千年の扉

桃青

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 その日ファンタジーの面々は、大江の元に集っていた。そして大江は全員が集まっている事を確認すると、よく通る声でこう宣言した。
「これから千年の扉についての話し合いを、始めることにする。」
 それから大江は腕組みをして、話し始めた。

「前にも話したが、“千年の扉”という巻き物に書かれた内容は、この地球の何処かに異世界に通じる場所があることを示唆している。
 ・・・ただ残念な事に、この巻き物には肝心な2つの情報が欠落しているんだ。それは、
 『千年の扉が何処にあるのか?』
 という事と、あと1つは、
 『どうやったらその扉が開くのか?』
 という事である。
 遥、君はその事について何か知らないか?それは具体的な情報でなくてもいい、何らかの手がかりになる程度のものでも、全然構わないんだが。」
「―いえ、私は何も知りません。」
 遥がそう答えると、何故か大江は意味あり気な目線を遥かに向けた。それから気を取り直して、話を続けた。
「とにかく我々はもっと、情報が欲しい。
 ―というわけで今日はこれから、焦人が人生の最後まで身を置いたとされる柴神社に、皆で向かう事にする。そして神主から直接話を伺ってみようと思うんだが・・・。
 遥、別に構わないね?」
「ええ。」
「事務所の留守番はマークに任せる事にして、後は全員僕についてくるように。これから僕の車で柴神社へ行こう。さぁ。」
 そしてメンバー達は大江の後に続き、まるで金魚の糞のようにぞろぞろと事務所を出て行き、それから車に乗り込んで、一路柴神社を目指したのであった。

 やがて柴神社に辿り着き、車から降り立ったメンバー達は、遥に導かれて境内の奥へと踏み入っていった。そして本堂の前まで来ると、遥はみんなを代表して声を掛けた。
「梅おばさ―ん、いるー?」
 するとしばらくして、本堂から50代くらいの女性が姿を現し、目を見張って遥の元へやって来てから、言った。
「何だい遥、一体どうしたっていうんだい?それにこの人達は・・・。」
 すると大江はさっと前へ進み出て、言った。
「初めまして、僕らはファンタジーという組織の者です。ファンタジーについては、もうすでにご存じかとは思いますが。
 ・・・それに梅さん、僕はあなたと1度お会いしていますよね?」
 そう言われた梅は大江の姿を認めると、表情が見る見るうちに固まっていった。太田はそんな梅の有様を横目で傍観しながら、
「今日は僕達、どうしてもあなたとお話したい事があって、それでここまでやって来たというわけなのですけれど・・・。
 良かったら少しお時間を頂けませんかね?」
 とひょうひょうと言ってのけた。すると梅は何やら影のある顔をしながら、それでも気丈に彼らに向かって言った。
「そういうことでしたら、どうぞ本堂へお上がり下さい。そこであなた方の話を、お聞きしましょう。」
「そうですか、それじゃ遠慮なく。」
 大江はそう言うと、さっさと靴を脱いで軽やかに本堂へと上がっていった。他のメンバー達もそれを契機に、大江の後へ続々と続いていった。
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