占霊隷従探偵奇譚 ~l as Trust~

川床の蝶

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1章 渦中の思い

炎渦に抱かれて

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『貴女の願いを叶えましょう』


────

「巷で噂の占い少女、突然の変死!!」

今朝の朝刊の見出しをなんとはなしに読みあげる。
巷で噂の占い少女……そういえば隣町の高校に絶対に当たるとかなんとか言われている女子高生が居るという噂を聞いたことがある。多分その少女の事だろう。
まあ、可哀想だとは私でも思う。
花の女子高生が右腕を引きちぎられ、頭部に関しては犯人に持ち去られている可能性が大きいらしい。
しかし、まあ言えば悪いが所詮はそれだけのこと。殺人事件なんてまあ、多々あることだ。犯人がまだ捕まっていないのが多少気にならないと言えば嘘になるが、聞けば被害者は美人なのだそうな。なら私が襲われる心配なんぞ無いに等しいだろう。
……噂で思い出した、そういえば私の街には霊従探偵なる者が居るらしい。
聞けばそいつは幽霊と話すことが出来て従えることも出来るだとか、その能力から警察から極秘に調査を頼まれているだとか、終いには私達が幽霊と出会うことがないのはそいつが世界の幽霊全てを従わせているからだ、とかいう途方もない噂までもが流れている。
まあ、所詮は根も葉もない噂に過ぎないものなので、私にとっては関係の無いことだから、それがどうしたと言わざるを得なくなる。
ああ、そろそろ家を出ないと学校に間に合わない。

「お母さん、お父さん、行ってきます。」

私はテーブルに並べられた珈琲と紅茶を横目にリビングを跡にした。

──

また今日も辛い1日が始まる。ぼっちの自分には学校というのは面倒臭いだけである。
周りを見渡すと、皆が皆グループを作り談笑している。一人でいるのなんて私だけ。この孤独感には何時まで経っても慣れる事は無い。
1時間目は数学だった、居眠りをしてしまったが幸いの事に先生にはバレていなかったようだ。
2時間目は体育だった、ぼっちには辛い授業NO.1だ。
そして、3時間目4時間目もいつも通りに事は進み。お昼になる。私は昼はパン派なので購買へと急ぐのだが私のノロマな足ではパン争奪戦には間に合わず何時も余り物で済ましている。
それからもまた退屈な時を過ごしやっとの事で下校の時間になった。
今日も一日お疲れ様だ、私。後は家へと真っ直ぐ帰るだけ。
靴箱で靴を履き替えて、門を出る。
ああ、この時ほど開放感を味わう事が出来るものはほかにあるのだろうか?いや、無い。そう言い切れる程のそれが私を満たしてく。

──

帰り道、学校から私の家までは徒歩十分弱。
五分は歩いただろうから後もう半分だ。そう思った時だった。
ふと視界の端に何かが写る。少し気になるが無視しよう。私は早く家に帰りたい。帰って横になりたいのだ。
私の歩が早くなる、家はもうすぐそこだ。なんとはなしに頭がズキズキ痛むような気がする。早く横になりたい。

……まただ、視界の端に何かが移った。それを認識する度私の体にヒビが入る、私の世界が赤く包まれる。

熱い……眩しい……熱い……苦しい……熱い…熱い熱い!!


皮膚が焼ける感覚、次第に呼吸が出来なくなる。
眼の前は炎の海、耳に響くけたたましいサイレンの音。
炎が私を包み込む、そう、それはまるで私の魂を灰にせんとばかりに……。


そして私の存在が炎によって灰になった時、私は思い出した。
ハハッ……皆が無視するのなんて当たり前じゃないか、だって私は既に死んでいたのだから。
なんで忘れていたのだろうか、それと同時になんで私は今まで存在していたのだろうか。
ああ、思考がぐちゃぐちゃだ。私の存在って何?私の人生ってなんだったの?そんなことは今となってはもうどうにでもいい事なのだろう。
私は私の人生に未練が無いとは言えないが、まあ、そんなに悪くなかったんじゃないかって今になると思えてくるんだから人生ってのは不思議なものだ。

ああ、でも神様……欲を言えば、『友達』……欲しかったなぁって。

……『友達』やっぱり欲しかったのか?

そりゃ欲しいに決まってるじゃない。独りは寂しいんですよ?

……そうだな独りは寂しい。俺も独りは寂しいな。

そうでしょ?
独りでは楽しめないことも『友達』が入れば楽しめる。一人で楽しめることは
なんて『友達』がいたらもっと楽しめる。『友達』っていうものにこれ程までに憧れる事になるとは過去の私からは想像もできないです。

……お前は友達が欲しいんだな……

そうですね、まあ、欲しかったっていう方が正しいと思いますが。

……過去形なのか?

ええ、まあ、だってもう私は死んでしまってる訳ですしね。

……だからどうしたというんだ。

?だって、死んでるんですよ?もう、私は誰とも会話することが出来ないんです。

……誰がそんな事言った?神様にでも言われたのか?

だって……だって、誰も私を気づいてくれなかった!私でさえ自分の存在の在り方に気付こうとしなかった!

……ならお前は今誰と話している?

誰とって……あれ?

……お前は今、俺と話しているだろ。

嘘……!?じゃあ、あなたは何者なの!?

……俺か、俺はな……


「ゼラ・ニ・ムトストル。さぁ、前座は終いだ。」
「俺が、俺自身が、全身全霊を持って、
               『貴女の願いを叶えましょう』」
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