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第四章 やはり美少年との日常は甘くて危険らしい
第三十二話 朝日家焼肉事件
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「「「「かんぱーい!!」」」」
ある日の夕方。朝日ら四人がバーベキューテーブルを囲み、それぞれグラスやジョッキを掲げて乾杯をしている。今日は朝日家の庭にて焼肉パーティーが開催されているのだ。
「うーん。すごいなぁ、庭が広いとバーベキューも簡単にできるもんね」
大き目のバーベキューコンロにテーブルセット、少し離れてパラソル付きガーデンテーブルと充実した装備に朝日もご満悦。
「トウモロコシ焼かなきゃ」
「くぅー! やっぱ焼肉の時には生だぜ、生!」
すでに大ジョッキのビールを飲み干し、サーバーに二杯目を注ぎに行く梅。
「トウモロコシ焼かなきゃ」
「本日は朝日様のお優しい言葉に、是非とも甘えさせていただきますわ!」
ウイスキーグラスを片手に五月もご機嫌だ。
「トウモロコシ焼かなきゃ」
はい、トウモロコシなんですね。
そんな本日。せっかくだからお酒もどうぞ! とはパーティ立案者である朝日の言葉だ。しかし、いかにセキュリティがしっかりとしている朝日家であっても、Maps全員が警護対象を囲んで、酒盛りして焼肉を食べていました(キリッ)ではさすがに事件発生である。
最低限の仕事してる感じは必要。なので、三人の中で一番酒を飲まない深夜子がシラフ要員となった。ちなみに、この世界は十八歳で成人扱いとなる。朝日以外は飲酒可能な年齢だ。
「それじゃあ、ご飯がいるひとー。あと、お味噌汁も作ってあるから欲しかったら言ってね」
「朝日君の味噌汁! もち、いただき!」
「私も軽くご飯とお味噌汁をいただきますわ」
「俺はご飯がっつりな! 味噌汁もどんぶりで貰うぜ!」
さっそく出てきた大盛りのご飯と味噌汁をかき込む梅だが、五月の手元を見て続けざまに口を開く。
「おい五月。しっかしお前さ、焼肉にウイスキーのロックってありえねえだろ。普通ハイボールじゃねえか?」
「はいっ!? 何をおっしゃいますやら……マッキャランの二十五年をハイボールにするとかありえませんわね」
やれやれと言った雰囲気で、十万円クラスの高級ウイスキーの瓶を見せつける五月。それを見た梅は苦い顔に変わる。
「ぶっ! なんて酒用意してやがんだよ。お前……酒が飲みたいだけじゃねえか?」
「なっ!? そっ、そんなことはなくてよ。ほら、こちらは私が朝日様のために取り寄せしたお肉ですわ」
今度は自慢げにドン! と牛肉が入っている箱を取り出す。どれもこれも一目で高級品とわかるが、梅はさらに苦い顔を向ける。
「おい……てかよ……その肉、なんで桐の箱とかに入ってんだよ? 高けりゃいいってもんじゃねえぞ。それに高え肉は脂身も多いから、ちょっとでいいんだよ。そう言うのは!」
「失礼な。お肉ばかりではありませんわ。ほら、こちらをご覧になって! 国外から取り寄せた生ハムとチーズでしてよ。私のお気に入り――」
「なんで焼かねえもん出してんだよっ!? 完璧に酒のツマミじゃねえかっ――あっ? どうした深夜子?」
「トウモロコシもおつまみになるよ」
どうも、やたらとトウモロコシ推しな深夜子。足元には大きなダンボール箱一杯分のそれが置いてある。トウモロコシが特産の北海区から取り寄せた甘くて粒が大きい逸品、とは本人談である。もちろん二人にはスルーされた。
「さっ、ささ朝日様。五月の用意したお肉をご賞味くださいませ」
「おっと……ほらよ朝日、皿出しな。タン塩とロースが焼けたから置くぞ」
「ん。ありがと梅ちゃん」
アレやコレやとうるさい梅。どうやら焼肉奉行のポジションらしい。色々な肉をのせては焼いて、せっせと取り分けをしている。
「あっ、朝日君。あたしのトウモロコシあげる! 焼肉のタレで食べるとおいしいよ」
ネバーギブアップトウモロコシ。
「あ、ありがと……深夜子さんのトウモロコシって……丸ごと一本なんだ。あはは」
ちまちまとカットするなど論外。女は黙って丸ごとである。
「くぉら、深夜子! 網の上をトウモロコシで占拠してんじゃねえよ。ここは祭りの出店かっつーの」
「ふっ、梅ちゃん。焼肉のタレとトウモロコシのコンビネーションは正義!」
キラーンと目を輝かせる深夜子。相手してもらえて嬉しかったんですね。
「知るかあああっ! 今日は焼肉だっつってんだろうが!」
とまあ、いつものノリで掛け合いが飛びかい。にぎやかに、楽しく、四人それぞれの時間は進んでいった。
――さて、そんな中でも五月はやたらと酒が進んでおり、ウイスキーの瓶はあっという間に半分近くになっている。
「はぁ……朝日様を肴に呑むお酒……たまりませんわね……」
「五月……なかなかの上級者っぷり」
五月はバーベキューテーブルから少し離れたガーデンテーブルに座り、朝日の姿をながめて酒とつまみを楽しんでいた。そんな五月の姿が、独り寂しく酒を飲んでいる様子に見えたのか、朝日が何やら皿を手にしてやってきた。
「五月さん。お漬物を持ってきたんでおつまみにどうぞ」
「まあ!? まあっ、まあまあっ、朝日様はなっんってっおやさしい! ささ、五月のそばにどうぞ」
上機嫌で漬物の入った皿を受けとり、そのまま朝日を隣に座るように促す。いや、絡みついて座らせる。
「あはは。五月さん上機嫌ですね。あっ、お酒は僕がつぎますよ」
「んまぁっ! 朝日様にお酒をついでいただけるなんてっ、五月は幸せ者ですわっ!」
そう言ってしれっと朝日の肩に手をまわし、胸元に抱き寄せウイスキーを呷る。なんと言うか……男女が逆なだけで、キャバクラで良く見る光景である。
「酔っぱらい五月、それ完璧にセクハラ行為。」
「だまらっしゃいっ! そんなことはぁありませんわよねぇ~。あ、さ、ひ、さ、まぁ」
「え!? あ、は、はい。そう……ですね」
ご機嫌に流し目を送りながら朝日に同意を求める。ついでに抱き寄せスキンシップも忘れない。見本のような酔っぱらいセクハラマシーンと化している五月であった。
「五月あんま朝日君にベタベタしない」
「んまあ、お酒の席で不粋ですこと。今は朝日様が五月のそばに居てくださってるんですの! 深夜子さんはどうぞトウモロコシをお好きなだけ啄み遊ばせ」
「ぐぬぬ、酔っぱらいめ……じゃあ、あたしも!」
ならばと、深夜子は朝日を挟んで五月の逆側に陣取る。二人による朝日の取り合いが勃発した。と言っても、シラフと酔っぱらいではさすがに分が悪い。業を煮やした深夜子はスマホを取り出し、朝日と五月を撮影してゴソゴソ何かを始めた。それをチラッと朝日がのぞいて見ていると……。
「ふっふっふ。この写真をトゥイッターで拡散すれば…………五月、社会的に死ぬがよい」
「あのー深夜子さん。それをしたらさ、結果的にMapsチームごと全員死んじゃうんじゃないかな?」
「ふえ? ……………………ああっと!!」
危うく全員道連れの自爆行為寸前であった。
――そして、時間が経過すること一時間。
「あへ? 氷が切れてしまひましたわね」
「五月さん……もしかしなくても、かなり酔っぱらってますよね? あの、冷蔵庫の氷ならあると思いますけど……大丈夫ですか?」
朝日も心配する程度に五月が出来上がっていた。
「あらあ、あは日様っ。おやさしひですわねっ。ふぁ月は全れんだひ丈夫れすわよ……それはら、水道すひの氷はお酒のロッふには使ひませんの、ですわっ」
まだ飲みたりないらしく、五月はウイスキー用の氷を欲しがっている。
「あっ、そうなんですね……えと」
「いいよ。あたし買って来る。ついでに買いたいものあるから。んと、片道十分くらいだから三十分待ってて」
そこにシラフの深夜子が自分の買い物ついで、とお使いを買って出た。
朝日はバイクで出発した深夜子を見送って、少し片づけ進めておくことにする。空いた皿や大量のトウモロコシがらをゴミ袋にまとめる。いつもなら率先して手伝ってくれる五月に目をやるが、今日はただの酔っぱらい。梅を見れば焼肉奉行を終えて、ご飯、肉、ビールとひたすら飲み食いに徹していた。しかし、あの小さな身体のどこに入って行くのだろうか? ……その姿に多少疑問を感じる朝日であった。
「ふうっ、ちょっと喉が渇いちゃったな……」
台所でゴミを処分して庭に戻ってきた朝日。ちょうどテーブルに置いてあるコーラが目にはいる。
「あっ、ちょうどいいや」
それには新しい氷も入れてあり、まだほとんど溶けていない。きっと梅が新しく入れてくれたものだろう。朝日はグラスを手に取って飲み始めた。
――しばらくして、トイレから戻って来た梅がテーブルを見てキョロキョロとしている。
「ん? あれ? ここに置いてた俺のコークハイどこいった?」
ビールに飽きた梅は、トイレに行く前にコークハイを作っていた。それが無くなっている? 瞬間的に嫌な予感が頭をよぎる。深夜子は買い物に出ているし、五月は飲む酒の系統が違う。
「まさか……」
嫌な予感がする先に視線を移せば「あはっ、このコーラちょっと苦いけどおいしー!」たコークハイを飲み干している朝日の姿があった。
「うわちゃー! おい、朝日。そりゃ酒入ってるから、お前が飲んだらまずいっての」
「えー、そうなの? あははっ、全部飲んじゃった。それにーおいしかったよ。おかわりー」
すでに顔が赤くなっている朝日。言葉使いもいつもより軽い。どうやら酔いが回り始めているようだ。
「げっ……お前もしかして、もうアルコール回っちまってんのか? って、おかわりじゃねえよ。ほら水飲め、水!」
「んー、なんか身体熱くなってきたなー」
梅の差し出した水をスルーして、朝日はおもむろに上着を脱ぎ捨てた。その下はタンクトップなのだが、保護当時の支給品なので微妙にサイズが大きい。肩に掛かりきらず、左肩がずり落ちている。あざとい。さすが朝日あざとい。
「うおおおおいっ!? 朝日! お前なんちゅうかっこしてんだよ……こらっ、上を着ろって」
できるだけ目を覆って、見ないようにして注意する梅。だが本能はそれを許さない。ついつい指の隙間から、ちらちらとのぞき見てしまう。
「えへへ。もー梅ちゃんは可愛いなー」
その仕草が朝日のツボに入ったらしい。梅に絡みつかんばかりに抱きつこうとしてくる。
「こっ、こここここらっ、朝日抱きつくな。わかった! わかったから! 水飲んで部屋戻って休め、な?」
「んー? やだー」
朝日は甘ったるい声を出し、梅を背中から羽交い締めをするようにしてまとわりつく。
「うおおおおおおおっ!? だ、か、ら、抱きしめてくるなぁ! 朝日、お前、酒にめちゃくちゃ弱ぇんじゃねえのか?」
「んー? お酒? 飲んだの初めてだよー。にへへ、梅ちゃんから焼肉のにおいー」
朝日は梅の右肩に顔を乗せ。首筋に鼻と唇を押し付け、すんすんと鼻をならす。
「うっきゃあああああああ!? お、おおおまえ。く、首筋をクンクンするなぁ! や、ヤバい。それはヤバいっての!」
「えー、けちー。梅ちゃんお風呂入ろって言ってもいつも逃げるしー」
「なんで! ここで! その話が出てくんだよっ!? はっ……そ、そうだっ五月! おい五月! 朝日を引き剥がして――」
「はぁ、あらひはまぁ……もう、さふきはほめまふぇん……れすわ……はわ……くぅ…………すやぁ」
「てめえは飲み過ぎだあああっ! ウイスキー丸々一本空けてんじゃねえぞおおおおおおっ!?」
どうにも酒の肴が良かったらしく、すでに酔いつぶれて夢の中の五月であった。
梅、超ピンチ。
ある日の夕方。朝日ら四人がバーベキューテーブルを囲み、それぞれグラスやジョッキを掲げて乾杯をしている。今日は朝日家の庭にて焼肉パーティーが開催されているのだ。
「うーん。すごいなぁ、庭が広いとバーベキューも簡単にできるもんね」
大き目のバーベキューコンロにテーブルセット、少し離れてパラソル付きガーデンテーブルと充実した装備に朝日もご満悦。
「トウモロコシ焼かなきゃ」
「くぅー! やっぱ焼肉の時には生だぜ、生!」
すでに大ジョッキのビールを飲み干し、サーバーに二杯目を注ぎに行く梅。
「トウモロコシ焼かなきゃ」
「本日は朝日様のお優しい言葉に、是非とも甘えさせていただきますわ!」
ウイスキーグラスを片手に五月もご機嫌だ。
「トウモロコシ焼かなきゃ」
はい、トウモロコシなんですね。
そんな本日。せっかくだからお酒もどうぞ! とはパーティ立案者である朝日の言葉だ。しかし、いかにセキュリティがしっかりとしている朝日家であっても、Maps全員が警護対象を囲んで、酒盛りして焼肉を食べていました(キリッ)ではさすがに事件発生である。
最低限の仕事してる感じは必要。なので、三人の中で一番酒を飲まない深夜子がシラフ要員となった。ちなみに、この世界は十八歳で成人扱いとなる。朝日以外は飲酒可能な年齢だ。
「それじゃあ、ご飯がいるひとー。あと、お味噌汁も作ってあるから欲しかったら言ってね」
「朝日君の味噌汁! もち、いただき!」
「私も軽くご飯とお味噌汁をいただきますわ」
「俺はご飯がっつりな! 味噌汁もどんぶりで貰うぜ!」
さっそく出てきた大盛りのご飯と味噌汁をかき込む梅だが、五月の手元を見て続けざまに口を開く。
「おい五月。しっかしお前さ、焼肉にウイスキーのロックってありえねえだろ。普通ハイボールじゃねえか?」
「はいっ!? 何をおっしゃいますやら……マッキャランの二十五年をハイボールにするとかありえませんわね」
やれやれと言った雰囲気で、十万円クラスの高級ウイスキーの瓶を見せつける五月。それを見た梅は苦い顔に変わる。
「ぶっ! なんて酒用意してやがんだよ。お前……酒が飲みたいだけじゃねえか?」
「なっ!? そっ、そんなことはなくてよ。ほら、こちらは私が朝日様のために取り寄せしたお肉ですわ」
今度は自慢げにドン! と牛肉が入っている箱を取り出す。どれもこれも一目で高級品とわかるが、梅はさらに苦い顔を向ける。
「おい……てかよ……その肉、なんで桐の箱とかに入ってんだよ? 高けりゃいいってもんじゃねえぞ。それに高え肉は脂身も多いから、ちょっとでいいんだよ。そう言うのは!」
「失礼な。お肉ばかりではありませんわ。ほら、こちらをご覧になって! 国外から取り寄せた生ハムとチーズでしてよ。私のお気に入り――」
「なんで焼かねえもん出してんだよっ!? 完璧に酒のツマミじゃねえかっ――あっ? どうした深夜子?」
「トウモロコシもおつまみになるよ」
どうも、やたらとトウモロコシ推しな深夜子。足元には大きなダンボール箱一杯分のそれが置いてある。トウモロコシが特産の北海区から取り寄せた甘くて粒が大きい逸品、とは本人談である。もちろん二人にはスルーされた。
「さっ、ささ朝日様。五月の用意したお肉をご賞味くださいませ」
「おっと……ほらよ朝日、皿出しな。タン塩とロースが焼けたから置くぞ」
「ん。ありがと梅ちゃん」
アレやコレやとうるさい梅。どうやら焼肉奉行のポジションらしい。色々な肉をのせては焼いて、せっせと取り分けをしている。
「あっ、朝日君。あたしのトウモロコシあげる! 焼肉のタレで食べるとおいしいよ」
ネバーギブアップトウモロコシ。
「あ、ありがと……深夜子さんのトウモロコシって……丸ごと一本なんだ。あはは」
ちまちまとカットするなど論外。女は黙って丸ごとである。
「くぉら、深夜子! 網の上をトウモロコシで占拠してんじゃねえよ。ここは祭りの出店かっつーの」
「ふっ、梅ちゃん。焼肉のタレとトウモロコシのコンビネーションは正義!」
キラーンと目を輝かせる深夜子。相手してもらえて嬉しかったんですね。
「知るかあああっ! 今日は焼肉だっつってんだろうが!」
とまあ、いつものノリで掛け合いが飛びかい。にぎやかに、楽しく、四人それぞれの時間は進んでいった。
――さて、そんな中でも五月はやたらと酒が進んでおり、ウイスキーの瓶はあっという間に半分近くになっている。
「はぁ……朝日様を肴に呑むお酒……たまりませんわね……」
「五月……なかなかの上級者っぷり」
五月はバーベキューテーブルから少し離れたガーデンテーブルに座り、朝日の姿をながめて酒とつまみを楽しんでいた。そんな五月の姿が、独り寂しく酒を飲んでいる様子に見えたのか、朝日が何やら皿を手にしてやってきた。
「五月さん。お漬物を持ってきたんでおつまみにどうぞ」
「まあ!? まあっ、まあまあっ、朝日様はなっんってっおやさしい! ささ、五月のそばにどうぞ」
上機嫌で漬物の入った皿を受けとり、そのまま朝日を隣に座るように促す。いや、絡みついて座らせる。
「あはは。五月さん上機嫌ですね。あっ、お酒は僕がつぎますよ」
「んまぁっ! 朝日様にお酒をついでいただけるなんてっ、五月は幸せ者ですわっ!」
そう言ってしれっと朝日の肩に手をまわし、胸元に抱き寄せウイスキーを呷る。なんと言うか……男女が逆なだけで、キャバクラで良く見る光景である。
「酔っぱらい五月、それ完璧にセクハラ行為。」
「だまらっしゃいっ! そんなことはぁありませんわよねぇ~。あ、さ、ひ、さ、まぁ」
「え!? あ、は、はい。そう……ですね」
ご機嫌に流し目を送りながら朝日に同意を求める。ついでに抱き寄せスキンシップも忘れない。見本のような酔っぱらいセクハラマシーンと化している五月であった。
「五月あんま朝日君にベタベタしない」
「んまあ、お酒の席で不粋ですこと。今は朝日様が五月のそばに居てくださってるんですの! 深夜子さんはどうぞトウモロコシをお好きなだけ啄み遊ばせ」
「ぐぬぬ、酔っぱらいめ……じゃあ、あたしも!」
ならばと、深夜子は朝日を挟んで五月の逆側に陣取る。二人による朝日の取り合いが勃発した。と言っても、シラフと酔っぱらいではさすがに分が悪い。業を煮やした深夜子はスマホを取り出し、朝日と五月を撮影してゴソゴソ何かを始めた。それをチラッと朝日がのぞいて見ていると……。
「ふっふっふ。この写真をトゥイッターで拡散すれば…………五月、社会的に死ぬがよい」
「あのー深夜子さん。それをしたらさ、結果的にMapsチームごと全員死んじゃうんじゃないかな?」
「ふえ? ……………………ああっと!!」
危うく全員道連れの自爆行為寸前であった。
――そして、時間が経過すること一時間。
「あへ? 氷が切れてしまひましたわね」
「五月さん……もしかしなくても、かなり酔っぱらってますよね? あの、冷蔵庫の氷ならあると思いますけど……大丈夫ですか?」
朝日も心配する程度に五月が出来上がっていた。
「あらあ、あは日様っ。おやさしひですわねっ。ふぁ月は全れんだひ丈夫れすわよ……それはら、水道すひの氷はお酒のロッふには使ひませんの、ですわっ」
まだ飲みたりないらしく、五月はウイスキー用の氷を欲しがっている。
「あっ、そうなんですね……えと」
「いいよ。あたし買って来る。ついでに買いたいものあるから。んと、片道十分くらいだから三十分待ってて」
そこにシラフの深夜子が自分の買い物ついで、とお使いを買って出た。
朝日はバイクで出発した深夜子を見送って、少し片づけ進めておくことにする。空いた皿や大量のトウモロコシがらをゴミ袋にまとめる。いつもなら率先して手伝ってくれる五月に目をやるが、今日はただの酔っぱらい。梅を見れば焼肉奉行を終えて、ご飯、肉、ビールとひたすら飲み食いに徹していた。しかし、あの小さな身体のどこに入って行くのだろうか? ……その姿に多少疑問を感じる朝日であった。
「ふうっ、ちょっと喉が渇いちゃったな……」
台所でゴミを処分して庭に戻ってきた朝日。ちょうどテーブルに置いてあるコーラが目にはいる。
「あっ、ちょうどいいや」
それには新しい氷も入れてあり、まだほとんど溶けていない。きっと梅が新しく入れてくれたものだろう。朝日はグラスを手に取って飲み始めた。
――しばらくして、トイレから戻って来た梅がテーブルを見てキョロキョロとしている。
「ん? あれ? ここに置いてた俺のコークハイどこいった?」
ビールに飽きた梅は、トイレに行く前にコークハイを作っていた。それが無くなっている? 瞬間的に嫌な予感が頭をよぎる。深夜子は買い物に出ているし、五月は飲む酒の系統が違う。
「まさか……」
嫌な予感がする先に視線を移せば「あはっ、このコーラちょっと苦いけどおいしー!」たコークハイを飲み干している朝日の姿があった。
「うわちゃー! おい、朝日。そりゃ酒入ってるから、お前が飲んだらまずいっての」
「えー、そうなの? あははっ、全部飲んじゃった。それにーおいしかったよ。おかわりー」
すでに顔が赤くなっている朝日。言葉使いもいつもより軽い。どうやら酔いが回り始めているようだ。
「げっ……お前もしかして、もうアルコール回っちまってんのか? って、おかわりじゃねえよ。ほら水飲め、水!」
「んー、なんか身体熱くなってきたなー」
梅の差し出した水をスルーして、朝日はおもむろに上着を脱ぎ捨てた。その下はタンクトップなのだが、保護当時の支給品なので微妙にサイズが大きい。肩に掛かりきらず、左肩がずり落ちている。あざとい。さすが朝日あざとい。
「うおおおおいっ!? 朝日! お前なんちゅうかっこしてんだよ……こらっ、上を着ろって」
できるだけ目を覆って、見ないようにして注意する梅。だが本能はそれを許さない。ついつい指の隙間から、ちらちらとのぞき見てしまう。
「えへへ。もー梅ちゃんは可愛いなー」
その仕草が朝日のツボに入ったらしい。梅に絡みつかんばかりに抱きつこうとしてくる。
「こっ、こここここらっ、朝日抱きつくな。わかった! わかったから! 水飲んで部屋戻って休め、な?」
「んー? やだー」
朝日は甘ったるい声を出し、梅を背中から羽交い締めをするようにしてまとわりつく。
「うおおおおおおおっ!? だ、か、ら、抱きしめてくるなぁ! 朝日、お前、酒にめちゃくちゃ弱ぇんじゃねえのか?」
「んー? お酒? 飲んだの初めてだよー。にへへ、梅ちゃんから焼肉のにおいー」
朝日は梅の右肩に顔を乗せ。首筋に鼻と唇を押し付け、すんすんと鼻をならす。
「うっきゃあああああああ!? お、おおおまえ。く、首筋をクンクンするなぁ! や、ヤバい。それはヤバいっての!」
「えー、けちー。梅ちゃんお風呂入ろって言ってもいつも逃げるしー」
「なんで! ここで! その話が出てくんだよっ!? はっ……そ、そうだっ五月! おい五月! 朝日を引き剥がして――」
「はぁ、あらひはまぁ……もう、さふきはほめまふぇん……れすわ……はわ……くぅ…………すやぁ」
「てめえは飲み過ぎだあああっ! ウイスキー丸々一本空けてんじゃねえぞおおおおおおっ!?」
どうにも酒の肴が良かったらしく、すでに酔いつぶれて夢の中の五月であった。
梅、超ピンチ。
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