男性保護特務警護官~あべこべな異世界は男性が貴重です。美少年の警護任務は婚活です!

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第五章 特殊保護事例Ⅹ案件~五月雨家へようこそ!

第五十話 五月雨五月は頑張ります!

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「あっ、こっちも開かない……閉じ込められた? さ、五月さん――」
「大丈夫! 朝日様、大丈夫ですわっ!!」
 驚いている朝日に、五月が駆け寄って肩を掴む。
「今、朝日様のおそばにいるのは五月です。何も、何も心配なさる必要はありませんわ」

 最初は力強く話しかけたものの、朝日が動揺しないようにと緩やかな口調に変える。

 とにかくこの状態は非常によろしくない。普通の独身男性からすれば空腹の猛獣がいる檻に閉じ込められたのと同じ状況。軽く見積もっても(性的)死刑宣告に等しい。万一、朝日が『い、嫌っ! 来ないで! ぼっ、僕に何するつもり? た、助けてっ、誰か助けてーーっ!!』などと怯えようものなら、五月的にはもう生きる気力を失うレベルのダメージである。

 一方、朝日の頭の中は――もう、五月さんのお母さんはイタズラ好きなんだなあ……程度の認識で、のほほんとしたものだ。そんな朝日を真剣な表情で見つめる五月は、脱出に向け動き始めた。

「朝日様……少しわたくしからお離れになってくださいませ」
「えっ? はい」

 朝日が後ろに距離を取ると、扉の前に立って足を開きながら両手を上げ、中段の構えをとる。

 現在ピンクのワンピース丈のパジャマシャツと、同色のショートパンツ姿なので、せっかくの凛々しい構えもアンバランスな格好に見えるのが残念だ。しかし、五月の格闘技の腕前は、深夜子と梅の基準がおかしいだけで、実際は相当なのものである。

 そのままスッと息を吸い込み、少し腰をかがめ脚に力を込める。

「せあっ!!」

 掛け声に合わせて、しなるような連続蹴りが木製に見える・・・・・・扉にヒットする。だが、響いたのは鈍い金属音・・・・・であった。どうやら、五月は扉を蹴破ろうとしたのだが……。

「つうっ! か、硬いっ!? こっ、この扉……一体何で出来てますの?」

 びくともしていない。

 そこは新月わかつきにぬかりなし。木製に見えるこの扉、材質は頑丈な特殊合金である。壁と繋がる蝶番ちょうつがいも同材質で備え付けバッチリ! 仮に車が衝突しても無傷という安心設計のシロモノだ。

「くっ……お母様。無駄に手抜かりのない……」
「ちょっと、五月さん。足、大丈夫ですか?」
「ああっ! 朝日様! こんな状態でもわたくしのことを心配してくださるのですね。なんとお優しい、五月は幸せ者――」
「あの……五月さん?」
「ハッ!? こ、こほん……失礼しましたわ。そ、そうですわね……仕方ありませんわ。まずは部屋を調べることに致しましょう」

 危うく朝日への愛が暴走しかけたが、踏みとどまって冷静に考えを巡らせる。こうなればもう焦っても仕方がない。部屋の状態を調べ、脱出の糸口を見つけるべきだと五月は頭を切り替えた。

「さて……」

 ざっと部屋を見渡す。まずは右側、朝日が入ってきた側は奥にベットが備え付けてある。しかも、ご丁寧にダブルサイズのものが一つのみである。

(本当にお母様あのバカ親は何を考えてますの……)

 呆れた様子で天井を見上げる五月をよそに、ベッドの上に乗っている朝日から声がかかる。

「ふふっ、五月さんこの枕。表裏にハートマークつきでYESって書いてありますよ。変な柄ですね」
 まあ、何か知ってますけど。的な笑顔の朝日である。楽しそうですね。
「ほっ、ほああっ!? おほ、オホホホホ……そ、そうですわね。せ、センス悪い柄ですわね! な、なんなのでしょう? さっ、五月はにはさっぱり解りませんわ……さっ、さあ、朝日様! ベッドはもうよろしいですわ。ほかを、是非ほかを当たりましょう」

 明日、あのバカ親お母様は絶対に一発殴ると心に誓いながら、今度は五月の入ってきた左側を見渡す。こちらは奥半分が壁で仕切られ、もう一つ部屋が作ってある。

「中途半端に部屋を仕切ってもう一部屋? ……あっ、朝日様!?」
 つい悩む五月だが、さっさと朝日が扉を開けて確認している。 
「洗面所? ……それにトイレに……あっ、ここお風呂ですよ」
「はいいっ!?」
 すでに嫌な予感しかしない。
「わっ、五月さん。このお風呂結構広いですよ。あれ? なんだろこの大きいイカダみたいな……浮き輪? プールで遊ぶやつかな? でも……お風呂なのに……」
「ちょっと……まさか」

 表情がだんだんとこわばっていく五月とは対照的に、朝日は大人二人がしっかり乗れるであろうサイズの銀色のイカダに興味しんしんである。さらに……。

「ん? ……イカダの横に置いてあるの何これ? えっと……ピピローショ――」
「いけませんわああああああっ!!」

 ヌルヌルしちゃう何かを発見してしまった朝日を背後から担ぎ上げ、顔を真っ赤にした五月が、風呂場からダッシュで退散する。その後(五月)の調べで大人用グッズが大量発見され、当然ながら風呂場は封印となった。

「あの……五月さん……さっきのお風呂のって?」
「な、ん、で、も、ありませんわっ! 朝日様にはまっっったく関係無い物ですのっ! よ、ろ、し、い、ですわね!!」
「あ、はい」
 五月の勢いに押され、気にはなるがそれ以上聞けず残念な朝日だった。
「朝日様……ともかく、残り部屋のチェックはわたくしが致しますわ」

 どう考えても、この部屋には(性的に)ろくな物が無いことが確定と思われる。ならば五月が家捜しをして、徹底的に潰すしかない。とにかく朝日にはおとなしくするように勧める。

「そんな顔なさらずとも、大丈夫ですわ。何も心配することはございませんの。ささ、テレビでも見てくつろいでお待ちくださいませ」

 朝日の気をまぎらわせるため、ベッドの向かい正面に設置してある80インチの大型液晶テレビに電源を入れる。

『んあっ……は……んっ、素敵ッ! ……もっと、もっと動いてっ……あっ……いいっ!!』

 その大画面に映し出されたのは男女の営み――エロCGムービーであった。しかも全チャンネルにセットしてある万全の充実ぶり! 余談だが、この世界にはセクシー男優・・は存在しないため、CGによるその分野が発達してるようだ。なるほど実に興味深い。

「「あ………………」」

「なりませんわあああああああああっ!!」
 五月は覆いかぶさるように朝日の視界を塞ぎ、急ぎリモコンでテレビを切る。
(あのバカ親殺す! 明日絶対に殺して差し上げますわっ!!)
 息を切らせて殺意を漏らす五月だが、ふと自分の胸の下で何やらもぞもぞとしている温かい感触に気づく。

「ふがっ、ふぁ……ふぁつきふぁん……ふぉの」
「しっ、しっ、失礼しましたわーーっ、朝日様ーーっ!!」

 しっかり自分の胸で視界どころか、朝日の顔をまるごと塞いでいた五月であった――。


「はぁ……はぁ……、し、失礼しましたわ。と……とりあえず落ち着きましょう。とにかく落ち着きましょう。何よりも落ち着きましょう」
「あはは……僕は大丈夫だけど、五月さんこそ……大丈夫ですか? あっ、そうだ! のど渇いてませんか? 冷蔵庫にいっぱい飲み物が入ってたんで! ほら、いっしょに飲みましょうよ」

 五月の柔らかな胸の感触に、朝日もちょっと照れてしまい話題を切り替える。冷蔵庫からぶどう・・・の炭酸飲料と思われる物を取り出して、五月にも一本手渡した。

「まあ、なんてお優しいお気遣い! 是非いただきますわ」

 お互いにとりあえず一旦仕切り直しと考え、ベッドに腰掛けビンの蓋をねじって開ける。炭酸の音に乗せてぶどうの良い香りがふわっと漂う。かなり上質なモノのようだ。

「うわっ、このぶどうの炭酸ジュースおいしい!」

 どうやら好みの味だったらしく、朝日は勢いよく飲みはじめた。ご機嫌な朝日に一安心の五月も口をつけ、その味から自分が知っている・・・・・飲み物だと気付き、せっかくなのでその知識を披露する。

「ふふっ、朝日様ったら、これは炭酸ジュースでなくてシャンパン・・・・・ですわ。モエ・シャンと呼ばれる甘口で人気のある……アンペリ……え? ……シャン……パン!?」

 ここで強烈な悪寒と同時に五月の脳裏にある記憶が浮かんだ。不覚にも酔いつぶれてしまった五月下旬のとある日。深夜子と梅から、翌日に聞かされた朝日飲酒事件(※第三十二話、第三十三話参照)の顛末。そう、朝日家禁酒令が施行される原因となったアレである。

 一気に血の気が引いていく! 首が折れんばかりの速度で朝日の方を向くも、すでにハーフボトル(375ミリリットル)のほとんどを飲み干していた。

「ッ!!」
 即座にベッドから駆け出して再び扉の前に向う。
「まずいっ! まずいっ! これはまずいですわーーっ!!」

 殴る蹴る、そして体当たり、渾身の力で扉を破ろうとするがビクともしない。しばらく連打を続けるが、手も、足も、体力も限界を迎え、ついには扉の前に力なくへたり込む。

「これは……ハァ……どんな……ハァ……作りになってますの?」
 ぜえぜえと息を荒げる五月の後ろで、何やら冷蔵庫を開ける音が聞こえる。
「おいしー、おかわりー」
「朝日様、だめええええええっ!!」

 シャンパンのハーフボトルを一本飲み干し、鼻歌まじりに二本目を物色している朝日であった。そこを後ろから羽交い絞めにして、五月がベッドまで連れ戻す。

「あ、朝日様いけませんわっ! こ、これはお酒ですの。まだ朝日様は未成年(※この世界は十八歳で成人)ですから――――ちょっ!?」
「もー、五月さんのいじわるー」

 すでに酔っ払いモードに突入し始めた朝日は、するりと五月の腕から抜け出して、逆に抱きつこうとする。迫りくる愛しの朝日が発する甘えた声に、五月の理性はガリガリと削れ始めた。

 さあ大ピンチである。
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