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ゆさゆさと、誰かが私を揺すっている感覚がする。
初めはゆっくりと、遠慮がちに。だけど段々と遠慮なく揺さぶる感じに奥底に沈んでいた眠気も一気に浮上してくる。
もう、一体何なのよ。
お母さんも気が利かないな。
昨日は飲み会で帰りが遅くなっちゃったんだし、朝になんて絶対に起きられるわけないじゃん。
今日は休日なんだから好きなだけ寝かせてほしいし、一日中ダラダラさせてほしい。
「本日は一日パジャマデー」と勝手に決め込み、絶対に起きてやるもんか、と剥ぎ取られかけている布団を引っ張り、頭まで被せた。
「あっ、おい、まて!起きろ!」
被せた布団を再び剥ぎ取られかけた。
「頑固な奴だな。おい、いつまで寝るつもりだ。いいかげんに起きるんだ」
まるで綱引きの様に布団の引っ張り合いが始まったため、絶対に負けるもんか、と渾身の力で引っ張たのだが、ふと、聞こえた声に違和感を感じた。
お母さんではない、男性の低い、いい声に「あれ?」と動きを止めた。
あれ?おかしいな。
今日はお父さんが起こしに来たのかな?
勝手に部屋に入らないでよね。
しかもどの声優さんの物真似してるつもり? 例え声を似せても顔は似せれないんだから、若いころの夢は潔く諦めなよね。
と、布団を引っ張ったまま、眠気の膜が覆った頭で考えたが、やっぱり睡魔にはどうしても勝てなかった。
若干違和感を感じてはいたが、目は半分閉じてウトウトと微睡んでいたため、感じた違和感はあっという間に、夢の彼方へと消えて行ってしまった。
私の勝ちね。布団は渡さないわ。
おやすみなさい。今度こそ、晩御飯までは起こさないでよね。
勝ち取った布団を頭までかぶり、もう絶対に起きないぞと丸まって眠ることにした。
あっ、お父さん、早く部屋から出て行ってね。
お父さんも諦めたのか、すぐに部屋の中が静かになった。
部屋から出て行って、お母さんに「晩御飯になったらおこしてやれ」と告げてくれると思ったのだが、
「……チッ!」
なぜか盛大な舌打ちをお見舞いされた。
「おい!! 起きろって言ってるだろうが!!」
そして、大音量に響く声と共に勢いよく布団が剥ぎ取られ、自身の着ていたお気に入りの、ピンク生地に羊のマスコットが描かれたパジャマの前面を勢いよく開かれた。
びっくりして眠気も一瞬で醒める。
何が起きた!? お父さんのご乱心!?
「きゃあ! 何!?」
勢いよく起き上がり、はだけたパジャマを掻き合わせた。
そしてご乱心のお父さんに文句をぶつける。
「何のつもり?! お母さんを呼ぶから……」
ご乱心お父さんと思っていた人物と、目と目が合い、しばらくお互い見つめ合う。
「……」
「……」
「え、だれ?」
「それはこちらのセリフだ」
いやいや、この人、何言ってんの。
ここは私の部屋なんだから、おかしいのはあなたのほうでしょ。
もしもし、日本語、通じてる??
ご乱心お父さんじゃなかったけれど、今度は違った意味で危険を感じたので、とりあえず家族の誰かを呼ばないと、とベッドを降りようとしたが、足が床につかない。
あれ?? おかしいな。足が短くなった??
もう一度降りようと試み、床を覗くと、何かおかしいことに気づいた。
正確には何もかもが、おかしい。
ぇ……。ここ、私の部屋……。だよ……ね?
子どもの頃から使用している、小さなボロボロのベッドではなく、キングサイズのベッド。
傷だらけのフローリングではなく、傷一つないツルツルでピカピカの床。
見渡すと見知らぬ高級そうな調度品がずらりと並んでいて、私の住んでいる家一軒がすっぽりとはまるのではないかというくらいの広い部屋。
「え、ここどこ?」
未だ寝ぼけている頭では何も考えられなく、見知らぬ部屋にいる、見知らぬ人に答えを求めた。
初めはゆっくりと、遠慮がちに。だけど段々と遠慮なく揺さぶる感じに奥底に沈んでいた眠気も一気に浮上してくる。
もう、一体何なのよ。
お母さんも気が利かないな。
昨日は飲み会で帰りが遅くなっちゃったんだし、朝になんて絶対に起きられるわけないじゃん。
今日は休日なんだから好きなだけ寝かせてほしいし、一日中ダラダラさせてほしい。
「本日は一日パジャマデー」と勝手に決め込み、絶対に起きてやるもんか、と剥ぎ取られかけている布団を引っ張り、頭まで被せた。
「あっ、おい、まて!起きろ!」
被せた布団を再び剥ぎ取られかけた。
「頑固な奴だな。おい、いつまで寝るつもりだ。いいかげんに起きるんだ」
まるで綱引きの様に布団の引っ張り合いが始まったため、絶対に負けるもんか、と渾身の力で引っ張たのだが、ふと、聞こえた声に違和感を感じた。
お母さんではない、男性の低い、いい声に「あれ?」と動きを止めた。
あれ?おかしいな。
今日はお父さんが起こしに来たのかな?
勝手に部屋に入らないでよね。
しかもどの声優さんの物真似してるつもり? 例え声を似せても顔は似せれないんだから、若いころの夢は潔く諦めなよね。
と、布団を引っ張ったまま、眠気の膜が覆った頭で考えたが、やっぱり睡魔にはどうしても勝てなかった。
若干違和感を感じてはいたが、目は半分閉じてウトウトと微睡んでいたため、感じた違和感はあっという間に、夢の彼方へと消えて行ってしまった。
私の勝ちね。布団は渡さないわ。
おやすみなさい。今度こそ、晩御飯までは起こさないでよね。
勝ち取った布団を頭までかぶり、もう絶対に起きないぞと丸まって眠ることにした。
あっ、お父さん、早く部屋から出て行ってね。
お父さんも諦めたのか、すぐに部屋の中が静かになった。
部屋から出て行って、お母さんに「晩御飯になったらおこしてやれ」と告げてくれると思ったのだが、
「……チッ!」
なぜか盛大な舌打ちをお見舞いされた。
「おい!! 起きろって言ってるだろうが!!」
そして、大音量に響く声と共に勢いよく布団が剥ぎ取られ、自身の着ていたお気に入りの、ピンク生地に羊のマスコットが描かれたパジャマの前面を勢いよく開かれた。
びっくりして眠気も一瞬で醒める。
何が起きた!? お父さんのご乱心!?
「きゃあ! 何!?」
勢いよく起き上がり、はだけたパジャマを掻き合わせた。
そしてご乱心のお父さんに文句をぶつける。
「何のつもり?! お母さんを呼ぶから……」
ご乱心お父さんと思っていた人物と、目と目が合い、しばらくお互い見つめ合う。
「……」
「……」
「え、だれ?」
「それはこちらのセリフだ」
いやいや、この人、何言ってんの。
ここは私の部屋なんだから、おかしいのはあなたのほうでしょ。
もしもし、日本語、通じてる??
ご乱心お父さんじゃなかったけれど、今度は違った意味で危険を感じたので、とりあえず家族の誰かを呼ばないと、とベッドを降りようとしたが、足が床につかない。
あれ?? おかしいな。足が短くなった??
もう一度降りようと試み、床を覗くと、何かおかしいことに気づいた。
正確には何もかもが、おかしい。
ぇ……。ここ、私の部屋……。だよ……ね?
子どもの頃から使用している、小さなボロボロのベッドではなく、キングサイズのベッド。
傷だらけのフローリングではなく、傷一つないツルツルでピカピカの床。
見渡すと見知らぬ高級そうな調度品がずらりと並んでいて、私の住んでいる家一軒がすっぽりとはまるのではないかというくらいの広い部屋。
「え、ここどこ?」
未だ寝ぼけている頭では何も考えられなく、見知らぬ部屋にいる、見知らぬ人に答えを求めた。
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