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狙うなら顔だ

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ハーラートの操る、箱車が停留地に到着した。

定期便なので、荷物のほとんどが収納箱だ。
乗客は少なくて、6名。
商人とその護衛職が2名、後は近隣の村人だ。

結界を張り巡らせて、乗客のテントを設置する。
乗客用の収納箱から、料理を取り出してテーブルに並べていく。

ワインの栓を2本抜いた。

商人が、乗り合わせた縁だとかで、停留地での夕食には彼の奢りでワインを振舞っている。
さすがに商人だ、そつがない。

皆が食事をしている間に、カクコーを放牧し箱車の後ろに簡易シャワーを設置した。

これで一段落。

他の箱車の従者に会いに行く。
今晩は3台の箱車が停留していた。

いつものタープが張られている。
焚火を囲んで椅子が並ぶ。

ラッドとマルスが座っていた。
従者仲間で、2人ともフークモバに住んでいる。
ソラソからフークモバに戻る途中だ。

「ルジリで聞いたが、今日から10日間の護衛要請がでるらしい。亜人族だ」とマルス。
「護衛職と一緒なのか?」とハーラート
「いや、今日手配すると言っていた」とマルス。
「次の町で乗せないと、運行中止だ。定期便以外は今日から止まる」とラッド。

「明日はルジリ泊まりだ。手配は間に合うと思うが」とハーラート。

「自分で護衛しろよ」とマルス。
「従者と護衛だ。2人必要だ」とハーラートが笑った。

夜が更けた。

それぞれがテントで眠りについている。
その周りの結界にライフィスが集まってきた。

ハーラートが気配を感じて、目を覚ました。
周辺を探知した。

テントからでると、焚火の灯りを反射してライフィスの目が光っている。

各テントの客を起こして回る。
商人の護衛職が、剣を抜いてテントからでてきた。

「魔獣がいる。囲まれている。6」とハーラート。

村人と商人を箱車の中に誘導した。
護衛職が箱車を守る。

そこに亜人族が現れた。
暗くて良くわからないが、探知では約20人。

「亜人族が20。増えた」とハーラート。

ハーラートが気づいた。
一匹のライフィスが明らかに近い。
唸り声をあげて、ハーラートに飛び掛かった。

躱しながら背中のナタを抜き、胴体に叩き込んだがライフィスは切れない。

ライフィスは地面に着くと反転して、ハーラートの足を狙った。
ハーラートがすれ違いざまに、ナタでライフィスの顔面を叩きつけた。
ナタが顔面に食い込み、ライフィスが地面をのた打ち回る。

「結界の中だぞ」ハーラートが思わず声にする。
更に2匹のライフィスが中に入ろうとして、空間でもがいている。

「こいつの体に剣技は効かない。狙うなら顔だ」
とハーラートが大声で護衛職に言った。

ライフィスが侵入した。
1匹がハーラートに向かった。

ライフィスの前にハーラートが突然現れた。
俊敏スキルだ。

ナタを顔面に叩き込む。
ライフィスの顔が左右に割れた。

もう一匹は、護衛職が盾で押さえつけて、喉に剣を突き刺していた。
腕は立ちそうだ、箱車は任せた。

残りの3匹と亜人族が押し寄せてきた。
結界が破られたようだ。

反応強化スキルを発動した。

亜人族たちの攻撃に反応する速度が上がった。
まるで、遠い間合いからユックリと攻撃してくるように感じる。

攻撃とすれ違うように、ナタを首に押し当てて切り裂いた。

その後ろのライフィスの顔面を横から蹴っ飛ばした。
ライフィスが反転した。
ナタでライフィスの口の辺りを切り落とした。

亜人族がナタを水平に振った。
ハーラートは地面を転がって避けると距離を取った。

ライフィスが飛び掛かってきた。
ライフィスの前足を手で払って、空中で回転させる。
ナタを顔面に叩きつけた。

亜人族が箱車の方に向かった。

俊敏スキルで、亜人族の後方に回り込む。
一番後ろのヤツの首にナタを押し当てて切り裂いた。

その前のヤツの頭に、振り抜いたナタをそのまま食い込ませる。

ハーラートと護衛職は、ライフィスと亜人族を全て倒した。

護衛職の一人がライフィスに足を噛まれていた。
目から脳を突き刺して殺したが、死んだまま噛みついている。
2人がかりで外した後、血止めをして毒消しを飲ませた。
後の者に怪我は無い。

なぜか結界を張ることができない。

とりあえず、箱車に全員が乗り込む。
そのまま、他の箱車のところに移動した。

2台の箱車は襲撃を受けて、全員が殺されていた。

残りのライフィスと亜人族がいるわけだ。
戻ってテントを撤収してから、場所を変えた。

結界を張ることができた。

夜明けをこのまま待つ。
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