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これどうすれば?

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ルトラと一緒にギルドに戻った。
清算は終わったのに、なぜか会議室で待たされている。

ルトラが入ってきた。
様子が慌ただしい。
「キャンプ地が襲撃されて、救護チームの要請があった。救護チームはすでに出発しているが、ハレヘレが応急処置をした」

応急処置ってダスの治癒とハレヘレ特製の回復薬のことだろう。
それで治らなければ、救護チームでも無理だ。

ルトラが様子を教えてくれた。
結界が破られたらしい。

夜の森は、漆黒の闇だ。
夜行性の魔獣は、夜目が効くし嗅覚や聴覚なども鋭い。
人族は、圧倒的に不利だ。

だから、結界を張ってキャンプをする。

結界が破壊されるという話は聞いたことはあったが、実際の出来事を聞いたのは初めてだ。
結界を張っても危険だとなると、根本的な問題だ。

他のギルドにも連絡したので、会議がすぐに行われる。
フークモバに戻って、ギルドに行くように言われた。
「“通路”は緊急枠で、到着次第使える」とルトラ。

中央広場に向かった。
中に入り“壁”に手を触れる。
リングが光った。

通り抜けると、フークモバの中央広場だ。

そのままギルドに、一応4人で入った。
ギルドの会議だから、エルネスたちはどうなのだろう?

フィネが手招きしている。
俺の疑問は意味がなかったように、そのまま4人は会議室に入れられた。

着席すると
「テーブルにリングをかざして」
とフィネが小声で言った。

かざすと、リングが光った。
頭の中で会話が聞こえた。
会議は既に始まっていた。

丁度、ルトラが状況説明を行っている。

「これどうすれば?」と小声でフィネに聞いた。
「声にだせば、全員に聞こえるわ。思ったことは伝わらないから安心して」とフィネ。

俺たち4人が感心する。
初めてのことなので、仕方ない。

ルトラの説明が終わった。
”壁”がルトラと名前を告げた。
ありがたいが、全部に入るみたいだ。

「では、各都市での確認に移る。第2都市ノビッシュには、無い」とバン。
バンが議長らしい。

グルっと一周して、リティナにも無かった。
襲撃はキャンプ地の一件だけだった。

「参考のために、結界が破壊された事例検索の結果をだす」とバン。

“壁”の声が聞こえた。

90年程前に、ある村が亜人族によって壊滅した。
偶然生き延びた1人が、防御に張った結界が消えたと証言した。

同様の記録が70年前にもあった。
2つの村が亜人族によって壊滅したが、生き残りは複数人いた。
戦闘中に張った結界が次々に消えたことを全員が証言していた。

100年の間に21件あった。
そして10年前にも。
それ以降の記録は無い。

「心配なことがある。10年前の事件の直後に、各都市において村と箱車の襲撃件数が突然多くなった」とバン。

特に、一定期間の間に頻発した箱車襲撃で、多くの死者がでた。
生存者がいなかったので、結界に関する証言は得られていない。

ギルドの対応がまとめられた。

村の守備体制を一段階上げる。
町への避難は本日開始して明日までに終了。
町での受け入れはギルドの施設を開放する。

各都市間の箱車での移動は、定期便を除き、今日から10日間停止。
定期便には、護衛を配置させる。
各都市は、ギルド案件として箱車停留地守備の依頼を行う。

会議が終了した。

「聞いてのとおりだ。箱車停留地守備の依頼をかける」とカミロ。

都市間では“通路”を使えるが、都市と特定の町の間を除き、町と村では“通路”は使えない。
移動は基本的に箱車を利用している。

停留地は、町や村でない平地。
ようするにキャンプ地だ。

「今からソラソのギルドに行って、そこで依頼を受けて欲しい。チーム指定にする」とカミロ。

そうは言っても、多少の準備もしたい。
終わったらソラソに行くということで、一旦マリタの店に向かった。

店に入って、マリタに帰還の報告と停留地の守備の説明をした。
マリタの家にあるチームの倉庫に寄ってからソラソに行くと伝えた。

「エルネスの新しい弓と、リリアナの地属性の術式の文献を棚に置いておいたから」
とマリタ。
時間はたっぷりありそうだから、丁度良い。

「2階の踊り場に物を並べるから、ちょっと通りにくいかも」と俺。
「わかった、片づけないでおく」とマリタ。

いえいえ、マリタ。
全然片づけないから。
家中を片づけて掃除しているのは俺とリリアナです。

家賃分なのでそれは構わないが、事実は正確にお願いします。

***

ソラソは、フークモバとリティナの中間地点で、共同管理の町だ。
フークモバとリティナへの“通路”がある。

広場に戻って、”通路“を使った。
ソラソの中央広場に到着。

ギルドに入って依頼を見る。
チーム指定なのでいきなり表示された。

依頼:箱車停留地の守備 (ハンター)
場所:ダーラン村の南 
概要:ダーラン村からフークモバ方面へ1日 平地
達成:- 期間:10日 費用:* 買取価格:―
違約金:- 闘技等級:― チーム:指定あり**
注記: *ギルド案件 **チーム名指定(ハルホレ)

「ダーラン村まで、箱車で1日。そこからもう1日ね」とジーヌ。
「近いわね」とリリアナ。
リリアナの故郷イエヴェレワは遥かに遠いので、感覚の違いだ。

俺たちの依頼以外に、2チーム分の依頼がでていた。
チーム指定はハルホレだけだ。

依頼はすぐに、埋まった。

一緒に箱車に乗って移動。
ハルホレを含めて2チームがハンター、残りは兵士団だった。
兵士団が次の停留地、ハンターチームがその次の停留地を保護する。

箱車の中で彼らの話を聞いて、驚いた。

ハルホレは数百の亜人族を蹴散らして、魔獣の群れをせん滅した。
捕らえられていた多くの兵士を解放して、英雄扱いを受けたらしい。

うわさ話は、そうやって盛られていくのか。

***

久しぶりに、ハーラートが登場します。
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