女装メイドは奪われる

aki

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1巻 エピローグ フォルテル

第二十二話 【性描写少しアリ】

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「フォルテルぅ、ふふふっ、あはははっ」

 誰だ、俺のクリスにワインを飲ませたヤツは……。
 メロディアとアマンダが秘密の打ち合わせをしている同時刻。フォルテルは、パーティがお開きになったこともあり、クリスの介抱という名目でクリスの自室に来ていた。フォルテルはベッドに座っており、肩には酔っ払いがしなだれかかっている。ベッド脇にある小さなテーブルにはワインの瓶とグラスが二つ。離れた場所にはパーティの肉類などが残っていた。
 クリスの惨状に珍しく苦い顔をしているフォルテルは、ドレス姿のままのクリスの腰に手を当てつつ、ため息をぐっとこらえていた。
 反対に、クリスは非常に愉快そうだ。ケラケラと笑って、スキンシップをこれでもかと行っている。パーフェクトな笑い上戸である。
 酒を飲ませないように監視させてたんだがなぁ。誤って飲んだか、それとも断り切れなくて飲まされたか。はぁ。何事もなくて良かったというべきなのかもしれないが。
 渋い顔でグラスを口に付ける。果実の味が濃く、豊潤で、力強い、しかし渋みのある赤ワイン。ローストビーフが欲しくなり、立ち上がろうとする。けれどもクリスが腰に抱き着いてきて放そうとしない。
 笑顔を作って優しく話しかける。

「どうしたんだい?」
「えぇぇ、どこいくのぉ? さみしいよぉ」
「あそこのローストビーフを取りにね。クリスもいるかい?」
「わたしぃ? んー? あーん、してくれるぅ?」

 誰だ、クリスにワインを飲ませたのは。
 本日、何度目かのフレーズ。

「してくれないのぉ?」
「うん、してあげるよ」
「ありがとぉ。ふふふ、ふふふふふふふ」
「それじゃあ、行ってくるよ」
「やら!」
「うん? いらないのかい?」
「いっしょについていくぅ……」
「うん、わかったよ。ほら、おいで」
「ぅん……」

 ほんの数歩の距離なんだがなぁ。
 言葉を飲み込み、立ち上がってエスコート。
 はぁ。嬉しいのは嬉しいんだが、あー、本当に帝国に行くのか? こんな調子で? 帝国に? 夢であってほしいが、約束したからなぁ。あああぁぁぁ、絶対に酒を飲ませないように言っておかないと。クリスは断れないから、飲んでしまうんだよな。俺がいないときに飲んでしまったら……、あー、本当に、本当に一週間、帝国に行くのか? 嫌な予感しかしない。
 テーブルの上に無造作に置かれたローストビーフを、これまた適当に投げ出されたナイフとフォークで切り分ける。クリスが左腕に絡んでいるために、とても作業しづらい。だが嫌な顔は一つも浮かばず、器用に小皿に盛る。単純に、慣れていた。
 この間もクリスは上機嫌だ。「ふふふ」「あはは」と笑顔を見せ、あれが欲しい、これも欲しいと、フォルテルに甘えた注文をする。それに対してもフォルテルは一つ一つ、丁寧に従った。「これはいるかい?」「あぁ、この部位は美味しいからね」と、笑顔で対応する余裕まである。単純に、慣れているのだ。
 そしてお姫様を連れてベッドまで向かう。固く、今後パーティでは一切ワインを飲ませないと誓いながら。守られたことはない、儚い誓いだけれども。それでも今、この時ばかりは本気だった。
 座り、ベッド脇の小テーブルに置いたローストビーフを口に運ぼうとする。が、咎める目線。心頭滅却。「あーん」と小さな口を開けている甘えんぼうさんに、冷静に、フォークをゆっくりといれた。

「おいしいかい?」
「うん、おいひい」
「うん、クリスの好みに作っているから、いつでも気が変わったら味を変えるからね。塩が足りなかったり、こしょうでも、何か欲しい調味料はあるかい?」
「んー? わたしねぇ、フォルテルがほしいのぉ」
「……そうかい」

 俺は、今、神に試されている。これに反応するのは不正解で、これは試練だ。クリスはこんな調子で、記憶があるタイプだからな。やっかいすぎる。冷静になって酔いから醒めたときが地獄だろう。何度も何度も、頭を下げるクリスを見ないために今は我慢だ。クリスが悲しむ。我慢、我慢をしろ。……もう遅い気がするが。
 ワインを味わおうとグラスを手に取る。が、不意に、クリスが太ももの間に顔をうずめてきた。顔の向きはもちろんフォルテルだ。

「えへへへぇ。こぉこ。ここ。ここがほしいのぉ」

 おれは、いま、かみに、ためされて、いる。

「うそだよぉ。うーそ。あはははは」
「…………そうかい」

 それならできれば早めにペニスから顔を離して欲しい。
 声の震動と、呼吸の熱が、刺激してきて止まないのだ。
 しかしながら、無情にもクリスはそこに顔を近づけたままだ。それどころかケラケラとペニスを布の上から手で転がし始める始末だ。嬉しそうに柔らかく揉まれる。真顔のまま勃起をしてしまっているという最低な状況を忘れるために、グラスのワインを流し込んだ。

「フォルテルはやさしいねー?」
「うん? どうしてだい?」
「だってね? さっきね、メロディアちゃんにね、ちゅーしようとしたらね、おさけのにおいがするっていって、にげられたの。ちゅぅぅぅぅって。むかしはたくさんしてくれたのになぁ」

 クリスの、紅色の唇が、フォルテルのペニスを布越しに動く。官能的な唇の動きがペニスに伝わる。さらに下半身が熱くなる。より、大きくなっていくそれを、クリスは楽しそうに手で握ったり動かしたりしている。
 最悪だ。

「あの子も大人になっているんだよ。私たちのようにね」
「フォルテル、めっ! わたしじゃない、おーれ。フォルテルは、すぅぐつよいじぶんをつくるんだから」
「そうだね。うん、そうだね」
「フォルテルはねぇ。ほんとうはねぇ、よわいのにねぇ、さみしがりやなのにねぇ、なきむしなのにねぇ、つよがるからねぇー、こんなにかたくおっきくなるんだよ?」

 硬く大きくなったのはクリスがいじったからだ。

「いけないんだぁ。こんなにおおきくして。こんなにおおきく……、わっ! ふくからそとにでちゃった。ビクンビクンしてるぅ」

 あははって笑ってるけど、ボタンを開けて外に出したのはクリスだよ?

「けっかんがすごいねぇ。ほらここ、ここもほら」

 指でなぞらないでくれるかな?
 手を出したら怒るでしょ?

「フォルテルはちゅーすきなのにねぇ?」

 だからと言って、今、そこにキスする? 普段はしないよね? いつもは自分からしないよね? どうして酔うとこうなるんだ。本当に帝国に行くのか? こんな調子で? 本当に行くのか? やめてくれよ、夢であってくれ。俺がいればなんとかフォローできるけど、誰がどうコントロールをす……、まてまて、なぜワインを飲む前提で考えているんだ。パーティは行われるはずだが、まずは飲まないように明日再度注意をしないと。
 視線を下にしないようにして、ローストビーフを口に運ぶ。
 ふむ。やはりそうだな。ワインの特色が良く出ている。その上、風味がいつもより強い。パーティのときにはほとんど口にできなかったのでわからなかったが、これはバターを変えたのかもしれないな。今みたいに二人っきりじゃないと落ち着けないから、満足に味わって食べることすらできやしない。今じゃないと……、はぁ。
 ペニスが舌で遊ばれ始める。ねちゃりと、くちゅっと、唾液が絡む音が響く。襲ってくる快感。表情を確認され、気を良くしたらしいクリスが口に含んできた。舌で亀頭をなぞられる。染めた頬に、ぞくっとするほど艶やかな瞳。多少、精液が漏れ出してくる。ぺろりと舐められた。
 だが恐ろしいことに、これでもクリス自身にはその気がないのだ。勤めて心を静めて、また「あーん」をして欲しいサインなのだと読み取り、ビーフを小さく切って、危なくないようにスプーンですくって近づける。口が開く。唾液音。瞳を潤ませ、パクリと肉が食べられる。ぬるっと出てくるスプーン。いちいちエロい。深呼吸をした。
 フォルテルは、クリスが自分のことをよく理解してくれていることを、とてもよく知っている。感謝もしており、だからこそ、クリスに惚れている。こうして二人でいるときだけは素直に落ち着けることも大きく起因していた。こうしたやり取りも慣れている。そう、落ち着いて行うことができるほど、良くあることなのだ。
 
「ふふふふ。ありがとぉ、フォルテル。ねぇ?」
「なにがだい?」
「えっとねー。あのひとねぇ。おしりとかおっぱいとか、いっつもさわってくるんだよぉ? でもフォルテルがくるとねぇ、にげちゃうんだぁ」
「うん、そうかい。間に合って良かったよ」
「ほんとうはねぇ、こわかったのぉ」

 上目遣い。
 パーティでクリスは襲われかけた。レイプ未遂と言えるだろう出来事だ。酔ったクリスはまともでない。そこを狙った男が、身分差とスキル相性をいいことに、会場外で、クリスとの行為に及ぼうとしたのだ。幸い、異変を素早く察知したフォルテルが駆けつけたから良かったものの、身分自体はフォルテルと同等のために裁くことができなかった。
 今、その侯爵は何事もなかったかのように、この屋敷で晩酌をしていることだろう。腹が立つが、制度上の問題のために、こればかりはどうしようもなかった。
 俺にもっと力があれば。俺の可愛いクリスが傷つくことはなかったのに。

「フォルテル? むりしないでね?」
「うん? どうしてだい?」
「フォルテルはねぇ、じしんまんまんにわらっているときがねぇ、いちばんかっこいいんだよ?」
「……クリス」

 愛しい。愛しくてたまらない。
 湧き上がる愛情から、キスを落とそうとする。が、「だぁめ」とくつくつと笑われ、じゅぽっ、とペニスを咥えられた。そのまま唇がフォルテルを吸い尽くそうと、にゅちゅ、ぐちゅっ、と上下に動き出す。キスがNOでフェラがYESな酔っ払いの思考がわからない。
 というか、本当に帝国に行くのか? 今からでも止められないか? メロディアが何か動いていることはわかっている。家に支障があまりないからまだ大丈夫だ。だがもし、メロディアがクリスにワインを飲ませたら? いや、いや、いや、そんなことはないはずだ。メロディアは酔ったクリスの断片を知っている。だからそれはな――。

「だぁめ」

 クリスがペニスを尻に敷いて跨ってきた。抱き着かれ、そのまま押し倒される。クリスの唇によって、唇が塞がれた。そして侵入してきた舌によって舌の表面を舐められ、さらに口の中の天井を優しく撫でられる。Gスポット。脳を支配する超近距離の強烈な快楽。あまりの快感に何度も腰が浮いてしまう。感度が上がり、敏感になっていく口。今度は歯茎を舌で触られた。性的な刺激。同時に尻でペニスをこすられる。シルクの触感。我慢できそうになく、挿入できるようにクリスの腰の位置をずらそうとする。

「おいしい。でも、まだだぁめ」

 楽しそうに笑う小悪魔。

「きょうもねぇ、いっぱいねぇ、さわられたんだよぉ?」

 フォルテルの手が両手でつかまれる。

「こことねぇ、こことかねぇ、ここもなんだよぉ」

 誘導される手が、クリスの肢体を滑っていく。
 生地が薄いドレスだ。気持ちよさそうに、時折、可愛らしく反応をしている。楽しんでいると、突然、手首を強く握りしめられた。何事かと訝しんでいると、クリスは、あろうことか大胆に開いた自身のドレスの胸元から、フォルテルの手を中に入れたのだった。乳房。手のひらを通して伝わってくる乳首の感触。揉まず、動かされるがままにしていると、じっくりと硬く、大きく尖っていくのが見ずとも触り心地で実感できた。

「ここもねぇ、ちょくせつさわれたんだよぉ」

 蒼いドレス。白い肌。紅い唇。美しく、艶めかしく。

「ねぇ、さわられたところ、キスして? フォルテルならわたしがいいたいことわかるでしょぉ? フォルテルはわたしにやさしくキスをするの。あいしてるよっていって。きたないいぬにさわられたところ、ぜんぶ。ぜーんぶ。キスするの。あいしてるっていわないとさいしょからだよ。みみとかも、ても、うでも、あしも、ぜーんぶよ。それがおわったら、こんどはなめるの。わきも、あしのうらも、ゆびのあいだも、えっちなあなも、きれいになめるの。ちゃぁんとぜんぶきれいにできるまで、いれさせてあげなぁい。ねぇ、フォルテル。わたしのわんちゃん。これはね」

 月に照らされて、クリスは妖しく笑うのだった。

「めいれいよ」



    1巻  ~完~
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