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第二話 森の恵み。
「お姉ちゃん、お帰り!」
「ごはん、あった?」
ラナが家に帰ると、弟と妹が駆け寄ってきた。
弟のルイは8歳、妹のリンはまだ5歳になったばかりだ。
「うん、いっぱいあったよ」
ラナが言うと、二人とも嬉しそうに笑った。
「それと、これ」
ラナは〈収納〉から赤い小さな木の実を取り出してルイ達に見せた。
「わぁ、ルッコだ!」
「すごい!」
ルッコは季節により色や味の変わる小さな甘酸っぱい実を鈴なりにつける。
今の季節は特に甘みが強い。
お菓子など到底手に入らないラナ達にしてみれば、貴重な甘味なのだ。
「ご飯の前だから、ちょっとだけだよ」
「うん!」
「おねえちゃん、ありがとう!」
ルッコの赤い小さな実を頬張ると、ルイとリンは顔を見合わせながら満面の笑みを浮かべた。
「あまーい」
「おいしいね」
ラナも一口だけルッコを食べた。
噛むと薄い皮がぷちっと弾けて甘味が広がる。
(うん、美味しい)
前世でも菓子などほとんど食べられなかった。
お腹をすかせて食べた木の実は酸っぱくてまずかった。
薄い板の扉が開き、畑へ行っていた母親が帰ってきた。
「ただいま。すぐにご飯にしようね」
そう言った母親はラナを見て顔をしかめた。
前世での事を思い出し、一瞬身体が強張った。
「ラナ、また森に行ったのね。危ないから一人で行ってはダメだと言っているでしょ」
たが、母親の口から出たのはラナを案じる言葉だった。
その事にほっとしながら、ラナは〈収納〉から今日の収穫を取り出してみせた。
「大丈夫だよ、私には〈危険回避〉スキルがあるんだから。ほら、今日もたくさん採れたんだよ」
「おかあさん、おなかすいた!」
「お姉ちゃん、ルッコもとってきてくれたんだよ」
にこにこと笑いながらまとわりつく幼い子供達に、母親はそれ以上言えないようだった。
事実、ラナが森に入らなければ子供達にお腹いっぱい食べさせる事も出来ないのだ。
それでもラナの身を案じる母親に対して、なんだかくすぐったいような感情が湧いてくる。
「お母さん、早くご飯作ろうよ。私も手伝うから」
「そうね、みんなお腹が空いてるものね」
ラナの言葉に母親が笑い返してくれた。
「ルイはリンの面倒をみててね」
「うん。まかせて」
小さなかまどに火を起こし、やはりラナが森で拾ってきた薪代わりの木の枝をくべる。
茸は香草とスープにして、ボーショは蒸して潰し、やはり香草と岩塩で味付けをした。
簡単な料理ではあったが、香草があるとないとでは風味が断然違った。
今日は食後に甘いルッコの実もある。
ルイとリンもおいしい、おいしいとお腹いっぱい食べられたようだ。
食べるとすぐに眠ってしまった。
皿を洗っている内に、ラナにも眠気が襲ってきた。
前世での記憶があるとはいえ、身体の方はまだ十歳の子供なのだ。
「あとはお母さんがやっておくから、もう眠りなさい」
その様子に気付いた母親がそう言ってくれたので、ラナも眠る事にした。
ルイとリンが眠るベッドに潜り込み、擦り切れた古い毛織物をかぶる。
山岳地帯に近いこの村は春になっても夜はまだ寒い。
母親はかまどに薪をくべると、その前に椅子を移動させて繕い物を始めた。
父親は近くにある比較的大きな町に出稼ぎに出ていて、帰ってくるのは週末だ。
それもラナやルイが大きくなって、ある程度家の手伝いが出来るようになってからなので、ここ数年の事だ。
(お父さん、早く帰ってこないかな……)
すとん、とラナは眠りに落ちた。
「ごはん、あった?」
ラナが家に帰ると、弟と妹が駆け寄ってきた。
弟のルイは8歳、妹のリンはまだ5歳になったばかりだ。
「うん、いっぱいあったよ」
ラナが言うと、二人とも嬉しそうに笑った。
「それと、これ」
ラナは〈収納〉から赤い小さな木の実を取り出してルイ達に見せた。
「わぁ、ルッコだ!」
「すごい!」
ルッコは季節により色や味の変わる小さな甘酸っぱい実を鈴なりにつける。
今の季節は特に甘みが強い。
お菓子など到底手に入らないラナ達にしてみれば、貴重な甘味なのだ。
「ご飯の前だから、ちょっとだけだよ」
「うん!」
「おねえちゃん、ありがとう!」
ルッコの赤い小さな実を頬張ると、ルイとリンは顔を見合わせながら満面の笑みを浮かべた。
「あまーい」
「おいしいね」
ラナも一口だけルッコを食べた。
噛むと薄い皮がぷちっと弾けて甘味が広がる。
(うん、美味しい)
前世でも菓子などほとんど食べられなかった。
お腹をすかせて食べた木の実は酸っぱくてまずかった。
薄い板の扉が開き、畑へ行っていた母親が帰ってきた。
「ただいま。すぐにご飯にしようね」
そう言った母親はラナを見て顔をしかめた。
前世での事を思い出し、一瞬身体が強張った。
「ラナ、また森に行ったのね。危ないから一人で行ってはダメだと言っているでしょ」
たが、母親の口から出たのはラナを案じる言葉だった。
その事にほっとしながら、ラナは〈収納〉から今日の収穫を取り出してみせた。
「大丈夫だよ、私には〈危険回避〉スキルがあるんだから。ほら、今日もたくさん採れたんだよ」
「おかあさん、おなかすいた!」
「お姉ちゃん、ルッコもとってきてくれたんだよ」
にこにこと笑いながらまとわりつく幼い子供達に、母親はそれ以上言えないようだった。
事実、ラナが森に入らなければ子供達にお腹いっぱい食べさせる事も出来ないのだ。
それでもラナの身を案じる母親に対して、なんだかくすぐったいような感情が湧いてくる。
「お母さん、早くご飯作ろうよ。私も手伝うから」
「そうね、みんなお腹が空いてるものね」
ラナの言葉に母親が笑い返してくれた。
「ルイはリンの面倒をみててね」
「うん。まかせて」
小さなかまどに火を起こし、やはりラナが森で拾ってきた薪代わりの木の枝をくべる。
茸は香草とスープにして、ボーショは蒸して潰し、やはり香草と岩塩で味付けをした。
簡単な料理ではあったが、香草があるとないとでは風味が断然違った。
今日は食後に甘いルッコの実もある。
ルイとリンもおいしい、おいしいとお腹いっぱい食べられたようだ。
食べるとすぐに眠ってしまった。
皿を洗っている内に、ラナにも眠気が襲ってきた。
前世での記憶があるとはいえ、身体の方はまだ十歳の子供なのだ。
「あとはお母さんがやっておくから、もう眠りなさい」
その様子に気付いた母親がそう言ってくれたので、ラナも眠る事にした。
ルイとリンが眠るベッドに潜り込み、擦り切れた古い毛織物をかぶる。
山岳地帯に近いこの村は春になっても夜はまだ寒い。
母親はかまどに薪をくべると、その前に椅子を移動させて繕い物を始めた。
父親は近くにある比較的大きな町に出稼ぎに出ていて、帰ってくるのは週末だ。
それもラナやルイが大きくなって、ある程度家の手伝いが出来るようになってからなので、ここ数年の事だ。
(お父さん、早く帰ってこないかな……)
すとん、とラナは眠りに落ちた。
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