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傷を治すのは得意だ

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2番目の宿泊地に到着した。
ほぼ無人だ。

この先残っているのは、地元のハンターチームと聖騎士団たちだ。

「ここで夜明けまで眠って、キャンプ地に向かう」とルーパット。
「俺は今まで眠っていたから、もういいか」とダス。
「設備は整っている。いろいろ用意しておいてくれ」とハレス。
「草も良い具合に伸びているから、敷地に結界を張ってカクコーは放牧しておく。シャワーや食堂は使えるだろう」とダス。

朝になって出発。
4人で走る。
キャンプ地にはすぐに着くだろう。

キャンプ地の手前で、何かを探知した。
「9時方向。300メートル。20前後」とハレス。
「像だと、人だ。ハンターに聖騎士が混じっている」

近づくと結界の中で弓を構えていた。

「どうした?」とルーパットが呼びかけた。

確認できたようだ。
全員武器を下ろした。

キノンが状況を説明した。
ハンターチームが3、聖騎士が8人、ギルド職員と調理人だ。
深夜に襲われ、生き残ったのは20数名だ。

何名かの負傷が酷い。
回復薬で状態を保っているが、治癒師が必要だ。

ギルド職員が伝達で、救護チームの依頼をしていた。

「残念ながら俺たちじゃないが、大丈夫これくらい治癒できる」とダス。
「彼が一番の重傷か?」そう言うとそばに座りこんだ。
横腹をライフィスに噛みちぎられている。

キノンが心配そうに見つめる。
「チームメンバーか?」
「そうです。後陣を守ったので」
「わかった。俺のやり方は他と違う。先に言っておく。彼の名は?」
「ゾード」

「皆、持っているキューブをゾードの周りに置いてくれ」
皆が周りにキューブを置いていく。
「もういい、十分だ」

そう言うと、遮蔽をゾードの周りに張った。

「まずは、この中をロンメイで満たす。体を活性化させる」
遮蔽に手を当てた。

「そいつも重症だな」とダス。
同じようにロンメイで満たした。

そして、もう一人。

後は、重傷ではなさそうだ。
特製の回復薬を配った、そのうち治るだろう。

「ではキノン、戦いの様子を教えてくれ」とダス。
「ゾードは?」
「活性化するのに少し時間がかかる。その間に話してくれ」

キャンプ地で眠りについていた。
結界も張ってあった。
深夜にライフィスが20匹程襲いかかってきたが、結界の外だ。

中央の結界を広くして、その中に結界を伝って全員が集まった。

結界の中からライフィスの顔に矢を放つ。
ライフィスが倒れる。
これは楽勝だ。

ところが3匹目を倒し時に結界が結晶化した。
結界を見ることのできない者にも空間にヒビが入ったように見えた、
次の矢で結界が破損した。

一匹のライフィスが結界の中に侵入した。

「そこの部分にだけ穴が開いた」とキノン。

聖騎士の一人が倒した。
しかし同じ場所から、別のライフィスがこんどは2匹入ってきた。
穴が少し広がっていた。

そこに亜人族が突然現れた。
完全に囲まれた。

結界の破壊は時間の問題だと判断し、包囲を突破することにした。

ハンターチームが先陣を切って、道を作る。
聖騎士が盾を使って道を守る。
後続は、キノンのチームが排除する。

「やつらは追ってこなかったのか?」とルーパット。
「しばらくは追ってきたが、途中で引きあげた。理由はわからない」とキノン。

それでも十数名が、殺されてしまった。

「キャンプ地にまだいるな」とハレス。
「治癒が終わったら、対処しよう」とルーパット。

「一緒に行く」とキノン。

「防御系のスキルを持っているものは?」とルーパット。
聖騎士とハンターが数名ずつ手を挙げた。

「しばらくの間、ここを守ってくれ。キノンは俺たちと一緒に行く」

ダスがゾードの傍に座った。
遮蔽に手をあてた。
遮蔽が小さくなって、ゾードの体を覆った。
横腹のところに手を移す。

「汚れた肉と血を浄化した。出血は止まっている。傷をふさぐ」

ダスが遮蔽を解除した。
顔に血の気が戻っている。

後2人だ。

「いきなり傷を治すなんて、初めて見た」とキノン。

「病気はそうでもないが、傷を治すのは得意だ」とダス。
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