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後片付けが大変だろ?

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「亜人族が、64。 ライフィスが、15」とハレス。
「ライフィスが少ないな」とルーパット。

「昨夜襲ってきたライフィスは、だいたい殺した」とキノン。

なるほど。
足の速い方を確実に減らしたわけだ。
ハンターらしいな。

「キノンが一緒に3時から、ダスとロマノが9時から。合図はハレスがライフィス10」
とルーパット。
「15全部でもいいぞ」とハレス。
「キノンの腕前も見たい」とルーパット。

「探知で位置を確認。散ってくれ」とハレス。

配置についた。

ライフィスが5匹倒された。
続いて、5。

ルーパットが、俊敏スキルで飛び出した。
一瞬で、ライフィスに接近した。

ライフィスの頭を横から蹴っ飛ばすと、ライフィスが崩れ落ちた。

横にいた、亜人が振り向く前に
掌底で頭を打ち付ける。
亜人が崩れ落ちた。

衝撃転位だ。
打撃の衝撃が、打撃の接触面ではなく、その奥の内部で発生する。

脳の内部を直接ぶん殴っているようなものだ。

キノンが、空中を跳ね上がる。
落下しながら、ライフィスに剣を突き刺した。
何かの属性を持った攻撃だ。

キノンの動きを見ていたルーパットを目がけて、亜人がナタを切り降ろした。
右から左に斜めの軌道。

亜人族は屈強な体で、動きも早い。
力は、人の3倍以上はある。

たいていは、ナタを大きくしたような武器を力まかせに振ってくる。
剣で受けるのは無理だ。
剣ごと叩き切られてしまう。

躱しながら転身して、蹴りを脇腹に叩き込む。
倒れた亜人が、のたうち回る。
内臓が破損したようだ。

2人が同時に前からきた。
誘導するように、右に移動。
動きを追った左のヤツのナタが、右のヤツの肩に食い込んだ。

食い込んだナタを引き抜こうとしているヤツの後ろに回りこんで、頭に掌底を叩き込んだ。

***

ライフィスが倒された。

周囲を見た亜人族の目にダスが映る。
一斉にダスに向かうが、何かに激突して倒れた。

遮蔽だ。

素早く起き上がったヤツが、ダスに向かうが無駄だった。
遮蔽にぶつかりまた倒れてしまった。

ダスは、亜人達の間をジグザグに歩いて行く。

20人ほどの亜人がダスに向かおうとするが、前に進めず右往左往する。
回り込んだヤツもいるが別の場所で、遮蔽にぶつかる。

「ここが出口だ」とダス。

ダスは、ライフィスが倒されると同時に、空間に迷路を形成していた。
簡単な迷路だが、遮蔽は見えないから文字通り手探りで進むしかない。

既に入り口は塞がれていた。

入り口に近い通路から、迷路はゆっくりと収縮を始めている。
外に出るにはここに来るしかない。

迷路が形成された範囲は一定だ。
出口に立ったダスを目がけて迷路の外にいた亜人が襲いかかる。
だが、ダスに辿り着くことなく崩れ落ちた。

何処からかロマノが、静かに倒した。

「ロマノ、こっちはいいから。真ん中辺りのヤツらを頼む」とダス。

口笛が聞こえた。

***

キノンが右から左に一瞬で5メートルは移動した。
そのまま、亜人を切り倒した。

直後に、数メートル先斜め前の亜人を切り倒していた。
転位しながらの攻撃のようだ。

キノンの腕前はわかった。

ルーパットを目がけて、横から亜人が2人襲い掛かった。
後ろに躱しながら、端のヤツの腰あたりを蹴り込む。
骨が砕けて崩れ落ちた。

その倒れた亜人を飛び越すようにして、もう一人がナタを振り降ろしてきた。

かいくぐって、下から顎を掌底で突き上げた。
硬直した体が、丸太のように後ろに倒れた。

先に倒れていたヤツがナタでルーパットの足を切りつけた。
ルーパットはその腕を蹴ってナタを防ぐと、身体を踏みつけた。

もう周りには生きている亜人族はいない。
そのまま中央に向かって歩く。

前方に残った亜人族が、崩れ落ちた。
真ん中辺りにロマノが現れた。

その向こうからダスもやってきた。

「脱出できたヤツはいなかった」とダス。
「そうか」とルーパット。

ダスが来た方向に目をやると、遮蔽の収縮によりラミネートされた亜人族が地面に横たわっていた。

「脱出?」とキノン。
「ダスは迷路から脱出した魔獣は逃がすのさ」とルーパット。
「迷路?」
「後で話す」とダス。

「それよりキノン、腕前は文句無しだが少し拙い」とルーパット。
「どうして?」
「ここから向こうが、ダスとロマノ。反対のあの辺りがキノンだ」とルーパット。

「倒した数は、そんなに少なくないわよ」
「そうだ、だから腕前は認める」
「倒し方?」

キノンが倒した相手は切り裂かれ、内臓や血が辺りに飛び散っていた。

「獲物は綺麗に仕留めることが大事だ」とダス。

「それにキャンプ地だと、後片付けが大変だろ?」とルーパット。
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