異世界に来たけど特にチートとかなかったので、ひたすら食べ歩く事にした。

たまご

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ボーショの真っピンクシチュー。

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 仕事終わりに、日用品を買いに市場に立ちよった。

 洗顔用にちょっといい石鹸と、新しいタオル。
 タオルといってもパイル地ではなく、手拭いのようなものだ。

 この世界でも入浴の習慣はあるが、個人宅にお風呂はなく庶民は公衆浴場に行くのが一般的だ。
 私は商業ギルドにある従業員用のお風呂を使わせてもらっている。

 屋台で裾に刺繍がほどこされた可愛いスカートを見つけたので、それも買ってしまった。

 洋服は専門店で仕立てるオートクチュールから、私が買ったスカートのように、裁縫の腕に自信のある農家などのお母さんが内職で作って露天の店先で売っているものなど、素材や値段もピンキリだ。

 綿花に似た植物や蜘蛛のような魔物から採れる糸などがあり、これらは基本的に冒険者ギルドで依頼を請け負った冒険者が仕入れてくる。
 商業ギルドで扱うのは布になった状態からだ。

 また、様々な植物で染めるため意外なほどカラフルだ。

 ターコイズでの今の流行りは、青みがかったグリーンらしい。
 私の買ったスカートも流行りの色で、白い糸で丁寧な刺繍がほどこされていた。

 アクセサリー等の装飾品を日常的に身につける習慣はなく、結婚式などのお祝い事があった時のみらしい。
 ただし、冒険者達は付与効果のあるアクセサリーや御守りを身につけているようだった。

 私は、猫神様の御利益があるという御守りを身につけている。

 リラーナさんに教えてもらったのだが、猫神様は様々な世界を気まぐれに渡り歩く神様で、私達のような違う世界から迷い込んだ人間を守護してくれるらしいのだ。

 荷物を持って食堂の前を通ると、ぷぅん、といい匂いがしてきた。
 途端に、ぐぅ、と腹の虫が鳴く。

 よし、今日は食べて帰ろう。

「なつき、いらっしゃい!」

 馴染みの食堂に顔を出すと、給仕をしている女の子が空いている席を教えてくれた。

 しばらくして運ばれてきたのは、パンとチーズ。それにボーショのシチューだ。
 この世界ではオーソドックスな食事だ。

 黒っぽいパンは、少し固めで歯応えがある。
 何回か噛んでいると麦の香りが鼻に抜けていく。

 柔らかい白パンも、甘く煮た果物を中に入れた菓子パンのようなものも売っているが、私は少し固めのパンがお気に入りだ。

 ……屋台の焼きそばパンを見つけた時は、我慢できずについ食べてしまったが。
 だって、鉄板で焼いたばかりの熱々の焼きそばをその場でパンに挟んで売っていたんだよ!?
 美味しいに決まっている!

 黄色いチーズは柔らかく、こってりとしていて味が濃い。
 たくさん食べると胸焼けがするので、私は添える程度にしてもらった。

 そして、ボーショのシチュー。

 うん、今日も真っピンクだね……。

 ボーショはじゃがいもに似た味のする芋なのだが、どぎついピンク色をしている。
 色が濃いほど栄養価が高いらしい。
 ポテトサラダもポテトチップスも存在しているが、みんなピンク色だ。

 人参や玉ねぎは普通にあるのに、何故かじゃがいもだけはこの世界には来なかったようだ。

 シチューを一匙すくって口に運ぶ。

「うっまぁ……!」

 味はいいのだ。色がアレなだけで。

 ターコイズ周辺では岩塩が採れるので、味付けは基本塩味だ。
 だが、この食堂では数種類の香草で風味をつけ、多分隠し味に何か入れている。

 以前、聞いてみたが笑って教えてくれなかった。
 企業秘密らしい。

 ほくほくとした食感のボーショに、柔らかく煮たレッドバードの肉。
 大きめに切った人参や玉ねぎなどの根菜類。
 ごろごろと入っているそれら全てに、しっかりと味が染みている。
 夢中で食べていると、胃の中がじんわり熱くなってきた。

 残しておいた黒パンの欠片で、シチューの皿を拭いとる。
 麦の香りとシチューの風味が合わさり、最後の一口まで美味しい。

 お皿まで綺麗にして完食だ。

「ごちそうさまでした!」

 さてと、帰りますか。


































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