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結界は苦手かも

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まとまって森の中を進んで行く。

森は深くなっていくが、歩く部分は道になっているので障害は無い。
1時間は歩いたと思う。
森の木が少なくなって、水面が見えた。

近づいてみると、水が澄み切っている。
「レッフェ湖と言います。夜は神秘的な光景が見られます」
どのような光景かは見てのお楽しみだそうだ。

昨晩と同じように、水辺の平地に丸く場所を取る。
肩掛けカバンから、テントを取り出す。
一瞬にして設営が完了した。
今回はハーラートのテントも並ぶ、屋根付きのスペースがある。

エルネスが焚火台を設置していく。
その横で、ジーヌとメリシテが食卓の用意。
俺は食材の下ごしらえだ.

準備が終わって、集合。

「今から行うのは結界です、今晩はここに泊まりますから頑張って」
実際の場面だと集中力が高まるから、まずは実践というわけだ。

「手にこの術式を書きます」
紙に書かれた術式、小瓶とアシをよった筆を皆に配った。
小瓶の中身は、キューブの削り粉を液体に溶かしたものだ。
左の掌に術式を転記する。
転記したものをパネサが確認する。

それから各自のテントの横に立った。
テントの周りの空間に術式を貼り付けていく。

空間に貼り付ける?

「やり方は色々ありますから試してみて下さい。人によって感じ方も違いますから手の感触に集中して。その感触が強くなるように術式を動かします」

空中を手で押さえたり、左右に振ったり、動かさずに自分が移動したり、皆色々試している。

「感触を得るのに暫くはかかると思いますから、疲れたら休憩して下さい」
そう言うとパネサは、湖の方に歩いて行った。
その先を見たら、ハーラートが水辺に椅子を置いて釣りを始めていた。

優雅だ。

日が傾きかけた頃、ジーヌのリングが光った、そしてエルネス。
えっ?!俺は空間属性が強かったはずでは? 
しばらくするとメリシテ、やれやれという感じ。

そこにパネサが戻ってきて、しばらく様子を見ていた。

「今、何か感じませんでした?」
「引っかかる感覚かな・・・」
「ではそれをずらしていくように」

空間に面をイメージして撫でる。引っかかりを探す。
掌に微かな抵抗を感じる。
抵抗を左から右にゆっくりと動かす。
「もっとゆっくりと」とパネサ。

何度か試す。
引っかかりを僅かずつ右に動かす。
掌から術式が剥がれたように感じた。

リングが光って、頭の中で声が響いた。「結界を取得しました」

良かったこれで全員終了、と思ったら
「皆さんは結界を見ることはまだできませんから、残念ながら結界の形が全部不揃いでテントを覆っていません。ですから、結界をひとつにまとめて大きな結界を張り直しますね」
というとパネサが空間に両手を広げて結界を張った。

結界は、レベル2になると見える。
それで実用には問題は無いとパネサ。
結界スキルは取得したので、もう術式は必要ない。
あれは取得を補助するための術式らしい。

全員が必須スキルを取得できたので、これにて終了。
後は夕食だ。

メニューはお約束のバーベキュー。
肉や野菜を焚火台に取り付けた網の上にどんどん乗せていく。
肉には軽く下味をつけたのでそのままでもいけるが、果汁と岩塩も用意した。

ハーラートが皆の職業を尋ねた。
俺とエルネスはハンターだと言った。
「森には入っているの?」
「ふたりとも、5才の頃から森に入っています」
森で生きる技術を身につけるために、町や村の近くでの簡単な狩りに親子で行くことはハンターなら普通だ。
特に感覚は早い時期に身につける必要がある。

「俺とダネルの父親同士は、同じハンターチームに所属しています」
「どのチーム?」
「ハレヘレというチームです」とエルネス。
「フークモバ地方で1番といわれるチームだね。お客さんと道中話をするとハンターや剣士なんかの噂でどのチームが良いとかだれが強いとかね、皆そういう話が好きなんだ。じゃあ身体操作属性をもっているよね?」

「はい」
ということで、ちょっと訓練してみようかということになった。
「いい?」
「もちろんよ。でも手加減してね、治癒師はいないから」とパネサ。

治癒師がいたら手加減しなくても良いの?

「薬師なので治癒はできるはずですけど、今はまだ無理です」とジーヌが真面目な顔で言った。
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