやろな。)と幸は直感で感じた。更に「五行」の欄に「火」と入力すると2名に絞られたがそれが何を意味するのかは分からなかった。
「せやなぁ、「フルマラソン」参戦趣味の41歳で高1と中2の男の子がおる人はおるなぁ。子供さんは二人ともサッカー部やな。もう一人42歳で「ジョギング」と「サイクリング」って書いてるけど「バツ2」やな…。」
副島が独り言のような小さな声で呟くと
「その人たちの希望条件に私は当てはまりますか?当てはまってお会いできる機会がいただけるなら申し込みます。即入会します。お願いします。」
と牟樫は当初の希望とはかけ離れた女性であるにもかかわらず真剣に申し込みを直訴した。
「まあ、希望条件は「正社員」で年収希望は、「600万」と「400万」以上なので可能性はありますわな。」
と答えた時点で、万年筆と印鑑を牟樫は取り出した。(えー、最初の「年下」と「初婚」って希望はなんやったん?やっぱり「趣味」って大事やねんなー。「裏釣書」が無かったらあれへんかった話やな。)幸が思ってると「薄井さん、社長呼んで来て。」と副島に言われた。
事情を手短に話すと、紅音が応接室に入ってきた。副島と席を代わると、小さく頷いて
「お申込みありがとうございます。牟樫さんのご意向に沿った「ご縁」があるといいですね。我々は精一杯応援させていただきます。それでは当社のシステムについて説明させていただきますね。」
と紅音はファイルを開いた。副島は幸を連れて応接を出た。
「うーん、こんな事もあるのがこの仕事のおもろいところやな。「濁った青」でこの結論か…。俺もまだまだ勉強せなあかんな。」
と呟く副島に「濁った青」ってなんですかー?」と幸はしつこく質問し続けた。
21
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
冷遇妃マリアベルの監視報告書
Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。
第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。
そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。
王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。
(小説家になろう様にも投稿しています)
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
