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第6章 消えた村。
調査。
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「福助、〈風魔法〉!」
「にゃ!」
ごおごおと音を立てて風が巻き上がり、魔物の群れが吹き飛ばされていく。
「みんな、かかれ!」
りゅうたろう達がいっせいに残った魔物達に飛びかかっていく。
すでに福助の〈風魔法〉によって虫の息だった魔物達は、あっという間に猫達にやられてしまった。
「せり、〈気配察知〉。残った魔物がいないか確認して」
せりがぴくぴくとひげを動かした。
やがて、せりは私の顔を見て胸を張った。
どうやら、全滅できたようだ。
私達は、村の入り口へと向かった。
村はぐるりと先の尖った木製の柵に囲まれていて、入り口の前には武器を持った村人らしき人達が立っていた。
「あ、あんた、どうやって、ここに……」
「森には魔物の大群がいたはずだ」
「ギルドからの依頼で来ました。魔物は全滅させました」
私の言葉に村人達は顔を見合わせた。
「じゃあ、俺達、助かったのか……?」
「やった!」
武器を放り投げて、歓声をあげる。
「怪我人の手当てをします。中に入れてください」
村人達ははっとしたように、私を振り返った。
「はい!」
「怪我人は村の集会所で、女達が看病しています」
集会所に向かいながら、村人はぽつりと言った。
「まさか、助けが来てくれるなんて……」
私の顔を見て、苦笑いを浮かべた。
「小さな村ですからね。見捨てられても不思議じゃないし」
「この村の出身だという人から、ギルドに依頼があったそうです」
何週間も前から村と連絡がつかない。
きっと、何かあったのだ、と。
たまたま居合わせた私に、調査の依頼が回ってきた。
キングの〈空間転移〉で村の近くまで来たら、森の中は異常な数の魔物であふれかえっていたのだ。
うん、依頼を受けたのが私達でよかった。
あの数の魔物を相手に出来る冒険者は限られているし、一度ギルドに戻るような事になっていたら、この村は手遅れになっていたかもしれない。
集会所に入ると、中は包帯を巻かれた人や寝込んでいる人でいっぱいだった。
看病している女の人達も、ずいぶんと疲れているようだった。
「みんな、助かったぞ!」
「この人が、魔物を退治してくれたんだ!」
一瞬の沈黙のあと、歓声があがる。
泣き出してしまった人もいた。
「チャビ、〈回復〉」
チャビがごろごろとのどを鳴らし始めた。
「あんた、もしかして、《猫を連れた冒険者》なのかい?」
「はい」
私はにっこりと笑って答えた。
「じゃあ、《竜殺し》の……」
そっちには触れないでください……。
「にゃ!」
ごおごおと音を立てて風が巻き上がり、魔物の群れが吹き飛ばされていく。
「みんな、かかれ!」
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村人達ははっとしたように、私を振り返った。
「はい!」
「怪我人は村の集会所で、女達が看病しています」
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「まさか、助けが来てくれるなんて……」
私の顔を見て、苦笑いを浮かべた。
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きっと、何かあったのだ、と。
たまたま居合わせた私に、調査の依頼が回ってきた。
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うん、依頼を受けたのが私達でよかった。
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「あんた、もしかして、《猫を連れた冒険者》なのかい?」
「はい」
私はにっこりと笑って答えた。
「じゃあ、《竜殺し》の……」
そっちには触れないでください……。
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