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「ロサンゼルス」
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「ロサンゼルス」
9月23日、ニコニコ商店街の面々は関西空港発ロサンゼルス行きの機上にあった。二年半に及ぶ流行り病による海外渡航自粛から久しぶりの海外旅行に夏子と陽菜は弾んでいた。ビジネスクラスに乗る、粋華、まりあ、直と稀世家族とは別でエコノミーに乗る夏子、陽菜、舩阪、羽藤は夜9時出発の約10時間半のフライトを楽しんでいた。
舩阪は未だに21日の夏子と陽菜の「フライングコンバットα」の話を羽藤にしていた。羽藤は、陸上自衛隊の戦闘ヘリの廃止とドローン兵器への置き換えにはまだ多くの問題が残っていることを丁寧に説明していた。遠隔地から無線誘導するには「電波ジャック」、「電波妨害」に対するセキュリティーに課題があり、AI操縦については、自動車の自動運転すらままならない今のIT技術ではまだ基礎研究に五年はかかると言われていた。
夏子と陽菜は何種類も買い込んだ「ロサンゼルス」の観光ガイドを開いては赤ペンでチェックマークを入れ、ページの角を折り込んでいった。ショッピング、グルメ、観光と女子トークは止まらない。羽藤から日本からロスに行く東行きのフライトは時差ボケしやすいので出発前日から早起きをして機内での仮眠は二時間から三時間すると良いと聞いていたが、結局、話に夢中になって一睡もしないままロサンゼルスに到着することになった。
サマータイムの現地時間午後3時にロスに到着すると、空港にはアグネスとマチルダが迎えに来てくれていた。そこで稀世家族とまりあと粋華と直はアグネス、マチルダと一緒に25日の会場の下見にむかった。まりあから、「前座とはいえ参戦するんやし、いつものうちのリングより大きい6メートル四方のリングに慣れといたほうがええぞ。」というまりあのアドバイスを「私らレベルやったら、6メートルも5.5メートルも一緒やし、バトルロイヤル自体初めてやから下見してもしゃあないから遠慮しまーす!」と「ガン無視」して、「夜8時からのハリウッド&ハイランドの「ロウズ・ハリウッド・ホテル」でのレセプションに間に合うよう戻れ」と何度も念を押されながらも、羽藤に運転してもらいレンタカーで街へ出かけた。
定番のビバリーヒルズの高級住宅地を車で流し、高級ブティックでのウインドウショッピングに夏子と陽菜は黄色い声をあげた。陽菜が買えるはずもない高級ブランドのウエディングドレスにうっとりとしているのを見て、夏子は少し羨ましかった。
羽藤と舩阪は嫌な顔一つせず、この後の残り時間と行動可能な行程だけをアドバイスし、夏子と陽菜の自主性に任せた。約1時間の散策を終え、再び車に乗り込むと映画のスターたちの歴史が刻まれた「ハリウッド・ブールバード」の「ウォーク・オブ・フェイム」を歩いた。
「陽菜ちゃん、「今回の世界中継で、いきなり「ハリウッドで東洋人のアクションができるキュートな女性を探してたんですよ!」ってハリウッド監督に声かけられたらどうする?」
と夢のような話をする夏子に、陽菜は
「せやなー、出演料10億円で、ヒロインやったら考えたるわってな!カラカラカラ。」
と楽しそうに笑った。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、ハリウッド&ハイランドの「ロウズ・ハリウッド・ホテル」に着いた時には午後7時50分になっていた。
WWEロサンゼルス大会のレセプション会場に夏子と陽菜は飛び込んで、二人は固まった。大会関係者はWWEのトレーナーで、出場選手はジャージ姿を想像していたのだが、全員が正装だったのだ。ドレスを着たまりあが慌てて、入口に立ち尽くす夏子と陽菜に駆け寄り、
「あんたら、レセプションのドレスコード読んでなかったんか?うーん、あんたらの「胸」やと私や稀世の予備のドレスも着られへんし、ましてや粋華のドレスやったら胸にバスケットボール二つ入れなあかんもんなぁ…。それにしてもTシャツとホットパンツはないやろ…。」と慌てふためいている。
すると、そこにアグネスとマチルダがやってきた。粋華から学んだ変な関西弁で
「夏子、陽菜、その格好じゃパーティーには入られへんから、アグネスのドレス貸してあげるから着替えておいで。」
とマチルダが助け船を出してくれたので二人が「ほっ」とした瞬間、夏子の背後で二人の女の甲高い笑い声が聞こえた。
映画「七年目の浮気」でマリリンモンローが来ていたドレスそっくりに似せたかつらとメイクとかつて歌手のマドンナがライブできていた黒基調のセクシーボンテージを着用した二人の白人女性が立っていた。二人とも「巨乳」である。直感的に夏子は嫌なものを感じた。
「マチルダお姉さま、何この子ら?紛れ込んできたチャイニーズのこどものファンなの?」
「ちょっと常識ないわねえ。よくそんな恰好で恥ずかしくもなく入ってこられたもんね。」
と言葉の意味は分からないが、明らかに悪意の部分は伝わる。
マチルダが二人のドレス姿の女の子に事情を説明している。アグネスが、関西弁で二人の事を夏子と陽菜に説明した。彼女らは、アグネスとマチルダのLALWEの後輩にあたる女子レスラーという事だった。名前は「マリリン・デベリーヴ」と「マドンナ・リッチー」と紹介を受けた。彼女たちも25日の前座のバトルロイヤルに出場する為、このパーティーに参加しているとのことだった。
(ん?「マリリン」に「マドンナ」?なんか最近聞いたことがあるような…?げろげろ、もしかしてこの間のeゲームの…?まさかねぇ…。)と夏子が眉間にしわを寄せていると、マリリンが何やらマチルダに尋ねている。「They are Wrestler from Japan。Theirs Name are 「Natsu & Hina」!」と夏子と陽菜にもわかる説明がなされた。マリリンが再びマチルダに尋ねた。
「夏子、陽菜、あんたら二日前に「フライングコンバット」っていう飛行機のテレビゲームしたことあるか?」
の問いかけにすべてが繋がった。夏子が「Yes」と答えた瞬間、マリリンとマドンナが二人揃って夏子に向けて中指を立て「サノバビッチ!」とアメリカ「映画」や「ドラマ」でおなじみの「スラング」を浴びせられた。
瞬間的に「キレた」夏子がマリリンにつかみかかった。マリリンが体をひねって夏子の右手をかわそうとスウェアーバックしたがかわし方が足りず、夏子の親指がドレスの胸に引っかかり、捲れたはずみで大きな「盛り乳パッド」が床に転げ落ちた。逆上したマリリンはマドンナに声をかけた。マドンナは夏子の背後に回り込み両脇から腕を入れ夏子の後頭部で指をくみ、夏子を羽交い絞めにした。
「離せ!2対1とは卑怯やぞ!」と暴れるが「小さく軽いだけのジャップの「ゼロ」に「サッチ・ウェーブ」(※2対1の航空格闘戦)で戦うのはアメリカの常識なのさ!」とマリリンは吐き捨てると夏子のTシャツをまくり上げると「ユー、ダーイ、マザー〇ァッカー」と叫び、夏子の真っ赤なブラジャーをはぎ取った。夏子の小ぶりな83のBの胸が揺れる。高笑いするマリリンの腹に陽菜の「超低空ローリングソバット」が決まった。マリリンは540度後方回転し、スカートが完全にまくれ上がり白い高級ショーツが丸見えになる。マドンナが陽菜につかみかかったところ、稀世とマチルダが割って入った。
騒ぎに気ついた者たちが「何事か」と近寄ってきた。テレビカメラを抱えた大男とマイクインタビュアーが小柄なタキシードを着た男と一緒に出てきた。
アグネスが男に事情を話すと、男は何かアグネスに言うとマチルダが「ここでは他の参加者に迷惑がかかるで。表で話ししよかやて。」と稀世に伝え、四人の混乱の元と稀世、まりあとアグネスとマチルダと三人のテレビ局員らしい男が廊下に出た。
男は、マリリンとマドンナ以外にパーソナルカード(※ここでは名刺の意)を配った。アグネスの通訳によると、アメリカ三大テレビネットワークのCBSブロードキャスティングの西海岸の旗艦局であるロサンゼルスにあるKCBS-TVのバラエティー番組のディレクター「ジェフ・ファインスタン」とのことだった。
ジェフはマチルダとアグネスを通じ夏子と陽菜、マリリンとマドンナの言い分を聞いた。その中でマリリンとマドンナは夏子と陽菜と同様に24歳の幼馴染であることが分かった。レスラーとしてはまだまだだが、地元のケーブルテレビなどではそこそこ名の売れた地元アイドルでもあることがアグネスから伝えられると、夏子が
「ロスの地方アイドルがなんぼのもんじゃい!私らかて「門真九賢人」、「門真の女神」と言われる「門真のニコニコ商店街のアイドル」じゃい!ここ、2か月に限っては稀世姉さん追い越して私が「センター」の夏子とその相棒の「陽菜ちゃん」や!」
と大風呂敷を広げると、マチルダの通訳がどうであったのか知らないが、ジェフは「ファンタスティーック!」と夏子の両手を取り、早口の英語でまくし立てた。
「ねえ、マチルダ、このおっさん何を言うてんの?」
と稀世が尋ねると、マチルダは答えた。
「なんか、「日米アイドルレスラー対決」を全米人気ナンバーワンバラエティーの「チャレンジ ザ ミリオネラ」でやるって言ってはるで。なんか、夏子と陽菜の事を勘違いしてるかも…。知らんけど…。」
ジェフはタキシードの内ポケットからスマートフォンを取り出すとどこかに電話をかけた。廊下で30メートル先からでも聞こえるような大声で何か話している。
「今すぐ、弁護士と日本語が話せて「死んでもええ」AD連れて来いって言うてるで。ほんま、夏子と陽菜大丈夫かいな?」
とアグネスが稀世とまりあに説明した。
三分もしないうちに、細身ではあるが背が高く、顔の彫りが深い明らかに「アラブ顔」で刈り上げたスポーツ刈りのスーツの男性が走ってきた。男はジェフから、早口で何か指示を受けている。さらに三分後、太った「いかにも弁護士」と言った風貌の男が眼鏡の助手を連れてやって来た。不安に思った稀世が陽菜の耳元で囁いた。
「ちょっとちょっと、いったい何ごとやの?なっちゃん、陽菜ちゃん傷害事件で訴えられるんか?裁判は白人有利のホームディシジョンやから「死刑」になるんかも知れへんなぁ…。こっちも弁護士呼ぶんやったら、羽藤さんに連絡入れるんやで!」
会場の中からは「WWEの記者会見が始まりますので出場レスラーの皆さんは壇上にお上がりください。」とコールがかかったようで直と三朗とひまわりが稀世とまりあを呼びに来た。アグネスとマチルダも会場に戻り、廊下には、夏子と陽菜、直と三朗とひまわりにマリリン、マドンナ にテレビ局の四人と弁護士の二人が残された。
アラブ顔のイケメンが夏子たちに挨拶をした。
「私はKCBS-TVのADでジャリル・ザンディ―と申します。日本語も話せますので通訳させてもらいます。ここでは何ですから、下の喫茶室にでも行きましょう。」
喫茶室に着くとジャリルは夏子から順にオーダーを聞いていった。年功序列でないところがアメリカらしいと感じた。(これが「レディーファースト」ってもんなんかなぁ。まあ直さんはもう「干からびてる」からレディー扱いとちゃうんかな?)と直の顔を見ると何かを感じたのか睨まれた。
飲み物が揃うとジャリルがタブレットを出してKCBS-TVの説明から入った。「ウォルト・ディズニー・カンパニー社」が親会社で「エミー賞」や「アカデミー賞」のホスト局である「アメリカン・ブロードキャスティング・カンパニー(※ABC)」とアメリカ最古の放送ネットワーク局の「ナショナル・ブロード・キャスティング・カンパニー(※NBC)」と並ぶCBSはアメリカにおける三大テレビ放送局で系列放送局数でアメリカ最大を誇る1927年にラジオ局を開設し、1941年にテレビ局をスタートさせたかつての人気SFドラマ「スタートレック」や人気オカルトドラマの「ザ・トワイライトゾーン」で人気を博した「CBSブロード・キャスティング」社のアメリカ西海岸の旗艦局になるKCBS-TVについて説明が終わった。
続いて、この場にいるジェフ・ファインスタインがディレクターを務める大人気バラエティー番組の「目指せ!ミリオネラ!」のダイジェスト動画が映し出され、ジャリルの丁寧な日本語での解説が行われた。
グループまたは二人のチーム二組が五日×四週の二十日間で千ドルを元手に、デジタルルーレットで出されたお題をこなしながら、最終的に百万ドルを得るまでのドキュメンタリー番組のようだった。
出演者はルーレットによって指定された「お題」をこなすために、世界中を飛び回り体を張って報酬を得ていく番組はいかにも「アメリカンドリーム」であり、達成者はその勝ち得た多額の報酬を手にすると共に、アメリカで有名人としてタレントになったり、出版物を発行し成功しているという。
中にはそのドキュメンタリーが映画化され、「アカデミー賞」の「ドキュメンタリー部門」でエントリーされたこともあるとのことだった。
ネット放送を含めると全世界50か国以上で放映され、日本でもCS放送と民放系ネット配信会社で吹き替え版が放送されていると「日本語」版を見せてくれた。
「ミス夏子はキューティーだし、ミス陽菜はオリエンタルエキゾチックです。お二人でこのアメリカで世界的なスターを目指してみませんか?」
と夏子と陽菜に囁くジャリルのジェフをうかがう不安な視線を直は見逃さなかった。
「返事はこの場で即答しないといけませんか?」と問う陽菜に、ジェフはジャリルを通して「明後日のWWE大会の後で結構ですよ。一応、番組参加のための契約書を置いていきます。日本語版が必要でしたら後ほどメールさせていただきますのでご確認ください」
と弁護士が渡したA4サイズで10枚にも及ぶ契約書を手渡された。
9月23日、ニコニコ商店街の面々は関西空港発ロサンゼルス行きの機上にあった。二年半に及ぶ流行り病による海外渡航自粛から久しぶりの海外旅行に夏子と陽菜は弾んでいた。ビジネスクラスに乗る、粋華、まりあ、直と稀世家族とは別でエコノミーに乗る夏子、陽菜、舩阪、羽藤は夜9時出発の約10時間半のフライトを楽しんでいた。
舩阪は未だに21日の夏子と陽菜の「フライングコンバットα」の話を羽藤にしていた。羽藤は、陸上自衛隊の戦闘ヘリの廃止とドローン兵器への置き換えにはまだ多くの問題が残っていることを丁寧に説明していた。遠隔地から無線誘導するには「電波ジャック」、「電波妨害」に対するセキュリティーに課題があり、AI操縦については、自動車の自動運転すらままならない今のIT技術ではまだ基礎研究に五年はかかると言われていた。
夏子と陽菜は何種類も買い込んだ「ロサンゼルス」の観光ガイドを開いては赤ペンでチェックマークを入れ、ページの角を折り込んでいった。ショッピング、グルメ、観光と女子トークは止まらない。羽藤から日本からロスに行く東行きのフライトは時差ボケしやすいので出発前日から早起きをして機内での仮眠は二時間から三時間すると良いと聞いていたが、結局、話に夢中になって一睡もしないままロサンゼルスに到着することになった。
サマータイムの現地時間午後3時にロスに到着すると、空港にはアグネスとマチルダが迎えに来てくれていた。そこで稀世家族とまりあと粋華と直はアグネス、マチルダと一緒に25日の会場の下見にむかった。まりあから、「前座とはいえ参戦するんやし、いつものうちのリングより大きい6メートル四方のリングに慣れといたほうがええぞ。」というまりあのアドバイスを「私らレベルやったら、6メートルも5.5メートルも一緒やし、バトルロイヤル自体初めてやから下見してもしゃあないから遠慮しまーす!」と「ガン無視」して、「夜8時からのハリウッド&ハイランドの「ロウズ・ハリウッド・ホテル」でのレセプションに間に合うよう戻れ」と何度も念を押されながらも、羽藤に運転してもらいレンタカーで街へ出かけた。
定番のビバリーヒルズの高級住宅地を車で流し、高級ブティックでのウインドウショッピングに夏子と陽菜は黄色い声をあげた。陽菜が買えるはずもない高級ブランドのウエディングドレスにうっとりとしているのを見て、夏子は少し羨ましかった。
羽藤と舩阪は嫌な顔一つせず、この後の残り時間と行動可能な行程だけをアドバイスし、夏子と陽菜の自主性に任せた。約1時間の散策を終え、再び車に乗り込むと映画のスターたちの歴史が刻まれた「ハリウッド・ブールバード」の「ウォーク・オブ・フェイム」を歩いた。
「陽菜ちゃん、「今回の世界中継で、いきなり「ハリウッドで東洋人のアクションができるキュートな女性を探してたんですよ!」ってハリウッド監督に声かけられたらどうする?」
と夢のような話をする夏子に、陽菜は
「せやなー、出演料10億円で、ヒロインやったら考えたるわってな!カラカラカラ。」
と楽しそうに笑った。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、ハリウッド&ハイランドの「ロウズ・ハリウッド・ホテル」に着いた時には午後7時50分になっていた。
WWEロサンゼルス大会のレセプション会場に夏子と陽菜は飛び込んで、二人は固まった。大会関係者はWWEのトレーナーで、出場選手はジャージ姿を想像していたのだが、全員が正装だったのだ。ドレスを着たまりあが慌てて、入口に立ち尽くす夏子と陽菜に駆け寄り、
「あんたら、レセプションのドレスコード読んでなかったんか?うーん、あんたらの「胸」やと私や稀世の予備のドレスも着られへんし、ましてや粋華のドレスやったら胸にバスケットボール二つ入れなあかんもんなぁ…。それにしてもTシャツとホットパンツはないやろ…。」と慌てふためいている。
すると、そこにアグネスとマチルダがやってきた。粋華から学んだ変な関西弁で
「夏子、陽菜、その格好じゃパーティーには入られへんから、アグネスのドレス貸してあげるから着替えておいで。」
とマチルダが助け船を出してくれたので二人が「ほっ」とした瞬間、夏子の背後で二人の女の甲高い笑い声が聞こえた。
映画「七年目の浮気」でマリリンモンローが来ていたドレスそっくりに似せたかつらとメイクとかつて歌手のマドンナがライブできていた黒基調のセクシーボンテージを着用した二人の白人女性が立っていた。二人とも「巨乳」である。直感的に夏子は嫌なものを感じた。
「マチルダお姉さま、何この子ら?紛れ込んできたチャイニーズのこどものファンなの?」
「ちょっと常識ないわねえ。よくそんな恰好で恥ずかしくもなく入ってこられたもんね。」
と言葉の意味は分からないが、明らかに悪意の部分は伝わる。
マチルダが二人のドレス姿の女の子に事情を説明している。アグネスが、関西弁で二人の事を夏子と陽菜に説明した。彼女らは、アグネスとマチルダのLALWEの後輩にあたる女子レスラーという事だった。名前は「マリリン・デベリーヴ」と「マドンナ・リッチー」と紹介を受けた。彼女たちも25日の前座のバトルロイヤルに出場する為、このパーティーに参加しているとのことだった。
(ん?「マリリン」に「マドンナ」?なんか最近聞いたことがあるような…?げろげろ、もしかしてこの間のeゲームの…?まさかねぇ…。)と夏子が眉間にしわを寄せていると、マリリンが何やらマチルダに尋ねている。「They are Wrestler from Japan。Theirs Name are 「Natsu & Hina」!」と夏子と陽菜にもわかる説明がなされた。マリリンが再びマチルダに尋ねた。
「夏子、陽菜、あんたら二日前に「フライングコンバット」っていう飛行機のテレビゲームしたことあるか?」
の問いかけにすべてが繋がった。夏子が「Yes」と答えた瞬間、マリリンとマドンナが二人揃って夏子に向けて中指を立て「サノバビッチ!」とアメリカ「映画」や「ドラマ」でおなじみの「スラング」を浴びせられた。
瞬間的に「キレた」夏子がマリリンにつかみかかった。マリリンが体をひねって夏子の右手をかわそうとスウェアーバックしたがかわし方が足りず、夏子の親指がドレスの胸に引っかかり、捲れたはずみで大きな「盛り乳パッド」が床に転げ落ちた。逆上したマリリンはマドンナに声をかけた。マドンナは夏子の背後に回り込み両脇から腕を入れ夏子の後頭部で指をくみ、夏子を羽交い絞めにした。
「離せ!2対1とは卑怯やぞ!」と暴れるが「小さく軽いだけのジャップの「ゼロ」に「サッチ・ウェーブ」(※2対1の航空格闘戦)で戦うのはアメリカの常識なのさ!」とマリリンは吐き捨てると夏子のTシャツをまくり上げると「ユー、ダーイ、マザー〇ァッカー」と叫び、夏子の真っ赤なブラジャーをはぎ取った。夏子の小ぶりな83のBの胸が揺れる。高笑いするマリリンの腹に陽菜の「超低空ローリングソバット」が決まった。マリリンは540度後方回転し、スカートが完全にまくれ上がり白い高級ショーツが丸見えになる。マドンナが陽菜につかみかかったところ、稀世とマチルダが割って入った。
騒ぎに気ついた者たちが「何事か」と近寄ってきた。テレビカメラを抱えた大男とマイクインタビュアーが小柄なタキシードを着た男と一緒に出てきた。
アグネスが男に事情を話すと、男は何かアグネスに言うとマチルダが「ここでは他の参加者に迷惑がかかるで。表で話ししよかやて。」と稀世に伝え、四人の混乱の元と稀世、まりあとアグネスとマチルダと三人のテレビ局員らしい男が廊下に出た。
男は、マリリンとマドンナ以外にパーソナルカード(※ここでは名刺の意)を配った。アグネスの通訳によると、アメリカ三大テレビネットワークのCBSブロードキャスティングの西海岸の旗艦局であるロサンゼルスにあるKCBS-TVのバラエティー番組のディレクター「ジェフ・ファインスタン」とのことだった。
ジェフはマチルダとアグネスを通じ夏子と陽菜、マリリンとマドンナの言い分を聞いた。その中でマリリンとマドンナは夏子と陽菜と同様に24歳の幼馴染であることが分かった。レスラーとしてはまだまだだが、地元のケーブルテレビなどではそこそこ名の売れた地元アイドルでもあることがアグネスから伝えられると、夏子が
「ロスの地方アイドルがなんぼのもんじゃい!私らかて「門真九賢人」、「門真の女神」と言われる「門真のニコニコ商店街のアイドル」じゃい!ここ、2か月に限っては稀世姉さん追い越して私が「センター」の夏子とその相棒の「陽菜ちゃん」や!」
と大風呂敷を広げると、マチルダの通訳がどうであったのか知らないが、ジェフは「ファンタスティーック!」と夏子の両手を取り、早口の英語でまくし立てた。
「ねえ、マチルダ、このおっさん何を言うてんの?」
と稀世が尋ねると、マチルダは答えた。
「なんか、「日米アイドルレスラー対決」を全米人気ナンバーワンバラエティーの「チャレンジ ザ ミリオネラ」でやるって言ってはるで。なんか、夏子と陽菜の事を勘違いしてるかも…。知らんけど…。」
ジェフはタキシードの内ポケットからスマートフォンを取り出すとどこかに電話をかけた。廊下で30メートル先からでも聞こえるような大声で何か話している。
「今すぐ、弁護士と日本語が話せて「死んでもええ」AD連れて来いって言うてるで。ほんま、夏子と陽菜大丈夫かいな?」
とアグネスが稀世とまりあに説明した。
三分もしないうちに、細身ではあるが背が高く、顔の彫りが深い明らかに「アラブ顔」で刈り上げたスポーツ刈りのスーツの男性が走ってきた。男はジェフから、早口で何か指示を受けている。さらに三分後、太った「いかにも弁護士」と言った風貌の男が眼鏡の助手を連れてやって来た。不安に思った稀世が陽菜の耳元で囁いた。
「ちょっとちょっと、いったい何ごとやの?なっちゃん、陽菜ちゃん傷害事件で訴えられるんか?裁判は白人有利のホームディシジョンやから「死刑」になるんかも知れへんなぁ…。こっちも弁護士呼ぶんやったら、羽藤さんに連絡入れるんやで!」
会場の中からは「WWEの記者会見が始まりますので出場レスラーの皆さんは壇上にお上がりください。」とコールがかかったようで直と三朗とひまわりが稀世とまりあを呼びに来た。アグネスとマチルダも会場に戻り、廊下には、夏子と陽菜、直と三朗とひまわりにマリリン、マドンナ にテレビ局の四人と弁護士の二人が残された。
アラブ顔のイケメンが夏子たちに挨拶をした。
「私はKCBS-TVのADでジャリル・ザンディ―と申します。日本語も話せますので通訳させてもらいます。ここでは何ですから、下の喫茶室にでも行きましょう。」
喫茶室に着くとジャリルは夏子から順にオーダーを聞いていった。年功序列でないところがアメリカらしいと感じた。(これが「レディーファースト」ってもんなんかなぁ。まあ直さんはもう「干からびてる」からレディー扱いとちゃうんかな?)と直の顔を見ると何かを感じたのか睨まれた。
飲み物が揃うとジャリルがタブレットを出してKCBS-TVの説明から入った。「ウォルト・ディズニー・カンパニー社」が親会社で「エミー賞」や「アカデミー賞」のホスト局である「アメリカン・ブロードキャスティング・カンパニー(※ABC)」とアメリカ最古の放送ネットワーク局の「ナショナル・ブロード・キャスティング・カンパニー(※NBC)」と並ぶCBSはアメリカにおける三大テレビ放送局で系列放送局数でアメリカ最大を誇る1927年にラジオ局を開設し、1941年にテレビ局をスタートさせたかつての人気SFドラマ「スタートレック」や人気オカルトドラマの「ザ・トワイライトゾーン」で人気を博した「CBSブロード・キャスティング」社のアメリカ西海岸の旗艦局になるKCBS-TVについて説明が終わった。
続いて、この場にいるジェフ・ファインスタインがディレクターを務める大人気バラエティー番組の「目指せ!ミリオネラ!」のダイジェスト動画が映し出され、ジャリルの丁寧な日本語での解説が行われた。
グループまたは二人のチーム二組が五日×四週の二十日間で千ドルを元手に、デジタルルーレットで出されたお題をこなしながら、最終的に百万ドルを得るまでのドキュメンタリー番組のようだった。
出演者はルーレットによって指定された「お題」をこなすために、世界中を飛び回り体を張って報酬を得ていく番組はいかにも「アメリカンドリーム」であり、達成者はその勝ち得た多額の報酬を手にすると共に、アメリカで有名人としてタレントになったり、出版物を発行し成功しているという。
中にはそのドキュメンタリーが映画化され、「アカデミー賞」の「ドキュメンタリー部門」でエントリーされたこともあるとのことだった。
ネット放送を含めると全世界50か国以上で放映され、日本でもCS放送と民放系ネット配信会社で吹き替え版が放送されていると「日本語」版を見せてくれた。
「ミス夏子はキューティーだし、ミス陽菜はオリエンタルエキゾチックです。お二人でこのアメリカで世界的なスターを目指してみませんか?」
と夏子と陽菜に囁くジャリルのジェフをうかがう不安な視線を直は見逃さなかった。
「返事はこの場で即答しないといけませんか?」と問う陽菜に、ジェフはジャリルを通して「明後日のWWE大会の後で結構ですよ。一応、番組参加のための契約書を置いていきます。日本語版が必要でしたら後ほどメールさせていただきますのでご確認ください」
と弁護士が渡したA4サイズで10枚にも及ぶ契約書を手渡された。
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つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
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・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
後宮なりきり夫婦録
石田空
キャラ文芸
「月鈴、ちょっと嫁に来るか?」
「はあ……?」
雲仙国では、皇帝が三代続いて謎の昏睡状態に陥る事態が続いていた。
あまりにも不可解なために、新しい皇帝を立てる訳にもいかない国は、急遽皇帝の「影武者」として跡継ぎ騒動を防ぐために寺院に入れられていた皇子の空燕を呼び戻すことに決める。
空燕の国の声に応える条件は、同じく寺院で方士修行をしていた方士の月鈴を妃として後宮に入れること。
かくしてふたりは片や皇帝の影武者として、片や皇帝の偽りの愛妃として、後宮と言う名の魔窟に潜入捜査をすることとなった。
影武者夫婦は、後宮内で起こる事件の謎を解けるのか。そしてふたりの想いの行方はいったい。
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